54話「アクトと無頼漢三団子!」
くっ……! マズったぞ……。
痛めた足が満足に動いてくれない。しかも疲労困憊で体が重い。立ってるのさえ辛い状況。息を切らし苦い顔で、剣を握る。
それでも容赦なくノーヴェン、ミコト、コマエモンが攻撃の挙動を行う。メガネビームの嵐が、居合い切りの一閃が、ミコトの白龍の光線が一斉に覆い被さって、光の彼方に呑まれる……!
ドガガァン!!
「ああっと!! ナッセ! 為すすべもなく、集中砲火を浴びたァ──────!!」
噴き上げている大爆発を映すモニターに、観客は「うわぁ……」と騒然する。誰もが「終わった」と落胆。
「……ナッセ君は今日一日で入ってきましたからね。ノーヴェンの知略を知らなかったのは致命的です」
褐色肌の横幅な体格の戦士風オジサンは黙祷を捧げるように目を瞑って俯く。
「でもさー、あの白龍を単体で撃破したのって、フクダリウス以来ですよねー!?」
黄緑色のショートヘアの黒スーツ女子は目をキラキラさせていた。
小柄な剣士が、最強のドラゴンを打ちのめすあのシーンは強烈な印象だ。観客の誰もが舌を巻いた。しかも四十連撃の圧倒される迫力は鮮烈だ。
「ナッセ君! ありがとうですー!! またの活躍を期待してますー!!」
るるーっと涙を流しながら、バイバイと手を振る。
「さて、次は────!」
何故か大小ともにモニターはナッセを映すのを止めて、アクトと無頼漢三団子、そしてリョーコと『夕夏家第二陣』の対峙シーンに切り替わった。
「へっ! こっちも早くおっ始めようぜ?」
刀を肩に、不敵に笑む大柄な男、アクト。それを見下ろす三団子。足元には雰囲気作りのように煙幕が立ち込めていた。
「……ま、まさかナッセ君が『殺陣進撃』を使うとはね」
「せやな。パクるとは思わんかったわー」
「元々、センスがあったって事かね……。糞! 俺も努力せねば!」
「ナッセはん、なんかムカつくわ~!」
「俺もだ!」
タネ坊とキンタが次々に話すも、フクダリウスは沈黙している。
「お前ら、ナッセが気にいらねぇかァ?」
「本当を言うとな、糞餓鬼って思ってる。俺がバーニング努力してるのに、ヤツはあっさりセンスで超えていく。本当に……腹が立つよ! 才能だけで強くなるなど、ふざけた話だ!」
「せや! あんなチート野郎がノーヴェンはんに一杯喰わされたのはスッキリしたわ~」
アクトはフッと鼻で笑う。
「お前ら、先輩なのに情けねェな?」
「……なん……だと?」
「あんさん、ナッセはんの何が分かるんや? ポッと出キャラの癖に生意気やな~~!」
ぶてぶてしく不満を吐き出す
「……ナッセの何が分かる? そいつァ……こっちのセリフだァ!」
ギロッと殺気孕む目線を見せる。
タネ坊とキンタはゾクッと寒気が走る。
「だが! この融合体はバーニング最強無敵ッ! ごおおおおおッ!!」
「せやせや~~! アリ一匹踏み潰したるわ~~!!」
周囲に余波を広げ、巨躯を揺らしてアクトへ迫る。そしてタネ坊の大きな両腕から繰り出されるナイフ捌きが嵐のように吹き荒れる! ズバババッ!!
しかしアクトは見た目とは裏腹に、器用に身を翻して全てかわしていく。なおもナイフ捌きは止まらず、周囲の木々や地面を斬り刻んで破片を散らす。
ドズン! キンタの大きな足が踏み潰してくるが、アクトは飛び退いていた。
タネ坊は挟み込むように左右からのナイフの一閃を放つ。しかしアクトは一振りの刀をかざして止めた。
ギリギリ……、三団子は震えるまま押し切れない。アクトは笑む。踏ん張る足と腕に筋肉の膨らみが窺えた。
「あぁ!? こんなモンでナッセに先輩面してたのかァ……?」
ビクッとタネ坊とキンタは見開いて竦む。
アクトの全身から漲る殺意。数々の戦場を潜り抜けた血の匂いさえする本物の戦士。言葉で表すなら「夜叉」だ。
「俺達ァ……、後輩を導く先導者であるべきだ。己のちっぽけな努力を過大評価して、後輩の才能に嫉妬してんじゃねーよ! 同じ先輩として恥ずかしいわァ!」
「な、何だと……!? 俺達の血の滲むような努力を馬鹿にするのか?」
「せや! ワイらはプロの創作士になる為に、必死に頑張っとんのや!」
するとアクトの背後から巨大な黒い悪鬼が膨れ上がる!
