55話「歴戦の戦士、両雄激突!!」
対峙するアクトとフクダリウスの全身からこもれ出る威圧。眼光宿る視線がぶつかり合う。
「……ワシもナッセと戦った事がある。見事な戦いぶりだった。根気比べで負けたのはあれが初めてだったわい」
「ほう! どういうシチュかは知らんが、俺の誇れる親友はやはり期待を裏切らないなァ」
「親友とな? ナッセとお主の関係がなんなのかは、また後で話を聞きたい」
「あァ……! たっぷり話してやらァ」
ズンズン、地面を揺るがすように両雄歩み寄ると、ニッと不敵に笑い合う二人。
フクダリウスは「むん!」と力むと、隆々した筋肉がボンッと膨らんで、メキメキと唸りを上げながら身長が五メートルに伸びるほどの巨躯に変貌。それを見てアクトは嬉しい笑みを広げる。
それを側で見ていた三団子。この場にいるだけでビリビリと体を衝撃が貫くような威圧が感じられ、タネ坊とキンタは息を呑む。ただならぬ雰囲気に身が竦むようだ。
「くっ……! 俺達とは……まるでレベルがバーニン違いすぎる……!」
タネ坊は恐怖で震え真っ青だ。
「真ん中のフクダリウスは抜け殻やけど、それでもちゃんとした胴体として機能してるやん」
「お、おお。本当だ。喋らなくなっただけで、確かに俺達の肉体としてキンタと疎通できるほど繋がりが感じられる」
「これなら実質的に一対四になれるやないか?」
「そうか? よ、よし! 加勢しよう!!」
空気を読まず、腕を振り上げてタネ坊とキンタも巨躯を揺らしながら大地を駆ける。
「アクト!! バーニング覚悟しろォ────!!!」
「せや!! これが我ら『無頼漢』の底力をや~~~~ッ!!」
三団子がナイフを手に、アクトへ飛びかかる。すると怒気を孕むアクトとフクダリウスが振り向く。怒りに満ちた形相だ。
「邪魔だァ!!」「すっこんでおれいッ!!!」
アクトは刀で、フクダリウスは斧で、三団子に強烈な一撃をドゴン、とぶちかます!
ドドン、光の爆発と共に棺桶が二つ転がった。シュウウ……。
「な、な、なんとォ────!!? アクトならいざ知らず、フクダリウスが味方のタネ坊とキンタを倒しちゃいました────ッ!!」
驚きで観客も「ウオオオ!?」と湧き上がる。
「ふむ、初めて仲間割れを?」
「そうですねー! 元々、息が合っていたチームだっただけに驚きですー!」
「今回は一線を越えたか? 二人の身勝手にフクダリウスの怒りを買ったようですな」
「ちょっと気に入っていたチームだけに残念ですー! チーム解散しちゃうんですかねー?」
「……存続は難しいでしょうな」
対戦申請ルームに戻っていたタネ坊とキンタは茫然自失。アクトならいざ知らず、まさかフクダリウスにまで牙を向かれるとは思ってなかったのだ。
ちなみに何故か二人は団子のままだった。真ん中のフクダリウスだった胴体はなくなっていた。
【無頼漢二玉団子】
地属性・暗殺者・下級上位種・攻撃力680/守備力560
【効果】ルール上、このモンスターは『蛮族』としても扱う。
【説明】団子のように巨大な顔を二つ連ねている巨大なモンスター。ゴリラのキンタが駆け回り、タネ坊の太い腕で繰り出す二刀流ナイフの攻撃は強い。
「そういえば、なんでフクダリウスだけ戻れたんだろうか?」
「せやな? 謎やわ~~? ま、まぁ……嘘ついてたけど、元に戻れてよかったやね……」
「あ、ああ、結果的に叱られずに済みそうだ」
彼らは確信犯だった。【融合体】のテキスト通り、現実でも元に戻らない事を……。
一方、ナッセ達側の対戦申請ルームでモニター前にいるウニャンは尻尾をゆらゆら揺らしていた。
《ふふふ。“フクダリウスだけは融合体しなかった”因果に組み替えた。まぁ本人も望んでたわけじゃないしね。さすがにそのままだと妻子が気の毒だ。だからサービスしたよ》
「うおおおおおおお!!!」
「があああああああ!!!」
フクダリウスとアクトは獣じみた咆哮を上げながら、得物を振るって激突!
ズドォォォォンッ!!
途端に大地が震え上がり、大気が弾ける! 吹き荒れた衝撃波が波紋のように広がり、岩盤を捲り上げ、木々を薙ぎ倒し、周囲の岩山を次々と傾けさせる。観客も振動が体を貫いたような感覚を覚え、興奮が沸き上がってくる。
ガギギギゴゴゴゴォォォォン!!!
二人は巨大な体に見合わず、嵐のように超高速ラッシュを繰り出していた。その度に足元の大地が陥没し、ズン、ズン、断続的に範囲が広がっていく。
「ぬおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
死に物狂いの形相で吠え叫びながら、アクトは刀を、フクダリウスは斧を、それぞれ振るい続けていった。血塗れになっていくも気力でお構いなしに振るい続ける。何度も激突が繰り広げられ、大気が震えていく。
徐々に刀が欠け、斧も欠け、それでも激しくぶつけ合う。果てに得物さえ粉々になれば、次は素手!
