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72話「ヤミザキは四首領の一人!?」

 仮想対戦(バーチャルサバイバル)センター内の二階建て仕様のレストラン。二階からは一階が見渡せるようになっていて、螺旋階段で繋いでいる。その反対側の窓の大窓から夜景が見渡せる。

 会社や学校からの帰りで集まってきたのだろうか、わいわい創作士(クリエイター)達で賑わっていた。


 とあるテーブルでオレはヤマミと相席、向かい合うような形でモリッカとコハクが相席についていた。テーブルクロスにカレーや定食など、料理が並べられている。ウニャンはヤマミの肩で香箱座(こうばこずわ)りしている。


「対戦を引き受けてくださって感謝です」キリッ!

「あははー! 楽しかったー! また対戦しましょう!」


「……とは言ってもオレはどっちにも負けたけどぞ」


 ()ねるように口を(すぼ)めるが、コハクは首を振って「あれは勝敗の内に入りませんよ」と付け足す。


「そうそう! なんで『賢者の秘法(アルス・マグナ)』使わないんですか?? バッビューンって爽快なのにー!」


 ジト目で「あはは」と乾いた笑いを見せた。

 しかし内心は「対戦で使う気になれないんだけどなぁ」と遠慮していた。

 ノーヴェンの時は必死だったけど、あれは対人戦で使うには威力が高すぎる。撃てば必殺の技。相手がアバターとは言え躊躇(ためら)うぞ……。


 モリッカは来た二杯のイチゴパフェをひょいと平らげていた。

 さっきからデザート片っ端から食ってるなぁ、と遠い目で眺める。


「それはそうと、夕夏(ユウカ)家に挑もうなんて無謀な事思いつきますね」キリッ!

「うん! ヤマミを自由にしてやりたいから!」

「そうですか……」


 彼女の事になったらナッセは真剣になるのだと、コハクはキリッと察した。


「ただ夕夏(ユウカ)家の総統ヤミザキは、世界で四首領(ヨンドン)の一人と呼ばれる大物なのですよ」


「よ……四首領(ヨンドン)?」

「世界を左右する力を持った四人の首領(ドン)。単騎だけで近代兵器を跳ね除け、正に天災が如しの力を振るう。その上、大国の軍で鎮圧(ちんあつ)する事も不可能なほど巨大な軍事力と組織力を持っているわ。父であるヤミザキもその一人よ……」


 え……? そ、そんな大物なのかぞ……?

 ってかヤマミは知っていて、それでも自由になりたいって思っていたのか……!?


「ええ。四首領(ヨンドン)は日本の総統ヤミザキ、アメリカの皇帝ヘイン、ローマの教皇エレサ、インドの英雄ダウートからなる四人です」キリッ!


 聞いただけでも仰々(ぎょうぎょう)しく背中がブルッと震えてくるぞ……。


「ってか中殷(チューイン)やロシアにはいないのかぞ?」

中殷(チューイン)主席(トップ)は幹部を含め、多数が行方不明。現在は独裁体制が崩れて混乱真っ只中。ロシアもそれほどではないのですが、混乱は小さくない模様。

 まぁ世界各地で起きている事ですがね……、だけど四首領(ヨンドン)だけは何故か健在で、いつもの通り暗躍しています。それほどの大物なのです!」キリッ!

「うわー!! 対戦してみたい! 対戦してみたいです!!」わほーい!

「一瞬で倒されるのがオチですよ……」


 ジト目のコハクが小言で(つぶや)くほど、そんな恐ろしいものなのかと勘ぐってしまう。モリッカは特にビビってなく「へー」で済ましている。怖いもの知らずだなぞ。


「僕もいずれ総統ヤミザキ率いる組織を壊滅させたいとも思ってました。が、ナッセ君も同じ考えとは奇遇ですね……。喜んで協力しますよ」キリッ!

「僕も僕もー!」

 モリッカは元気良く手を振っている。二人とも協力的で良かったぞ。


「それと妙な(うわさ)があるんですが……」キリッ!

