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80話「強襲! 漆黒の惨劇ジダ公!!」

 どんより雲で覆われた空。いつもの通学でナッセとヤマミは高架橋伝いに道を歩いていた。ヤマミの肩にはウニャンがスヤスヤ寝付いている。


「雨降るかなぞ……」

「天気予報じゃ今日は大丈夫」


 ヤマミはナッセの顔を見ていた。普段通りのちょい堅めな顔だ。

 今朝の事を思い返す。



 ヤマミは着替えながら、マンションの自分の部屋でウニャンと話していた。

 綺麗な肌が窺える下着姿。胸が控えめのスラッとしたスタイル。それを覆うように制服っぽい服を着ていく。腰を回す際にスカートがなびく。


《ナッセ君の“~ぞ”って語尾は、人見知りしているが故の癖。そして距離を置いている口癖だね》

「そういえば……」


 時々、そういう語尾を聞いてたけど気にしていなかった。


 だけど、昨日のナッセは本当の笑顔を見せてくれた。

 その時だけ彼は語尾をつけなかった。つまりそれが本来の彼……?


《君が一緒にいれば、きっと本来の明るさを取り戻せると思う。だから……ナッセ君を頼む!》


 彼の柔らかい笑顔が脳裏に浮かぶと、ほんのり胸が温かくなる。

 どきんどきんと、心地良い高鳴りが収まらない。


 初めて会った時から気になっていたけれど、いつにも増して……。


「…………うん! 任せて!」

《ありがとう》


 ニコッと微笑むウニャン。




 思い返していたヤマミは頬を赤くしてしまい、そっぽを向く。ナッセは「ん?」と首を傾げる。

 するとドガァッと向こう先で、煙幕と共に破片が飛び散るのが見えた。


「な、なんだぞ?」「行きましょ!」


 エンカウントもしてないのに? そう思い、ヤマミと一緒に駆け出した。



「あ、あぐっ!!」


 道路の交差点で漆黒の甲殻を纏うガタイのいい男が立っていて、一人の成人男性の首を片手で軽々と持ち上げている。

 周囲の人々はざわざわ緊張に包まれている。


「答えねば命はないぞ……」

「し、知らない! どこへ行ったのかも……」


「離せぞ!!」


 光の剣を手にヤマミと一緒に、漆黒の男へ対峙する。

 ヤマミは見わたす。道路の一部が剥がれ、アスファルトの破片がそこらじゅうに散乱。車が一台ひっくり返っている。周囲の人々や車は止まっていて、動揺が走っているのが窺えた。


 すると漆黒の男は(つか)んでいた男を離し、こちらへ視線を移してきた。解放された男は尻餅をついて「ひ、ひいい」と後ろへ後しざりして、慌てて這々(ほうほう)(てい)で逃げ出した。


 目の前の漆黒の男に戦慄していた。殺気が全身から滲み出るかのように見えた。


 な、なんという……恐ろしい威圧だぞ……。

 この男……! とてつもなく強い!!



「また創作士(クリエイター)か?」


「あ、ああ!!」

「あんた何しにきたの? ホノバー……」


 ヤマミは手をかざして灼熱の火炎球を『衛星(サテライト)』で浮かし──、しかし一筋の黒い光線が射抜いて霧散(むさん)。ボシュン!

 漆黒の男はこちらへ指差していた。

 速い! オレもヤマミも見開く。一筋の汗が頬を伝う。


「通りすがりの有象無象(うぞうむぞう)が知っているとは思えぬが、()えてキサマらにも問おう」

「な、なにぞ?」


 ヤマミはナッセの口癖に「なるほど」と納得。非常に警戒し心を許さないと口癖が明らかに強く出てくる。


博水(ヒロスイ)オカマサと言う、自称熱血漢はどこにいるのだ?」

「お、オカマサ??」


 漆黒の男は額に手を当てて目を瞑る。


「……そうだったな。ヤツは偽名を使っていた。森岳(モリタケ)タネ坊……だったか?」

「ごめん! その人はもういないぞ」


 漆黒の男は「ナニ?」と(いぶか)しげだ。


「とっくにモンスター化したわ。エンカウントすれば新種のゴブリンとして出てくる」

「うん。オレもこの目で見たぞ……。複製されて何度でもモンスターとして襲ってくるぞ。ここの創作士(クリエイター)ならみんな知ってると思う」

「なんという事だ……!!」


 漆黒の男は怒りの形相で歯ぎしりする。ギリ……!

