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74話「狂気! 猛襲型ゴン蔵!!」

 田んぼが広がっていて、(まば)らと家が点在する田舎。

 その中で一際大きい庭で構える屋敷。ドカン、と玄関が爆発。マイシは破壊された玄関から侵入。刀を肩に乗せ、土足で上がり込む。

 家で夜更ししていた、貴金属のアクセサリーを首にぶら下げ耳にピアスを付けている金髪のチャラいデブ男が姿を見せる。マイシは、彼の額にツノが生えているのを見逃さなかった。


「おー? オヤジがまた女をよこしてくれたか? さっそくバラすぞ! げひひひっ!」


 チャラいデブ男がナイフを取り出し下卑た笑みで襲いかかるが、マイシは「消えろし!」と横薙ぎに炸裂剣(バーストソード)をブチ込む。バガッ、と爆裂に包んで消し飛ばす。


「な、な、なんなのよ!? あんたぁ?」


 高い着物を来たヒステリックな女がやってきた。さっきの男の母だろう。やはり額に角が生えている。マイシは冷たい視線を見せる。ツノ生やしている奴は大概(たいがい)救いようのないクズだと知っていたからだ。


「……工場長ヌモウって奴の妻かし?」

「ねぇ! 息子はどこにやったの?? 返して! 返して!!」


「ヌモウに人さらいされた家族も同じ事言ってると思うし」


 ビクッと着物の女は竦んだ。汗が頬を伝う。


 夫の悪事を知っていて、敢えてのんきに生活していたのだとマイシは察した。

 着物の女はギリッと歯軋りし、睨みつけてくる。だが武器を持ってくる事も構える事もしてこない。創作士(クリエイター)として訓練はしていない、ただの素人。


「人さらいだなんて人聞きが悪いわね! 夫は日本のため夕夏(ユウカ)家のため、こんな小汚い村を有効利用してやってるのよ!」

「小汚い村…………?」

「誰が好き好んでこんな田舎村で暮らしたいって思う? 私はね華やかな都市で暮らしたいもんよ! だから存在価値もない村を処分し回ってるの! 感謝の一つでもしてもらいたいもんだわ! フン!」


 いとも平然と傲慢(ごうまん)な事を言ってのける着物女に、マイシは吐き気がした。

 夫がクズなら、やはりその妻も息子も同じクズ。

 村を小汚いと吐き捨て、村人の命をなんとも思っていない。それどころか食い潰すことに積極的だ。


「あんたも存在価値ないね! だから価値を与えてあげる! 拷問の生け贄としてね! アハッ!」


 着物女は手馴れてるかのようにスタンガンを取り出し、マイシに触れて電撃が迸った。

 更に連続で突きまくって容赦なくバリバリッと電撃を流していく。

 動かなくしてから、縛り上げて凄惨な拷問を何時間もじっくり楽しんでいくのが定番の流れだった。そのはずだった。


 しかし平然と突っ立っている事に怪訝に首を傾げる。

 マイシの振るった手でスタンガンが粉々に弾き飛ばされる。着物女は驚く。


「存在価値がないのは、てめぇの方だし!」

「なっ? ち、ちょっと待っ……」


 怒り任せに着物女を炸裂剣(バーストソード)(ほふ)る。ドガン!


 なんでこんな残忍なヤツらばっかりなんだ、と胸糞悪い気分で刀を下ろす。ムカムカしてくる内に、何故かナッセが脳裏に浮かぶ。そんな時だけ今の気分を和らげてくれる。


「ナッセ……」


 切ない顔で見上げた。




 そして翌日。オレはキッチンで調理。皿にトマトやキュウリ、レタス。目玉焼きも添えていく。仕上がったものをテーブルに並べていく。茶碗のご飯も湯気を出している。


「待たせたなぞ」

「うん……」


 何故かテーブル前でヤマミが沈んだ顔で座っていた。ウニャンも側で座っている。

 どうやら自分では料理できない事が判明して、これまでスミレの料理やコンビニに頼っていたらしい。


《まずは料理から教えようか?》


 ウニャンに、コクッと頷くヤマミ。悔しいようだった。

 ナッセと一緒に「いただきます」と朝食を召し上がる。瑞々しいサラダの歯ごたえと、暖かい卵の感触でご飯が一層美味しく感じた。

 正直言ってスミレの方がレパートリー多くて美味しいのだが、ヤマミは自分では自炊できない故にナッセの手作りでも美味しい。悔しいと思う反面、自立している事にも素直に感心する。


