84話「長引く戦争! いれかえ作戦!」
ビルの上でアクトは刀を肩に乗せ、遠くの巨大な母艦を眺めていた。母艦を中心に無数の敵影が渦を巻いて蠢いていた。
「ケッ! あん時と同じように繰り返させてたまるかァ……!」
グリフォンのゴン蔵が「ギャオー!!」と急降下してくるのを睨み、アクトは床を蹴った。憤怒の表情で刀を振り下ろし、高い位置からドゴンと地面にまで叩き落とした。アスファルト道路へ埋められ、破片と粉塵を巻き上げゴン蔵は「ギハアッ」と血を吐く。
更にそのゴン蔵の背中にズドンと降り立つアクト。蜘蛛の巣のように道路にヒビが広がって破片がめくれ上がる。
周囲のハス太たちはびっくりしてアクトへ注視。ゾクッと恐怖を募らす。
「オレァ……今沸点が低いようだからなァ……! 覚悟しろよ?」
夜叉を連想させるアクトの形相。全身からただならぬオーラがこもれでる。
「があああッ!! 紅蓮噴ッ!!!」
ズゴン! 憤怒こもる一撃をアスファルト道路に叩き込み、その噴火のような衝撃が周囲に広がりハス太たち数十人は「ウワ~」と宙に舞った。
更にアクトは疾走して、その軌道上にいたハス太たちを刀一本でドカンドカン宙に吹き飛ばしていく。
「な、なんやぁ!?」
「コイツ強すぎや~~!!」
「しかも速ぇえやん!!」
正に一騎当千! 圧倒的な進撃で数百人ものハス太たちは屠られていった……。
誰もアクトの進撃は止まらない! 勢いは留まらない! 重戦車が如き夜叉!
その想像以上の突貫力に人造人間たちはなすすべがなかったぞ!!
──その頃、地下の裏施設。
ガシャン、床に携帯が転がる。フーフー、息を切らす藻乃柿は形相に歪んでいた。
ここは藻乃柿だけが寝泊まりしているプライベートの個室。
周囲には書物が散らばったり山になったり、そしてパソコンも複数並ぶ。空っぽのビール缶とカップ麺も乱雑。ゴミ袋もいくつか。
「ヤミザキ……、あの野郎ッ! なんのつもりだッ!?」
パソコンのモニターは外の様子を映し出していた。
人造人間が我が物のように飛び交い、闊歩し、破壊されていく建造物。それに対して創作士が必死に抗戦。
「まさか、この施設が狙いなのか?? 結果を出せぬ私に愛想を尽かして、このような強引な手段を取ったか!?」
それにしても急すぎる……。
こんなあからさまな侵略戦争を起こしておいて、ヤミザキは日本政府にどう言い訳する気だ? 四首領と言えど誤魔化しは出来んくらい分かってるはずだ!
それとも、もうこんな手段を使ってもいいぐらい支配力が既に広まっているのか?
それにしても何故『星獣』は我々の召喚を拒む?
やや強引な召喚形式の魔法陣を敷いてさえ、拒めるほど意思が明確なのか?
地球ですら、この私を否定する気か!! くそォ!!
「鍵さえあればッ…………!!」
藻乃柿は血眼で歯軋りし、届かぬ野心を焦がして『運命の鍵』を渇望する。
飛行しているゴン蔵たちは口から、地上のハス太たちも掌から光弾を連射。学院へと弾幕が迫る。しかし寸前で鱗で連ねたような青白い半透明の障壁が学院を包んで、弾幕は阻まれた。
ドガガガガァァン!!!
赤々と爆炎が連鎖して広がる。しかし煙幕が晴れれば障壁は依然無事だ。
「こっちはこの通り心配は無用じゃ!」
ヨネ校長の放送に、安堵する。だがヤマミは浮かない顔をしていた。それに気付き「どうしたのかぞ?」と振る。
ヤマミは振り向かず、横へ掌を差し出す。浮いていた火炎球の『衛星』がそれに従い、複数の火炎弾にばらけて射出。その弾幕で滑空してきたハス太たちを次々爆炎に包んでいった。
「あっちの敵艦にマイシが攻撃してたでしょ?」
「ああ、それがなにか?」
「なぜ、ヨネ校長は止めたの? バリアで届かないのに敢えて『落とすと都市が壊滅する』とか言わないでしょ?」
オレは目の前のハス太を斬り裂きつつ「確かに……」と返す。
「バリアを張れるにも限度があるはずよ。攻撃を受ければ、その削られた分を修復する為にエネルギーを消耗する。つまりマイシのオーラと同じ理屈!」
「あ! って事は、学院も……?」
ヤマミはこくりと頷く。
今でも流れ弾とかが学院を目指す事があり、その度に障壁の前で爆発する。ドガン!
