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47話「アクトのリアクション!」

     挿絵(By みてみん)


 カーテン越しから暖かい日差しを受け、ふと目を覚ます。

 白い天井が視界に入る。いつもの見慣れたマンションの部屋の天井。しばしボケっとした。


 ついさっきの出来事を思い返す。最初はヤマミとスミレに誘われて不思議な構造の洞窟(ダンジョン)を探検し、恐ろしい闇や強敵のリッチと戦い、本物の異世界へたどり着いた。

 そこでは浮遊大陸で連なる大空の世界。その村では獣人やエルフが本当に存在し、そして死んだはずのエレナが異世界転生していた。

 思わぬマイシとの対決は怖かったけど、この戦いで師匠のように『賢者の秘法(アルス・マグナ)』を土壇場(どたんば)で撃てるようになって、引き分けに持ち込んだ。そして友達になれた気がする。その達成感で本当に充実していた。


 こうしていると、まるで洞窟(ダンジョン)探検や異世界の事が夢のように思えてくる。

 しかし、これまで味わってきた臨場感は現実そのものだぞ。


「ああ、妄想や夢とかじゃないんだよな……」



 後頭部を()き、上半身を起こすと両腕を上げて「うーん」と震えながら背伸び。

 テーブルの上の三個並べられたエキドナのフィギュアを見やる。オレが買った一個目、荒廃した世界から持ってきた二個目、そしてアクトからもらった三個目……。


《それぞれ同じ宇宙での周回ごとのモノのようだね》


 うわっと、気付けば自分の下半身を覆う布団の上でウニャンが座っていた。こいつは師匠の分身で、猫の姿を取っているぞ。


「同じ宇宙で? ……周回?」

《とある原因で、この宇宙はバッドエンドになるたびに新しく世界をリスタートされ、そのせいで過去のバッドエンド世界と重なっている。少なくとも三回以上はリスタートされていて、それぞれ各一つで三個。アクトと一緒に居れば分かるよ》

「よく分からないけど……、それをアクトは知ってるんだな?」

厳密(げんみつ)に言えば、知ってるとかじゃなくて、本人のリアクションかな?》


 師匠はいつも意味不明な事を言う。けど、的外(まとはず)れだった事はない。

 でもバッドエンドとか、星獣によって地球が滅んだ事を言ってるのかなぞ? そうだとしたら何回も全滅してる……??



 六月一四日、日曜日────。


 ウニャンを肩に乗せたままマンションを出ると、リョーコが「おはよ」と手を振って眩しい笑顔を見せてくる。いつもドキドキさせられるなぁ。

 オレも「おはよう」と手を振る。


 今日は日本橋へ行く予定であった。

 ガタゴト、地下鉄の電車に揺られてリョーコと並んで座っていた。地下鉄の東西線から千日前線(せんにちまえせん)へ乗り換えて日本橋へ向かうためだ。 


「そういえば、テレビほとんど映ってないよねー?」

「うむ。なんか知らんが休止してるの多いなぞ」


 帰ってから暇つぶしとテレビを付けたけど、レインボー帯の画面で「休止しています」って文字が書かれていた。大抵のアニメも休止してしまってるので面白くない。何が起きてるか知らないけどぞ。


「行方不明が更に多くなってきたって、残ってたテレビ局のニュースで言ってた」

「このままいくと、一人もいなくなっちゃうんじゃないかぞ?」

「……まさかね?」


 思えば電車に乗ってる人も(まば)らに見える。休日は少なくなるとはいえ、この少なさは異常に見える。


「電車は動いてて良かったなー」

「それな」


 以前、モンスター化してた店員や囚人の事を思い出す。

 タネ坊が「悪人をモンスターに変えて、どこかのデータバンクに登録される」みたいな事を言ってたから、これが本当だとしたら悪人は思った以上に多いって事なのかな?



