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77話「想いを背負って進化するマイシ!!」

 異世界でマイシはとある男と死力を尽くして、互いの剣をぶつけ合った。


 城路(ジョウジ)ナッセ。彼は弱そうな風貌と性格に反して、知っているどの男よりも強かった。しかしただ強いだけではない。例え追い込まれても根性で何度も立ち上がって、食らいついていく凄まじい闘志も持っていた。


「ギャラクシィ・シャインスパァァ────クッ!!!!」


 想いが込められた全身全霊(ぜんしんぜんれい)()した一閃を、彼は繰り出してきた。

 どれくらい労力をかけて会得したのか分からない。

 だが、無用な殺生を超えた純粋な闘争心。そして誰かを想って繰り出す一撃。何十年も(つち)ってきた入魂の奥義。それらがひしひしと熱く伝わってきた。


 そして彼にはもう一つの顔があった。


 長く伸びたロングの銀髪が波打ち、淡く輝く瞳、背中からは白い羽が一対浮いていて、まるで天使を彷彿させる優しい顔のナッセ。


 熱血漢のような熱い心と、天使のような優しい心が同居している二面性。それには戸惑った。


 ふわりと暖かい抱擁(ほうよう)がマイシを包んだ。これまでされた事がなかった暖かい抱擁(ほうよう)。背中にまで回してくる左右の腕と、重ねてくる男の胸。


「……もう(ひと)りじゃないぞ」


 包み込むような優しい言葉。

 その一言で、孤独だった心をほぐされていった。



 あたしは殺すつもりで、叩き潰すつもりで、圧倒的にねじ伏せるつもりで、これまで戦ってきた。


 だけど、あんたはあたしに応えるために全身全霊を尽くしてくれた…………。


 正真正銘のバカだし…………!



 それがナッセという男なんだなし……。


 ポタッポタッと滴り落ちる雫。

 マイシは溢れ出す熱き感情で、涙がとめどもなく零れていく。熱いそれが頬を伝い顎から滴り落ちる。




 だから……! あたしは独りじゃないって思えるようになったしッ!!


 優しい笑顔のナッセを脳裏に、マイシはカッと見開いた。

 竜を象っている赤々と燃えていたオーラに、先端が白刃となるかのような(うろこ)を象るオーラが全身に連なる。

 しかも常時、(うろこ)が流れるように流動で燃え上がっている。

 セミロングだった後ろ髪も煽られるように逆立って、尖っていく。


 ズズズズズズズ…………!



「な……、なんだ? このメスガキぃ!?」


 ゴン蔵は見開いていた。最大出力の「バーストボール・フラッシュ」をすら防ぎ切った上に、更なる威圧を増していく雰囲気に畏怖(いふ)(つの)らしていく。

 これまでのオーラと違う。魔法力も混ざったエーテルに変化してる事にも察した。

 意図的に発現させたわけじゃなく、本能的にそうさせたのだろうか?


 危機感を抱き、同時に全身をアルマジロのように硬質化させた黒光りする(うろこ)で包む。

 更にメキメキと、巨大なイノシシに膨らみつつ変形していく。上位種モンスターの大鬼猪(オーガボア)と似ているが、(ほとばし)るオーラ量と質は(けた)(ちが)いだ。


「ならば! ヒルディスヴィーニモードで叩き潰す!!」


 ドッと地を爆発させて蹴ると、音速を切って最重量の塊が道路を(えぐ)りながらマイシへと突進。


「だからあたしは生まれ変わったし!!」

「何を戯言(ざれごと)をォ~~? 死ねぇいッ!!」


 ドスン! 超高速と超重量でマイシに衝突!

 土砂の津波が高々と巻き上げられ、地響きが伝う。後方のビルも煽られて瓦解。

 しかしマイシが構えた剣を前に、ゴン蔵の突進は止められた。その事実に見開くゴン蔵。ニッと笑むマイシ。



「火竜の炸裂剣(バーストソード)!!」


 斬り上げるように振るわれた剣から爆裂が吹き荒れ、ゴン蔵の巨体が浮いた。

 追撃とマイシは飛び上がりながら嵐のような炸裂剣(バーストソード)を連続で繰り出し、上空へと弾き続けていった。


 ドガン! ドガガッ! ドガッ!! ドガァン!!


 硬質化させた(うろこ)の破片が散らばり、ゴン蔵は苦悶に表情を歪め血を吐く。ガフッ!