それだけでも微量ながらもエネルギー残量は削られる。それが尽きてしまえば、無防備にさらされる。
「その前に、どうやって大規模侵攻を止めるかだよな……」
「そうね」
ドドドッと煙を撒いて突進してくる巨躯の猪ゴン蔵を前に、剣を正眼に構え「流星進撃──」と呟く。
「三連星!!!」
一瞬連撃三発を叩き込み、ゴン蔵は鮮血を散らしながら宙へ浮く。すかさずヤマミが「バースト・ホノバーン」と掌から火炎球を撃ち出す。巨躯のゴン蔵は灼熱の爆発に呑まれ「うぎゃあああ」と塵と化す。
「ナッセとヤマミ! 交代の時間じゃ! 至急学院へ帰艦されたし!」
耳に直接響き、思わず「うわっ」と竦む。
ヤマミも「いきましょう」と促してくる。まだ余力は残しているけど、ヤマミがそう言うならと頷く。
撤退しながらハス太たちを斬り伏せていって、学院の障壁の前へくると「そのまま入ってくれ」と聞こえた。ぶつかろうと足を踏み出すと、波紋が広がってすんなり障壁の内へ入れた。
味方は入れる仕様かぞ……。
「おう! お先だし」
教室へ戻るとマイシがペットボトルを手にあぐらをかいていた。その側に弁当が置かれている。
それ以上に驚かされたのが教室の内部が司令室のようなものになっていた。等間隔で並んでいた机と椅子が綺麗さっぱりなくなっていて、壁に沿ってモニターや操作機器などがあってスタッフがポチポチ作業をしていた。
「緊急用の仮司令室じゃ」
「え? これで……仮?」
じゃあ本当の司令室って、どこにあるのかぞ? つーか裏施設といい学院には本当に謎が多いな。
「お疲れじゃのう。飲食は用意しておるから、再出撃まで万全に整えるのだ」
「お、オレはまだ戦えます。体力に自信が……」
「君たちは戦争未経験だったのう。いいかな? 戦争は思ってるより長引く事もある……。一日で終われるなら、苦労はせんよ」
「だったら速く多くの敵を……ッ!」
逸るオレをヤマミが肩を抑えてくる。
「それに戦況を見誤れば取り返しがつかぬ。先を見据えて余裕を持つ事も大事。自身の力量を過信すると、僅かなミス一つでも命を落としかねぬぞ。それを重々承知してくだされ」
迫真の説教に息を飲んでしまう。
ヨネ校長も戦争を経験しているんだろうか?
