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第六夜
誰かを好きになるのは、これがはじめてなのかもしれない。少なくとも、文字の上で語るのはこれがはじめてであろう。
思うに、酸いも甘いも好きなままの私で在りたかったのだ。言葉遊びの範疇に過ぎないが、つまり、好きなままでいたかった。
嫌いだと拒絶することが恐ろしかった。周囲はあまりにも幼かったのだ。私は、昔から人に恋をしている。恐ろしいほどの情熱をもって。これを長い間否定してきたが、もう、良い。
私は、人であるから、人が好きだ。献身的な愛ではなく、互いに満たされてこそ愛だ。文字にするほど、きっと洗練されていくこの気持ちを、愛と呼ぼう。
徒然なるままに、愛を得たい。ただ愛されたくも、愛したくもない。これは文学的かもしれないが、所詮は愛だ。慎み深く想い、ただ愛を抱えたい。
私にそれができるのだろうか。眠れぬ夜ほど恋しい時はなかった。恋しい時ほど眠れない。
筆が愛おしく思えるのは、やはり愛してきたからで、私はただ一心に筆を愛している。
眠れぬ夜が再び訪れることがあるのかはわからないが、私は筆を執ろう。ああ、それでは、おやすみなさい。