78話「最強のゴツい人造人間軍団!!」
とある薄暗い研究所の広場。淡い光を放つガラスのカプセルが等間隔で並ぶ。そのカプセルには人型をした何かが液体に浸っていた。断続的に気泡がボコボコ上昇する。
いずれも人間とは思えない形状で、ほとんどがムキムキでゴツい顔面だった。
《総統ヤミザキ様! 我らにも出世の機会を与えてくださって感謝やぜ!》
白衣を纏う長身の痩せた男。猫背で前傾体勢。飄々したような顔でタレ目だが、白目と黒目が反転している。顎ヒゲとモミアゲが一体化。お世辞にも顔は整ってなくてシャクレたブサイク面だ。額には黒くなっている角が三つ。なぜか不釣り合いのベレー帽をかぶっている。
《フフッ! 貴殿の研究成果には驚かされておる。故に正式に夕夏家の家族として馬淵コータロ殿を迎えたい》
《おお!! それは光栄やぜ!》
彼らは頭で会話、つまり念話していた。
と言うのもコータロの手の甲にも赤い刻印が灯っており、それでヤミザキと念話が可能なようだ。
《だっが、それでええんやか? ナッセは後継者なようやが?》
《殺しても構わん。特に貴殿はナッセに個人的な私怨があるようでな。なんなら代わりに貴殿を後継者にしてもよい》
《へ、へへ!! そっれは至上の幸せやぜ!! それにナッセを研究材料にできるやぜ!》
《それで更なる研究の飛躍に繋がるなら、私も喜んでお願いしよう》
コータロはニヤリと笑む。ついに自分の努力が認められたのだと確信した。
なんか話が美味すぎる気もするが、総統ヤミザキより信頼を勝ち得たのは大きい。これにより遠慮なく、憎き仇を討てるのだと歓喜した。
《しかし人造人間全員で出撃命令とは……?》
《むしろ全軍出撃でかかれ!
ナッセを筆頭にコハク、マイシ、モリッカ、フクダリウス、リョーコ、エレナなど、アニマンガー学院には予想以上の猛者が揃っておる。容赦なく叩き潰すくらいでなければ勝てぬぞ?》
《だっが、各地の企業は……》
《心配いらん。我が息子たちが代理社長として運営をする。今回はコータロ殿の顔を立てて、輝かしい功績を与えたいと思う。そして人造人間の素晴らしさを世間にアピールするがいい》
《ほうほう!》
コータロは目をキラキラさせている。
《しかし、なんで念話でしか話しちゃあかんだ?》
《作戦が漏れたら成功するものもしないぞ? 我々の内情に詳しい黒マフラー女の件もある。極秘で進んでこそ成功の秘訣。人造人間たちにもそのように連絡をするがいい。
なに、構わん。貯蔵エネルギーは好きなだけ使え。主らには遠距離にいる貯蔵庫からも供給できる上位の『刻印』を与えておるのだからな……》
ぐつぐつと湧いてくる自信と歓喜。コータロは目をメラメラさせて拳をグッと握る。
ようやく日の目を見る時代がやってきたのだと、目の前が明るくなった。
「けーっはっはっはっはっはっは!!!!」
両腕を広げ、天に向かって歓喜の大笑いをあげた。するとベレー帽がポロッと落ち、ガラス製で脳みそが顕わになった頭が!?
そう彼自身も人造人間に改造したようなのだ!
何を思ったのか、コータロは手袋を外して掌から銃口を覗かせ、エネルギー弾を放つ。ボッ!
ドゴオオォォン!!
研究所の壁がぶち抜かれ、外部に爆発が轟いた。
煙幕が吹き抜け、空いた大穴から青空が広がっていた。コータロは久々の外へ出て、心地よい風を身に受けた。自信満々とニヤリと笑む。
「……ついに! ワレが総統となる時代がやってきたんやぜ!!」
とある北海道企業。黒く怪しげなドーム状の工場が山岳を陣取っている。周囲をUFOみたいな飛行物が飛び交っている。
《ほっほっほ! この私も出陣とは……。いよいよ日本征服に乗り出す時が来ましたね》
眉間の少し上に角が生えている。胸と肩と、ブリーフのように股を覆う黒い装甲のような甲殻。腕と足には線のような模様。顔は冷酷そうな表情で、真紅が左右の頬と額を部分的に染まっている。
完全に人外であったが、全身から漲るただならぬ威圧感は大きいものだった。
彼は最暴愚ケン治。あと全裸。
とある沖縄企業。機能性として疑わしい剣山のようなトゲトゲの工場が建つ。
《フフフ……。こんな田舎生活に飽き飽きしていたところよ!》
頭巾のように思えてしまうほど目上、鼻上から上は黒い甲殻で頭上を覆い、左右に黒い角が生えている。そして上半身と下半身も鎧のように黒い甲殻で覆う。完全に人外。
彼は嘉神ジダ公。あと全裸その2。
とある九州企業。田舎で溢れる村を陣取るように、全て青で染まっている立法長方形状の工場が建っている。
