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31話「ナッセに親密なヤマミさん!?」

 一晩が過ぎ、二泊三日目────。


 朝の香り漂わせる、緑葉生い茂る大木。昨日の晩、草原で煌めいていた光の花はツボミになって息を潜めていた。朝霧が微かに辺りを漂い、湿りっけを感じさせる。


 オレ達は既に朝の支度を済ませ、コテージを片付けた。

 ヤマミは黒髪ロングをさらっと掻き上げ、凛々しい目線を見せる。


「なにがなんでも、エレナを見つけ出すわよ……。スミレ!」

「はいは~~い! もうすぐ出口が近いと『占事(フォーチュンテリング)』スキルで判明しました~」

「という訳で、最後まで付き合ってもらうわ……。いい?」


 いつもの通りのヤマミだなぁ。クールで凛々しい。



「行きましょう。ナッセ!」

「え?」


 不意に名指しでそう言われ、ドキッとした。

 いつもの凛々しい笑顔だが、どことなく柔らかい感じがした。流し目がなんとなく艶かしい。


「なにぼうっとしてるの? ……頼りにしてるから」


 こちらへ近づいたと思ったら手を取って、ぐいぐいと引っ張ってくる。リョーコと似ているけど、控えめ的な積極的!?

 リョーコとスミレの視線が集まる。は、恥ずかしいぞ……。

 それでも「行くわよ」と言わんばかりに引っ張って先行しに行く。特に払い除ける理由はないので、そのまま流れに身を任した。



「よし! じゃあ~こっちも行こ行こ~~!!」

「ちょっ!! な、なんでくっつくの!!?」

 明るい笑顔でスミレはリョーコの腕に抱きついて、るんるんと歩き出した。リョーコの方は戸惑いあわあわしている。知らない内に仲良しになってるけど、少し雰囲気がおかしいような……。


 先頭をオレとヤマミ。その後ろにリョーコとスミレ。


 奇妙な位置づけで洞窟(ダンジョン)の通路を進んで行くことになって、少し戸惑いがあった。

 今までは四人で普通に歩いていたのに、これじゃまるで二組のカップルじゃないか。いや一組は同性同士だけど!? ってか一体どうなってんだぞ?


 今はヤマミと手を繋いでいないが、妙に距離感が近い雰囲気がする。


「あ、あの? ヤマミさん?」


「……ヤマミでいいわ。普通に呼んで!」

「え? い、いいのかぞ……?」

 クールな顔でコクンと頷いてくる。オレも頷いて返す。



 昨日の晩で『心霊の会話(スピリチュアル)』を終えて、「おやすみ」と挨拶し合う際に、柔らかい笑顔を見せてくれた事もあり、彼女の雰囲気が少し違って見えた。

 なんつーか、変に優しくなって色気づいたっていうか……、ヤマミへの印象がまるっきり変わっていくような気がするぞ。なんかドキドキしてきた……。


 最初は高嶺の花で、生徒会長みたいな取っ付きにくそうな雰囲気で、近寄り難かった。

 オレなんかと釣り合わないと思って、特に意識はしてなかったんだが……。




(シールド)!!」


 道中でモンスターと遭遇し、戦っている最中、ヤマミは掌をかざし叫んだ。

 半透明で円形の紫がかかった盾が形成されて、火花を散らし弾丸が弾かれた。リョーコとスミレは驚く。


「おおおッ!!!」

 光の剣を振るい、通り抜けながらガンナードッグを次々と斬り裂き、爆破を連ねる。

 後ろからシャーって飛びかかる大ムカデ男を、火炎の奔流が押し流す。「ギョォォ……」と悲鳴、灼熱の大爆発が弾けて広がる。ッドオオォン!!

 ヤマミがフォローしてくれたようだ。


「ありがとぞ!」

「ええ!」

 互いに笑み合って、それぞれ戦闘に集中した。


 なんか、上手いくらい流れるようなコンビネーションが爽快だ。なんつーかピースがピッタリハマるような感覚。互いに妥協しているのではなく、先を読んでフォローしあってる感じだ。

 タネ坊とキンタと組むより、こっちの方が性にあっているのかもしれない。



 リョーコとスミレはコンビネーションを繰り出していた。


 スミレが身軽な動きで敵を翻弄し、パワーのあるリョーコで撃破。またはリョーコの攻撃をかわしたモンスターをスミレの体術で撃墜。

 二人の反応も早く、柔軟な動きが出来る上に、オーラ総量も質も高い。


 毒や麻痺などを仕掛ける大ムカデ男に対しても、オーラを使った『チャクラガード』で状態異常を弾くスキルでへっちゃらだ。

 さてはオレ達と同じように、晩に特訓してたな! でも負けないなぞ!



