81話「大規模侵略!! 初防衛戦!」
青白く月明かりが白いカーテン越しから淡くこもれでる。
静寂する深夜、ベッドでヤマミはぐっすり寝ていて顔の近くに手を添えている。その手に、スッと幽霊のように白い手が覆いかぶさる。
なんと妖しげな女がヤマミの手に自分の手を重ねていた。首に巻いた黒マフラーの両端が翼のようにたゆたう。漆黒のフードで顔を半分隠し、全身を覆っている。
《もうそんな時期だね。ヤマミ》
ヤマミの近くで丸くなっていたウニャンはひょっこり起き上がる。黒マフラーの女はフッと自嘲。
《やっぱり姿形を偽っても、アクトやあなたの目は誤魔化せないものね……》
《ふふふ。まぁね》
重ねていた手同士の間に漆黒の稲光がジジッと流れる。ヤマミの方へ吸い込まれると、黒マフラーの女は手を離す。そしてフードを剥ぎ取って顔を見せた。
なんとヤマミと瓜二つの顔立ち。
だが歳を重ねた特有の大人びた顔立ちを醸し出す。しかし表情は硬め。
《今の私はほぼ精神生命体。一時的になら外見を変えれるけど、性格や癖までは変えられないわね》
《だね》
《私もアクトと同じく前世の生き残り組。されど私たちはナッセと違う方法で幾つもの前世を飛び越えて継承し続けてきた。今世のこの子が最後のヤマミとしての後継者と願いたいわ》
《それについても、ワタシも尽力するよ》
黒マフラー女はコクリと頷き、周囲に黒い花吹雪を渦巻かせて自ら姿を掻き消した。余韻として黒い花弁が一枚ゆらゆら舞い降りながら薄っすら消えていく。
そして、明けた翌朝。黒くどんよりした空。重々しい雰囲気の最中、ヤマミと緊張したまま学院へと足を歩ませていた。
今日こそ、あの漆黒の男が予告した大規模侵略の日だ。
なぜアニマンガー学院を標的にするのか、未だに分からない。夕夏家にとっても都合が悪いのだろうか。
「リラックスして」
「あ、うん……」
ヤマミの声に振り向くと、彼女も緊張しているのが窺える。
「そうしたいけど、あのマイシも苦戦した人造人間が攻めてくるらしいし」
「昨日、ヨネ校長が緊急事態宣言してくれたから事前の準備は大丈夫」
そう漆黒の男が予告した日、急いで学院の人に知らせた。半信半疑の生徒は多かったが、コハクたち馴染みのメンバーは信じてくれた。そしてヨネ校長にも伝えると、すぐさま放送で緊急事態宣言を発した。
更に梅田創作士センターにも連絡して、応援をよこしてもらった。
そして学院周辺の住民には緊急避難をしてもらい、数キロ範囲は無人地帯となった。
「さすがヨネ校長だなぞ……。鶴の一声で全てが済んでしまった」
ヤマミは頷く。
「後は……、私たちも戦って生き残る事…………」
「うん!」
横に並んで歩きながらヤマミと綻んだ顔で見合わせた。
人気のない住宅街。その中で建つアニマンガー学院も静かな雰囲気だ。
教室では、いつものより人は少ない。
「おはよ! 大変になってきたねー」
リョーコが元気な顔で歩み寄る。こちらも「おはよう。そうだね……」と返す。
するとちっちゃいエレナが腕に組み付いてきた。
「こわぁ~い! 一緒にいて~~!!」
上目遣いで頬をピンクに染めて、体をくねくね揺らす。そして柔らかい感触が腕に伝ってくる。思わずドキッとしてしまう。
ズビシ! すかさずヤマミのチョップがエレナの額を打つ。
「いったぁ~~!! ジャマミすんな~~!」
「邪魔になるからくっつかないで」
ぎぎぎ、とエレナとヤマミが組み合って競り合う。オレに抱きつきたいエレナとそれを阻もうとするヤマミの必死な力比べ。
なんか気が抜けるなぁ……。
「へっへっへー!! ワクワクしてきますっ!」
モリッカは嬉しそうにはしゃいでいた。るんるん腕を振って妙なダンスしているぞ。
これからヤバいのが来るっていうのに、その戦闘狂が羨ましいなぞ。こちとら緊張してて、大丈夫かなと戦々恐々しているってのに……!
