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88話「インテリスリー誕生の秘話!」

 何故か、敵母艦の上に巨大なモニターが複数具現化されていた。

 その内の一つに映っているのはコマエモンとマー坊の様子。ナッセ達は手を止めて呆然と見上げていた。


「な、なんだぞ!? これ……?」


 ジダ公は「チッ」と不機嫌そうだ。

 ヤマミは心配そうに成り行きを見守る。


 と言うのもコマエモンとマー坊の会話も激戦も全部丸見えだったからだ。




「ほっほっほ……、我々による公開処刑を映しているのですよ。大阪都民に絶望を与えるためにね」


 愉悦そうにケン治は笑う。マイシは「ぐっ!」と憎悪を募らせる。

 見せしめもさる事ながら、マー坊の語った残酷な事実が衝撃的だったからだ。そして人造人間の元凶であるタネ坊とキンタの本性。人を人と思わぬ非道な感性に、さすがのマイシも剣を握っている拳を震わせる。


「あのクズ野郎…………!」

「おっと! 面白そうな事が起きそうですよ?」




「うがあああああああああああああ!!!!!」


 理性を失ったマー坊は血管浮かばせて上目ひん剥きながら、丸太のような胴体からうどんの触手を生やしていく。

 その無数の触手はそこらじゅうの建造物を薙ぎ倒していき、地面からもうどんの触手が次々と生え出して、アスファルトの岩盤や車を巻き上げていく。


 マー坊を中心に半径数キロ範囲を、洪水のように無数の触手が暴れまわって破壊の限りを尽くす。ドドドド!!



 煙幕と共に破片が風に流れてゆく最中、コマエモンは半壊の建物を足場を頼りに飛び回りながら、抜刀術で迫ってきた触手をパラッと細切れ。しかし次から次と襲い来る触手はキリがない。

 それでも抜刀術で細切れにし続けていった。


「クッ! も、もう一度……!」


 足を痛めながらもコマエモンは、マー坊を見据えて前傾姿勢に身構える。

 されど奥義を一度撃った為に、本来なら激しい運動ができぬほど全身に激痛が走っていた。


 だが、マガタ殿のために! もうこれ以上苦しませないためにも!


 その想いでコマエモンは再び鋭い視線を閉じて、波紋立たぬ水面がごとき精神統一に徹する。


雷電流(らいでんりゅう)居合術奥義いあいじゅつおうぎ…………!」


 触手の津波がドッとコマエモンへ殺到。

 その瞬間、コマエモンはカッと見開く。一瞬の刹那(せつな)に全身全霊を懸けて、稲光が破裂!


紫電一閃(しでんいっせん)ッ!!!」


 コマエモン自身が一条の電流のように触手の間を(またた)()に潜り抜け、マー坊へ距離を詰める!

 しかし地面から湧き出たうどんの障壁が阻む。コマエモン焦りに見開き、やむなく刀を抜き放つ。

 城壁のような大きな障壁をザンッと切り裂きつつ、切っ先はマー坊に迫る。


 が、わずか数センチ届かず……!


「ぐっ!」



 途端にビキビキと全身を引き裂くような激痛が走る。

 (こら)えきれず「ぐううッ」と(ひざまず)いて、刀を握る手が地面に沈む。

 常人なら悲鳴を上げて失神するほどの激痛である。しかしコマエモンは持ち前の強い精神力で堪えきり、それでも必死に歯を食いしばってマー坊から視線を外さない。


 しかし容赦なく触手はコマエモンを包囲して、押し潰さんと迫る。ドドド!



 すると、屈折するビームの嵐がどこからか飛んできて触手をことごとく撃ち貫く。それに見開いたコマエモンは遠目でノーヴェンが目視できた。

 なおも無数のメガネがビームを斉射し続けて、絶え間ない触手の嵐を跳ね除けていった。


「お主……!?」

「ユーはミーの大事なチームメイトデース! 見捨てるなどできまセーン!」


 クネクネと体を踊らし、メガネをキラーンと煌めかす。

 相変わらずのノーヴェンの態度にコマエモンは安堵していく。ふざけたナリではあるが、真摯にチームの事を一番考えてくれるリーダーでもある。


 今にして思えば、あの選択は間違ってなかったかもしれん……。




「断る!」


 教室でコマエモンはムスッと顔を背ける。

 そう、ノーヴェンとミコトが仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターでチームに入らないかと誘ってきた時だった。

 最初は娯楽施設で我が刀を振るうなど(もっ)ての(ほか)、と堅い思考で拒絶していた。


「そうですカー……。所詮(しょせん)娯楽と決め付けるのも早計ではないデスか?」

「そうだZE! HEYHEY(ヘイヘイ)! オレは本気(ガチ)決闘(デュエル)がしたいからだZE!」

「ややこしくなるから、シャラップデース……」


 ジト目のノーヴェンにも構わず、ミコトは一枚のカードを高らかにかざし、片方の腕は肘を曲げてビシッとポーズを取る。

 マントのように羽織(はお)っている学ランが風になびいた。バサバサ。


「運命のロードの先に、オレたち三人の魂は(クロス)っているZE!」ドン!


