87話「うどんに改造されたマー坊の不遇!」
多くの創作士が力を合わせて磐石の布陣に整えていった学院側の抗戦によって、人造人間側が劣勢に陥り、それを見かねてボス級の大物が出陣してきた。
その名をクラッシュセブン!
ジダ公はナッセ、ケン治はマイシ、カイ斗はコハク、バイオとレンスはエレナとリョーコ、コータロはアクト、マー坊はコマエモンと対決する事になり、ついに決戦の火蓋は切って落とされたぞ!
落ちてくるうどん橋の一欠片が、都市に影を広げていく。しかしズババッと幾重もの剣閃が交錯。細切れとなってパカッと散乱。
ドスンドスンと細切れの欠片が道路に落ちていく最中、コマエモンとマー坊が着地。そして互いに沈黙したまま睨み合い。
「ふむ、古今東西見てきた名刀にも劣らぬ長ネギとは恐れ入る……」
「お主、コマエモン殿と申したな」
コマエモンは居合の構えで動かず「うむ」と頷く。
「……本来なら、かような笑いものとなる得物で戦いたくなかった」
「ふむ?」
「だが、初見で笑わなかったのはお主が初めてよ」フッ!
マー坊は不敵に笑んだ。それが初めてのようにコマエモンは見受けた。
「だが、私は一度死んだ身……。せっかく受けた恩を無下にしたくなく思い、与えられたキャラをこれまで演じてきた」
「ふむ」
マー坊は地を蹴った。コマエモンは抜刀し、稲光走る剣閃を広範囲に放つ。しかしマー坊は素早くジャンプ。ズカッと後方の建物が切り散らされた。
振り下ろされる長ネギに対し、コマエモンは刀をかざして受け止める。ガギィン!
ズン、と足元の道路が陥没。破片が舞う。
すかさず二人は素早い剣閃を繰り出し、火花散らす剣戟の応酬に均衡した。
ギッ、ギギン、ガギギィン、ギンギンッ!
「一度死んだ身とは?」
「言葉通りの意味だ。私も自衛隊として外海の戦争で派遣された。だが、三日三晩の戦争に疲弊していて迂闊にも地雷を踏み、顔以外はズダズダにされて死の一歩手前だった」
「むう……、凄惨な……」
ギィン!! 二つの得物が激しく交差して火花を散らす。
「当然、私は天命として死を受け入れようとした」
「ふむ」
まるで刀がいくつもの分身するかのように残像を残して、凄まじい剣戟が繰り広げられる。
一旦、後ろへ下がって受けつつ返しの剣閃を見舞ったり、逆に前へ進んで懐から抜刀を放ったり、巧みな駆け引きを展開していった。
ギギギンッ、ギンッ、キキン、ガッ、キギィン、ギギッ!
断続的に周囲の建物が次々と斬り散らされて瓦解。ガラガラと破片が落ち、煙幕を立てていく。
「だが、馬淵ドラゴリラ殿によって人造人間へ改造される事で、私は命を取り留めた」
「大珍キンタ殿……でござるな」
「改名したらしいが、あのような下卑た欲望を持っていては姿形が成り代わるのも致し方ない」
「ふむ……」
「ドラゴリラ殿は、余命幾ばくもない私を助けたかったから改造したのではなかった……」
コポコポ気泡が上昇する、液体で満たされたカプセル。そこでマー坊は目を覚ました。
顔こそそのままだが、首から下は奇妙な体型になっていた。丸太のような胴体に大きなうどんの手足。感覚も妙だった。神経は繋がっていて、まるで生まれた時からこの姿であったかのように触覚などが通っていた。
ようやくカプセルから出された時、鏡を見て愕然とした。
「なぜ、この私をこのような姿にした!?」
マー坊は声を荒らげた。
するとドラゴリラは「くぷぷっ」と口に手を当てて卑しく笑い出す。
「おもろい姿やん? これ見てみんな明るく笑えるやろ?」
「そのような理由でか!?」
「おっと! せっかく助かった命、誰のおかげやと思ってるんや~~?」
おちょくるようにドラゴリラはアヒル口で笑みながら指差す指でマー坊の額をぐりぐりなぞる。
自衛隊で彼とは何度か会った事はあったが、かような態度は見せていなかった。博水オカマサと一緒に真摯な態度で依頼をこなす優良な隊員の印象だった。
だが、目の前で「あっはっはっは!!」と笑うドラゴリラはあたかも別人のように見えた。
「おう! 出井マガタさん。お目覚めかね。気分はどうだい?」
博水オカマサがいつもの通り爽やかな好青年風に歩いてきた。
「こ、こんな姿にしたドラゴリラめに何か言ってくだされ!」
するとマー坊の首を強く掴み上げ、殺意が漲るほどオカマサは恐ろしい形相で睨みつけてきた。
「マガタさん、あんたは自分の立場を分かっていないようだ……。せっかく助けてくれた恩を報いるべき、ご主人様に従った方がいいんじゃないのかな?」
「な……??」
マー坊は、オカマサの変貌にも驚いた。
投げつけるように離され、マー坊は床に尻餅をついた。
「そういう事や! その際、呼び捨ては許したるわ。ちゅーことでまずは改名な。あんさんは出井マー坊。これもおもろい名前やね」プププ!