そういえばアクトも戦争経験者だったっけ……。
「ナッセ! 一緒に休みましょ!」「あ、ああ……」
柔らかく笑むヤマミに手を引っ張られて、思わずドキッとする。
いつもはリョーコがやりそうなのに、こんなギャップある誘いは不意打ちすぎるぞ……。
一緒に行くと、急拵えのカウンターでスミレがいた。
「あ、いつも熱々なお二人さん~~! はいこれ~~」
スミレがにっこり笑顔でペットボトルを二つ手渡してくる。そして温められた弁当もカウンターに乗せてくる。手際が良すぎて驚いてしまう。
ってか、そう言われると恥ずかしいぞ……。ぽわぽわ熱くなってくるよ。
それらを受け取って教室へ戻るとコハク、エレナ、リョーコも交代で戻ってきていた。
「ジャマミ~~!! もう勘弁ならぬわ~~!!」
こちらを見るなりエレナが「うがー」と飛びかかり、ヤマミはチョップで応戦。しかしエレナは「二度も喰らうか~」と白羽取り。またしても組み合い。ぎぎぎ……、二人は競り合う。
苦笑いを誘ってくる微笑ましい喧嘩だぞ。
なんだかんだ仲がいいよなー。
交代で出撃したモリッカは喜々と、周囲から襲い来るハス太たちを拳や蹴りでドガガガッとぶっ飛ばし続けていた。
「あははー!! 楽しい! 楽しい!! 楽しいですよー!!」
満面の笑顔でハス太たちをボコボコに殴り飛ばして鮮血が舞う。その拳は血に塗れていた。
ハス太たちも「ひいっ! クレイジーやん!」「頭おかしいわ!」とビビる。
「グワオオオッ!!」
腕六本のアスラモードゴン蔵が、ちっぽけなモリッカを潰す勢いで飛びかかる。
しかし狂気に笑んだモリッカに、ゴン蔵もビクッと身が竦む。
ゴン蔵のみぞおちを凹ます勢いで蹴り上げ、左右からの連続フックで顔を滅多打ち、更に飛び上がって両手で組んだ拳で頭上を叩き伏せて道路にめり込ませた。
モリッカは「はあっ!!」と掌から光弾を撃ち、ガウンッと激しい爆発でゴン蔵を粉微塵にする。
「ひいいい!! な、なんやねーん!!」
「マジいかれとるわー!!」
恐れをなして逃げ出そうとするハス太たちを、モリッカは両手を交互に突き出しながら光弾を連射して爆発の連鎖を重ねて虐殺しまくる。
ズドドドドドドッ!! 建物も巻き添えに爆発の連鎖が規模を広げて膨れ上がっていった。
「あーっはははははははは!!!」
それを見ていたノーヴェンは青ざめる。
「敵じゃなくてよかったデス……。ともあれミーも始動デース」
複数のメガネを浮かせて、ビビビビッと変幻自在に屈折するビームの嵐を斉射。
グネグネ建物など障害を避けるように屈折して、陣形で進軍していたハス太たちに降り注ぐ。
「来いや~!! このハス盾様が、この自慢の大盾で弾いてやる~~!!」
ビームの嵐があちこち襲って来るのを見越して、ハス盾は他のハス太たちを庇うように大きな鋼鉄の盾をかざすと、球状の半透明の障壁が形成された。しかしビームは一点集中と収束してバゴッと、大盾ごとハス盾を撃ち貫いた。
何故か7500とダメージ数値が跳ねて表示された。
「ま……まさか集中光線で、逆に粉砕しに来るとは……! ぐはっ!」
何故かボカーンと爆破四散するハス盾。
他のハス太たちは「な、なんでやねん? なぜ唐突にスパ○ボ仕様や~?」と慌てふためき、新たに放たれた光線の嵐によってキュドドドドドッと殲滅される。
「ユーの動きはお見通しデース! それではシーユーアゲイン!」
キメ顔でノーヴェンは立てた人差し指と薬指をビシッと振る。
それを見た他の創作士は「ス、スゲー!!」とおののく。
あとがき雑談w
テル「ぶひっw ぶひひひんw」
誰もいない事をキョロキョロ確認すると、土下座する感じで丸くなる。
すると背中に縦スジがベリベリと走って中身がグググッと抜け出てくる。ピョコンと幼い女子の上半身が姿を現す。
なんとサーバルキャットみたいな大きなケモ耳がピンと立っている栗色のミディアムボブで小学生のような女の子だ。
ピクピクと片方のケモ耳が跳ねる。
テル「にゃはにゃにゃにー! にゃにゃにゃはははw」
翻訳(小学生じゃないのー! ちゃんと高校生だぞw)
テル「にゃにゃにゃあにゃにゃ、にゃにゃはにゃは!」
翻訳(バレるとダメらしいので、擬態してたのだよ!)
テル「にゃにゃんにゃにゃにんにゃはw にきゅーにゃにゃにゃはにゃっはにゃー」
翻訳(本当は異世界人だけど内緒だぞw チキューから色々教えてもらって来たのー)
テル「にゃにゃにゃにゃははーw」ペコリ!
翻訳(って事でよろしくだぞーw)
擬態の体に引っ込んでいって、スクッと起き上がる。
テル「ぶひひんw」
ナツミ「そこにいたの? 行こ……」(知ってたけど知らないフリ)
テル「ぶひっw」
タイトルで「いれかえ」と不自然なひらがなで表記しているのは、実はドラ○エで言う馬車システムをオマージュしましたw
次話『戦闘力判明??』