 海老江(えびえ)駅の改札を出ると、待ち合わせていたアクトがニッと笑い手を振っていた。


「おう! 待ってたぜ!」

「今まで、どこで泊まってたの?」リョーコは気になった。


「野宿だァ……。何故か、俺の家がなくなってたからなァ」

「え~? エレナちゃんは普通に自分のマンションに戻ってたけど?」

「確かに崩壊する前の世界に見えるが、なんか微妙に違う。まるで並行世界(パラレルワールド)みたいだァ……」


 並行世界(パラレルワールド)……。こうしたらこうなっていた。ああしたらこうなった。そんな感じで違う結果の分だけ分岐(ぶんき)し続けて、それぞれ歴史が異なる同一世界が複数存在するという説。


並行世界(パラレルワールド)とは似て非なるものだよ。今回は自然事象(じしょう)と違い、“とある原因”でリスタートを繰り返しているんだ》

「……とある原因?」

 オレは眉を潜める。

《そう。極めて人為的な事象(じしょう)だよ》

「じゃあ誰が…………?」


《本人が気付くまで、誰も分からないのさ。だからね、待つしかないんだよ》


 ウニャンは肩に寝そべって目を瞑る。しかしモヤッとする。

 もし人為的に、ったら世界をリスタートできるなんて凄いチートだなぞ。それなのに自分で気付いていないのか……??



 ナッセ、リョーコ、アクトは地下鉄で日本橋まで辿り着いたのだった。


 多くの店が並び、華やかさを(かも)し出している。

 アクトは考え込むように周りを見渡す。人が少ないのが気になってるのかな? そういえば行方不明者が多いってのは聞いてなかったっけ?



「……確かに完璧に滅亡前の状態ァ戻ってるが、違和感を禁じえねェな」

「禁じえ……?」

 妙な言い回しだからか、リョーコ首傾げる。


「なんで緑髪や桃髪や青髪の人がいるんだァ?」

「そっち!? いやいや普通だろ?」


 大阪だけに限らず、この世界では色んな毛色の人間が存在している。染めたとかじゃなく地毛である。


「金髪、茶髪が多いのは分かる……。けど、こうもカラフルならレンジャーやれるじゃねーかァ」


 まるで変なモノを見るように怪訝そうにするアクト。

 そのリアクションにハッと気づいた。肩のウニャンに振り向く。


《言ったでしょ? 君には当たり前の世界でも、生き残りのアクトにとっては違う世界に見えてるって事さ》



「うおお!! これはァ、小さなパオー!?」

 ……パオー? 子ゾウの事か? アクトって変わった言い回しするなぞ。


 なんとペットショップの並んでいるケースの犬猫に混じって、かなり小型の子ゾウも入っている。ピンクだったり水色だったり、色も豊富だ。

「大きくなっても、大型の犬みたいな大きさなんだって」

「マジかァ!?」

 家で飼えるように品種改良されたタイプで、大人しくて賢いという事で割と人気がある。長い鼻でモノを持ったりするのが愛嬌(あいきょう)ある動作。力持ちなので人間を乗せて歩く事もできる。


「ピンクの猫も、グリーンの猫もいるァァ!!!」


 初めてなのか、震え上がっているアクト。確かに分かりやすいリアクションするなぁ。

 オレにとっては当たり前だったけど、アクトのいた地球ってどんなんだったんだろう? 子ゾウも猫もいなかったのかなぞ?



「これは夢かァ!? あっちこっちにも美女がァァァァア!!!!」


 アクトは周りの女性に驚いている。彼の目には、肌が綺麗で顔が整っていてスタイル抜群の美女だらけに映っていた。


「おまえ、こんな美女だらけの世界にいたのか?? 羨ましすぎるぞォォ!!」


 ガシッとオレの両手を握って、収まりきれない興奮をあらわにしていた。

 それだとアクトさんの世界はどうだったんだろう? なんつーか、気になってくるぞ……。

 オレにはいつものしか見えないけど……、そんなに違うのかな?


 って事は、リスタートするたびに変化してるのかぞ?


