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69話「異世界の固有魔法!? 『精霊具』」

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、という大きな娯楽施設。映画や有名なアニメをテーマにしたアトラクションが多いテーマパークだぞ。今でも人気を博していて入場者が絶えないらしい。

 そんな施設さえ、仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターは対戦の舞台として再現されていた。

 ただの亜空間なので無人だが、イルミネーションとかキラキラ灯っていて、絶叫マシーンなど稼働しているものは勝手に動いていた。


 そこでコハクとモリッカはソロ対戦として対峙していた。


「へっへー! 今度はコハクさんの番ですよー!」



 一見、楽観に振舞うモリッカの背景を、コハクは殴られる事でキリッと察した。


 とある、どうしようもない障害との衝突。気持ちを交わせられる相手の喪失。そして自分に対する相手の愛情の認識。自分に滞った葛藤の爆発。それらの要素によって、自分の殻をぶち破る事があります。


 そう()()()()()()()()んじゃなくて、それが()()()()()()()だったのですね。

 自らの気持ちの開放と、障害を乗り越えた反動、それが急激なパワーアップの条件でしょうね。多分……。


 ナッセ達も、あの『闇の重圧ダークネス・プレッシャー』を乗り越えし猛者(もさ)。キリッ!


 普通なら闇の重圧ダークネス・プレッシャーに直面した人間の多くは命を落とします。

 なぜなら極限な精神圧迫感(プレッシャー)に耐えられずショック死する者が多く、行方不明になる原因にも含まれます。万が一、生き残れても廃人になったり、衰弱死したりと生還率はかなり低い。

 百人の内、五人か三人が正常に生還できる感じですね。多分の多分ですが……。


 だが、それらを乗り越えた猛者(もさ)は急激に成長するきっかけを得るという。

 ナッセもそれでマイシと互角に戦えるほどにパワーアップできたのは確認済み。



「……故に僕はあなた達を『猛者(もさ)』と認めましょう」キリッ!


 目の前にいるモリッカのみならず、脳裏に映るナッセ達に対しても敬意を沸き上がらせた。その想いを抱きつつ、コハクはオーラ篭る右手をかざす。そこから真紅の何かがシュンッと長く伸びる。


精霊具(せいれいぐ)九十九紅蓮(つくもぐれん)!!」


 オーラを纏う真紅一色に染まる一本槍。長い“()”と、刃部分である“()”の間の“口金(くちがね)”部分には装飾が象られ、穂先と呼ばれる先端の突起は鋭く煌めいている。


 モリッカは「おおー!」と目を輝かしている。



「あの槍……。ナッセと同じ具現化系武器かしら?」

「かなぁ?」


 モニターを眺めるヤマミに首を傾げた。

 コハクの手に持つ槍は、入学したてで裏施設に連れていてから見せてもらった。あの時は虫のように蠢いて葉脈のように幾重の突起が広がっていた。あの不気味な槍は忘れられようがない。


「あれは異世界の人間のみが持つ固有能力だね」

「え?」


 オレとヤマミはウニャンを見下ろす。ヤマミの太ももで寝入っていたはずが起きていた。


「ナッセの行った異世界とは、また別の異世界特有の『精霊具(せいれいぐ)』。自らの精神体を漏らし、それを自分のイメージに作り固めて具現化する魔法系の固有能力さ」


 異世界のまた異世界……。世界は広いなぞ……。



 ガギィン!


 空中でコハクとモリッカが交差。激突した一本の槍と拳が火花を散らす。その衝撃でビリッと周囲を震わせる。

 弾かれた二人は共に宙返りしてそれぞれ着地。

 コハクは槍をクルクルと回し「九十九紅蓮(つくもぐれん)一閃槍(いっせんそう)!!」と、シュバッと横に薙ぐ。


 モリッカは「とやー!」と飛んでかわす。広がった軌跡が周囲の建造物を上下に断ち、ズズ……ンと崩す。


 追撃と、間合いを詰めてコハクの槍が右往左往と弧を描いて薙ぎ振るわれる。モリッカは巧みな体術でいなしたり、どついたり、捌いていく。すかさず反撃とモリッカの回し蹴りが振るわれるが、コハクは後ろへ飛んでかわす。

 ブオッ! 余波で烈風が床から砂埃を巻き上げた。


 逆に距離を詰めるモリッカにコハクは槍を振りかざし、口金の装飾が変化して先端が三叉に変形。


九十九紅蓮(つくもぐれん)三閃槍(さんせんそう)!!!」


 ブオンッと薙ぎ振るい、三つの軌跡が広がる。モリッカは咄嗟に真上へ飛ぶ。通り過ぎた三つの軌跡が後方の建造物を四分割にした。更に後方の建造物も次々と裂いていく。ザザザザンッ!