「なんぞ?」


 つーか、コハクっていつもキメ顔をするのは癖なのかぞ?


「黒マフラーの女。神出鬼没で夕夏(ユウカ)家の企業を襲撃していると聞きます」キリッ!

「く、黒マフラー……女!?」


 ヤマミは見開く。

 学校の帰りで一瞬見かけた、あの妙なマフラーの人。それを思い出す。何故か通り過ぎて行っただけだけど、妙な違和感がした。


「もしやナッセのマフラーを借りてヤマミさん自身がやっているものと思いましたが、今日付き合ってみて違うと確信しました」キリッ!

「襲撃って……。夕夏(ユウカ)家に恨みがあるのかぞ?」

「ええ。恐らく……。

 夕夏(ユウカ)家の組織は表面上は慈善企業を(うた)ってますが、裏では色々えげつない事をやってますからね。恨む人も多いでしょう……」キリッ!


 ガツガツ大きく口を開けてホールケーキを丸かじりするモリッカ。ちょい周囲の視線が気になるぞ……。



 仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターを出て、お互い帰路に着く前に携帯を手に、コハクとモリッカの携帯の先端にかざし合う。ピッ!


「これでいつでも連絡できますね」キリッ!

「へっへー! これでまた遊べますし、対戦にも誘えますよー!」

 モリッカは嬉しそうに携帯を掲げて、グルグル回っている。


「またね」


 ヤマミと一緒に手を振って、去っていくコハクとモリッカを見送る。

 二人は顔を見合わせると「行こか」と頷き合って、帰路へと歩みだした。同じマンションへ向かうまで他愛もない会話を交わしながら、心を弾ませていく。そんな雰囲気に酔いしれながら奇妙な心境を覚えた。


 不思議な感覚だけど、こうして二人きりで楽しく会話なんて無かったような気がする。ずっとずっと前から独りぼっちだった気がする……。何故か不意にアクトの顔がよぎった。

 ……そういやアクトとは、離れた所での友人関係だったような感じするなぁ。いや異世界で会ってから間もないのに、初めてな気がしない。



 フッと視界が切り替わり、場所は教室。ヤマミが険しい表情でなにか小言を言ってくるのが映る。


 徹底的に打ちのめしてくる殺伐とした言葉に、苛立ちがブワッと湧き上がってくる。どこもかしこも厳しい言葉ばかり、もう聞くに耐えないと限界が来てしまう。


「なんでオレにばっか厳しいんだよ? そんなにオレが嫌いなのかぞッ!」


 (わずら)わしく思い、怒りを(はら)んで怒鳴ってしまう。

 突然の事でヤマミはうろたえ、どこか悲しげな顔を見せ「ご、ごめん」と走り去っていく。その時、強い後悔と自責の念が胸を締め付けるように押し寄せ、嫌な気持ちが混濁して心を掻き乱してくる。

 そして視界を覆うように薄暗く曇って、ぐちゃぐちゃと真っ黒にかき混ぜられていく。



「ナッセ!?」

「え? ……あ、あれ?」


 気付けば、自分はしゃがみこんでいた。胸がどこか締め付けられるようだった。ヤマミは「大丈夫……?」と心配そうだ。

 今のはなんだ……? 幻覚?? でも妙に現実感があった?


 まるで、()()()()()()()のような…………?