「おお! これはセンスのいい名前だ! さすがは俺の相棒だ!」
ノリノリと二人は「ワハハ」と笑い合う。
これが二人の本性か、と幻滅させられた。
「礼儀正しく、真摯で節度のある言動をしていた彼らは虚構に過ぎん…………」
「なんと……!?」
ギギギギィ……、マー坊はコマエモンと得物を重ねて鍔迫り合い。
「こうして私は彼らに従うままに、己を変えた。みなに笑われるための存在としてな! 屈辱だった。だがしかし、彼らに命を救われた事は紛れもない事実! おれは……出井マー坊だどん!」
「忠義を尽くすお主はまごう事なき本物の侍! 拙者も全力で相手いたそう…………!」
ギィンッ!
マー坊の剣戟から、複雑な心情が伝わってくるのを感じる。
理不尽に改造され、これまでの自分を否定されて笑いものにされた悲壮な境遇……。
ギッ、ギギッ、ギィィン!
拙者もまた、やりきれぬ怒りが熱く煮え滾っている……。
この怒りを向けるのはマー坊殿ではなく、博水オカマサ殿と馬淵ドラゴリラ!
されど当人は悪党として地獄へ堕ちた。
できるのは全力を賭して、マー坊……いやマガタ殿を安らかな死へ誘ってやる事のみ!!
後ろへ間合いを取るために飛躍し、コマエモンは鞘に刀を収めた。
「コマエモン殿……、かたじけないどん!」
「では……、参る!! 雷電流居合術奥義…………!」
ググッと前屈みに前傾姿勢。コマエモンは鋭い視線を閉じる。波紋立たぬ水面のごとく静寂────。
「おれも奥義を久々に繰り出すどん!! 夢幻・水流乱舞奏!!!」
ゆらりと揺らめくマー坊は水流がごとく流れるような高速の動きで幾重もの分身を生み出し、数十人もの姿を映し出す。そのままコマエモンへと殺到する。どれが本物か見切れぬ限り、命を刈り取る刃から逃れえぬ!
長ネギが頭をかち割らんと迫る刹那!
カッ、コマエモンは見開く!
全身全霊! 全てをこの瞬間に! この我が愛刀に込めて!
「紫電一閃!!!!」
稲光が破裂! すると遥か向こうへコマエモンがザッと瞬間移動! 足元に稲光の余韻がパリッと迸る。ゆっくり閉じるように刀を鞘に納める。チン!
時が静止したかのように、マー坊たちは硬直。
やがて分身が掻き消え、その一体のみがブシャーッと四方八方に鮮血を撒き散らした。
「お、おれの奥義破れたり……! お見事だ……どん!」
マー坊は快く笑む。
未練残さぬ我が全身全霊尽くした勝負! もはや一片の悔い無し……!