 ドスン! 足踏みするとアスファルトの破片がめくれる。


 ビリビリ、凄まじい威圧が広がってくる。とんでもなく凄い憎悪混じりのプレッシャー。

 ま、まずいぞ! ここでは人が多すぎる!

 何者かは知らないけど、タネ坊の知り合いかぞ? ってか一触即発だぞ!!



「……この辺りを平らにするか」ズズ……!


 怒りを(はら)む狂気の笑み。殺意満々の威圧が増す。避けられない!

 意を決して、光の剣を掲げて光子を収束。


「させるかぞッ!! スターライト・キャノンッ!!!」


 振り下ろすと共に剣の切っ先からまっすぐ青白い光線がドウッと放たれた。漆黒の男は片手をスッと差し出す。


 バン!! 光線は弾けた!


 思わず「なっ!?」と愕然した。

 なんと漆黒の男は片手で受け止めたのだ。シュウウ、その掌から煙が漏れる。


 とっておきの新技を難なく防いでしまったぞ。

 何故だか足が震えて、尻餅をついてしまう。腰が抜けたぞ……。



「フン! この程度……、やはり有象無象か! 興が削がれたわ……。ここで腹いせにキサマら雑魚(ザコ)どもを捻ってもつまらん」


 そう言うと、漆黒の男はフワリと浮く。こちらを見下すように睨みつけてくる。


「オカマサの事を教えてくれた返礼として、見逃すついでに一つだけ教えてやろう。この辺りは戦場と化す。なぜなら明日、アニマンガー学院を標的に大規模侵略するからだ。命が惜しければ、どこか遠くへ逃げるがいい」

「な……なっ!?」

「なんですって!?」


 こちらが驚いている内に、漆黒の男はビュンと彼方の空へ飛び去ってしまった……。


「あ、あいつ……! マイシが言っていた、あの人造人間!? 他にも……いたのかぞ?」

「早く知らせないと!!」


 腰が抜けていると、ヤマミが手を引っ張って急かしてくる。

 ヤマミの肩にいるウニャンは静かにこの状況を静観していた。


《……覚えたてのしょぼい刀剣波(とうけんは)で勘違いしてくれたね》


 もし本気で戦えば二人の実力はほぼ伯仲。それゆえ戦いは長引く。そして被害も甚大(じんだい)になっていた。

 刀剣波を教えなかったら、確実に多くの人間が巻き込まれて死ぬ。そしてナッセも自責の念に苦しみ、魔王化が近づく。ふう、よかったよかった。

 人造人間……。エンカウントを起こさず戦闘できるから厄介(やっかい)だよ。




 瀬戸内海の上空で、まるでUFOみたいな円盤型の巨大な母艦が悠然(ゆうぜん)と飛行していた。ゴゥゥ……ン!


