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96話「エレナちゃんのラブコール生中継ッ!」

 爆音が轟き、次いでズガガガガガガガッと衝突音が鳴り響く。


 ケン治とマイシがオーラを纏いながら、火花散る剣と拳の連打を応酬し合う。そして縦横無尽と空を翔けながらそれを繰り返していた。その余波で地面が震え、周りのビルが崩れ、大気が破裂。

 スタッと二人は間合いを離して降り立つ。


「どうしたし? 仲間が減って焦ってるっしょ?」

「……」


 微かに息を切らしながらマイシは笑む。それに対しケン治は顔を(しか)めたままだ。




 モニターに食い入る校長の頬を汗が伝う。

 マイシのスタミナ切れ……。その状態を危惧(きぐ)しているようだ。だから今まで入れ替えする時、まず早めにマイシを引かせていた。


 マイシはいつもフルスロットル近くオーラを放出する癖がある。

 火力で言うなら学院の中では最強。だが消耗もまた誰よりも多い。


「フクダリウス君、モリッカ君……。もしもの時は頼みますじゃ」


 しかしモリッカは「えー? きっと聞きませんよー?」と声を上げ、フクダリウスも「ううむ。救援に駆けつけたいのは山々だが……」とマイシの性格を考慮に入れて困っていた。

 彼女(マイシ)はワンマンでの戦いを好み、味方であろうとも加勢を好まず、例え負けそうになろうとも意地で戦い抜こうとする。


「可能性としてはナッセ君が適任かもしれんが……」


 ナッセが映るモニターを見やる。

 彼こそ、マイシが心許せる同業者(セイバー)。もしかしたら一緒に戦う事を許してくれるかも知れない。


 だが…………!




 急拵(きゅうごしら)えのベッドの上でナッセは寝かされ、医療班から治療を受けていた。それを見守るヤマミとアクト。

 ナッセの顔は一部赤く()れていて、体の至る所に打撲傷、更に話を聞くに骨にヒビも入ってるらしい。思った以上にダメージが大きい。今すぐ加勢は不可能だろう。


「いてぇ──!! いたたたっ!」


 腕揉むなぞ! 背中にマッサージやめやめ~! つーか全身いてぇぞ!!



