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93話「底知れぬ邪悪! 真の黒幕現る!」

 煙幕も流れ、広大なクレーターが顕わになる。

 その中心部でジダ公が仰向けで倒れ、その側で息を切らしながら、剣を支えに片膝を着いてしゃがみこんでいた。



 クラッシュセブンの中でもトップクラスのジダ公が、銀髪チビに負けた。

 それはケン治にとってもあり得ぬ事で、その現実が悪夢のように見えて胸中は混濁(こんだく)していく。

 しかし、ケン治は頭を振って正気に戻る。


《聞こえてますか!? ジダ公さん!》


 意識が朦朧(もうろう)する最中、ジダ公の頭に響く。


《さぁ! オカマサさんが開発した、あの全回復劇薬を使うのですよっ!》

「……ケン治!」

《早くしなさいっ!》


 ジダ公は腕を震わせながら、腰をゴソゴソしてカプセル状の薬を手に握る。

 それをモニター越しでマイシは見開く。

 かつてゴン蔵も何度も服用したと言う、一瞬全回復の劇薬……。


「ナッセ!! その薬を飲ませるな────ッ!!! そいつは全回復するチート薬だし────ッッ!!!」


 思わず「ええっ!?」と驚く。が、体は激痛まみれで鉛のように重い。

 ジダ公は震える手で口に……。ケン治は笑みに表情を変えていく。誰もが焦るシーン。

 ヤマミは「くっ!」と慌てて火炎球を浮かし──!



「あ、あいにくと……恥さらしてまで……、この決着を汚す気はない!」


 ジダ公は力を振り絞って薬を握り砕く。グシャッ……!

 それを見てケン治は「な!?」と声を張り上げる。


《ああっ!? な、なんて事するんですか────ッ!!?》

「ま、前にも言ったはずだ……! お、オレは…………、己の力のみしか信じぬ!!

 刻印(エンチャント)も……劇薬も…………、オレには不要だッッ!!」


 クワッとジダ公は睨みを利かせる。

 モニター越しでケン治は身を震わせ動揺する。悔しそうに歯軋りしていく。マイシは「へっ! クズ揃いの中じゃ漢らしいヤツっしょ」と笑む。



「ジダ公…………?」

「ナ、ナッセとか言ったか……。あの奥義……、大変素晴らしいものだったぞ……!」


 握手を求めるように震える手を差し出し、それを両手で包み込む。それに安堵するジダ公。じわっと涙が溢れ出てくる。



「オカマサなんかより……、先にお前と出会いたかった…………!」


 さっきまで殺気まみれで恐ろしい魔人みたいなジダ公が、感涙に震えているのだ。


「つ……、伝わってきたぞ……! お前の奥義を通して、熱き想いが!

 本来、必殺技と言うものは……、ただ強力な威力で敵を打ち倒すスキルというのが常識……。だが、お前の奥義は少し……ち、違っていた……」

「あ、賢者の秘法(アルス・マグナ)が!?」

「……このクレーターの大きさ通りの威力なら、お、オレは間違いなく死んでいた。だが今こうして生きているのは、お前がオレを殺して勝つ事を良しとしないからだ。

 代わりに攻撃エネルギーとオレの残りのエネルギーを根こそぎ奪った。いわば不殺(ころさず)の奥義……」


 ジダ公は密かに思った。例え『刻印(エンチャント)』を発動していたとしても結果は変わらなかっただろう、と。

 それだけナッセの奥義は未だ底知れない印象だった。



「元来、オレは……生きたまま負けたら生き恥と考え、即自害すべし、そう思っていた…………。

 だが、なぜ……なぜっ!?