「なんだと!!?」


 サークル状の広場の会議室で漆黒の男、ジダ公は立ち上がって円状のテーブルに掌を叩きつけた。その側の資料にはナッセの顔写真とプロフィールが記されている。


「まったく、会議前に先走るなやぜ! これなやから敵の素性を見逃すんやど!」

「……だが、あの程度を要警戒の創作士(クリエイター)と?」

「見かけと性格で勘違いする人が多いんが、ヤツはマイシと互角にやりあえる猛者(もさ)なんやぜ! ジダ公ともあろう者が、騙されるなが!」


 コータロに叱られ、ジダ公は「くっ!」と悔しそうに表情を歪めて体を震わせる。


「ほっほっほ。まんまとしてやられたワケですね」

「……ケン治!」


 煽るように薄ら笑むケン治を、ジロリと睨む。


「落ち着けどん! ここでケンカされると母艦が落ちるどん」


 マー坊は熱々(アツアツ)のうどんをドンと乗せる。ジダ公はそれを見下ろす。

 姿形は奇妙でチビだが、それでも最強のクラッシュセブンに名を連ねる人造人間。互いに睨み合っていると、割り込んでくるようにカイ斗がジダ公の肩に手を置く。


「ジダ公殿……。ここは落ち着くカイ。どうせ明日になれば、また戦う事になるかもしれないカイ」

「フン! その時は……、一方的な蹂躙(じゅうりん)だ! 泣いても乞うても容赦せん!」

「決して油断するなカイ!」


「ヤツが弱いか強いかは、この拳で聞く!」


 拳を振り上げて、(きびす)を返す。

 テーブル上の資料をひったくって、そのまま会議室を出ていった。それを見送る一同。


 そして冷えるうどん。



 クラッシュセブンの中でも、ケン治とジダ公は最強クラスやが……。


 コータロは「フフッ」と冷笑する。

 しかしその笑みも消える。据わった目に私怨が孕んでくる。


「オカマサさん、兄貴……。一緒にクラッシュナインで行きたかったんやぜ…………」




 とある事件で自衛隊を除名されて、後盾(バック)を失った我々は夕夏(ユウカ)家へと入隊した。

 その研究所(ラボ)で色々な資料をテーブルの上に並べ、コータロは二人と談笑をしていた。その二人こそ細身で筋肉質の熱血漢オカマサと、緩い感じのタレ目オッサンのドラゴリラだ。


「こういう変なキャラだったら面白いやろ?」

「さすがはドラゴリラだ!」


「さすが兄貴やなぜ! 発想が他と違うやぜ」


 コータロは嬉しそうに兄であるドラゴリラの肩をバンバン叩く。ドラゴリラも照れくさそうに「へへ」と笑う。

 見た目で飾らず、各々が真に誇れるべき能力とプライドを持った理想の人造人間部隊。


『クラッシュナイン』


 オカマサをリーダーに、ドラゴリラ、コータロ、ジダ公、ケン治、バイオ、レンス、カイ斗、マー坊で連ねる最強の精鋭部隊。

 四首領(ヨンドン)の内一人をバックに、最強の兵隊を自分らで作り上げるのだ。そのはずだった……。


 しばらくするとオカマサとドラゴリラは原因不明の病かなにかで、姿形が別人のように変わっていった。

 本人たちもこの症状がどうしても治せず、毎晩眠れなくなるほど悩み苦しんだ。

 これを機会に博水(ヒロスイ)オカマサは森岳(モリタケ)タネ坊、馬淵(マブ)ドラゴリラは大珍(ダイチン)キンタと名前を変えて心機一転した。おかげで気が楽になれたらしい。



「じゃあ俺たちはアニマンガー学院へ入学する。後は任したぞ」

「せや! 卒業したら、一緒にクラッシュナインやろうな!」


 晴れ晴れと手を振って去っていくタネ坊とキンタの笑顔に、うるっと涙ぐむコータロ。


 だが、それが今生の別れになってしまった……。



 ニュースで知ったが、二人はナッセのマンションで住居侵入と器物破損の罪で逮捕されて、そのまま行方知れずになった。ジダ公の持ってきた情報によると無残にも下級モンスターに堕ちたらしい。

 これも全ては憎きナッセのせいやが!! この手で殺してやる!


 コータロはギリと歯軋りし、恨みづらみと血眼の形相に歪む。震えるほど握りしめた拳から血が滴る。



「明日が、(とむら)合戦(がっせん)やぜ!! 今か今かと待ちきれへんやがァ! ナッセェ────ッ!!」


 憎悪募る叫びと共に、コータロの黒い角が更に伸びる。ズッ!

あとがき雑談w


 コータロは、とある映画を鑑賞。

 巨大な円盤が空を覆い尽くして、未知の飛行物体が無数飛び交ってビームを放ってきて人類ピンチ。


コータロ「これやがぜ!!」


 この巨大母艦のアイデアを総統ヤミザキに相談。


ヤミザキ「……予算かかりすぎるな。製作費もさる事ながら維持費がバカにならんぞ?」

コータロ「お願いするやが!! 頼むやんぜー!!」

ヤミザキ「それはそうと、別の銀行口座に充分あるのではないかな?」

コータロ「ギクッ! な、なぜそれやが??」


ヤミザキ「隠すと為にならんぞ? 見逃してやるから自分でやれ!」

コータロ「くそったれやが~~!! 同性愛専用風俗行くための秘密口座ががが~~」


ヤミザキ「…………アホか」(呆れ)


 仕方なくオカマサとドラゴリラとコータロの共通口座から捻出して、あの巨大円盤型母艦を作り上げたとか……!?



 次話『大規模侵略が始まった!? 緊張走る戦争開戦!!』

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