59話「奥義炸裂! そして決着!!」
ただならぬ威圧を醸し出すナッセ。小突けば倒れそうなほどの、血塗れの満身創痍。されど鋭く見据える視線は数々の戦地をくぐり抜けた侍の様!
ノーヴェン達はビリビリと気圧される。背中は汗で濡れて、頬を汗が伝う。
「オレの大切な仲間だ!!」
彼が告げた言葉に迫真がある。本気だろう。ナッセはヤマミを理解し、そして通じ合っている。
その事に、ノーヴェンは茫然自失。
既に二人はデキてた! それが頭の中でこだましていた。ヤマミへの失意で両膝を地面に下ろした。ガクッ……。
「お、おい……? 多分勘違いしてると思うが、恋慕の意味でじゃないぞ?」
汗を垂らすコマエモンが肩を揺するが、耳には届いてないようだ。
「ふ……ざけんなヨ…………!」
ノーヴェンは恨みづらみと呟く。すうっと立ち上がる。ギリ……、歯軋りする。
小学生の頃、資産家同士での交流会でミーはヤマミさんを一目見て恋に落ちましター。その人に相応しい男になろうと必死に努力したのデース。知識も多く得て、あらゆる格闘技を得て、文武両道の男へと上り詰めたのデス。
シカシ、何度かの交流会でアピールしようともヤマミさんは振り向かずそっぽを向く。何が足りないノカ、と苦悩しましター。
その後も血の滲むような勉学と筋力トレーニングに励みまくったのデス。
その結果、自他と共に高レベルの創作士として一目置かれる存在になったはずデース。資産家の間でも注目の的になっていマース。
それでもヤマミさんは頑なな振り向いてくれませんデシター。
そんな彼女が振り向いた相手は、どこともしれぬ馬の骨のナッセ。そんな白髪のクソガキがヤマミさんと一緒に洞窟探検で関係を築いていったダト……?
そして「オレの仲間だ」ですッテ!?
「テメーふざけんなヨォォ!! なんでテメェが! テメェなんかにヤマミさんが振り向いてたまるカッ!!
ミーの方がもっともっとヤマミさんを愛していマース!! 誰よりも深く愛していマース!!
なのに、なぜそれが報われないのデスカァァ────ッ!?」
勝手にブチギレているノーヴェンの絶叫に反応するように、光の柱が天を衝くように噴き上げる。
すると数百ものメガネがナッセを取り囲んでいた。観客の誰もが驚く。未だかつて見た事のない『分霊』だった。
誰もがビリビリと気圧されそうになる。当のコマエモン、ミコトも同じだった。
だがナッセは依然と動じない。その周囲に、数々の光の波紋が浮かび上がっていく。
「ヤマミさんへの愛情は、ミーの方が世界一ィィィ! 世界一なんだァァ────ッ!!」
包囲しているメガネから一斉に光線が放たれ、あたかもナイアガラの滝のような凄まじい弾幕が四方八方から押し寄せ、ナッセを飲み込んだ!
ズッドオオオォォォォオン!!!
大気を震わせ、白光の爆発球が大地の岩盤を吹き飛ばしていく。嵐のような旋風が所狭しと吹き荒れた。ブオオオオオ!
「くっ!」
コマエモンとミコトは腕で顔を庇い、吹き飛ばされまいと踏ん張る。
「ハハハハハ!! 思い知ったカ!? これがミーのヤマミさんへの深き愛情デェェェース!!」
「……本気で言ってんのかぞ?」
ノーヴェンは絶句した。凄まじい唸りを上げる白光の爆発球が渦を巻いて輪状に押し退けられ、中心部からナッセが姿を見せる。
爆発球だったそれは破裂するように、バァァァンと一気に霧散していった。
「バ……バカな……!?」
そんな驚いているノーヴェンをオレは睨みつける。
正直言って、この戦いでヤマミへの愛がどれだけ深いか思い知らせられるのか分かんねぇ……。
分かってんのは……、一方的な愛を偉そうに誇示してるって事だけぞ!
オレの周囲に浮かんでいた無数の光の波紋は、それぞれ一点へと凝縮されて輝く雫となる。それらは次々と掲げる太陽の剣の宝玉となるように収束されていく。なおも雫をかき集め続け、宝玉は更に眩い輝きを増大させていった。
ボコン! オレ自身を中心に地面が陥没。尚も周囲を旋風が荒ぶる。
「あんたがヤマミをどれだけ好きなのか、オレは知らねぇ……」
「当たり前デス!! ユーなんかより、ずっと前から愛し────」
「けどよ、おまえ自分ばっかりで、ヤマミの気持ちを考えた事あるのかぞ?」
オレが憤る一言に、ノーヴェンは次第に見開いていく。
最初に出会った時は引っ込み思案っぽく、感情を抑え気味でしタ。いつ出会っても浮かない顔ばかり。どんなに和ませようとも笑顔に変わる事はなかったデス。
まだ愛が足りないのかと思い込んでいまシタ。
だが、それは違ったのデスカ……?
「ヤマミさんの気持ちを……? ではユーは分かっているのデスカ?」
疑問で戸惑うノーヴェンを前に、オレは肯定で頷く事も、否定で振る事もしない。
……悪い。分かってるかといえば微妙だと思う。
けどな、彼女は誰にも言えなかった自分の想いを……そして『夢』を、オレに吐き出してくれたんだ! それだけは確かだ!!
