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44話「ナッセとマイシ! 二人の死闘!」

     挿絵(By みてみん)


 ゴゴゴゴ……、辺りは戦いの余震で唸りを上げていた。

 反転世界、元いた世界をコピーされた亜空間。そこでナッセとマイシは互いに力をぶつけ合っていた。


「……そんな些細(ささい)な事を喜ぶ、ナッセという男。むしろ我々側の人間に近い」


 山地の丘の上で、遠目で見ていた男が長髪を揺らしていた。冷静な表情で戦いに行方を見守っていた。

 彼はコハク。ナッセ達と同じくアニマンガー学院の生徒だ。

 教室でヤマミ達に誘われたのを聴いて、マイシと同様に『標的察知(ターゲットサーチ)』でナッセ達を追っていた。欲深い人間が異世界を荒し回らないかと監視する為だ。


「まだ二人の戦いの最中。そして正々堂々の決闘。終わるまで待ちますか。

 ……まぁ、それでも地球人共は好きになれませんね」


 冷めた心を胸に、冷淡な目で細める。




 オレ、できる! できるんだ!! 今の感覚! できる!


 ゾクゾクする感覚を覚え、目の前のマイシへと剣を向けて構える。

 相手はドラゴン。生半可な戦い方では勝てない。だからこそ、着実に攻略していく事が勝ち筋を見いだせると察した。


「かああああああ!!!」


 竜を象るオーラを燃え上がらせ、猛るマイシが鋭く剣を振るう。しかしそれを見極め、両手で握った剣で打ち払う。逸れたマイシの剣は向こう側の木々を木っ端微塵に砕く。ボァァン!

 苛立ったマイシが剣を返し横一線に薙いできたから、それを垂直に飛び越える。その滞空中を狙ってマイシが剣を振り上げてきたから、咄嗟に(シールド)を足場にかわす。後ろにあった一軒の家がまた木っ端微塵に砕けた。ドガァッ!

「このっ!!」

 ムキになったマイシが闇雲(やみくも)に剣を振るってくる。ギン、とそれを見据える。


 全部、打ち払うぞ!! 怖いけど、オレがんばれ!


 ズガガガガガガガガガガッ!!!


 連続して襲い来るマイシの剣を、ことごとく打ち払い続けていく。火花散り、逸れた剣で発生する衝撃波が後方で連鎖し続けていった。ドォン、ドォォン、ドガァッ、ドン!

 巻き添えになった建造物や草木、岩などが砕け散っていく。


 いくら何度やってもナッセの太陽の剣(サンライトセイバー)は刃こぼれすらしない。マイシは「くうっ!」と唸り、(あせ)りはじめる。


 チャンス! 隙が見えた!

「おおお!!」

 今度はオレが振るった太陽の剣(サンライトセイバー)がマイシの胴を薙ぐ。ズバッと軌跡が通り過ぎるが、オーラの衣で届かない。だがマイシ自身は「くっ!」と苦い顔をする。



 なんか攻撃が来ると分かる! まるでマイシの顔に出てるみたいだぞ!

 事前に炸裂(バースト)ジャンプで飛び立つ。ドウッ!


 マイシの振り下ろされた剣が地面を深く穿つ。ズガアッと噴火のように岩盤ごと巻き上げていく。

 既にオレは上空へ逃れていて、あちこち盾を足場に、ガガガガッと縦横無尽と駆け抜けながらザキュ、ザキュッと一撃一撃マイシに当てていった。それでもオーラに阻まれてマイシは依然(いぜん)と無傷。


「今度はサンライト・アロー・バレッジだぁあ!!」

 飛び回った際に四方八方に設置していた『衛星(サテライト)』の剣を、一斉に射出して集中砲火を浴びせる。

 キュドドドドドドドド!!!

