6 イケメンぽい蒼さん
青い覆面の人はブルーのスーツでアイスコーヒーをそそいでいる。
背が高いな。175センチくらいかな。脚が長いな。お尻がキュッとあがってる。プリップリしてる。
顔が小さくて覆面が少しゆるそう。中身で選んでって言っても、覆面の下のお顔はどうなってるのか想像しちゃうよね。
この人かっこよさそうだな。あ、でもあんまりかっこ良すぎても緊張しちゃうから、私には合わないかな。じーっと見てたら青い覆面の人が話しかけてくれた。
「覆面、同じ青ですね」
「あ、はい。私、田中藍っていうんです。藍色の藍です。藍色の覆面は無かったので青にしました」
「そうなんですか。僕は鈴木あおいっていうんですよ。あおいは草冠に倉で。本当は蒼の色は青じゃなくて緑なんですけど、わかりやすいように青の覆面にしました」
「そうなんですか。『あい』と『あおい』、名前が似てますね」
「本当だ! 気づかなかった」
「私の藍の字も草冠なので、同じですね」
「へえー! なんか親近感がわきますね」
「そうですね」
あれ、いい感じじゃない? 一応、胸のバッジの番号を控えておこう。白いハート形のバッジに、青いペンで1と書かれていた。
「蒼さんは1番なんですね。メモしておきます」
普段は私、かっこいい男の人とこんなに話せないんだよね。相手はすごくかっこいいのに、どうして私はこんななんだろうって思っちゃって。
話の途中で目をそらしちゃうことも多いんだけど、今日はお酒を飲んでないのに目を見て話せてる。
きっと覆面効果だ。顔を隠すって、相手を選ぶ時だけじゃなくてこういう効果もあったのか。
「そうなんです。藍さんは13ですか」
「あ、はい。そうです!」
「覚えておきますね。それじゃあまた後で」
「あっ、はい」
蒼さん、行っちゃった。後ろ姿もイケメンぽい。大きくて広い背中いいなあ。もうちょっと話したかったなあ……。でも時間が限られてるから蒼さんもいろんな人と話したいよね。
しかたない。一旦ケーキ食べよ。糖分補給しなきゃ。
ケーキが並んでるテーブルを見たら水色の覆面をした人が、水色のスウィーツを選んでいた。