「いや、疲れてたのかなぞ?」

「ならいいけど……」


 後悔、自責の念……、嫌な気分が胸に滞っていたが、マンションに着く頃には嘘のように消えていた。




 寝る手前の深夜。時計は十時と半を切っている。風呂上がりのヤマミは自分の部屋でウニャンとソファーでくつろぐ。


「帰る時、急にナッセがしゃがみこんだようだけど……?」

《あれはフラッシュバックだね。さすがに前世の記憶は消しきれてないか》

「フラッシュバック? 前世の記憶……?」


《そうだね。前世で君が生徒会長みたいに小言言い続けて、ナッセを怒らした記憶。ナッセの為を思って言ったんだろうけど、逆効果になって互いに自責の念を持ってしまった。

 そんな負の感情が膨らんでいって、()()()()()を境にナッセが魔王化しそうになり、記憶を消さざるを得なかったんだ》


 ヤマミは曇った顔で胸に拳を当てて、少し俯く。


《前世のヤマミと今の君は違う。どうか気を強く持って、これまで通り接して欲しい》

「うん……」口を結び頷く。


 帰りの寄り道は楽しかった。見た事もない世界を見せてくれた。まだナッセは内気でぎこちない所はあるけど、決して悪い人間じゃない。

 リッチの時も自分の事のように怒ってくれた。

 ──そしてかつての友のモンスター化で、心の底から悲しみを自分に打ち明けてくれた。



「ナッセは私の大切な“仲間”だから!」


 ヤマミの落ち着いた微笑みに、ウニャンは安堵した。


 ()()()()のヤマミもナッセも、()()自分の本当の気持ちに気付いていないんだったね。

 まぁ、以前と違う出会いだから仕方ないね。ちょい手助けしてやるかな?

 その辺もワタシの楽しみでもあるんだ。ふっふっふ。




 一方、暗くした部屋。オレはベッドで横になっていた。しかし目が覚めたままだった。

 先ほどのフラッシュバックが気になって仕方がなかった。


《寝れないのかな?》


「うわっ!」

 突然のウニャンの声に身を起こす。机の上でウニャンは赤い目を光らせて佇んでいた。怖っ!


「実は時々、変な夢? が頭に流れる事があって……」

《ふふふ。どんなのかな?》


 言葉が詰まる。正直に言った方がいいのか戸惑う。だが師匠なら……。


「なんか生徒会長みたいなヤマミに叱られて、それを突っぱねて後悔する感じかな?」

《ほうほう。()()()()()()()()()()()

「う、うん。そうだよ。まるで平行世界(パラレルワールド)にいるみたいだったぞ!」


 ぴょんとオレの側へ飛び降りる。


《大丈夫、ヤマミを信じて! ワタシが保証するよ》


 にっこり微笑むウニャンを見て、なんとなく穏やかに落ち着けた。

「うん。わかった……」

 ふとんを引っ張って、再び横になる。ウニャンも側で丸くなる。二人して「おやすみ」と一言。まぶたを閉じて、意識を安堵の闇へ沈めていった。




 静寂する深夜のマンションを見下ろす黒マフラーの女。

 月夜を背景に、遥か高いビルのアンテナの上で(たたず)み、マフラーの端とフードの裾が揺れる。

 一言も発さず冷静にじっと見つめる。それは自ら孤高を貫き、頑なな信念が窺える寂しげな目線だった……。


 それを建物の間の隙間から見上げるアクト。ふう、とため息をつく。


「やれやれ……、前のナッセが言ってた通り堅物だなァ……」

あとがき雑談w


ナッセ「四首領ヨンドンってヤミザキの他にも三人いるのかぞ?」

コハク「ええ、おさらいしましょう……」キリッ!


四首領(ヨンドン)

 日本の総統ヤミザキ。現在敵対するであろう巨大な敵。

 アメリカの皇帝ヘイン。???

 ローマの教皇エレサ。???

 インドの英雄ダウート。???


ナッセ「後の三人は分からないのかぞ?」

ヤマミ「さすがに私も聞かされてないかな……」


ウニャン(現時点では設定決まってないだけだね)



 四首領ヨンドン。某海賊漫画を連想させる単語ですが、正直そこまで話を広げる気はありませんw

 一人ずつ長い話をかけて倒していくような展開もないですw

 ですが、いずれは全員登場しますw どういうキャラか楽しみにしててくださいw

(*´∀`*)



 次話『人造人間ってアレだよねw アレのイメージが強いw』

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