「ヤマミは、ずっと前から苦しんできた! 呪われた夕夏家に呪縛されてな!!」
「ナニ!?」
宝玉から放たれる光の輪が断続的に広がっていく。それだけでも恐ろしい程の威力が感じ取れ、ノーヴェン達を畏れさせた。
それは初めて見るものだったが、それが噂に聞く奥義級スキル『賢者の秘法』だと察した。
それがノーヴェンのナイアガラ級の弾幕を押し退けたのだろう。
「どっ……どういう事デス…………!?」
「夕夏家はただの資産家じゃないぞ! 呪縛されし呪われた一族。血縁者はみんな『刻印』という鎖に繋がれた奴隷。娘であるヤマミも妹も何もかも奴隷だ。
その元凶は……夕夏家総統ヤミザキ!!」
銀河を纏うかのようなオレの威圧感で、フィールドは震え上がっていた。
そして螺旋を描くような形状、その一本だけがまっすぐ伸びる刀身、五メートルをも超える超巨大な銀河の剣に、誰もが驚く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!
「くっ!! な、ナイアガラ・メガネビーム!!!」
「雷電流居合術、飛閃乱舞!」
「命懸けで行くZE!! アルティメット・ホーリーストォォーム!!!」
ノーヴェン、ミコト、コマエモンが総攻撃の挙動を行う。メガネビームのナイアガラの滝が如くの弾幕が、居合い切りの乱射が、ミコトの白龍の光線がオレを吹き飛ばさんと襲いかかってくる!!
「オレは総統をブッ倒す! そしてヤマミを自由にしてやるんだぞ!!」カッ!
戦意漲らせて一歩足を踏み出し、銀河の剣を一振り一閃!
「ギャラクシィ・シャインスパ────クッ!!!」
気合いの叫びと共に渾身で振るった、フィールド全てを薙ぎ払うような巨大な剣閃が駆け抜け、巨大な白龍もろともノーヴェン、コマエモン、ミコトを一気に吹っ飛ばした。
「がはああああああ────────ッ!!!!」
刀もメガネも白龍も決闘盾も何もかも木っ端微塵に破片が四散し、三人は高々と舞った。
そして地面に激突するように落下。煙幕漂い、横たわる三人は微動だにしない。
ドドドン! 光の爆発が連鎖し、棺桶化して三つ並ぶ。
「な、な、なんとォ────!!? 一撃で『インテリスリー』全滅ゥ!!?」
ウオオオオオオオオオオオオオ!!!
かつてない最大最強奥義が炸裂したという事で、観客の興奮は最大限に昂ぶった!
ふらりとよろめく体を繋ぎ止めるように太陽の剣を地面に刺し、踏ん張った。
ハァ、安堵に一息をつく。
勢いでやったけど……、今のが……最後の力だったぞ…………。
「ナッセ!」
笑顔のリョーコで駆け寄って来るのが、霞んだ視界に入る。どうやらそっちも勝ったようだなぞ、安心感が胸を満たす。力が抜け、光の剣が消えた。ガクリと前屈みに倒れていくと、リョーコが胸で受け止めてくれた。ガッ!
「もう! またボロボロになっちゃって……」
「……へへ、すまないぞ」ハァ……ハァ……!
血塗れのオレにリョーコは呆れつつも、しょうがないなと笑ってみせた。
そんな二人を映すモニター上方に黄金の立体文字で『WIN』が浮かぶ。紙吹雪が散って勝利を祝福。
「この決戦を勝ったのは……、新参チーム『スター新撰組』だァァァア!!!」
ドワアアアアアアアアアア!!! 観客の歓声で大音響に沸いた。
対戦申請ルームで、アクトは「やっぱりさすがは俺の親友だ!」と拳を握って笑む。それと対照的にウニャンは静かにモニターを眺めていた。
ようやく『賢者の秘法』を取得したとは言え、まだまだこれからだよ。ナッセ君!
別の対戦申請ルームでフクダリウスは腕を組んで「がっはっは!」と大らかに笑う。
「それにしてもあやつら……、どこへ行ったんだ?」
何故か同じ『無頼漢』チームであるタネ坊とキンタは既にいなかった。
歓声響く仮想対戦センターを後に、団子状態のタネ坊とキンタは沈んだ顔でトボトボと去っていった。
その額にはツノが生えてきていた。ズズ……!
あとがき雑談w
かつてリョーコを負かしてたモブ創作士さんたち。
泡使いのミズオさん、鮫男のカミヤさん、甲冑二刀流のシュウさん。
ミズオ「あわあわ……。ヤバくない??」
カミヤ「ああ、これで分かった。ナッセとアクトの金魚のフンじゃねぇ……!
リョーコ自身もすげー強くなってやがった!!」
シュウ「ってか威力値2万くらい超えてないか?」
ミズオ「僕たち『壊乱隊』チームとして、数年かけてBランク層まで来たんだけど……」
カミヤ「あいつら駆け足でAランク層行っちまいやがった!」
シュウ「アクトってヤツとぶつかって、全滅したのも無理ない」
ミズオ「リョーコだけ狙っても同じ結果になってたよね」
カミヤ「マジでそれなw 死ぬ死ぬw」
ナッセとリョーコに続いてアクトが無双したのはこいつらだった!?
気付いたら倒れていたという創作士だぞ。
シュウ「い、一体どんな方法でレベルアップしたんだ……!?」
次話『ヤマミがなぜか同じマンションに? 波乱の予感?』