「がああッ!! 紅蓮斬ッ!!!」
アクトの振るう刀に紅蓮の炎が生まれ、怒りを込めて三団子に殴りつけた。
ドギャア!!
大気と大地を震わせる轟音が響き渡る。
「ぐが……!」
流石の三団子もよろめいて、たたらを踏む。
「おいおい! あのなぁ……、それじゃまるでナッセが努力してねェように聞こえるぜ?」
「くっ……! そ、そうだ! あんな糞餓鬼が努力してるとは思えない!」
「せ……せや!」
フン、と鼻で笑い飛ばす。そんなみっともない姿にアクトは心底呆れる。
「ナッセはなァ……、洞窟での死線を頼もしい仲間と共にくぐり抜けてきた。そして特上位種リッチーをも打ち倒すに至った。更にマイシとも戦い引き分けて、逆に友にしたんだァ……」
ピクッとタネ坊とキンタは不機嫌そうに顰めた顔で眉を跳ねる。だがフクダリウスは沈黙している。
「だからなにかな? 糞餓鬼のは努力ではなく、他力本願だろう?」
「せやな! アイツは一人じゃ何もできへん糞ガキやで」
「俺達はな、プロの創作士になる為に誰にも頼らず血の滲むような努力を重ねているんだ。女ごときの力を借りて強くなった糞餓鬼などと同列にして欲しくないな!!」
アクトは「へっ!」と笑いつつも、胸中は沸々怒りで滾っていた。
「────じゃあよ? ナッセとリョーコに放とうとしてた紛いモン撃って来いよ?」
「何!? 紛いモンやて? そらホンマ許せへんわ~~! 行くでタネ坊、フクダリウス!」
「おうよ! 見せてやろうぜ! 努力に努力を重ねた熱血必殺技……、バーニング殺陣進撃を!!」
三団子は巨躯に見合わず、目にも止まらぬ超高速でアクトへ迫り、タネ坊のナイフとキンタのキックが連続で繰り出される。それにアクトはカッと殺意孕む眼光を見せた。
「十激・華柱紅蓮斬!!!」
互いの一瞬連撃が激突し合い、衝撃波の噴火が何度も噴き上げていく。土砂を巻き上げ、木々の破片が散らばり、周囲の岩山が傾いていく。
ガギィン!
タネ坊とアクトの刃が重なってギギギギ、と鍔迫り合い。
ガガギィンと互いは反発し合って離れ、ガガガガガとタネ坊とキンタの連撃と激しく撃ち合う!
「ごおおおおッ!! 努力の積み重ね! 超バーニング殺陣進撃ッ!!」
「二十激・華柱紅蓮斬ッ!!!」
再び連発して、衝撃波の噴火が連鎖して更に天高く噴き上げた。
「ぬうりゃああああああああッッ!!!」
アクトの裂帛の気合い、最後の一撃がタネ坊の顔面を殴り付けた。ドゴッ!
「ぐ……がっ!」
押し負けた三団子は後退するように地面を滑り、後方の岩山に背中を打ち付けた。そのまま岩山とともに崩れ落ちていく。ズズゥ……ン!