 それを追い越すように急上昇したマイシが「かあっ!」と打ち下ろすように炸裂剣(バーストソード)が轟音を響かせた。ドガッ!!

 (うろこ)の破片を散らし、ゴン蔵は「うあああああ!!」と超高速で地面に激突。土砂の噴火を巻き上げた。



 マイシは口を開け、そこへ光子が収束。


「火竜の爆裂散弾(バーストブリッド)ッ!!」


 機関銃のようにドドドドンと灼熱の光弾が乱射されて、爆炎を連鎖させて高々と噴き上げ続けた。余波で周囲のビルを薙ぎ倒し、なおも破壊の津波が荒れ狂った。

 灼熱の爆裂を浴び続け、ゴン蔵は「ぐああああああああ!!!」と苦悶(くもん)の叫びを張り上げる。もがくように必死に懐から薬を引き抜き口へ押し込む。瞬時に傷が癒える。


「このおおおおおおお!!!」


 全身全霊の「バーストボール・フラッシュ」が放たれ、ことごとく光弾を弾きながらマイシへ目指す。

 しかしマイシは背中を反らして大きく息を吸い込み、多くの光子を収束。


「火竜の爆裂波動砲(バーストキャノン)ッ!!!」


 一気に解き放つように大きく口を開けて、吐き出した。

 極太の灼熱の波動が唸りを上げて、ゴン蔵の光球をも()き消し地上を覆い尽くした。岩盤が散り散りと舞い上がる。

 その圧倒的破壊力にゴン蔵は「な……!?」と驚愕の顔に見開く。


 ズッドオオォォォォォオン!!!


 明々と爆発球が大きく膨れ、天高く咆哮を上げるように地上を蹂躙した。



「く……クソォ!!」


 煙幕が流れ、(へこ)んだ大きなクレーターに傷だらけのゴン蔵が荒い息で仁王立ち。より激怒の表情はシワだらけで激薬の副作用を感じさせた。フーッフーッ!


「お、おのれ~~ッ!! ま、まさか……、薬を二度ならず三度までも……使わせるとは~~~~ッ!」



 マイシは地面を割るほど降りた。ドンッ!


「あんた家族とかいるし?」

「そんな下らないモノあってたまるか!! オレ様は、オレ様は……最強の人造人間!! そして唯一無二の究極生命体だァ~~~~ッ!!!!」


 ニッとマイシは笑む。嘲笑ったと思い、キレたゴン蔵は全身を筋肉ムキムキに隆起させて六つの腕を生やし「最強のアスラモードだッ!!」と吠える。

 地面を爆発させて超高速でマイシへと飛びかかる。

「うあがああああああああ!!!!」

 獰猛な獣のような怒りの咆哮(ほうこう)。もはやなりふり構わない勢いだ。


「究極生命体だと!? そんな下んないヤツに負けねぇし────ッ!!!」


 そう吼えるマイシの剣戟とゴン蔵の暴風雨のような拳の乱打が激しく激突し合う。超高速で攻防の応酬が繰り広げられ、周囲の烈風が巻き起こって岩盤が捲れていく。

 ゴン蔵の六つある腕の乱打を、マイシは剣一本でことごとく(さば)いていく。


 ズガガガガッガッガガガガッガッガッガッガガガガ!!!


 ただただ暴威のままに拳を振るうゴン蔵に対し、マイシは剣で必死に弾ききっていく。


 これまで冷たくされてきた幼少時代。冷たかったはずの家族は、実は自分を夕夏(ユウカ)家から逃がしてくれた優しさを持っていた。そして全身全霊で応えてくれたナッセの熱血と慈悲の二面性。

 それらに救われたのだと自覚すると、この勝負負けられないと凄まじい気迫が漲ってくる。


「かあああああ!!!!」


 裂帛の気合を発して、激しい剣戟を振るうマイシ。その猛攻にゴン蔵も焦り始める。


「ぐ……、こ、このォ!!! ならば、これでどうだァ~~!!」


 更に一対の腕をボコッと生やし、八本の腕で周囲を破壊し尽くすかのような猛攻を繰り出す。

 だが、それでも単なる暴力。

 圧倒的に敵をねじ伏せるだけのパワーのみを求めた、想いのない攻撃。


 ズガガガガガッガガガガガッガガガ!!!