《は! 了解カイ! この川端カイ斗も出陣するカイ!!》
青い角が髪の毛のように多く生え、眉を隠すような位置でバンダナっぽく頭を輪状、そして鼻上を通るラインの紋様。肌は薄い青。腰には二本の刀が差してある。マントを羽織っており、クールな表情を窺わせている。
とある岩手企業。二つの塔で連なる工場。もはや工場だとは思えない形状である。
《オーケー! ボス! あたしも張り切りちゃうわよ!!》
《ええ! 思う存分、あたしの魅力を伝えるわ!!》
双子のようにソックリなオネェが二人。されど漢のような強面で額を縦スジで連なる。金髪で左右を挟むカール。体躯は三メートル級の大男。服はインナーワンピのボディコンで、一方が桃色でもう一方が紫色だ。本当に誰得なゴツいオネェである。
辛うじて人間らしさを保っているが、遺伝子を組み替えられた完全な人造人間である。
彼らは我瑠羅バイオと我瑠羅レンス。
とある香川企業。なんかキノコを連想させる形状の工場で、上方がぷっくら膨れている。
《うむ、しかと了解どん……》
ベレー帽を頭上に、冷静沈着な顔。首にはスカーフ。だが背丈は低くて小学生並み。そして体も奇妙で丸太のような胴体に、うどんのような軟体の手足で指が存在しない。まるで子供の落書きで描いたような出で立ちだ。
彼は出井マー坊。あと全裸その3。
多くの戦車や戦闘機が並ぶ広大な基地。中心を円形の建物があり、厳重で頑丈な造りを思わせられる。
あちこち走り回るのは複数人の軍人……ではなく、半裸のハス太たち。
全く同じ容姿でひょうきんそうな顔で「あひゃっひゃっひゃ」と楽しそうに騒いでいた。
所々、数人のゴン蔵が無表情でズシンズシン闊歩する。……量産型のようだ。
ザッザッザッ!
世界各地より召集された人造人間たちが、威風堂々と並んで歩いていた。
最暴愚ケン治。嘉神ジダ公。川端カイ斗。我瑠羅バイオと我瑠羅レンス。出井マー坊。
《自分含め、最強の人造人間クラッシュセブン!! 遥々遠路ご苦労やぜ!》
白衣の馬淵コータロが腕を広げて六人の人造人間を歓迎した。
《ほっほっほ! 我がマスターコータロ様。私一人でも充分と思いますよ》
《フン! それは慢心だ。ケン治》
《このカイ斗、いつでも全力で臨むカイ!》
《あっら~~、コータロ様ブサカワ~~!》《今夜の慰めにどう~~?》
《態度を慎めどん! 我がマスター殿はこれから重役を任されているどん》
各々は火花を散らす。ほどよく緊張を走らせ、戦意を充実させていた。
けひひひっ! こいつらは我が自慢の最高傑作やぜ!
全員が、あの旧式最強人造人間ゴン蔵をすら上回る戦闘力を誇る……!
ナッセども! キサマらの平穏な日常も、あと三日で終わるんやぜ!!
《今日のところはゆっくり羽を休むんやぜ……。我が可愛い息子たちよ!》
《ええ!》《フン!》《了解カイ》《はぁい》《はぁい》《了解どん!》
それぞれと親密な握手を交わし、再会の喜びを分かち合う。
そして六人の人造人間を背景に、コータロは悪巧みの笑顔を浮かべた。
「まずは大阪アニマンガー学院を起点にイケメンと女どもを絶滅させて、ゴツい男だけに満ちたワレだけの快楽世界を作ってやんぜー!!!!
けーっはっはっはっはっはっはっはー!!」
なんかキモい目的に暴走してきたなぞ。
あとがき雑談w
見えない所でナッセたちは毎日学院へ通いつつ、実は秘密特訓もしていたのだw
学院から帰宅した後、ナッセとヤマミはウニャンと修行をしていた……。
ウニャン「リョーコだって、スミレとエレナと特訓しているんだよ?」
ナッセ「ぜぇぜぇ! ま、負けるかぞ!」
ヤマミ「……これを二時間以上って……ハードだわ……」
なんとウニャンは猫なのに、二本足直立で片手にウニメイスー。
ナッセ「くそ! まだまだー!!」
マイシと戦った時と同じ本気の剣戟を繰り出すが、ウニャンは軽々とあしらう。
ドガガガガガ、と地面を揺らし烈風が吹き荒れる。
バキッとナッセは押し負けた。
ナッセ「うわー!!」
ヤマミ「きゃあ!」
吹っ飛んできたナッセがヤマミへ飛び込む。
な、な、なんと! ヤマミの柔らかい胸にナッセの顔がむにゅ~!
ヤマミ&ナッセ「////////」湯気ぼふん!
突然のパプニングに二人は火照って気絶w
忘れられない感触になりそうだ……w
ウニャン「あちゃーw ってウブだねーw」(うふふw)
その後、ウニャンは二人を治療してベッドに寝かしたのでしたー。
次話『ウニャンとの特訓で新技取得!?』