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64話「待ち受ける最悪な運命!!」

簡潔(かんけつ)に聞くわ。ナッセの異常なまでに多いMP(マジックプール)は何が原因なの?」


 ヤマミはウニャンを問いただす為に、自分の部屋に連れ込んだのだった。

 真っ白の天井に壁。気品溢れる家具に囲まれて、二人は向き合っていた。しばしの沈黙。深夜の静けさが、よりそういう雰囲気を醸し出していた。


「……そう、答えたくな────」

「それを聞いて、君はどうするんだい?」


 即座に返してくるウニャンに、ヤマミは言葉を詰まらせた。


「最初に言っておくよ。ナッセ君には『修行をつけた結果』とごまかしていたけど、本当はヤマミの考えている通り『原因は普通じゃない』んだ!」


 ヤマミは自分の心が読まれているのかと疑心に駆られる。(わず)かに動揺したが、それよりも原因を知りたい気持ちが勝っていた。



「じゃあ聞かせてくれるかしら? すぐ解決できなくても、何かしら方法が探せるかもしれない」


 自分を落ち着かせるように毅然(きぜん)とウニャンを見据える。

 ネコの姿をしているけど、あの有名な魔女クッキー様の分身。得体の知れない術を使い、謎めいた言動をする。何を企んでいるのかもしれない。だが、ナッセを(おもんぱか)っている人情は感じられる。


「……そういう事なら、ワタシの条件を飲んでもらうよ?」

「言って!」


 間を置いて、ウニャンはコクリと頷く。


「まず、君はナッセ君より融通が利かない真面目な性格だ。それ故に自分で悩みを一人で抱えてしまいがちだ。このまま教えたら、ナッセ君の為に一人で無理をするかもしれない。それを前提に言わせてもらう」


 ヤマミは図星を突かれて、思わず竦む。

 ウニャンはトコトコと歩き、ソファーに飛び乗る。その間も顔はヤマミへずっと向けている。


「君には難しいかもしれないけど、ナッセ君と明るく笑い合えるようになって欲しい。それだけが条件だよ」

「……それは原因と関係しているの?」

「もちろん! 大アリさ!」


 ドヤ顔して(あご)を上げる。


 ヤマミは息を飲む。自分はリョーコのように気軽に誰かへ笑えたりはできない。それは恐らくナッセも同じ。

 彼はいつも無愛想で受け身。悩みがあれば一人で背負い込む。

 師匠とリョーコが上手く絡んでいるおかげで、心の闇に負けずにいられるのかもしれない。


「そうね。私には難しい課題……。でも、必ずナッセと一緒に笑えるようになってみせる!」

「そう気張らなくていいよ。やはり君はなんでも真面目に考えがちだ」


 ヤレヤレと首を振る。

 ヤマミは図星を突かれて、自分の性格に難色を示しそうになる。

 覚悟して目標まで突き進もうとすると、出鼻を(くじ)かれた。しかしそれで自分に足りないものが少しずつ見えてきた気がする。



「でもナッセには一人でも多くの理解者がいるといい。師匠のワタシだけではなく、身近な同級生もね」

「そう…………」

「ワタシもそうだった。元から真面目じゃなかったけど、一人で背追い込むような事があった。でもそれは(ひと)()がりだった。それを大切な仲間に気付かされた。

 だからこそ『運命の鍵』所有者として、最後まで正しい結末までたどり着けた」


 ヤマミは見開く。ウニャンの背後に、後光のような神々しい背景と共に銀に輝く大きな鍵が浮かび上がっていく。そういうイメージがした。



「そう、ワタシは『運命の鍵』の前任者……」


 ヤマミは息を呑み込む。


「やはり……、ナッセも!?」

「──そう、ナッセもまた『運命の鍵』所有者さ。本人は自覚してないけどね」


 ヤマミにとって()()がどういう重要性があるのかも、まだ曖昧(あいまい)だった。だが、何故だか重くのしかかる宿命と直感した。



「と言うか『運命の鍵』ってどういうものなの……?」


「挿し込んだモノを望み通りに変えられる神器(じんぎ)。永遠の命にもできるし、無敵にもなれる。憎たらしいヤツを畜生でも何でも変えれる。死んだ人を生き返らせる事も不可能じゃない。文字通り運命を変えるほどの鍵さ」