「自炊できるのね……」

「うん。地元で一人の時に作れるようにと教えてもらったぞ」もぐもぐ。


 ヤマミと一緒に食べるってのも新鮮で、なんだか割増で美味しく感じた。

 朝早く叩き起こされたのはたまらなかったけど、合鍵渡して良かったなと感嘆。


 ウニャンはリモコンでテレビをつける。ニュースをやっているようだ。


「……村で、工場が原因不明の火事で全焼しました。この辺は行方不明がとても多く、目撃者がほとんどいないようです」


 上から見下ろす俯瞰(ふかん)での工場の残骸が映像で映っている。まだ火の手が微かに残っている。その破壊跡に見覚えがあった。


「まさか……?」

「そ、そんなことある?」


 思わずヤマミと顔を見合わせた。

 ニュースからは情報は少ない。行方不明の特徴として、遺体を残さない事が多いため原因を特定するのに難航しているようだった。そして工場長と、その妻子も行方知れず。

 崇肥(タカヒ)ヌモウとその家族の顔写真が映り、カルマホーンが確認できた。

 解説によると、息子の素行が悪く周辺の近所には評判が良くなく、また傲慢(ごうまん)なヌモウの妻も嫌われていて、その恨みを買ったために複数人による犯罪事件が濃厚と、言っていた。


「今日来るの?」


 ヤマミの言葉に、首を傾げながら「来るんじゃない?」と返す。




 眩しい朝日。アニマンガー学院の教室にも日差しが及んでいた。後ろの方の席は暖かそうだ。


「なんだし? ジロジロ見て」


 ブスッとした様子のマイシが椅子にふんぞり返っていた。何故かセーラー服っぽい私服がちょっとボロボロだ。


「ニュースに出てたもんで……」

「あー、あれ。人さらいの秘密結社っしょ。夕夏(ユウカ)家の息がかかってる企業は本当にろくでもないし」


 えぇ……マジかぞ? ってか夕夏(ユウカ)家が絡んでたのか、アレ?


「大量行方不明事件に合わせて辺鄙(へんぴ)な村をカモにしてんだし! あちこち村を消して回ってるって言ってたし」

「そんな……、父からは何も…………」


 ヤマミは知らなかったようで、青ざめて震えている。

 それを察したマイシは「あんたに罪ないっしょ! 悪いのはヤミザキ、アイツだし!」とフォローしてくれた。

 それを聞いてホッとする。夕夏(ユウカ)家だからとヤマミまで敵視しないかと心配もあった。


 その後も、色々教えてくれた。あちこちで夕夏(ユウカ)家の企業が研究の為に村を犠牲にしている事、そして遺伝子を組み替えた人造人間が既に確立されている事、何よりも関係者は人権を考慮しないクズの集団である事。

 マイシいわく「遠慮せず、ブチのめしていいし」との事。


「父……、いえ! ヤミザキ! ……許さない!!」


 ヤマミは嫌悪するような憤りを表情に見せ、肩を震わせて唇を噛んだ。

 それを見たマイシは立ち上がり、オレと通り過ぎる際に耳元に「彼女(ヤマミ)を落ち着かせろし。支えてやんな」と言い、肩をポンポンと手で軽くたたき「じゃあな」と去っていく。