「ナッセ頼むわよ!! ホノバーンッ!!」

「おう!!」


 ヤマミの放った巨大な火炎球が、オレの振りかざす剣に激突。すると火炎の竜巻を纏った業火な剣が轟々(ごうごう)と唸りを上げた。それを大型トラック級の巨躯で超高速突進中の大鬼猪(オーガボア)に叩きつけた。

 ゴォウッ!!

 凄まじく巨大な火柱を高々と噴き上げて、灼熱の余波を周囲に散らし、大型モンスターは「ピギャウゥゥ」と跡形もなく蒸発した。


「ガチ魔法剣!!? つっよ!」

「うわぁ、炎でっか~~!!」

 リョーコとスミレは目を丸くした。



「ならば! 負けてられないわ!!」

「こっちもいきましょ~~!!」

 二人並んで、左右対称で掌を腰へ引く。『増幅(ブースト)』でオーラを集中。唸りを上げ、大地を揺るがしていく。ゴゴゴゴ、稲光を伴って二人の集中されたオーラが荒ぶった。


百歩神拳(ひゃっぽしんけん)!!!」


 リョーコとスミレは同時に片手を突き出し、凄まじいオーラの奔流が放射。大地を削り、大気を震わせ、軌道上のモンスター達を一気に呑み込み、大爆発!!

 ズッドオオオォォォン!!!

 フロアを揺るがし、轟音が鳴り響いた。オレもヤマミも唖然とする。


 ……す、すげぇ! コンビネーション必殺技!!

 なんか心が昂ぶるほど体が震えてくる。オレ達はまだまだ強くなれる! もっと強くなれるぞっ!!

 この四人でなら、この洞窟(ダンジョン)は乗り越えられるっ!!


 ──戦闘終了!



 手を挙げるヤマミ。

「ナッセ!」

「あ、うん!」

 パン、と互いに手を張り合った。昨日リョーコにしてた時と同じだ。まさかヤマミとこうするとは夢にも思わなかった。


「ちょっ! あ、あんた達、仲良し過ぎない??」

 リョーコは慌て気味に駆け込んでくる。



「いつもの通りよ。何か文句あるかしら?」

 ツンとするヤマミ。この辺はいつもの通りだ。リョーコは「あ、いえ……」と気圧される。

 ひょっとして軟化してるの、オレにだけじゃ……?


「でもヤマミちゃん。ナッセちゃんみたいに『(シールド)』してたわよね~?」

「ええ、昨日の晩に教えてもらったわ」

 なんか得意げに笑んでる気がする。

「ええっ! まさかナッセと同じ『刻印(エンチャント)』を!?」


 ヤマミは掌を見せた。薄ら浮かぶ丸い刻印(エンチャント)


「あ~~!! それ、あたしも前にしてもらったけど、すぐヘトヘトになったわよ!?」

「心配はいらないわ。『(シールド)』だけなら、瞬間的な消耗で済むから問題ない」

 いつもののようにクールぶって黒髪ロングをサラッと掻き上げる。……これ癖なんかな。


 これも昨日の晩に、ヤマミと色々話し込んでたぞ。



 ヤマミは思い返す────────!


 薄暗い洞窟(ダンジョン)。黒く佇む大木。その下の草原で蛍火のように煌く花畑。

 倒した形になっている盾を、階段のように段差的に宙に固定。一番上の盾の上でナッセは立っていた。コツコツとつま先で足場の盾を小突いている。


 それを見上げながらヤマミは納得するように頷いた。


「……一応、空を飛べる形にもなるわね」

「うん。そのようだぞ。穴ン時までは思いつかなかったけどぞ」


 (シールド)は、何を対象にして座標固定するかで変わる。


 自分を対象に座標固定した場合、自分が動くと追従する。フロアを対象に座標固定すると、その場で固定される。

 穴に落ちる時も、フロアを対象に座標固定したので階段の役目にもなった。

 拳を対象に盾を発生すれば、殴る素振りすると盾も一緒に突き出される。盾で殴る事も出来るのだ。


 工夫次第で色んな用途が広がりそうだった。



「汎用性が高いから、私にも『(シールド)』の刻印(エンチャント)を教えてくれないかしら?」


「うん、いいけど……。すぐ力尽きないかぞ?」

「それは強化系補助魔法を常時発動してたからでしょ? (シールド)だけなら、瞬時の消費で済むから問題ないはずよ……」


 こうしてゴニョゴニョとナッセから『(シールド)』の刻印(エンチャント)の事を教えてもらったのだった。



「────って訳よ」

 ヤマミは(シールド)を生み出した。

 なんかカスタマイズしてたようで、紫がかかった半透明の円形の盾。その表面には花びらのような模様が描かれている。妖艶で彼女らしいなと思った。




 数時間、また二組で洞窟(ダンジョン)をてくてく進む。オレとヤマミ。リョーコとスミレ。ずっと沈黙したままだったので、なんか落ち着かない。緊張してるのかな? うーむ。


「……待って! 邪悪な気配がする」

 ヤマミが腕を伸ばし、こちらの歩みを止める。また、あの邪悪なオーラか?