 厨二病くさいセリフとポーズで教室が凍えたのはまた別の話だった。



「……到底付き合えん。他を当たれ」


 コマエモンは仏頂面(ぶっちょうづら)で席を立ち、背中を見せて去っていった。


 群れるつもりはない。一人剣術を極めんと精進する為に他人を頼るなど甘えた事はしない。俗世(ぞくせ)を断つ事で、己の魂を高い次元にまで高めていくのみ。


 友達を作りたいなら、誰かが作ればいい。恋人が欲しいなら、誰かが欲しがればいい。家庭を築きたいなら、誰かが築けばいい。

 俗世(ぞくせ)に必要なものは自分が成さなくとも、他の人が勝手にやってくれる。


 故にいつまでも孤高。そしてこれからも孤高……。



 父上は何故、私をアニマンガー学院に通わせたのか理解に苦しむ。これまで鍛え育ててくれた恩に報いるべきと言う事を聞いていたが……、やはり無意味だったか。


 夜の路地。騒がしい人々や車が行き交う最中、コマエモンは一人静かに歩む。


「おい! そこ、お前だ!」

「こら! 無視(シカト)すんなよ!!」


 振り向けば、俗世(ぞくせ)道楽(どうらく)(おぼ)れた暴漢(ごろつき)が三人ヘラヘラ笑いながら歩んでくる。

 息からはアルコール臭がする。嫌悪感を催す下賎(げせん)な言動。見るに耐えぬ俗物(ぞくぶつ)


「む! すまない。気分を害したなら謝るでござる」


 丁重に頭を下げる。


「なんだよ~、つまんね~な!」

「ござるって? 時代錯誤かよぉ~? ボケがぁ」

「いいから金貸せよぉ!!」


 暴漢(ごろつき)傲岸不遜(ごうがんふそん)な態度でコマエモンの胸ぐらを掴む。

 ……(けだもの)如しの暴力と恐喝(きょうかつ)か。やはりつまらん。付き合いきれぬ!


「ならば決闘(デュエル)だZE!!」ドン!


 なんとミコトがザッと足踏みして、腕のディスクを見せびらかすように立ちはだかる。すると暴漢(ごろつき)も何故か三人揃って腕にディスクを嵌めていて、シュバッと初手の手札を五枚引き抜く。

 旋風が吹き荒れ、三人の暴漢(ごろつき)とミコトは「決闘(デュエル)!」と対峙した。バン!


 素っ頓狂に立ち呆けるコマエモンに、ノーヴェンが歩み寄る。


「ふざけてるように見えるかもしれまセーン! ですが人それぞれ、自分の得意なものに没頭し極めていく矜持(きょうじ)もまたありマース。ミコトは完全に厨二病だから誤解を招きマスが、召喚士(サモナー)としての腕は本物デース!!」



