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40話「因縁の対決? ナッセとアクト!」

 道の駅で居合わせたナッセとアクトは手合わせする場所を改めて、村外の大草原で向き合う事になった。

 大柄なアクトは長身に渡る刀。オレは『刻印(エンチャント)』を発動し、光の剣を携える。

 両雄、ゆっくりと腰を落として身構える。


 アクトの方はよっぽど嬉しいらしく、笑みは途絶えていない。

「いつでも来な!」

 紗瑠(シャル)アクト。彼は自分をよく知ってるらしいが、こちらは何も知らない。戦えば分かるのか……?

 ゴクッと息を呑む。


「……では」


 地を爆発させ、瞬時にアクトの目の前へ躍り出る。

「おおッ!!」

 気合込めて、軌跡を描く光の剣を振り下ろす。ガギィン、とかざされた刀に阻まれた。衝突と共に周囲にブォウッと風圧が吹き荒れ、ヤマミ達は腕で顔を庇う。


「おおお!!!」

「ぬぅあ!!」

 アクトと激しい剣戟(けんげき)の打ち合い! 幾重の斬り合いでギッギギギンと弾ける。

 彼らが目にも留まらぬ剣戟を繰り返す度に、草原に余波が走り、振動が断続的に響き渡る。旋風が吹き荒れ、草木が騒ぐ。


「す、すごい! ダーリンって強いのねっ!」

 風に煽られながらも、エレナは目をキラキラさせていた。その様子にヤマミは少し困惑気味だ。

「なんでダーリンなのよ……?」とポツリ。


「ぬうお!!」

 アクトの振るう剣にガキンと弾かれる。体躯の差で、小柄のオレは弾かれて一瞬浮いてしまう。


 その隙を突くように、アクトは体重任せた一撃を振り下ろす。その刹那、それをキッと見据える。

(シールド)ッ!!」

 虚空に生み出した二つ盾を足場に、攻撃を避けつつ、空中で二度屈折するようにアクトの横を駆け抜けて背後に回る。三度の盾を足場に、体勢充分な一撃を背中に向けて振り下ろす。


 が、アクトは背中に刀を通し、オレの剣閃をギギィンと止めた。ギギギ、拮抗(きっこう)して互いは震える。

 威圧がぶつかり合い、周囲に余波が弾け、吹き荒れた。


「ふんっ!!」

 驚異的な腕力だけで押しのけられ、また弾かれる。宙返りして踏みしめた足がズザザザと地面を抉るように滑る。


 するとアクトが大柄な体躯で突進してきていた。戦慄を感じるほどの戦意漲る眼。

「ぬうりゃあああ!!」

 アクトの振りかぶった剣に紅蓮の炎が纏う。轟々と燃え盛る炎の軌跡が弧を描く。ヤバい!

 危険を直感、思わず地を爆発させて高く跳んだ。


紅蓮斬(ぐれんざん)ッ!!!!」

 ドギャア!!

 アクトの振り下ろした剣が草原を大きく穿つ。その爆風で土砂を巻き上げ、岩礫が高々と舞う。


 ズズズズ、地を揺るがすほどの、なんという凄まじい威力!

 唖然とするヤマミ達。驚き湧き上がる野次馬。



「飛んでると、格好の的だぜェッ!!」

 なんとアクトが、滞空中のオレへ飛びかかる。しかし盾を足元に生み、横に飛ぶ。

 更に無数の盾を足場に、ガガガガッと縦横無尽と空中を飛び回る。そして四方八方から光の軌跡が怒涛と降り注ぎ、逆にアクトは防戦一方だ。

 ガギッ、ギギンッ、ギッ、ギィン、ガガッ!

「ぐっ! ぬぬっ! ぐぬっ! ぐうっ!」

 アクトは呻きながら必死に捌ききる。滞空中の不充分な体勢のせいで、押され気味だ。


 ガギィン!!

 振り下ろされた剣を、アクトは剣で受け止める。が、オレは彼の肩に乗る。

「ぬ!」

 アクトの肩を足場代わりに「スターライト……」と天高く跳躍────、上方の盾を蹴って急下降!


「フォールッ!!!」

「紅蓮斬ッ!!!」


 アクトの振り上げてきた紅蓮の一撃と激しく交差。


 ガッギィィィィン!!!


 空に広がるように、衝撃波が放射状に弾けた。互いの体にビリビリと衝撃が貫く。だがまだ剣を重ね合っていた。

 落下任せに押し込むオレと、常人を超えた膂力(りょりょく)で踏ん張るアクト、互いに譲らない気迫!