「代償はあるの?」

「……自分の命を削る。望みによっては死ぬ事もある」


 ヤマミは(あご)に手を当てて、しばし思案。


「その設定に矛盾があるんじゃないの?」

「どうして?」

「まず、その鍵は自分に挿しても効果はあるの?」

「もちろん!」


 キッと見据える。


「それならば、自分に挿し込んで『永遠の命を得る』と願えば、代償は無いも同然じゃない?」

「────そう気付くのは自然か」


 さそも分かってたかのように言ってくる。


「だったら、好き放題叶えまくれるじゃない!?」

「そう、これが『原因』にも直結するのさ」

「原因……? ナッセの多過ぎるMP(マジックプール)の?」


 尻尾を振り、前足を舐めて「そうさ」と応える。


「元々『運命の鍵』は所有者を最後まで生かし続けようとする。どの道、死ねない。と、言うよりも天に召されないって言い方が正しいかな?」

「どう……いうこと…………?」


 すると周囲の景色が徐々に暗転。気付けば床に巨大な時計が現れていた。針の代わりに鍵が一本と、放射状に囲むように等間隔で並ぶ時字(インデックス)まで現れていた。

 そんな奇妙な光景に、ヤマミは言葉を失う。

 やがて鍵はチッチッチと反時計回りに刻み始め、それは速くなっていく。すると時字(インデックス)は螺旋階段のように下へと続き、鍵もぐるぐると追いかけていく。それに(ともな)い周りの風景が下から上へと流れてゆく。


「過去へ……戻っている!?」

「そうだね」


 ふよふよ、浮遊感を感じる。ヤマミもウニャンも無重力状態だ。


 気付けば、外周に何人かいた。逆さまの状態で、下半身からキラキラと光飛礫を撒き散らし続けていた。その人間は徐々に若返っていって、赤ん坊になるとフッと消える。他の人も同様に次々と消えていく。


「そう、例え死んでも『所有者』は時を逆行して人生をやり直し続ける。延々(えんえん)と……」

「そんな……!」


 ヤマミはゾクッと背筋が凍る。

 ナッセも同じように人生を繰り返し続けていたのかと思うと恐ろしい。


「ただそれだけならマシなんだけどね」

「まだ……何かあるの?」


「前にも言ったよね? チートで都合よく捻じ曲げると、恐ろしい副作用が出てくるって!」



 周囲の風景が変わり、今度はゴゴゴゴと地鳴りが響き渡る、夜空の近未来的な都市。高層ビルがバキバキと亀裂が走ると、剥がれた破片が上昇していく。木々も、岩盤も、逃げ惑う人々も引っ張られるように上空へと舞い上がっていく。


「なに……これ……!?」


 上空を見ると、夜空の星々が円状の(ふち)に歪んでいて底知れぬ暗黒の円が窺えた。


「ここはどこか遠くの星。ブラックホールの事象の地平面に触れた恒星系が吸い込まれているのさ」

「そんな事が……!?」

「現実だよ。遠すぎて事情を知り得ないだけで、色々な事が起きている。恒星系が数千億個もある銀河系が、宇宙に数兆もあるんだ。同じ時間軸ですら、文明を築く知的生命体は億以上存在している。現存する生命体ってだけならもっと多いけどね」


 世界が広過ぎる事を思い知らされ、ヤマミは唖然とする。あちこち知っている魔女クッキー様とは一体何者なの……?


 ゴゴゴゴゴ!!