「へっ! どうしたよ? ナッセはこの技と互角に撃ち合えてたぜ?」
ビシッと刀の切っ先を向けて不敵に笑む。
「糞……!」悔しがるタネ坊。キンタも「ふ、ふざけんなや」と激昂する。三団子は身を起こし、巨躯を立たせる。
「こ、この俺達のバーニング友情が、あんな木偶の坊に押し負けるはずがないッ!」
「せや! 今度こそいてこましたるわ~!」
「バーニング友情……? こんな言葉だけの友情ほど虚しいもんはねェなァ?」
貶されて、タネ坊とキンタはあからさまに不機嫌そうな表情に歪む。
「貴様にバーニング友情の何が分かる!!?」
「せやせや! タネ坊とワイは共に喜怒哀楽を分かち合ってここまで来たんや! あんさんに馬鹿にされる筋合いなんかあらへんのや~~ッ!!」
「よく言った! 流石は俺の親友だぜ!」
「お前らがどんな仲か知らへんがな、どうせ女とヘラヘラして薄っぺらい絆で遊んどったんやろ?」
「そういう事だ……。ナッセ君には熱い友情など無縁。あったとしても形だけなのだろう?」
「ゴッハッハッハ!! せやね~~~~!」
「ははは! 違いない!」
そんな手前勝手な友情論を語って馬鹿笑いする二人に、アクトは怒りで歯軋りする。
「本当にバーニング友情を語るなら、熱い心燃やしてナッセを支えてやれや! それが本物ってモンだろがァァァァ!!!」
「うるせぇや~~!! ナッセはんとなんか友情感じへんわ~~!!!!」
「そうだ! そうだ! 邪魔にしかならない糞餓鬼と友情なんか築けるか!」
「もういい!」
なんと黙っていたフクダリウスが怒気孕む一言を吐き出した。
「え?」とタネ坊とキンタは呆気に取られる。
「……どうもおかしいと思ってたわ! 後輩のナッセに優しくしているのに、どこか違和感がしていた。突き放したのは、安全のためではなく邪魔者だからって事だろう? 本当に仲間なら、一緒に友達を探しに行こうと誘うはずだ」
「うっ……!」
「そ、それは……!」
たしろぐタネ坊とキンタ。
「ワシは良くてナッセはダメなのか?」
それに対してタネ坊とキンタは後ろめたさに目を逸らしてしまう。
「そもそも、洞窟へ向かうナッセの頼みを断る理由はないはずだ。断ったのはナッセの為ではなく、頼られる事への煩わしさが理由だったのだろう?」
俯くタネ坊とキンタ。返せる言葉がない。
「ったく、よく分かってんの仮面のオッサン一人だけじゃねェか!」
「いや本当におっしゃる通り、見苦しい事を言ってしまった。この通り詫びよう」
フクダリウスはペコリと大きな頭を下げる。
「おう! 分かればいいってモンよ!」
ニッと笑い合うアクトにフクダリウス。互いに年長者として心意気が伝わったようだ。快く笑い合う。
そして大きな仮面と顔の口から、なんと元の姿のフクダリウスが這い出る。
スタッと降り立つと、目の前のアクトへ歩み、斧で構える。
「アクト殿! ワシと勝負だッ!!」ザッ!
「えっ?」「えっ?」
タネ坊とキンタは目を点にする。観客も唖然とする。……しばし呆然。
ウニャンは何気なく後ろ足で首を掻く。
「元に戻れんのかよォォォォォッ!!!?」
あとがき雑談w
表ミコト「モンスターは何を入れたらいいんだろう?」
【掃除人ーメイド】
闇属性・戦士・攻撃力160000/守備力120000
このカードが墓地に送られた日、自分はメイドとなって家事をする。
【リア充ーサイコーダ】
光属性・天使族・攻撃力240000/守備力200000
このカードが部屋で表側表示で存在する限り、お互いは引き篭れず、部屋にある全てのインドア要素を行えない。
【疾風の餡子菓子ワガシ】
糖属性・菓子族・攻撃力230000/守備力210000
手札がこのカードしかない場合、それを墓地に送って発動できる。あんこ関連の和菓子を一個出現させる。
【メタボット】
糖属性・脂肪族・攻撃力70000/守備力3000000
裏側表示のこのカードが表側になった場合に発動できる。お互いの余分な脂肪を全て除去し、標準の量にする。その後、お互いはそれぞれデッキから50枚をドローする。
【禁制されしエクスタシー】
羨ま属性・萌え族・攻撃力0/守備力0
初手以外の通常ドローのみで、このカードと「禁制されし女体の足」「禁制されし女体の腕」「禁制されし女体の胸」「禁制されし女体の股」が全て手札に揃った時、自分は自分の推しキャラを現実化して嫁にする。
表ミコト「……この禁制されしシリーズを揃えた者はいないと聞く」
ナッセ「一応全部は持ってるから、それで対戦しよう」
表ミコト「それいいね。僕も持ってるからやろう」
ナッセ「ドロー! まずは1枚! これで推しキャラとぐんずほぐれつww」
ヤマミ「その瞬間、私はこのカードを発動する!」ドン!
【手札埋葬】速攻魔法
全てのプレイヤーは全ての手札を捨てる。その後、捨てた枚数分だけドローする。
ナッセ「なに! す、捨てるだとぞ!?」ドクン!
表ミコト「つ、詰んだだと!!」ドクン!
ヤマミ「浮気はさせないZE!!」バン!
次話『タイマンの激戦!! 天地揺るがす戦いの行方は!?』