「おおおおおお!!!」

「ぬううううう!!!」

 そのまま両者ともに落下。ズドンとアクトの両足が地面にめり込む。火花散るほど、競り合っていた勢いは徐々に静まり、体重を乗せていたオレも軽やかに着地。重ねていた互いの剣は離れた。


 しばしアクトと睨み合う。それぞれ真剣な顔で、頬に汗を垂らす。



「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 野次馬は歓声で湧き上がった。久々の刺激で活気盛んなのだろうか。とても賑やかだ。

 衛兵も二人の常人を超える戦いに目を丸くし、唖然としている。



「さっきのより強い技があるなら、遠慮なく撃ってこい!」


 大胆不敵にアクトは両の腕を広げて無防備を晒す。

 しばしの間、沈黙。チラリとヤマミに視線を送ると、頷いてくる。よし!


流星進撃(メテオラン)────」


 正眼に剣を構え、カッと見開き、瞬足で駆け出す。

 その刹那、アクトの目に、ナッセの背後から広大な宇宙が映り、五つの流星が放射状に鋭く降り注ぐように見えた。


五連星(ごれんせい)!!!!」

五激(ごげき)華柱紅蓮斬(かちゅうぐれんざん)!!!」

 アクトはカッと見開き、超高速で刀を振るい炎を宿して、幾重に紅蓮の軌跡が踊る。


 互いの渾身の連撃がドドドドドッと強い衝撃波を伴って激しくぶつかり合う!

 同じくらいの威力で衝突したが故に、大気が破裂。巻き起こった嵐に草原も波紋を打つように揺れ、木々がバサバサと煽られ。広い範囲で村ごと地面が震える。

 ビリビリ……、全身を貫く衝撃に二人は「くっ!」と呻いた。


 少し後退ったアクトと、ズザザザと滑走するように後ろへ滑るオレ。土煙と草葉が足元に舞う。

 ヤマミ達は唖然とした。

 ナッセと似た技を繰り出した? 体格の差でナッセが押し負けたが、結果は互角。


「ちったぁやるようになったじゃねェか! 手ェ痺れちまったぜ……」

「…………マジかぞ!?」


 この男! ただ怪力だけで振り回しているのではない。幾多の経験によって洗練された剣術だぞ。

 ──フクダリウスやマイシ級に強い!


 アクト、彼は一体何者ぞ……? 汗が頬を冷たく伝うのが感じ取れた。



「このやろ~~~~!!!」


 なんと、太陽の光を遮って飛び込んでくる影が見えた。アクトは反射的に剣をかざす。


 ガキィン!!


 ズン、アクトの足が地面にめり込む。

「ぬぬっ!?」

 なんとエレナが素手で剣に殴りつけていた。刃が拳に食い込まないかと思ったら、エレナの腕が銀に煌めいていた。

「──金属化!?」

 ヤマミもスミレもそれに驚く。

 かつてのエレナは、スミレのようにサポーターや金属のクラブ等を装備して戦う格闘タイプ。決して今のように素手で戦うスタイルではなかった。


「ダーリンをいじめんな~~!!」


 身軽に翻し、キレッキレの回し蹴りを放つ。アクトは「待て! 待て!」と焦りながら垂直に飛ぶ。

 エレナは感情的に、拳の連打でガガガガガと猛攻を打つ。アクトは必死に剣で(さば)いていく。その度に、衝撃波が余波を呼び、地面を振動が伝う。凄まじい拳の嵐だ。


「エレナちゃん、ヒールキック~~!!!」

 高く上げた金属の(かかと)を打ち下ろす。アクトは後ろへ飛んでかわす。


 ズドオォォォン!!


 少女が繰り出したとは思えぬほど、深く地面を穿ち、広々とクレーターに捲れていく!

 土砂が巻き上げられ、岩礫が飛び散る。

 ズズズズ、地面を揺るがし野次馬を戦慄に驚かせてしまう。


「こ、こんな……強かったのか!?」

 衛兵は唖然としていた。



「こ~~の~~!」

 エレナが金属の拳を振り上げようとするのを、慌てて後ろから抱きしめて止める。


「待ってくれぞ!! 待ってって! ちょっと落ち着いて!!」


 ジタバタもがくエレナは、オレがしがみついているのにようやく気付き、ポワッと赤面する。

「だ、ダーリン!?」

「おお! 落ち着いてくれたか! もう戦いは終わったぞ!!」

「う、うん!」

 落ち着いたエレナを解き放ち、ホッと息をつく。


「……抱きついてくれて、大胆~」ポッ!