 暴力のみのゴン蔵と、誰かを想うようになったマイシ、この二人に明確な差が生まれた。それが結果にも表れた。


 バゴァッ!


 一本の腕が爆裂に砕かれる。ゴン蔵は「な……!?」と見開く。

 更に二本目、三本目、炸裂剣(バーストソード)を受け続けて腕は吹き飛んでいく。ゴン蔵は「な、なぜ勝てぬのだァァ?」と焦りを(にじ)ませて、ただただひたすらに暴力を振るう。


「まだ分かんないのかしッ!!!」


 渾身の炸裂剣(バーストソード)がまた一本の腕を砕く。ドォン!

 ゴン蔵は彼女の(おとろ)えぬ気迫に気圧されて、次々と腕が砕かれていく。


「こ、こ、このメスガキがぁぁぁぁあッ!!!」


 一本の腕を肥大化させて、地表を抉りながら巨人のような拳で押し潰さんとマイシへ振るう。だがマイシは「かあっ!!」と一閃を煌めかして斬り上げた。


 バガァン!! 巨人の腕は爆裂を浴びて木っ端微塵。



「な、なにぃ~~? バカなァ~~!! こ、こんなの……こんなのォ~~~~!!!」

「これで、てめーは終わりだしぃぃぃッ!!」


 マイシの渾身の炸裂剣(バーストソード)が一刀両断と振り下ろされた。脳天から股まで一閃と切り裂かれ、ゴン蔵は血眼で絶句。

「が……っ……!」

 そして断末魔のように天高く爆裂の火柱を噴き上げた。


 ズッドオオォォォォォオン!!!!



「生まれ変わって家族に囲まれてみろし……! 悪かねぇって思うようになるっしょ」


 少し儚げな表情でマイシは、萎みゆく火柱を眺めた。




 午後の授業が始まるチャイムが鳴り、マイシが据わった目で教室に現れた。ボロボロの服で足を引きずるように歩いてきて、生徒たちは呆然とする。

 そのまま、ぶすっと物言わずナッセの所へヨロヨロ歩き寄る。


「た、ただいまだし……」


 恥ずかしそうに目を逸らしつつも、マイシはボソッと一言。ナッセは呆然としていたが、労うように微笑む。


「おかえり!」

「おう!」


 差し出したナッセの手を、マイシは安堵の笑みでパンとはたく。




 ゴン蔵が破れてから二日後──、夕夏(ユウカ)家の総本山の大屋敷の書斎で、ヤミザキは嬉しそうに笑みを浮かべて窓を眺めていた。


「フフフ……、火竜のマイシか!

 想像以上の潜在力だ。しかも更に進化の余地を残している。恐るべきはドラゴンだわ」


 ゴン蔵は『刻印(エンチャント)』の力で数千人ものエネルギーを行使した上で死の敗北。相当の損失と思うが、あくまで駒の一つに過ぎん。将棋で例えるなら桂馬、香車級の駒を一つ取られただけだ。

 まだまだ強力な駒は手元に揃っている。これまでは序曲に過ぎん。


 本番はまだこれからだ……。



 手の甲を上げ、赤き刻印(エンチャント)が灯るとバチバチッと赤い稲光が迸る。


「我が人造人間どもよ! これより一週間後、総員出撃でアニマンガー学院を徹底的に壊滅させよ!!」


 冷酷無比の不敵な笑みでヤミザキはそう告げた。

あとがき雑談w


アリエル「ゴン蔵ねぇ~~w 面白w」

クッキー「火力バカだけど、変形もするから侮れないわよね」


『猛襲型人造人間ゴン蔵(蛮族(バーバリアン))』

 どう見てもモンスターな大柄な男。

 頭の左右から伸びた角が途中で上へ曲がって尖っている。モヒカンの黒い髪。鼻下辺りから左右に伸びて下へぶら下がった触覚のようなヒゲ。肩幅が広く、半裸。肩は肩当てのように丸く膨らんだ外殻っぽい。下半身は毛深い青い毛で包まれていて裸足。

 ケンタウルスになったり、グリフォンになったり、臨機応変に変形できる。最強形態は腕を何本も生やして戦うアスラモード。

 実は人造人間工場の社長。

 制作者談いわく、旧式最強人造人間らしい。

 威力値56000


ヤミロ「ってか、マイシ更に変身しやがったぜw どこぞの戦闘民族かよw」



 次話『恐るべき人造人間たちの招集!!』

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