ドサッと仰向けで道路に沈んだ。
コマエモンは歩み寄り、マー坊の上半身を抱え上げた。ぐったりしている。命の灯火が消えゆくのが感覚で伝わって来る。
「……マガタ殿、御免!」
「フフッ! 主に斬られて果てるなら本望ッ……。後の事は…………」ドクン!
妙な胎動がマー坊の内部から溢れ出していく。ドクン、ドクン!
得体の知れない何かが蠢き、肉体を黒く塗りつぶされていく感覚にマー坊は見開く。冷や汗が顔にびっしょり濡れる。
言う事を聞かない! じわじわ凶暴な何かが肉体の主導権を奪おうとしてくる!
「に、逃げろッ!! コマエモン殿ッ!」
「なに!?」
「あああああああああああああああああああッッ!!!」
マー坊は絶叫し、全身がガタガタ痙攣を始めて激しくなっていく。
コマエモンは「くっ!」と離れ、抜刀術の構えを取り────!
しかし瞬時にうどんの触手がコマエモンの右胸、左脇、右太腿を突く。ドドド!
勢いよく吹っ飛ばされ、後方のビルへ突っ込まされた。ズガァァン!
白目になっているマー坊の胴体からウネウネ複数のうどんが触手のように蠢く。
「ぐふっ……! こ、これは……一体!?」
ビルの内部で瓦礫の上でコマエモンは上半身を起こし、口元から血が垂れる。
手術台で寝かされているマー坊の前で、コータロは額の汗を腕で拭い「ふう、最終改造は終わったやがぜ……」と一息つく。しかしオカマサは訝しげだった。
「どうしたんや?」
「……きっとコイツは裏切るかもしれない。このような辱めにずっと屈するとは思えない」
「ああ、せやなぁ……」
オカマサは自分で熱血漢と嘯いているが、実際はクレバーで疑り深い性格だ。
「万が一の時に発動する仕掛けをしておいた方がいいかな」
「では自爆装置を?」
しかしドラゴリラはうろたえていた。
「ち、ちょっとそれは酷いんや! せっかくおもろい姿に変えたのに自爆とかあんまりやで!」
「そうだな。確かに面白いキャラを台無しにするのはもったいない。……ならば、これだ」
オカマサは怪しげな薬を機器台のトレイに転がす。
「なんや?」
「元々は疲弊した兵士の士気を無理矢理昂らせる自家製の劇薬。これはその千倍。服用すれば自制心を失って凶暴になる。敵兵に飲ませて敵陣の自滅を誘うのが改造目的。以上がプレゼンでした」
「おお! さっすがワイの相棒やね!」ワハハハハ!
「燃えるだろ? 薬に狂った敵兵が命尽きるまで暴れ続ける様は……! 名付けてバーニングドラッグ!!」
オカマサは悪辣な笑みと、目と口元がニヤリと歪む。ヒヒヒ……!
その顔に冷徹と残虐さのみ表れていて、口上の友情や熱血漢など上辺だと分かる雰囲気だった。
こうして非人道的な方法で、万が一の時に発動するようマー坊に施していたのだ……!
あとがき雑談w
クッキー「キンタことドラゴリラってひどい人ー!」ぷんぷん!
アリエル「私ほどじゃあないけど残虐ねぇ~~w」
クッキー「え? アリエル以上でしょ?w」
アリエル「おばかぁ~w アンタ忘れちゃったのぉ~? 人間だった頃、私から散々酷い目にあったでしょお~w」
クッキー「許せない部分はあるけど、それ以上に多くの命を救ってるからね……」(`・ω・´)キリッ!
アリエル「急にシリアスにならないでよぉ~~酔いが覚めるわぁ~」(汗)
クッキー「ちなコマエモンの威力値は31000でーすw」
『出井マー坊(侍)』
海外の戦争で死にかけた所を、ドラゴリラによって改造された。
ベレー帽を頭上に、冷静沈着な顔。首にはスカーフ。だが背丈は小学生並み。そして体も奇妙で丸太のような胴体に、うどんのような軟体の手足で指が存在しない。
長ネギを象った刀で戦う。本名は出井マガタ。
威力値33000(改造前5400)
次話『マー坊が恐るべき姿に変貌!? うどん魔人!』