 オレはまだ生きたいと……思ってしまうッ…………!」


 ジダ公は未だ熱い涙を流し、嬉しそうに笑む。

 まるで負けた事がどこか誇らしげで、すがすがしい気分に見えた。


「ジダ公…………」

「見事だ……。オレは今初めて、負けた事が誇らしく思えた。

 お前と戦ってきた事が……、オレの最大の誇りだっ!」


「なんか、そう言われると照れくさいけど…………」


 ぎゅっとジダ公は、こちらの手を熱く握ってくる。



「ナッセよ! お前は自分では熱血漢とは思ってないかもしれん……」

「う、うん?」

「だが、お前こそ本物の熱血漢だと言いたい!」


 さっきまで熱血漢が嫌いだと憎悪まみれだったのに、今やそれは無くなっていた。


「お前と戦って……、オレは気付かされた。

 オカマサは己の限界を超えて強くなろうと邁進する自己中な熱血。だがナッセは味方と、そして敵であるオレにも燃えてくれる……熱血!」


「で、でも! オカマサさんはキンタさんと熱い友情築いてたじゃないかぞ?」


 ジダ公は首を振る。


「キンタ……、ドラゴリラ。あくまでオカマサは親友ドラゴリラのみと限定的な熱血の友情。それ以外には冷たい。だから本物とは違う……!

 オレはそんな独善的な熱血漢が……大嫌いだった!!」


 確かにいつもキンタと一緒で、オレたちの関係に線を引いていた。

 一緒に戦った事はあるが、コンビネーション組んで戦う事はなかった。どこか置いてけぼりのような……。

 彼らからはどこか友情を感じなかった。



「拳を出せ! このオレと突き合わせてくれ……」

「え!?」


 ジダ公は片方の腕を上げて拳を向ける。オレは間を置いて頷いてみせる。自分の拳をジダ公の拳と突き合わせる。バリッと黒い稲光が微かに見えた。


「こ、この身体には……、反逆されぬよう心臓を破裂させる自爆装置がある。きっとオレは殺される」

「ジ、ジダ公ッ……!」

「だからこそ……、オレの魂を! 想いを! お前に託したいッ!!」


「ああ! 分かった! これから……忘れるものか!!」



 それを聞いてジダ公は満足そうに笑む。だが、その笑みが儚くみえた。

 本当はもっと生きて欲しかった。この先、またオレの前に立ち塞がるライバルになる事も、仲間になってくれて一緒に戦う事も、もうできない。それがたまらなく悲しい……。



「ナッセよ! 転生というものがあれば、また……会いたいものよ…………」

「今度は仲間としてで欲しいよ。あんたすっげー強いからもう戦いたくないや」

「フン! 情けない事言ってくれる……」


 ふふ、はははっ! ジダ公と笑い合う。

 さっきまで敵だったのに、こうして和んだ感じで話せるのっていいなぞ……。


 すると地面の黒い円が急速に広がり、瞬く間に荒野の世界に切り替わってしまう。


「なっ!? エ、エンカウントだとぞっ!?」



「ごはっはっはっは!! まさか甘ちゃんに丸め込まれるとはね」

「うっひひひ!」


 あらぬ野太い声にゾクッと悪意に寒気を感じた。


 声に振り向くと二匹のモンスターがいた。いや、モンスターではあるが見慣れた風貌。ドングリのような顔型にタラコ唇の優男風のゴブリンと、禿げたタレ目の太ったゴリラ。

 なんとか「くくっ」と呻き震えながら立ち上がり、剣を正眼に構える。そして側でヤマミも火炎球の衛星(サテライト)を浮かす。


「タネ坊……! キンタッ!?」

「あんたたちっ! モンスターに堕ちて理性を失ったはずっ!?」


 倒れているジダ公はその二人組を睨み「キサマら……」と呻く。



「刃を向けてくるなんて悲しいね。俺ら仲間だったんじゃないかい?」


 タネ坊は肩を竦ませ、両手を上に向けて「やれやれ」してみせた。

 キンタは据わった目で「年上にその態度はないやろ?」とドスを効かせた声でやや脅す。しかし依然と緊張を解かないナッセとヤマミに観念して、ため息をつく。



「その様子じゃあ、俺たちが黒幕だと知ってしまっているようだね」

「せやな。もうちっと甘い考えで騙されてて欲しいわ~」


 ククク、含み笑いするとクワッと強面に見開く。

 するとドングリ顔型タラコ唇だったのが、徐々に男らしいモミアゲを生やし鼻が垂れる優男に変わる。そしてハゲゴリラだったのが、タレ目がより下に伸びて痩せて髪の毛が逆立つゴリラに変わった。

 そして額のカルマホーンは相変わらず生えている。


 こ、これが……!? タネ坊とキンタの真の姿ッ!