 更に鳴動が大きくなり、大地が裂かれるように捲れ上がっていく。まるで惑星が引き裂かれるようだ。

 全てを粉々にしながら吸い込んでいく上空の漆黒の闇が、恐怖を募らせる。



「それでも、何度でも止めてみせる!!」


 とある少女が、揺れる高層ビルの屋上で立っていた。気丈に上空を見据え、両腕を広げながら空へ掲げる。すると溢れ出すように膨大な魔法力が吹き荒れた。

 それは周囲へ広範囲に地響きと余波を撒き散らすほど、凄まじいものだった。


 ヤマミはビリビリと衝撃を受ける。この量……ナッセと同じ!?


 少女の両手の上に、輝くリングが浮かび上がり、上下に並ぶように何重も大小様々なリングが形成されて広がっていく。その中から銀に煌く鍵が閃光とともに抜け出てくる。

 すると命を吸い取られるように少女は苦い顔で呻き、口から血が垂れる。それでもカッと見開く!


輪廻の法輪リンカーネイション・リング!! 御開帳(ごかいちょう)運命(うんめい)(かぎ)』!!」


 世界を照らすほどの眩い後光を放って、鍵は現れた。

 まだ残っていた人々は「おお……!」と感嘆を漏らす。ヤマミもその光に驚き固まる。


 少女は手を差し伸ばし、鍵は矢のように上空へと撃ち出された。それはブラックホールへと吸い込まれていく。

 ピシッと音がすると、なんとブラックホールがキュービック状に粉々に分割されていく。上空を覆うようにキュービックの群れが縦横無尽と飛び交う。そして徐々に空へと溶け込んでいくと、巻き戻しのように吸い込まれたものが全て地上へと還っていく。人々も木々も建物も元通りになっていく。あっという間に空は青空に染め、太陽が明るく地上を照らす。


「うおおおおおおおおお!!!!」


 人々は奇跡だと、歓喜に満ちた歓声で大音響に広がった。

 空から戻ってきた鍵を胸に、少女は安心に笑みながら息を切らし、(ひざまず)く。



「す、凄い……!」

「ヤマミ! ここからだ!」


 気付けば、少女から黒煙が立ち上っていた。

 苦しみもがくように少女は(うずくま)る。苦悶の表情を空に向け「ああああああ!!」震える口が開く。人々はその気配にざわつく。

 やがて黒煙は天と地を漆黒の柱で繋ぎ留めるほどに肥大化。周りの景色が淀んだ闇に変わる。

 黒き柱の中から、巨大な()()が眼光を光らせて現れた。ズゥン!


「グハハハハハァ!!!」


 漆黒のリングを背負う巨大な黒い化け物が哄笑すると、戸惑う人々を地上から漆黒のトゲでザクザク串刺(くしざ)し。聞くに堪えない悲鳴が(つんざ)く、(むご)たらしい阿鼻叫喚地獄が大陸中に広がっていった……。



「前任者として成功してたからワタシも最初知らなかったけど、何度も願いを叶えたり、ループを繰り返したりして因子(いんし)が重なり続ける事で、MP(マジックプール)が無限に増大し続けて限界を超えた所有者は『魔王化』してしまうんだ!」


「そ……んな…………!」


 目の前の()()とナッセを連想し、青褪めたヤマミはガクガク膝を震わせ崩れ落ちる。

あとがき雑談w


 ナッセはRPGをやっているようだ。

 ついにラスボスである魔王に出会って、いざ戦闘!


 魔王は強力なブレス攻撃や魔法をバンバン連続で使ってきて苦戦だ~。


ヤマミ「強いわね……」

ナッセ「うん、全滅させられた事も少なくないぞ」

ヤマミ「思ったんだけど、この魔王って魔法惜しげもなく使ってくるけど枯渇しないの?」

ナッセ「プログラムで魔王のMPは無限に設定されているみたいだ」


 しかし全滅してしまった…………。


ナッセ「ぐぬぅ……!」

ヤマミ(ふふっw 顔芸面白いw)



 次話『ヤマミの決意!!』

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