「これで防衛戦に参加するメンバーが集まりましたね」キリッ!
ナッセ、ヤマミ、リョーコ、エレナ、スミレ、コハク、マイシ、モリッカ、フクダリウス、ノーヴェン、コマエモン、ミコト、そして何人かの生徒。何故かマミエがリョーコの後ろに隠れていた。
この教室に集まったのは、人造人間による大規模侵略に立ち向かう意志を持った猛者だけだ。
「アクト…………」
「彼もいてくれると助かるわね」
「ああ」
どこにいるか分からないし連絡しても反応ないけど、来てくれるといいなぁ……。
「皆の者! 勇気を奮い立たせて、参戦してくれた者をワシは称賛したい!
だが今回の防衛戦は初めてであり、厳しいものとなろう……」
ヨネ校長が真剣な顔で演説。コハクもモリッカも、そしてマイシまでもが真剣な面構えで聞き入っていた。
こうやってみんなで戦うってのも初めてだなぁ。
横にいてくれるヤマミで少し安心できるな。
「学校とは生徒たちの将来を手助けする施設! 君の目指す夢は何かな!?」
……夢! オレの目指す夢!!
脳裏に偉大な師匠が映る。数々の異世界を渡り歩いて、見聞を広めて知識を培っていく。
未だ見ぬ異世界。
今まで見た事のない未知の領域。冒険には危険も多ければ、希望もまた多い。
魔女クッキーがそうしたように、オレもそうしたい!
ヤマミも一緒に行きたいと言ってくれた。だが夕夏家の呪縛が縛り付けてくる。
だからオレはヤマミを自由に解き放ってやりたい……!
「四首領を倒して、オレはヤマミと一緒に異世界へ行きたい!!」
希望輝く夢を見据えながら、拳に握って、想いに想った目標を口走った。
それにヤマミは見開き頬を赤くして振り向いた。
程なくして安堵の笑みで「ありがと」とボソッ。
「斧女子を世界に広めるだァー!!」
リョーコが拳を突き上げてノリノリだ。
それにオレも「ぜってーなれると思う!」と言い、リョーコも笑顔で「見ててね!」と返してくれた。
やっぱ明るくて開放的だなぁ。そこが彼女の魅力かー。
マイシは世界一の剣士になりたい。モリッカは世界中の悪をみなご……退治したい。コハクは創作士先生となって多くの生徒を正しい道に導きたい。
各々が胸に抱いている夢を口々にしていく。
「だから決して無理をせず、各々が力を合わせて生き残る事を優先してくれ!」
死んで異世界転生するかもしれない。堕ちてモンスター化するかもしれない。
いずれにせよ、馴染みの学友とバラバラにはなりたくないなぞ。
せっかくいい雰囲気に繋がり始めたんだから!
負けるものか、と瞳に輝きが宿る。
「さぁ!! またみんなで楽しく勉学したり遊んだりできるよう、全力で守りきるぞォォォォォ!!」
「おおおおおおおおおおおお!!!」
誰もが拳を振るって、燃え上がる活気を吐き出すように叫び、士気高揚と盛り上がっていく!
それから一時間くらい、スミレちゃん達支援組などが食料やペットボトルを教室内に積み込み、これからの防衛戦に臨むべき心の準備をすませる。
オレはヤマミと一緒にリョーコと一緒に漫画やゲームの話題をして、なんとか緊張を解していた。
なんのたわいもない談笑こそ心の安定剤にもなるからだ。
ウニャンは机の上で丸くなって様子を見ていた。
《創作士センターからの応援組は、外でそれぞれ得意な位置で迎え撃つ構えだね。アクトもあの人もどっかで潜んでいる》
ゴゥゥゥ…………ン!!
低く唸るように機械音がすると共に、重々しい空気が全員にのしかかった。
オレもヤマミもリョーコもマイシも誰もが汗をかいて、強張っている。稲光迸る黒い曇りの空を大きな円盤型母艦が覆っていくかのように見えた。
まるで映画のようだが、その撮影などでもなければ、そういう世界でもない。
ガチの戦争だと緊張が張り詰める。
事前にマイシが人造人間と戦ってくれたおかげで、予備知識がある分だけ心に余裕ができている。
「来るなら来いぞ……!!」ドキドキ……!
