50話「ノーヴェンの逆恨み!?」
歓声で賑わう! 誰もが興奮し、映ってる話題の彼らに魅入っていた!
「今日も『スター新撰組』が大暴れです!!」
「……ってか一日も経ってないけどな?」
モニターに、市街地が映っている。
「おおおッ!!!」
光の剣を握りしめ、盾や建造物の壁を使って上下左右斜めとジグザグ刻みながら駆け抜け、そのまま相手チーム三人を斬り伏せて走り去った。
「がっ……!」「ぐっ」「速……!」
ドドドン、光の爆発が轟き棺桶が三つ転がった。「ゴメンね」と呟き、遥か遠くへと駆けていった。
一方、リョーコは「いっせーの……」で斧を腰に引いて構える。地面を揺るがし、増幅されていくオーラは激しく放射状に迸る。そして一気に横一線と斧を振るう。
「スラッシュ・スレイヤァ──!!!」
広大な三日月の刃がすっ飛び、並んでいる建造物ごと隠れていた三人を上下に両断。目を丸くして絶句する三人。想像を絶する貫通と破壊力だ!
「こ、こいつ!」
「強……い……」
「嘘ぉ……」
建物がガラガラ瓦解していく最中、ドドドン、光の爆発が煌めいた。
「ふうっ!」
今まで勝てなかったのが嘘のように、スカッと相手チームを倒せた爽快感でスッキリした笑顔を見せる。
今、リョーコは確かなレベルアップを実感して自信に満ちていた。
そしてアクトは余裕たっぷりに肩に刀を乗せていた。周りに三人が横たわっていて、光の爆発が連鎖。
「な、な、なんと!!? Bランク層まで駆け上ってもなお、圧倒的な無双!! まさに大快進撃!! 今回も『スター新撰組』の完全完璧完遂、大勝利だぁぁぁあ!!!」
実況のサングラス全身タイツ男はマイクを手に立ち上がった。
「盾の使い方、あんな風に使うとは……」ゴクリ……。
「貫通剣とはなんだったのかなー?」
ニヤニヤする黒スーツの女子。
赤面で俯くオジサン。
「すみません、すみません、勘違いしてました!! 普通に強かったですね。いやはや間違えて、お恥ずかしい!」
「それにしても、今日だけで一気に最低のDランク層からBランク層に駆け上がって、更にこの勝利でAランク層へ突入ですね!?」
「ズルくない? って思うけど、当然の処置ですからね。なんせ普通にポイント獲得だと弱い者いじめになって、初心者がいなくなってしまいますからね。なので瞬殺ポイントに加え、レベル差分に応じた増加ポイントを与えてランク層を上げてるんですね」
「す、すると一日でAランク層に行けたってことはー?」
「……創作士カードには本人のレベルが記録されてます。これは裏設定なので誰も見れませんが、恐らくナッセ達のレベルが、それだけ高いという事ですかね……」
「おおー!! すんごく高かったって事ー!?」
「うむ。おそらく、大阪地区はおろか世界に通用するレベルじゃないかって思います」
おお……、と騒然する観客。
「ナッセ……ですカ? 同じ……学院の同級生……」
観戦席でノーヴェンはモニターのナッセを睨み据えていた。沸々と怒りが沸いていく。
なぜなら────!
数日前、ヤマミがナッセを連れて行くタイミングの頃だった。
ノーヴェンはヤマミの挙動を眼鏡の奥に納めていた。
礼儀正しく、動きに高潔さが漂い、美しい肌に肢体、そして引き締まったクールなフェイス……。いつ見てもヤマミさんは知的で美麗な女性デース……!
いつしか互いの洗練されたミーとヤマミさんの男女の体が結ばれ……、そう! 今すぐラブファイヤー!!
今度こそ! ヤマミさんをミーのワイフに! そしてホットなファミリーを!!
「今日の帰りに、ミーと高級レストラン行きませんカー?」キラキラッ!
キメ顔で白い歯を見せた笑顔。しかしほぼ半裸でメガネアーマーを着込んでいる変態。だが本人にとっては正装であり、最高のファッションだと思っているのだ。
「お断り!」ピシャリ!