 エレナは恋する少女のように、もじもじと上目遣いで見つめてくる。


 ……な、なんか勘違いしてるぞ。



「エ~レ~ナ!!」

 すかさずヤマミがチョップでエレナの額を打つ。ずびし!

「いったぁ~~!! またジャマミしてきた~~!」

「あんたね! いつも突っ走って~!!」


 再びエレナとヤマミの口喧嘩が繰り返され、素っ頓狂のオレはアクトへ視線を移す。アクトは肩を竦め、刀を鞘に収めた。


「あ~~、(しら)けた。終わりだ! 終わり!」

「あ、ああ……」

 相づちを打ち、こっちも光の剣を消す。



 道の駅にて、食堂でナッセ達はアクトと一緒にテーブルで向かい合って食事をしていた。カレー、ラーメン、焼き魚定食、たこ焼き、それらがテーブルに並んでいた。異世界らしからぬ料理の面々だ。これも二つの世界が融合している影響で混ざってるからなのかもしれない。


 エレナは不機嫌そうにブスーと頰を膨らましている。何故なら、オレの左右にリョーコとヤマミが座っていたからだ。そしてスミレはにこにこ。

「ぶぅ、ダーリンと一緒にがいいのに……! ジャマミめぇ!!」

 オレンジジュースをヤケ飲み。んぐっ、んぐっ!



「お前は俺の知るナッセとは違ェ……。だが、生まれ変わりそのモンだって感じるぜ! お前は(まぎ)れもなく城路(ジョウジ)ナッセだァ!」


 ニヤリとアクトは笑む。この真っ直ぐな目は希望に潤いていた。

 彼にとって親友だったナッセが再び目の前にいるのだ。もう会えないかと失望に明け暮れていたが、こんな辺境な村で再会ができたのだ。


 ──そして手合わせして、戦い方が違うもののナッセ本人だと確信した。



「んでよ、おめぇが女友達連れてきてるとは思わなかったぜ! しかもヤマミと再会してるようだしなァ! そして地球は復興してるって訳だ……」

「……復興?」

 アクトの言葉にヤマミ達は首を傾げた。


「あァ? 星獣が暴れてほとんどの国が滅んだ。日本も壊滅した。それでよく復興できてて、お前らがここに来たんだろ?」

「ちょっと待ちなさい! 星獣って何? 何の話?」

「日本壊滅~~??」

 アクトは話が噛み合わない事に眉を潜める。ちらっとオレに視線を向ける。


「……いつ日本が壊滅したのか知らんけど、ひょっとして大昔の人間かぞ?」

「数千年以上前に滅んだ古代文明の人?」


「いやいやいや!! それはねェ!! 断じてねェわ!」

 大仰に頭や手を振ってアクトは否定。


「そもそも星獣知らないし……。つか初耳だぞ」

「あたしも!」

 リョーコも同じだ。エレナはまだオレンジジュースを飲んでいる。


「あァ~~! ナッセ、おめぇに返すモンあるわ。受け取れ!」

 リュックから取り出した本から、更に取り出した四角い箱をテーブルに乗せる。ドンッ!


「なっ!!?」

 雷に打たれたように衝撃を受けた。見開き、冷や汗をかく。


 なんとケース入りのエキドナのフィギュアが!!!



「さ……三体目…………!!?」

あとがき雑談w


ヤマミ「今度は雷系魔法。取得が難しい攻撃魔法よ……」(雰囲気合わせ)

ナッセ「そ、それは一体……!?」(ごくり)


『雷魔法(デンガ系)』

 デンガ、デンライガ、ゴッドヘヴンの基本三段階。


 元々は『電牙でんが』『雷電牙らいでんが』『轟雷電牙ごうらいでんが』が旧名称。

 雷の矢を放つ攻撃魔法。明らかに攻撃目的の魔法。

 電流が激しく家電の電気替わりは不可。マジぶっ壊れるぞw

 最上級のゴッドヘヴンはコントロールが難しいので取得が困難。なのでグランドガイアと双璧を成すレア魔法。


ヤマミ「私ですらデンガで精一杯だったわ……」(遠い目)

ナッセ「そんなに難しいんだなぞ」

ヤマミ「ええ。暴れるような電流を制御できないと自分もダメージ受けるから……」


ナッセ「ヤマミがこれなら、オレには無理だなぁ……」

ヤマミ「そうかな?」

ナッセ「だって、いつもヤマミは魔法うまーく使いこなしてんだぞ。威力も精度も高いし、応用もしてるし流石って感じだなぞw」


ヤマミ「……あ、ありがと/////」(内心、極上の喜びぃw)



 次話『アクトが語る異世界の事情! 秘宝の宝庫!』

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