 連鎖して衝撃波の爆風が次々と広がり、周囲に旋風が吹き荒れた。ズズズ、地を揺るがす。



「かああ────ッ!!!」


 マイシは炸裂剣(バーストソード)で一周するように振るい、爆風ごと破裂させるように跳ね除けた。破片がパラパラと散っていく。

 はぁはぁはぁ、マイシは激しく息を切らす。


「そんな! 効いてないのッ!?」

 焦らされるヤマミ。しかしリョーコはガッツポーズで笑んでいた。

「いつものナッセだよ!」

「え?」

「集中してるナッセは、めっぽう強いから!」


 自信満々に笑むリョーコは、もう心配していない。


 ナッセは確かに突出した攻撃力もスキルもない。けど、フクダリウス戦でもそうだったように、徹底して自分の戦いに集中すれば、どんな相手にも負けない安定感がある。

 後は相手と根性比べ! だけどナッセなら大丈夫! 絶対に負けない!


「フッ、相変わらずだなァ……。剣士(セイバー)になっても変わらねェな」


 アクトはしみじみと笑む。



 竜の鋭い爪が握り潰さんと襲いかかってくる。しかしそれを頑として剣で打ち払う。逸れた剣は地面を穿ち、広範囲に岩盤を捲れあげて衝撃波の噴火を上げる。ドオォォオン!

 ザキュッ! 通り過ぎざまに斬り付け、間合いを離れていく。


「……でもキリがなくない?」

 ヤマミは怪訝に眉を潜める。


「見てみろァ! ナッセとマイシ。どっちが疲れてるンだァ?」



 ふう、ふう、息を切らしながら構えるナッセ。はあっはあっはあっ、と肩を落とし辛そうな表情のマイシ。

 傷ついてボロボロのナッセに対し、未だ無傷のマイシ。

 されど、疲労の差は火を見るより明らかだった。


「攻撃を当てて衝撃を相手に押し付けるのができてねェと、空振りした分だけ無駄に体力を使う。ましてや中々攻撃が当たらねェってのは相当なストレスだァ……。

 それにナッセが攻撃を当てていくたびにオーラの衣は削れる。一見、効かないように見えるが、削られた分を補充するようにSP(スタミナプール)からオーラを捻り出す……」


「あ、そういう事……!」


 ヤマミは察した。

 ナッセが最初に技を当てた時も、マイシは無傷だったがオーラは消耗していた。威力の高い流星進撃(メテオラン)を受けた時も、恐らくごっそり持ってかれてる。そして、今も攻撃を受け続けて更に削られていった。

 無傷だが、既にマイシは疲労困憊(ひろうこんぱい)。もう戦いは長くない。決着は近いだろう。



「……ナッセェ!」はぁ、はぁ、はぁ!


 マイシは荒い息をしながら、少し平然としているナッセを睨みつける。

 荒ぶる巨大なオーラを纏っているも、体は重い。立つのさえ辛い。全身を濡れる汗。顎へ伝っていく汗。息苦しいほど、荒い息が止まらない。


「かあああああああ!!! 負けてたまるかし! 負けてたまるかしッ! 負けてたまるかしぃぃぃッ!!!」


 マイシは吠え猛り、全身のオーラが荒ぶって燃え上がっていく。周囲に余波を広げ、地鳴りを呼ぶ。

 更に竜を象るオーラがズズズズ、と肥大化していく。


「な、なんだ……?」


 恐怖が(つの)る。まだ底力が残っていたのかぞ……?

 っていうか、これドラゴンになってなくね!?


 ゴゴゴゴゴゴ…………!!


 巨大な竜を象るオーラが轟々(ごうごう)(そび)え、その巨腕が一振り。それだけでドドドォォンッと村中の家や木、岩が一斉に薙ぎ散らされ、破片が烈風に流れる。



「うわあああああああ!!!!」


 吹き荒れた烈風に煽られるヤマミ達は、腕で顔をかばい、声を上げながらも踏ん張って堪えていた。

 エルフの職員も口に手を当てて驚愕していた。


「なんてこと……! 本当に彼らは下級特上位種までしか戦ってないの? 中級どころか、もはや上級レベルだわ!」



 巨大なドラゴンを纏うマイシを相手に、歯を食いしばりながら太陽の剣(サンライトセイバー)を両手に身構える。

 敗北濃厚。恐怖は最高潮。ゾクゾクと背筋を震えが走る。汗が頬を伝い、(あご)まで伝って滴り落ちる。だけど、約束を果たすため、勝つため、剣士(セイバー)を続けるために立ち向かう戦意を漲らせていた。


 オレは……、それでも! マイシの全力を真っ向から打ち破って見せるぞ!!