冷たい目でヤマミはプイッとそっぽ向いて、スミレと共にナッセの方へ歩いていった。
いつものより、強めのノー……!
ガーン! 愕然としたミーのハートが超ブレイク……! メガネもパリーン!
同じインテリとして知的な語り合いをしようとデートに誘うつもりだったのデス。前からも誘っていたのデスが、ことごとく玉砕デシター。
凛とした頭脳明晰の美女ヤマミさんが、なぜ矮小なナッセの方に意識を向けているのか理由はホワットデース!?
「何故……デス! シット!! ガッデム!!」
あんな銀髪のガキに、あの高貴なヤマミさんが近付くなど許せられまセーン!
ましてや、ラブファイヤーされて一夜を共にされたら、ミーはハートどころか激ソウルブレイクして死にマース!!
いいでショウ! ヤマミさんの目を覚すべき、ナッセをコテンパンに完封勝ちしてやりマース!!
観戦席でゴオオ、と燃えるノーヴェンに周囲の観客がビクッとおののいた。
そんな彼の様子をよそに、解説の人達が勝手に喋っていた。
「ナッセとノーヴェンが戦うとなれば、いい勝負になりますかね?」
「それは期待しない方がいいでしょう。確かにノーヴェンの弾幕と戦略は恐るべきものがありますが、ナッセ達にはまだ余裕すらありそうですからね」
「ほー? 苦戦はするかもだけど、負けない相手と?」
「……ですね。マイシでないと勝てないんじゃないですかね? 彼女は以前ソロでやってましたけど、種族値が高くなったからと出禁となり乱闘騒ぎになってましたが……」
「という訳で、大阪代表は『スター新撰組』で決まりですねー! と言うか決まりですー!!」
ノーヴェンはギリギリ歯軋りし、更に燃え上がった。ゴオオオオオオオ!!!
「お、落ち着いてくださいよ?」
ノーヴェンと同じメンバーである一人の少年。オドオドしている。前髪が長く両目が隠れてしまっている。何故か学ランをマント風に肩に乗せて、番長風のカッコのようだ。腕には変な盾が装備されている。なぜか手足がスマートで細すぎるビジュアルだ。
彼は手故流ミコト。ナッセと同じ学院の同級生だぞ。
オドオド気弱な態度だったのが突然、髪が逆立ち、強気な眼光がギンッと煌く! 自信に満ち溢れた不敵な笑み。まるで人格が変わったかのようだ!?
ドドーン!!
自信満々で腕を組んで直立。風も吹いていないのに、何故か学ランがマントのようにバサバサ舞う。
「……やれやれだZE! ノーヴェンさんがヤマミさんを好きだろうがなんだろうが、オレは一流の決闘者!! 立ちはだかる敵は決闘で薙ぎ倒すZE!!」バン!
「お主も魂が騒ぐようだな……。フッ、拙者も心躍るのは確か。今度こそ面白いものを斬れるでござろうか?」
ザッザッと着物を着た細身の無骨な男が歩み出てきた。腰に刀を差している。
「HEIHEI!! コマさんも渋い侍魂だNA!」
親指を立てた拳をビッと突き出し、自信満々の顔で片目ウィンク。
「……フッ」
両目をつむって不敵に笑む。
彼は金沢コマエモン。クラスは当然、侍。
「フッ! ミーの『インテリスリー』出揃ったデスカ……」
ノーヴェンはメガネをかけ直し、キラッと煌めかす。自信満々のミコトとコマエモンを両脇に、この場を後にする。
「……ターゲットはナッセのデリートのみデース!」
「断るZE!! オレはオレの決闘をするだけDA!」バン!
「お主の私怨には付き合えん。拙者は面白いものを斬りたいだけよ……」
ノーヴェンを置いてけぼりにするように、スタスタと二人は歩き去っていった。
それにも関わらず、ノーヴェンは不敵に笑む。
各々勝手に振舞っているように見えるが、己の信念に忠実で確かな実力を持つ。わざわざ妥協せずとも、チームとして誠実に戦ってくれる。誰もが対等であり、そこに上下関係はない。
ミコトは普段気弱だが、決闘者の魂で召喚士としての矜持を持って戦う。
コマエモンは無愛想で取っ付き難いが、侍として弱き己と強敵と戦い続ける猛者。
「イエス……! それではゴーといきますカー!」
後はミーがそれに合わせて戦術を組んで、相手チームを完封する。そして自然と各々がチームの勝利に貢献していくのデス!