 向こうのフロアまで数十メートル。出入り口は真っ白だ。光が溢れているんだろうけど……。


 ゾワ……!


 確かに邪悪な気配がする。


「でも、あそこが出口フロアのようだよ~」

「…………どこへ繋がってるか分からないの?」

 怪訝なヤマミ。

「そこまで分からないよ~」トホホ、と肩を落とすポーズする。


 水晶のマップには入口から随分遠い所までフロアと通路で広がっていた。あのフロアへ踏み込めば、更新される。その時に入口と同じ形が浮かぶはずだ。

 その出入り口は、地球上のどこかと繋がっているんだろうか?


「エレナがいるかもしれない。たどり着いたものの帰れない、なんて可能性あるわ。あそこにいる邪悪な者によって……!」


 苦い顔でヤマミは爪を噛む。

 つまり、あそこにボスが待ち構えているようなものかぞ? 邪悪な気配っても、昨日のと比べれば屁でもない。とは言え、この気配はかなりの強敵……。



「ナッセ! もうこれで洞窟(ダンジョン)は最後! 行くわよ……!!」

「ああ!! 行こう!」


 目配せしてヤマミとコクリと頷き合い、ほどなく口元に笑みが広がる。信頼している頼もしさによる安堵と心強さ。

 なんだか心から勇気と希望が湧いてくるようで、体が軽くなってくる。

 力強く地を蹴って、最終フロアへと二人は颯爽(さっそう)と駆け出した。



「あらあらあら~~! 二人共、青春ねぇ~~!!」

「……こっちもさっさと行こうよー!」


 ほわほわと悦に入っているスミレに、リョーコはジト目で見やる。

あとがき雑談w


ヤマミ「モンスター設定よ。創作士(クリエイター)センターにデータがあるから」

ナッセ「絶対正確ってワケじゃないけどぞ」


ブルースライム(スライム族)

威力値:450

ぷにぷにしている。大きさはコタツぐらい。体当たりは金属バットで思いっきり殴られるくらい痛いぞ。下位種。一番よわいけど、一般人では勝てない。


スパイラルスライム(スライム族)

威力値:1200

ナッセが一番最初に戦ったモンスター。一つ目で丸い口に沿った牙。見た目が怖い。群れで出てきて、獲物を取り囲んでグルグル回りながら齧り付く。かなり強い顎でサメ並。齧られると肉片持ってかれる。ピラニア以上に出会いたくない。下位種。


魔法ネズミ(獣族)

威力値:3500

通常動物のイノシシ並の大きなネズミ。ねずみ色の毛色。知能が高く二足歩行もできる。集団で火魔法ホノを連発してくる強敵。これで全滅するパーティーも少なくない。下級中位種。


大ムカデ男(昆虫族)

威力値:3700

黒光りする装甲を連ねる6m以上の長身の男。常に四つん這いで複数の手と足で這い回る。口の左右の牙。そして毒と麻痺の粘液攻撃が得意。動き封じてカジカジ食事するようだ。中位種だが、状態異常攻撃が厄介だぞ。


ガンナードッグ(メカ獣族)

威力値:4600

口から牙の弾丸を打つ。舌の代わりに砲身がある。六発放つとリロードしない限り撃てない。群れて撃ちまくるため注意。注意なだけに中位種。


大珍キンタ(人間族/蛮族)

威力値:4100 年齢44

前髪の何本かをリリースして自身をゴリラに身を変える。ゾウを召喚して殴るなど動物の力を借りる。何故かインド好き。呼吸できないけど何故か宇宙適応S。常に相棒と現れるぞ。二人組だから強いだけで、単体はさほど強くない。HO☆MO。中位種。


大鬼猪(オーガボア)(獣族)

威力値:7700

獰猛な性格。しっつこく追い回す執念深さを持つ。大型トラック級のでかさ。それでいて最高速度は時速200kmを超える。上位種。


クミーン(カタツムリ族)

威力値:1400

バイク位の大きさ。殻に篭って高速回転攻撃する。最高速度は時速100km未満。下位種。


ハイパークミーン(カタツムリ族)

威力値:6300

小、中型トラック位の大きさ。殻に篭って高速回転攻撃する。壁に跳ね返ってあちこち転がる。最高速度は時速200kmに達する。エンドレスで転がるので厄介ぞ。上位種。


ミノタウロス(獣人族)

威力値:8300

仮想とは言えナッセが苦戦した狂獣。超重量の斧を軽々と振り回す。更に威圧で弱い相手を動かなくさせる。上位種。



 次話『フロアボス登場!?』

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