「アクトさんって、オーバーな人ねー」

 腰に手を当てて呆れるリョーコ。

「あはは……」



 立ち並ぶ店の中には、閉店がちらほらある。開店する様子はなく「勝手ながら無期限の閉店をさせていただきます」と張り出されていた。


「そりゃあねェぞ…………!」


 アクトは残念そうな顔で肩を落とす。


 とはいえ、前に来た時よりも閉店が多い気もする。

 異世界はどれも開店していたけど、事情が違うからかな? 異世界でも行方不明事件とかあるのかな?



 しばらく散策していると、でかでかと大きな施設が目に入った。

『バーチャルサバイバル・ランキングバトル』

 その看板がでかでかと掲げられていた。これも裏施設のように高度な文明で作られたものだ。

 でもオレは通信対戦が好きじゃないので、これまでスルーしてきたぞ。


「おお! こんな面白そうなの初めてだァ……」


 アクトは興奮し、戦意を昂ぶらせていた。


「これね、全世界で対戦が可能な仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターよ」

仮想対戦(バーチャルサバイバル)センター……?」

「あなただって、面談の時に仮想空間(バーチャル・ルーム)でスライムと戦ってたでしょ? あれと同じ」


 思い出した! ミノタウロスと戦ったアレと同じかぞ?

 自分の意識を分身(アバター)に移転させて、本物のように見える仮想空間(バーチャル・ルーム)の中を動けるヤツ。本当に死ぬかと思うほどリアリティーがあった。

 例え死んでも、現実世界ではなんの影響もないシステムだぞ。


「これね、あれよりもっと複雑なの。森林、市街地、海辺などフィールドも選べるし、分身(アバター)のファッションを自由にカスタマイズできてて、世界中の創作士(クリエイター)とも戦えるんだよ! チーム戦とソロ戦などで、ポイントを競い合うの!」

「へー!」

「よっしゃ!! 燃えるじゃないかァ! 行こうぜ!!」

 アクトは嬉しそうにノリノリだぞ。


 ま、オレは見るだけでいいかな……。と三人で入っていった。



「あたしとナッセ、アクトさんでチームお願いね!」

「かしこまりました。ではチーム名を決めて、参加者全員の創作士(クリエイター)カードの提示をお願いします」


「えっ?」

 白目で硬直。

「ち、ちょっ……」制止の手を差し出そうとするが、当のリョーコは楽しそうな顔で「貸して!」って言われ、断れず差し出してしまい登録させられる。


「じゃね、チーム名は『スター新選組』で~~!!」

 ノリノリなリョーコは、カウンター前でほいほい手続きを済ませていった。


 巻き込まれたぁぁぁぁあ!!!


 オレは目を丸くして絶句するしかない!

 勢いのままに登録されてて、今更「対戦するの好きじゃなくて」と断れない空気……。

 青ざめて冷や汗タラタラ、頭の中に「どうしよう!」がたくさん湧いてきた。


「ナッセ! また一緒に戦えるな!!」ニッ!

あとがき雑談w


 一巡前の並行世界(パラレルワールド)でのできごと。


アクト「うおおお!! ピンクの美少女ォ!! 緑髪の巨乳いいなァ!!」

ナッセ「いつも言ってるなぁw」


 青と白の二色ネコが横切っている。テクテク


アクト「ドラ○もんかァ!? リアルドラ○もんかァァァ!!」

ナッセ「……オーバーリアクションで飽きないなぁw」

アクト「ところでよ、俺たちァ……、もっと殺伐していて魔法もスキルもない並行世界(パラレルワールド)にいたんじゃなかったのかァ?」


ナッセ「え? なんで覚えてるの??」(驚愕)


 詳細は『6章 追憶の並行世界編』にて明らかに……!

 それでもアクトの謎は未だに不明だという??



作者「……本当は夕夏ユウカ家編をやろうと思いましたが、一つアイデアが浮かんだので少しサバイバル編やります。

 どうなるか楽しみに~~!」(*´∀`*)



 次話『メガネ変態紳士がついに登場! そして噛ませになる人は……?』

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