 そんなマイシの背中を見て「お、おい! 授業始まるぞ」と引きとめようとする。


「どうせカモフラージュの授業だし。あたし絵描くの性に合わないっしょ」


 手を振って、そのまま去っていく。しばらくして入れ替わるように先生がやってきた。

「席につこう」

 俯くヤマミに促すと、無言で頷いてくる。


 きっと父の醜態を知らされて胸中はグチャグチャかもしれない。彼女を一人にしておけない、直感がそう告げているぞ。



 それを見ていたリョーコも怪訝な顔をしていた。側でスミレはにこにこ。エレナは机に頬を乗せてふてくされている。

 ノーヴェン達もまた、なにか察していた。寡黙なフクダリウスも、能天気そうなモリッカも、キリッとするコハクももちろん同様。

 ナッセを知っている人は誰がしも「何か起きる!」と気配を感じた。


「ん? 龍史(リュウシ)マイシは来ていないのかね?」


 事情を知らない先生の言葉は、のんきな印象に映ったぞ。





 繁華街(はんかがい)で、マイシはクレープを手にもぐもぐ食べ歩きしていた。

 柔らかい生地で包んだ、甘いクリームと挟んだフルーツの酸味が絡まって美味しい。しかし一人で黙々と食べるのは陰鬱(いんうつ)だ。

 いつも一人で突き進んできた。だから独りでいるのは慣れている。

 しかし美味しく感じないのは、やはりナッセという存在が胸中に入り込んでいるせいだろう。決闘した際に、抱きしめてくれた人間としての暖かさを教えてくれた。


 ナッセ以外、抱きしめてくれる人間はもういない。

 親も兄妹ももういない。だからこそ今は特別な人間として自分の心に残り続けている。もしナッセがいなければ、こんな学校に立ち寄らず夕夏(ユウカ)家へとそのまま特攻していたのだろう。

 未練があったからこそ、わざわざ立ち寄った。


「あいつは人が良すぎるし」


 マイシは快く笑う。


 きっと工場長みたいな悪人にも容赦するかもしれない。人間の命を奪うことに躊躇(ためら)うからだ。

 だから代わりに引き受けようと思った。

 この世の中のクズどもを地獄に送り続けるという汚れ役をな!



 すると床に黒い円が広がり────、たちまち荒廃した世界に切り替わる。


 ドガァッ! 背後で豪快に粉砕されたビルが破片を散らす。振り向いてマイシは瞬時に竜を象るオーラを纏う。ボッ!

 煙幕が立ち込め、その中から人影が。ズン、と足を踏み鳴らし大柄の男が現れた。


 そいつは人間ではなかった。

 頭の左右から伸びた角が途中で上へ曲がって尖っている。モヒカンの黒い髪。鼻下辺りから左右に伸びて下へぶら下がった触覚のようなヒゲ。肩幅が広く、半裸。肩は肩当てのように丸く膨らんだ外殻っぽい。下半身は毛深い青い毛で包まれていて裸足。



「てめぇも夕夏(ユウカ)家の手のものかし?」


 ギロッと威圧漲るマイシに、大柄の男は怯みもせず逆に怒りで歯軋りしていた。ギリッ!


「オレ様はゴン蔵!! 遺伝子組み換えで生まれた戦闘特化の猛襲型人造人間だ! せっかく社長やってたのに、留守の間に会社潰しやがったなァ!?」

「人造人間が社長!?」

 マイシは見開く。


「そうだ!! 人造人間の中でも最強と認められ、一つの会社を受け持って夕夏(ユウカ)家の幹部としても昇格されたのよ!

 それをよくも……、よくもッ! 台無しにしてくれたなァ~~~~!!」

 グオオオオオオ!!


 ゴン蔵が激怒のままに昂ぶらせて吠えると、辺りがビリビリ振動して震え上がる。

 昨夜のハス太なんかと比べもんにならない強さとマイシは察した。


 地を蹴って爆発させて、問答無用でマイシへと飛びかかる。太い腕ながら素早く振り回し器用に乱撃を見舞う。しかしマイシは余裕で身を逸らして次々かわしていく。次に回し蹴りが広く刈り取るように弧を描くが、マイシは後ろへ沿ってかわす。その後、後ろへ宙返りして間合いを離れてスタッと着地する。


「ぬうッ?」

 マイシは「へっ!」と不敵に笑う。


「ぜんぜ大した事ないっし!! てめぇも地獄に落としてやるしッ!」

あとがき雑談w


 朝日がカーテンから僅かに部屋に差し込んでいる。

 ナッセは気持ちよさそうに寝ている。そこをガチャリと合鍵で入ってくるヤマミ。


ヤマミ「起きなさい!」

ナッセ「うーん、後5分……」

ヤマミ「もう!」


 じっと待っていたら、朝日のせいか寝顔のナッセが色っぽく見えた。


ヤマミ「…………!」ドキドキ!


 そっとナッセに顔を近づけていく。

 柔らかいほっぺをツンツン。頭上をナデナデ。両頬を両手でサスサス。

 その内ドキドキが募って……唇に唇を…………。ドキドキ!


ウニャン《早く起こさないとね。遅刻するよ》


ヤマミ「うわぎゃっ!!!!」(驚き)

ナッセ「うわあ!!」(驚き)


 って事で起こされちゃった……///////



 次話『変形するゴン蔵にマイシ苦戦必至!?』

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