一方、要塞内部で大型モニターに大阪アニマンガー学院を含む都市の景色が映っている。
コータロは狂気に笑む。
「さぁ……、大規模侵略の始まりだ……!!」
背後に控える人造人間たちもそれぞれ物々しい雰囲気を醸し出し、学院を見据えていた。
ジダ公も先ほどの銀髪の少年を思い返して、目を細める。
母艦下部の広場で、ハス太たちがワイワイガヤガヤと騒いでいた。
トランプしてたり、かけっこしたり、おならブーしたり、大笑いしたりと奔放に振る舞っていた。すると突然、床が扉のように開いていく。そこは大阪へ真っ逆さま。足場を失ったハス太たちは顔面真っ青で、それぞれ「うぎゃ────」と涙目で落ちていった。
「なんちゃって」
ハス太はニカッと笑い、尻からオナラをバブ────と噴出して空を滑空。
「なんちゃって」バブ──!
「なんちゃって」バブ──!
「なんちゃって」バブ──!
「なんちゃって」バブ──!
数百ものハス太たちが同じように滑空していく。
更に量産型ゴン蔵たちもグリフォンモードで大きな翼をバサッと羽ばたいて飛行。
一斉に大軍が空から学院へ押し寄せていく!
マイシは「かあっ!」と灼熱滾る竜のオーラを全身から噴き上げ、周囲に煙幕がドンッと吹き荒れる。誰もが「うわ~」と煽られておののく。
周囲の反応に構わずマイシは先手必勝と口から光弾を発砲。ボッ!
ドオオォォンッ!!!!
大勢のハス太たちは爆裂に呑まれて木っ端微塵に散る。されど後続の勢いは衰えない!
二頭のグリフォンゴン蔵が学校へ突撃しようとする。その巨躯と鋭い爪で戦慄さえ感じさせる。
「おおおッ!!!」「うりゃ──ッ!!」
窓からオレはエレナと共に飛び出す。光の剣と金属のかかとが振り下ろされ、見開くゴン蔵たち。
「スターライト・フォール!!」
「エレナちゃんヒールキック!!!」
ズガゴォ!!
二体のゴン蔵の脳天へ強烈な一撃! しかし間を割ってもう一体のゴン蔵が六つの翼を備えた超巨大な蛇のようなケツァルコアトルモードで「シャア──ッ!」と襲い来る!
「バースト・ホノバーン!!」
ヤマミの放つ巨大な火炎球が高速でナッセとエレナの間を通り抜けて、三体目のゴン蔵を苛烈な爆炎に散らす。ドゴァァアッ!!
頭を失い、火ダルマのまま墜落していく大蛇……。ドシャッ!
「行くぞォォォッ!!!」
戦意充実で燃え上がって、生徒たちはナッセに続くように人造人間軍団へ果敢と突撃していった!
あとがき雑談w
しとしと雨が降る最中、二人は傘をさしていた。
ナッセ「梅雨だなぁ……」
ヤマミ「そうね」
ナッセ「あ、リョーコだ!」
ヤマミはザワリと心に影を落とす。
他の女の名前、特に親しい女友達であっても気になるのは気になる。
リョーコはナッセに恋慕の情はない事も知っていたが、モヤッとする。
が、それは吹き飛んだw
リョーコ「でねでね~!」(金髪おかっぱ)
エリ「そりゃ当たり前じゃんw」(緑パンチパーマ巨乳)
トシエ「うしうし! そんなカンジ!」(黒髪ロング巨乳)
ナツミ「……そう」(ジト目褐色金髪クール)
テル「ブヒブヒ、ごんすも行くでごわす!」(橙のショートのデブ)
なんとワイワイガヤガヤ五人組で盛り上がってる女子会が横切っていたからだw
ナッセ「おおお! いつの間に友達が!?」
ヤマミ「邪魔しちゃ悪いわ……。行きましょ」(内心ガッツポーズw)
次話『チート能力者登場!? それ強すぎィ!!』