 都市の空を稲光で迸らせ、巨大な龍の影が蠢く。姿を現す巨大な龍は牙を剥いて大きな口を開けた。激しい咆哮で大気と地が震えて烈風が吹き荒ぶ。


「天竜神ヘヴンズ・オブ・カラミティで攻撃DA! ゴッドDE()フォース!!!」


 大きな口から稲妻迸る巨大な光線が放射され、暴漢(ごろつき)三人は自軍のモンスターもろとも「ぐわああああ!!」と呑み込まれた。

 三人のライフ数値がガンガン砕け散って、赤くゼロに表示。

 暴漢(ごろつき)のカードがバサッと舞い上がって路上に散らばった。


「ミーもメガネを身に包むふざけた格好デスが、それ故に効率的な能力として極めんと精進しているのデース!」

「ふざけた格好、自覚していたのか……」

「みんなの反応で察してマース。それでもミーはメガネを生涯ラブしていきたいのデスッ!!」


 信条と心意気を示すように、握っていたメガネをバリンと砕いた。破片が刺さって手はダラダラ血塗れに。


WHOOOOOOOO(ウオオオオオオオオ)~~~~!!」

「ラブなのに握り砕くのか……!?」


 激痛で転がるノーヴェンに、コマエモンは呆れた。


「カッコつけてパフォーマンスするからだZE!」


 ビシッと両手の指差しをノーヴェンに向けて腰を振るミコト。

 緊張を解させるほど間抜けな風景。それでも彼らは己が道を進むために日々鍛錬をしているのだろう。でなければ、都市上空を覆うほどの天竜神は召喚できない。



「……少々、付き合ってみるでござるか」


 コマエモンは解れた笑みを口元に表した。


 こうしてチームを組んで、仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターへ参戦した。

 意外にも真剣に取り組んで各々を高めていく創作士(クリエイター)が多い事にも気付いた。決して遊びでやっているのではないのだ。

 生死をかけて真剣に勝負に興じる。そしてお互いを高め合っているのだ。それは一人では決して成し遂げられない。


 コマエモンは改めて自分がいかに(おご)っていたか思い知らされた。

 孤高で己の道を突き進む。聞こえは格好良いが井の中の蛙大海を知らず、狭き世界で一人精進するなど滑稽(こっけい)の極み。


 更に言えばナッセたちとの対戦で、万全の対策をした上で完敗に喫した。


 彼らもまた自分なりの修行で己を高めた故の賜物(たまもの)。それがその対戦の結果に表れた。やはり上には上がいるものだと痛感させられた。


 きっと父上はそれを教えたかったのだろう……。




「手札から魔法カードを発動だZE!!」バン!


【ハイヒールの回復薬】

 プレイヤーを対象にして発動できる。その対象のプレイヤーは20ライフを得る。


 なんとノーヴェンだけではなく、ミコトまでこの場に馳せ参じたのだ。

 コマエモンに暖かい光が降り注ぎ、身体の激痛が嘘のように消えた。気のせいか勇気まで燃え上がるように湧いてきた。


「む、かたじけない!」

「礼はいらないZE! 同じチームとして当然の事をやっただけDA!」


 親指を立てて片目ウィンクして見せるミコト。

 コマエモンは軽くなった身体で立ち上がり「頼む! 拙者に力を貸していただきたい!」と告げた。ノーヴェンもミコトも快くコクッと頷く。

 理性を失って暴れまわるマー坊を前に、意を決した三人が並ぶ。ザッ!


「さて……、インテリスリー始動デース!」

あとがき雑談w


ミコト「今回のカードはこれだZE!!」ドン!


【天竜神ヘヴンズ・オブ・カラミティ】レベル30

 神属性・竜神族・攻撃力50000000000/守備力50000000000

 このカードを通常召喚する場合、自分フィールド上のモンスター3体をこのカードのソウルとして入れなければならない。

 ①このカードの召喚は無効化されない。

 ②このカードがフィールドから離れる場合、代わりにこのカードのソウルを1枚墓地に送る。

 ③このカードの攻撃力と守備力は自分の手札の数だけ倍になり、レベルに手札の数だけプラスされる。

 ④貫通。

 ⑤互いのターン終了時、フィールド上のレベルが4以下の表側表示モンスターは全て破壊される。

 ⑥手札から3枚を捨てて発動できる。デッキの上から1枚をこのカードのソウルに入れる。

 ⑦このカードのソウルは他の効果によって離れない。

 ⑧自分のライフが0になった場合に発動する。このカードのソウルを全て墓地に送って、自分のライフは1になる。

 ⑨このカードが墓地に送られた場合に発動する。自分のデッキ上から3枚をソウルとして自分フィールドに特殊召喚する。この発動の効果処理時に自分のデッキが2枚以下の場合、自分はこのデュエルに敗北する。

 ⑩仲良くルールとマナーと時間を守ってデュエルしなければならない。破った場合、神の怒りが発動する。違反者は死ぬ。それは絶対に無効化できない。



 効果を盛りに盛りすぎたため、公式カードとして出る前から禁止カードにされた。


 ちなみに竜神カードは全部で九種類しか存在しない。割と雑誌やゲームの特典や記念カードとして大量刷られており、入手は難しくない。イラスト違いがそれぞれ三種類ぐらいある。

 原作で攻撃力守備力が五〇〇億のモンスターとして初登場して、話題になった。


 召喚士サモナーとして召喚する場合、もの凄く力を吸われるため使う人は限定される。

 所有者ミコトですらライブ感と緊急以外に使いたがらない。


ミコト「マナーを守って楽しくデュエルしようZE!」ドン!



 次話『うどん魔人の暴走を止めるにはどうすれば!?』

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