「全くそんな状態で流星進撃(メテオラン)賢者の秘法(アルス・マグナ)まで繰り出してッ!」


 ヤマミは鼻息をついて呆れていた。

 ジダ公……、それだけ強敵だったのだろう。医療班も時間をかけて、懸命に治療を繰り返していた。


「戦えるようになるまで、どんくらいだァ?」


「……早くて一時間くらいですかね」

「失恋の傷は何年も癒えないんだよぉぉぉぉ!」

「先輩! 今は失恋の話ではありません!」「うおおお~ん!」


 そういうやり取りがありながらも、治療や処置はしっかりこなしている。



「ヤマミさん、だったかな? ありがとうございます……。

 即座に応急処置してなかったら、二時間以上は伸びてました」


 ペコリと会釈(えしゃく)する医療班のリーダー格。

 それを聞いてオレは内心驚く。一見普通に見えた回復魔法はちゃんと的確にしてくれたのだ。


「ヤマミ……いつもありがと…………」

「無茶するのは、あんたの癖だもんね。覚えておいて良かった」ふふっ。


 ヤマミの優しい笑顔。あたたまるなぁ。


 逆にアクトはジト目で腕を組みながら、落ち着きなくつま先で地面をトントン叩く。どこか嫉妬してるように見えた。


 そっか、前の世界じゃあオレの相棒だったもんな……。覚えてないけど…………。




 校長は「ふむ」と視線を外す。

 ──戦況としては、敵の幹部はケン治とバイオとレンスの三人のみだ。今はこちら側の優勢。

 数で群がるハス太も、規模が大きい戦闘には加勢できない。ナッセとジダ公との戦闘だけでも、実は巻き込まれてハス太は数をずいぶん減らしてしまっている。



 上空に浮かんだまま沈黙する空母が不気味に見えた。


「タネ坊……。キンタ……。本当にお主らが黒幕なのか…………?」



 エンカウントから帰ってきたナッセとヤマミ、そしてアクトが証言した話──。


 入学前から夕夏(ユウカ)家と繋がっていて、人造人間を製造して侵略を目論んでいた。そして在学中では本性を隠して、みんなを(あざむ)いていた。

 にわかに信じられない話だが、これまでの状況を見ればつじつまが合う。


 戦いで弱ったナッセを始末するつもりで現れたが、アクトを前に退かざるを得なかった。

 ただ、自信満々と秘密兵器を暴露してきているからに、クライマックスはもう少し後になりそうだ。



 そしてナッセは彼らを元に戻したいと言っていた。

 きっと具体的な案も何もないのだろう。ただ望みを吐露(とろ)しただけ。

 だが、なぜだか不思議と叶えそうに感じた……。


「ナッセ君……。期待してもいいかのう…………?」


 ヨネ校長は生徒を想う故の物憂(ものう)げな顔でモニターを見上げた。




 自信満々の笑みで胸を張って突っ立つエレナ。それにレンスは訝しげだ。


「ナッセちゃんが好き……ですって?」

「そ!」

「アハハッ! 笑わせるわね~~!!」


 ズズズズ……、不穏に地響きが大きくなっていく。

 エレナはハッとする。レンスの体がメキメキと膨れ上がり、腕の関節の境目が見えなくなるほど太くなり、更に全身を茶色の毛で覆っていく……。


「じゃあ私がナッセちゃんを殺してあげるわッ!!」


 クワッと熊の双眸で見開き、口周辺がボコッとと全面に膨らみ、頭上から丸い耳がニョキッと生え、完全な熊と化した。

 面影はロン毛風の金色の髪の毛のみ。



「く、クマちゃん!?」

「グハハハハ!! 熊の遺伝子を取り込んで造られた人造獣人レンス様だァッ!!」


 漲るオーラを全身から噴き上げ、地面を爆発させる勢いで土煙を放射状に吹き飛ばしていく。

 凄まじいオーラで吹き荒れた烈風をエレナも腕でカバーして堪える。


 巨躯ながらも超高速で突進。太い手には鋭い爪が反射光で煌く。剛力任せにエレナを殴りつける。

 重くのしかかる熊の手に、エレナは両足で踏ん張って腕で交差して防御するも、小柄では受けきれない。

 すぐさま太い足がエレナの腹を穿つ。ドッ!


「が……!!」


 全身金属(メタル)化しているとは言え、筋肉隆々の最重量の一撃に耐えきれるはずもなく、口から血が微かに溢れる。

 小柄なエレナは遠くまで吹っ飛ばされ、その先のビルを崩すほどに激突した。ドミノ倒しのように隣接(りんせつ)するビルが次々傾いていく。

 ガラガララ……、崩れた破片が落ち煙幕が舞う。


 しかしエレナも負けじと煙幕から飛び出し、飛び蹴りでレンスへ向かう。しかしレンスは受け止める構え。


「エレナちゃん進撃!! 五十連脚ッッ!!」


 五十発と一瞬連撃をレンスの全身に叩き込み、背中を突き抜けるほどの衝撃が貫通していく。

 しかしレンスはズンとめり込むように足を踏みしめ、堪えきってニヤリと笑む。

 エレナは動揺して「え、うそ!」と見開く。


「軽いなァ……! 軽すぎるんだよォ!!!」


 両手の熊の爪がジャキーンと長く伸びる。

 巨躯ながらも素早く地を蹴り、エレナへ向かって引っかきの乱打を見舞う。縦横無尽と弧を描く爪の軌跡が踊る。


「ぐあ────っ!!!」


 爪の乱打になぶられ、宙を舞うエレナから血飛沫が四方に撒き散らされた。

 ドサ……、血塗れのエレナが地面に沈む。モニターを見ていた一同は唖然とする。


 近くでバイオと競り合っているリョーコは「エレナちゃん!!」と叫ぶ。

 しかしうつ伏せのまま動かない。



「グハハハハ!! そのまま()(つくば)ってなさい! 今からナッセちゃん殺ってくるね」


 レンスは「ふふ~ん」と上機嫌に笑う。

 エレナはグッと拳に握り、震えながら立ち上がる。真剣な眼差しでレンスを見据える。


「何度でも立ち上がるっ!! 未来の旦那さん(ダーリン)を守るために~~っ!!