 ガラガラと瓦解していく建物。煙幕が濛々と巻き上がる。ズズン!



「それオレにも出来るのかぞ?」

「無理だね」


 きっぱりとウニャンは言い切られ、ズルッと上半身を傾けさせる。


「な、なんでだぞ?」「どうしてなの?」

「言ったよね? あれは異世界の人間のみが持つ固有能力だって」

「固有能力……?」

「コハクの住んでいた異世界の人間は、非常に高度な魔法文明を築いている。不思議な技術で色々なユニークな施設やアイテムなどを作り出している。君たちも例の魔法本を異世界でもらったんだろう? これも元々はあっちの技術だよ」


 ヤマミはボンと本を出す。『アイテムの書』とタイトルに書かれ、収納数の「200」がその下に記されている。

 それを見て「あ、これか」と目を丸くした。


「元々は『ポン』って呼ばれていて、あっちの人間ならほぼ全員持っている収納用アイテムだよ」


 そう言えばエルフの職員ソフィアが“精神世界(アストラルワールド)由来の魔法の本”って言ってたな。


「固有能力じゃないから、その技術を譲ってもらって加盟している異世界に広まったものだよ。ただ()()()()()()は流石に真似できないね」

「体質……、そういう事ね……」

「そんなことが……!」



 コハクは槍をブンブン振り回して、遠く離れた周りの建造物を切り崩す。モリッカは「とっ!」「やっ!」とかわしていく。


「今度はこっちの番ですッ! だだだだだッ!!!」


 モリッカは両手を交互に突き出して、気弾を連射。コハクへ降り注ぎ、爆発が連鎖していってドドドドド……ッと、建物を巻き込んで爆風が広がっていった。しかしコハクはその爆風を掻き分けて現れ、葉脈のように広がった熊手みたいな槍を振り下ろす。モリッカはギョッと驚く。


九十九紅蓮(つくもぐれん)十閃槍(じゅっせんそう)葉爪(はづめ)”!!!」


 ズガガガッ、と床を引っ掻くように幾重の衝撃波が遠くまで走る。タイルの破片と共に、広々と土砂が巻き上げられた。煙幕が立ち込め、そこは深々と刻みつけられた爪痕が広がっていた。ズズズズ、なおも余震が続く。



「あの『精霊具』は一見便利だけど、最初はあんな立派な具現はできない。鉄を叩いて刀を鍛えるように、日々鍛錬して強固なイメージで鍛えて初めて、強力無比な武器になれるんだ」


 コハクがかざすオーラを纏う槍が目に入る。

 どことなく憧れのような感情が湧いてくる。すっげぇカッコいい! そう思えた。


「ワタシ達はそれが出来ないから、『刻印(エンチャント)』など他の方法で武器を具現化して戦っているんだ」


 ウニャンは二足で立ち、前足で間にポンッとウニを生み出す。しばらくオレとヤマミに見せびらかしすると、フッとかき消す。



 コハクはキリッと凛々しく表情を引き締め、槍を縦にかざす。すると同じ形状の槍がスウッと分裂増殖。周囲を数本の槍がクルクルと周回。


「だっ!」


 モリッカは掌を向け、気弾を放つ。それは高速周回を始めた槍に弾かれて、あさっての方向へ逸れてドカンと爆発。


「へー、それでさっきの連続魔弾を防いだんですね!」

「あなたのは気弾でしょう」キリッ!

「ぶー! 僕はれきっとした魔道士(マジシャン)なんですからっ!!」プンプン!