「受け止めるかし!? 無駄だし!! これまでも散った!! あんたも散るし! これからも同じように散っていくんだし!!」


 マイシは殺意を込めて叫び、地を蹴る。地面を爆発させ覆い被さるように巨大な竜のオーラで切迫。そして片手の、巨大なオーラの剣を後ろへと振りかぶる。

 巨大な剣を持って襲い来る巨大なドラゴンを思わせる圧巻に、かつてない恐怖で体が震えそうになる。


「あたしは……、あたしはッ! 世界で唯一最強の剣士(セイバー)だぁぁぁぁしッ!」


 強気に吠えるマイシの目から涙が溢れるのを、確かに見た。



 きっと、恐れられて誰からも近寄ってもらえず、ずっとぼっちだったんだろう……。

 もしオレが負けて死ねば、彼女は永遠にずっと独り。


 それに対し、キッと戦意の眼光を双眸(そうぼう)に宿す。そして(たか)ぶる熱き心を沸騰させる。


「オレは絶対に散らない!! オレだって最強を目指す剣士(セイバー)だぁぁぁぁあッ!!!」

「かあああああああああああ!!!!!」


 マイシは我を忘れ、ただただ激情に身を任せ、竜の剣を嵐のように滅茶苦茶に振りまくる。その余波だけで周囲が薙ぎ散らされ、竜巻のように容赦なく建造物や木々を粉々と斬り散らしていく!

 まさに天変地異!! 人間一人では到底受け止められぬ巨大な暴威!!


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォ!!



 頼む! オレ一人じゃ無力だ!


 頼む! みんな、オレに力を貸してくれ!!


 頼む! このままマイシを独りにさせるわけにはいかないんだぁーッ!!!



 対戦相手であるはずのマイシの為に、と強く願ったオレの想い!


 すると、周囲にポツポツと無数の波紋が浮かび上がっていく。その波紋が収束された光の(しずく)が、次々と太陽の剣(サンライトセイバー)へと吸い込まれていった。凄まじい自然の力が、精霊の力が、集合して凝縮されていくと共に剣の宝石へと錬成されていく。

 ヤマミは見開き、背筋がゾクッとくる。コハクも見開き、心に衝撃を受けた。


「あ、あれはッ……『賢者の秘法(アルス・マグナ)』!!?」


 ズォアッ、と周囲に余波を広げ、太陽の剣(サンライトセイバー)は眩い輝く宝玉を抱き、更なる輝きを増し、螺旋状の形状で一方だけ長く伸びた刀身が聳える超巨大な剣へと変貌した。


「これが……オレが繰り出せる奥義の剣! 『銀河の剣(ギャラクシィセイバー)』だッ!!」


 誰もが目を丸くして驚愕。そんな五メートル以上の超巨大な光の剣は圧巻だ。

 そして辺り一面、星々煌く宇宙の風景に染まった。そしてオレ自身が力強く銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を構え、銀河を纏うような神々しい勇姿に映えた。

 ナッセとマイシ、互いに距離を詰め「おおおおおああああああッ!!!」とぶつかりにいく!!


 オレは、マイシとも一緒に……、夢を目指したいんだぁぁぁ────ッ!!!



「ギャラクシィ・シャインスパァァ────クッ!!!!」


 無我夢中にオレはありったけ想いを込めて、全身全霊(ぜんしんぜんれい)()した渾身の一閃を、マイシへ振るった!


 ガッ!!!!


 互いの最強の一撃が交差!! 全ては白光の世界に包まれた!!

あとがき雑談w


 白熱する激戦に二人は拳を振り上げてワイワイ盛り上がっていた。


クッキー「おおー!! マイ弟子がついに『賢者の秘法(アルス・マグナ)』をー!!」

アリエル「元が24000だったのに、80000以上ぉ!?」

クッキー「マイシだって擬似竜王化で80000以上に跳ね上がってる!!」

アリエル「これでは決着が分からないわぁ~~!」


 モニターには威力値がピピピッと表示されている。


ヤミロ「仲良しで盛り上がってなによりだぜ……ククク……」(ポテトぱりぱり)



 次話『決着の行方は……? そして一瞬ナッセの正体が明らかに??』

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