 そしてっ! 異世界でマイホーム建てて子供を十人くらい産んでっ! 幸せにラブラブチュッチュッだ~~~~っっ!!!」



 モニター越しで聞いていたナッセはあまりの恥ずかしさで「ドゥフッ」と吐血。

 ヤマミとアクトは(しら)けていた。

 治療班の一人が「このリア充……!」とナッセを恨めしそうに睨む。ギギギ!



「あらそう? そんなに言うなら潰してあげるわッ!!」


 レンスは血眼で地を蹴って、巨躯による体当たりでエレナに全体重を押し付ける。エレナは両の足で踏ん張るも地面を削りながら後ろへと押し出されていく。

 そのまま怒りのままにビルへとエレナごと押し付けて激突。ドギャア!


 内部のコンクリート造の壁や支柱をバキバキ突き破りながら突進を続ける。ビル郡を突き抜け、ようやく外へ押し出されエレナはそれでもレンスの体当たりを受け止め続ける。


「でも、それでも! あたしは諦めないっ!!」


 信念こもる意志で、エレナはカッと眼光を煌めかす。

 巴投げみたいな形でエレナは背中から倒れ、レンスの体勢を前屈みに崩しつつ下をくぐり抜けた。そのまま遠心力に任せてグルリと二人の位置は入れ替わり、仰向けになったレンスの上へ回り込む。

 そして上空へ高らかに振り上げた光り輝く両膝を、レンスのみぞおちに全体重を乗せて振り下ろす!!


「エレナちゃんハイアングルニーキックゥ!!」


 ドズウゥゥゥン!!!


 小柄なはずのエレナの膝の打ち下ろしだけで、巨躯のレンスが道路に埋められ、クレーターに陥没。アスファルトの岩盤が舞い上がり、粉塵と共に土砂が噴き上げられる。

 レンスは「ゴハァッ!」と表情を歪めて吐血。



「ちょっ! そこまで意識してんの~~!?」


 リョーコは唖然とした。


 そう、あの巴投げのようなエレナの逆転技。

 実はレンスの全体重を乗せたエネルギーをエレナが奪い、グルリと位置を入れ替えて上から全エネルギーで押し潰すというカウンター技だ。

 ジダ公戦でナッセが見せたカウンター技と原理はそっくりだった。


「ナッセちゃ~~ん! 今の見た見た~~? どぉ凄いでしょ~~?」


 カメラ目線で、エレナは満面の笑顔で手をブンブン振ってくる。

 なおも「ナッセ好き~、ナッセ好きぃ~」と口を(すぼ)めてラブコールし続ける。なんかピンクのハートが花吹雪のように舞ってるように見える。


 ────もちろん、それは大阪中に中継されているのである。



「ガフォォォォォッ!」


 悶絶(もんぜつ)級恥ずかしさでナッセは血を吐く、横たわって痙攣(けいれん)──。ピクッピクッ!

 ヤマミとアクトは白目で呆れる。

 側で医療班の一人が「リア充爆発しろぉー!! うおおおん!!」と両腕をブンブン振って泣き喚いた。


 マミエもまたイライラを募らせ、無表情が崩れていく。

あとがき雑談w


アリエル「エレナちゃんとナッセが付き合ったら面白そうねぇ~~w」

クッキー「それないないw」

アリエル「あは~w ちょいと仕向けようかしらぁ?」

クッキー「それやったら許さないよw」ぎりっ!


アリエル「許さないって、具体的にどうするのかしらぁ~?」

クッキー「ほほうw これから実践してみましょーかw」ぐぎぎ!


 二人の間に火花がバチバチッとw


ヤミロ「おいおい止めろよぉ……。母さん呼ぶぜ?」

アテナ「はい来たよーw お母さんでーすw」


クッキー&アリエル「ヒッ!」((((;゜Д゜))))


ヤミロ(マジで来やがった……。怖……。逃げよ)時空間移動でエスケープw



 次話『悪の凶技!! 恐るべきその力とはッ!?』

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