 ふてくされるように頬を膨らますモリッカ。

 まだ言い張ってるのかぞ……。



《正確に言うと『エーテル』だね》

「え?」「え?」

 オレとヤマミの声がハモる。


《オーラと魔法力を混ぜて放出する高度なスキルだよ。これなら魔法などを媒介にしないと放出できない魔法力もオーラのように扱えるようになれるんだ》


 それ初耳だなぞ……。


九十九紅蓮(つくもぐれん)二十閃槍(にじゅうせんそう)爆嵐(ばくらん)”!!」


 分裂して数を増やした槍が一斉にモリッカへ降り注ぐ。「とととっ!」と身を翻してことごとくかわしていく。外れた槍は床を穿ち、ドガガガッと『炸裂(バースト)』が重なり、タイルと土砂を巻き上げていく。


 ズドドドドドド!!


 機関銃のように撃ち出された数十本の槍が、辺りの床や建物を爆破の連鎖で覆っていく。なおもモリッカは捌いたり、弾いたり、身を翻したりと凌いでいた。

 その間にコハクは逆手に握り直した槍を後ろへ引き、周囲の光子を収束。キュイイ……。


九十九紅蓮(つくもぐれん)一閃槍(いっせんそう)天翔穿(てんしょうせん)”!!」キリッ!


 思い切って投げつけ、旋風を纏いながら超高速でモリッカへ真っ直ぐ突き進む。その勢いで床が一直線にガガガガッと割れていった。即座に迫り来る穂先にモリッカは驚愕の顔を浮かべる。


 ガカァアッ!! 稲光のように一筋の閃光が迸り、地平線向こうまで駆け抜けていった。



 コハクは苦い顔をする。


 投げつけた先は、建物もろとも真っ直ぐ抉れた痕が遥か後方まで続いていた。シュウウ、煙幕が風に流れる。その側でモリッカは尻餅をついて「へへ、やっばいです~」とおどけていた。


 隙を突いて不意の必殺を放ったというのに、まさかかわされるとは思ってなかった。子供のような性格とは裏腹に、場数を踏んで培った鋭い反応と判断力を持っている。

 かなりの強敵、とコハクは表情を引き締めた。キリッ!



 ヒュウウウ、煙幕が風に流れる。立ち上がったモリッカは所々傷ついている。しかしまだ余裕は窺えた。


「へっへー!! じゃあ、僕もちょい本気出しますよ!! 下級雷魔法デンガ!」


 モリッカが天へ指差したかと思うと、青い落雷がモリッカへ直撃。ガガァン!

 全身からエーテルを噴き上げ、電撃が周囲をバチバチ迸り、モリッカの髪の毛も青く輝く髪に、そして少々逆立っていた。唖然とする観客。


「これが(ちょう)モリッカです!」


 不敵に笑むモリッカから、威圧がビリビリと響いてくる。しかしコハクはキリッとした真剣な表情を崩さない。



「あれは『形態(フォルム)』だね。魔法を武器や全身に纏う基礎スキルだよ。モリッカのは極めつつあるから、ほぼ融合に近い」

「へー」


 ウニャンの解説に相槌(あいづち)を打つ。


 だがヤマミは思い詰めたように黙りこくっていた。ナッセやノーヴェン達のように独自のスキルに成長しているというのに、自分は基本的な魔法の使い方しか学ばされていない。

 前から気になっていた事なのだが、今になって段々それが強くなってきていた。


「変わっていないのは私だけ…………」ボソッとヤマミ。

あとがき雑談w


コハク「僕がメインのイベントが消えたのは解せませんが……」

モリッカ「ねぇねぇw どんな気持ち? どんな気持ち?」

コハク「グッ! 言わせておけば!」


精霊具(せいれいぐ)

 具現化系魔法。とある異世界の人間しか使えない体質的な能力。

 自分の精神体を漏らして、それをイメージ通りに鍛え上げて具現化する。エクトプラズムのようなものであり、自分の分身。


 本能に直結して能力がある程度決められているため、予備知識がなくても自然とその能力を発動できる。

 鍛え込む事で更に強力な能力に成長させる事もできる。

 逆に望んだ能力を発現させようとしても、本能と合わなければ大した力は発揮できず、また発動できない可能性が高いぞ。


 余談だが、これ先のストーリーが思いつかず放り投げた漫画の設定w

 当時、レベル低かったんだよ~! (´Д`;)


コハク「本当に作者っていい加減なのですね。刺していいですか?」


 え、ちょっと待って!! ……ごめん!



 次話『マイシが始動!? なんと彼女も夕夏(ユウカ)家に因縁があった!?』

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