「お前らには初顔だったかな? そう、タネ坊とキンタとは偽名……。

 改めて自己紹介しておこう。俺は真の熱血漢オカマサ。そして我が熱き相棒のドラゴリラだ!」


 真の黒幕と言うだけあって、背筋に怖気が走る。

 オカマサは指を鳴らす。


 ボン!


 倒れていたジダ公の胸が突発的に膨れると「ゴハアッ!」と口から大量の鮮血を噴き出す。全身を痙攣させ、ガクリと呆けた顔が転がる。──絶命。

 その瞬間、痺れるようなショッキングな衝撃が全身を走る。同時に憎悪が湧き上がる。


「お、お前────ッ!!」

「……おいおいジダ公は敵だろ? ちゃあんと始末しておかないといけないんじゃないかい?」


 しれっと言い放ってきた冷たい言葉に、沸騰するほどの怒りが込み上げてくる。

 オカマサは仲間だったはずのジダ公を躊躇(ためら)いもなく殺したのだ。なんの感慨(かんがい)もなく、死闘を演じた仲間に敬意(けいい)(ねぎら)いもなく! 容易(たやす)く!


「くぷぷぷっ! いつも反抗期だったから、いつか始末しようと思ってたさかい。でもな強うて役立つから処分に困ってたやね。

 でもナッセはん感謝するわ。こうして殺す大義名分たったわ~~!」

「ああ、その通り! さて君もだ。あの奥義は大変危険だ。今の内に狩らせてもらおう」


 オカマサは影で覆われた冷徹な顔を見せつつ両手で握るナイフをひけらかして、刃が反射光で煌く。

 こいつらからは熱血も情熱も感じない。ただあるのは卑しい意志と冷たい殺意のみ。そんな言動に嫌悪感を抱き、胸糞悪い気分が胸を満たすばかり。


「弱っている所を狙うなんてッ!! 卑怯者よッ!」


 毅然(きぜん)と非難するヤマミを見て、オカマサは鼻で笑う。


「弱点を突くのは戦争では基本中の基本。まさか正々堂々の試合してるとでも?」

「うっほほほ! 戦争に卑怯も(クソ)もあらへんわ~~!」


 くっ! こ、こんな汚いヤツだったのかぞ…………!!




「……残念だが、こいつらの言い分は正しいぜ! ナッセ!」


 オカマサとドラゴリラは咄嗟に飛び退く。その地面に何か巨大な塊がドスンッと落ちてきた。土砂の飛沫を噴き上げ、周辺に余波を広げた。

 煙幕が漂い、そこから人影がのそっと立ち上がる。二つの目がキラリと輝く。


 ナッセとヤマミは笑顔で「ああっ!」と安堵が胸を満たす。



「だから、こうして横やり入れても文句ァ……ねェだろ?」


 大柄で威厳溢れるアクトがニヤッと皮肉っぽく笑んだ。オカマサとドラゴリラは苦い顔で「うぬッ!」と腰が引き気味、頬を汗が伝う。

あとがき雑談w


クッキー「ぐぬぬぬ! 許せん~!」

アリエル「私には敵わないけど、中々の極悪ねぇ~w」


嘉神(カガミ)ジダ(こう)暗黒破壊者ダーク・デストロイヤー)』

 目上、鼻上から上はカブトのような黒い甲殻に、左右に黒い角が生えている。そして全身に鎧のような黒い甲殻で覆う。

 実はスペリオルクラスのレア創作士(クリエイター)

 オカマサの独善的な熱血でトラウマになって以来、熱血漢が憎しいほど大嫌い。

 黒い雷を纏って戦うのが得意。

 威力値78000(黒雷龍(こくらいりゅう)邪皇爆雷波(じゃおうばくらいは)時120000以上)



 実を言うとジダ公は宿命のライバルとして、ナッセと何度か戦うキャラってポジションでもいいかなと、後で思い返していてちょっぴり後悔してますw



 次話『頼もしいアクトがオカマサとドラゴリラに挑む!?』

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