己の肉体一つで思いっきり語り合いだァ!!
ズガガガガガドゴゴゴゴゴバキキキキキキ!
全身血塗れで、狂喜の笑みを浮かべながら、目にも止まらぬ超高速の応酬で殴り合い続けた。
まるで二つの竜巻が衝突し合うように大地を荒らし回り、岩山が次々と瓦解していく。なおも烈風が辺りを吹き荒れていく。徐々に稲光が二人の激突から迸り始めていく。
観客はシャドーボクシングをしながら、興奮のままに声を張り上げていく。
ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!
かつてない激震で観戦席が震えた!
実況も解説も唖然と、二人の戦いを見守り続けた。
限界か、二人の膝が震える。しかし血塗れながらも眼光は鋭く煌めいている。
「ふぬぅ……!」
二人揃って、形相で唸り、隆々とした筋肉を更に膨らませ、振りかぶる拳が徐々に輝いていく。その輝きは周囲の大気を震わせていく。全身のオーラを拳に閉じ込めているかのような威光。見ているだけで凄まじい威力が推し量れる。
二人は残っていた余力さえ振り絞って、この一撃に賭けるつもりだ。
「アクトォォォォ!!! 受けろォォォォッ!!!!」
「フクダリウスゥゥゥウ!!! 俺のも受けろォォォォォ!!!!」
バガァァァンッッ!!
渾身込めた最後の一撃!! アクトとフクダリウスの拳が互いの頬を穿つ!
ズン、と全てが震え上がり、足元の大地の岩盤が粉々と捲れ上がっていく。凄まじい余波で嵐が吹き荒れ、しばらく衝撃波の津波が辺りを蹂躙。
それが収まると辺り一面は瓦礫だらけで真っ平らになっていた。
それでも二人は交差したまま立っていた。それぞれ相手の頬を殴りつけたまま固まっている。
「ぐうっ……」
「っがァ……」
二人は血飛沫を撒き散らし崩れ落ちた。そのまま大の字で仰向けに倒れ合う。共に荒い息を立てる。
「まだ……、まだまだ……ワシはやれるぞ……」
「ケッ! そいつァ……、俺もだ!」
二人は揃ってガクッと意識を失う。周囲に光礫が舞う。
ドドン! 二人共に光の爆発に包まれ、棺桶化。
しん、と静まり返った観客。しばし呆然。すると途端に「すごい戦いだった!!」と歓声が大音響で湧き上がった。パチパチパチパチ拍手の音が鳴り響き、二人の死闘を称えた。
ドワアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!
「さてラストは……、リョーコ対『夕夏家第二陣』だァ────────ッ!!」
単身リョーコは引き締めた表情で、目の前の白いフードの三人組と相対していた。
先頭の少女もさる事ながら、後方の二人も双子のようにそっくりな顔で無表情。感情が窺い知れない。まるで人形を相手しているかのような不気味さが伝わってくる。
「……さぁ、行くわよ!」
リョーコは自分を最後の砦と思い、全身からオーラを噴出させる。強い生命力を誇示するような眩い輝きだ。
それだけでもズズズズ……、と地面が振動していく。
「…………『奴隷集約』!」
少女は無機質に顔色一つ変えず、右手の甲に赤い『刻印』が浮かび出す。
すると後方の二人にも『刻印』が浮かび上がり、迸るオーラが少女へと流れ出す。共鳴し合って、大地や大気すら鳴動するほどの暴れ狂うオーラが少女を包んだ。
リョーコはその凄まじいオーラの流動に驚きつつ、少女の凛とした上品な顔にヤマミを連想した。顔立ちが似ているのだ。だがその目は虚ろ。
あとがき雑談w
~『無頼漢』チームの誕生秘話~
タネ坊「自衛隊時代での仮想対戦の成績が良くないから、フクダリウスをメンバーにしよう」
キンタ「せやな! ワイおっさん好きやし~w」
タネ坊「浮気はダメだぜ?」フッ
フクダリウス「なに? ワシをメンバーに?」
タネ坊「ああ。最強のベストメンバーになると思っている。どうかな?」
キンタ「せや! 三人組のチームやないと仮想対戦できへんし」
フクダリウス(……見栄だけは人一倍とは言え、タネ坊は一応分析能力と洞察力がある。キンタはコア通だがユニークで柔軟な発想で戦える。
資質は悪くないのだが……、慢心がひどい。
一緒に戦う事でこいつらも目が覚めて、成長に一役買うかもしれん)
タネ坊(頼む! 頼むぞ……! どんな手を使ってでもA級にならんと!)
キンタ(人類ブサイク補完計画を完成してぇから、ワイら強うならへんとな)
フクダリウス「……分かった。喜んでメンバーに入ろう」
タネ坊「ありがとう! これからもよろしく!」
キンタ「感謝しかあらへん! これからもよろしゅうお願いしたるわ」
こうして『無頼漢』チームが出来上がったのだぞ。
現在タネ坊とキンタがやらかしたせいで解散危機に陥っているがw
次話『リョーコの奮戦! がんばれー!』