それ故のパーフェクトチームで、ナッセ率いる『スター新撰組』を殲滅させマース!
ノーヴェンは首のチョークにぶら下げたメガネを引きちぎって、キメ顔で握り砕く。
パリィィィン!
割れたレンズの破片が手の中でザックザク。鮮血ぼたぼた!
「オーノー! アウチィィィィィッ!!」
「また無駄にカッコつけた演出するからだZE!」
ノリノリのミコトが両手の指差しでビシッとノーヴェンを指す。
何戦も繰り広げられていって夕方に差し掛かる頃、ついに運命の対戦カードが揃ったぞ!!
『スター新撰組』『インテリスリー』『無頼漢』『夕夏家第二陣』
有力四チームがモニター欄に浮かび上がったぞ!!
誰もが待ってたと言わんばかりに、観戦席は満席で沸いた。轟くような歓声が大きく響き渡った。
オオオオオオオオオオオオ!!!!
「さて、フィールドは……!?」
「な、な、なんと!! 仙境!!!」
起伏の激しい森林で広がり、柱のようにあちこち高く聳える岩山。上方に霞むほどの霧が立ち込める。
まるで仙人がいるかのような神秘的な風景だ。
パシュッと光の輪が上昇し、ナッセ、リョーコ、アクトが姿を現す。
「わぁ……、たっか!」
「う、うむぞ……」
外国のどこかに実在している場所なのだろうが、まるでそこにいるかのような臨場感がある。とてもコピーされた仮想空間とは思えないぞ。
あとがき雑談w
ナッセ「概要だぞー!」
『バーチャルサバイバル・ランキングバトル』
世界中の創作士と仮想空間でバトルできる仮想対戦センター。
元々は軍の実戦訓練のために開発されたシステム。だが、世界中の創作士のレベルを上げるために一般用に一部システムを変更して普及させた。
【得点の裁定】
①相手一人を倒せば1点。三人チームだと合計3点。
②四人チームの場合は、一人ごとに2点。合計8点。
③気絶させて三〇カウント取った場合、一人につき3点。
④まだ相手チームが残っていて、時間制限で試合終了した場合は生き残りポイントとしてメンバー一人につき1点が自分チームの総ポイントにプラスされる。
⑤相手チームを全て倒した場合、自分の生き残っているメンバー一人につき2点としてプラスされる。
⑥瞬殺ポイント。五秒以内に相手チームを全て倒した場合は人数分だけ獲得ポイントは倍になる。つまり相手三人チームを三つとも瞬殺かつ全滅させた場合は、獲得ポイントは9倍になる。
⑦レベル加算。相手チームと自分チームの平均レベル数値に二倍以上の差があった場合、獲得ポイントに、その差分だけ数値分がそのまま加算される。
⑧フィールド外へエスケープした場合、相手チームの平均レベルが自分チームの平均レベルより二倍の場合は無得点。そうでない場合は、一番平均レベルが高い相手チームに得点が1点入る。
⑨ただし、相手チームと顔を合わせず最初っから全メンバーがエスケープした場合はペナルティとして逃げたチームの総ポイントが半分になる。
【まとめ】
互いに切迫したレベルの場合、地道に勝ち数を稼いで得点を上げていく。そうした繰り返しが、自分のレベルアップに繋がり、得点はモチベーションを上げる要素になる。
最初っから強い場合は、弱い者イジメにならないように獲得ポイントを極端に加算させて昇格させていく。
相手が強すぎる場合、それを確認して逃げて生き延びるのも立派な戦い。怖くても強い敵を確認する勇気を持とう。
作者「展開の都合のため、正確な計算や具体的な数値とか省いています。ほぼ急展開でまくし立てているから、この設定はオマケ程度で~」
リョーコ「そういう細かい事苦手なのね……」
アクト「あァ……分からんでもないがなァ」
作者「ごめんwwwwwww」
次話『デュエルスタンバイ!! カードバトル開幕!!(え?)』





