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30話「凶悪! もう一人の魔女!!」

 交差点になっている大広間のフロアで、オレ達は邪悪なオーラにかつてない恐怖を感じ、慎重に通り過ぎようとした。

 だが、その交差点に踏み入れた途端、重力の向きが変わって邪悪な闇が溢れる穴へと落下してしまう。


 ナッセ、リョーコ、ヤマミ、スミレは「うわあああああああ!!」と絶叫しながら穴に真っ逆さまだ。

 そのまま禍々しく蠢く茨のオーラが充満している穴が迫る。

 誰もが絶句し、この世の終わりのように絶望色で表情を覆った。



 だが!


 切羽詰って必死に「おおおッ!!」と気合を発して杖を突き出す。


(シールド)ッ!!」


 落下する前方に星屑が集まって、半透明の大きな光の盾が煌めいて出現!!

 それは落ちていくオレ達を受け止めた。ドスン!

 辛うじて落下は(まぬが)れたようだ。


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………!


 (シールド)の上で、俯きへたりこんで息を切らす。未だガクガクと体が震える。

 ヤマミはオレの腕にしがみついたまま、既に意識を失っていた。

 リョーコとスミレも青い顔で、ぐったり横たわっている。



 このままじゃ……ダメだ……! ここから這い上がらないと!!

 盾だって、そんな長くは持たない……ッ!!


 ヨロヨロ立ち上がり、杖を振りかざす。階段になるように、次々と段差をつけて(シールド)を生み出していく。気を失っているヤマミとリョーコとスミレを肩と背中に乗せるように背負う。

 そして『刻印(エンチャント)』を発動し、円の小さな星を三つ煌めかす。


 それでさえ、恐怖に震える体は重かった。下からドス黒いオーラの触手が手招きしてくるようで、怖気が体に絡みついていたからだ。


 それでも歯を食いしばり、(シールド)を連ねた階段を一歩一歩、必死に踏みしめて登り始めた。



 ぜぇ……、ぜぇ……、ぜぇ……!


 必死の形相で、身を奮い立たせて重い足を歩ませていた。だが、一番下の方の(シールド)から徐々に光を失っていく。ヤバい……。

 再び黒い絶望に呑み込まれそうになる。


 キッと見据える先には、遠く感じる交差点の通路。そして更にその奥から溢れる光。その更の更に、師匠の背中が浮かび上がっていた。偉大な存在感を漂わせる勇姿。

 魔女クッキー。憧れであり、目標としている夢でもある。あの背中を追いかけて、いつかたどり着くまで!


 その直向(ひたむ)きな想い一つで、震える体を必死に動かしていた。



「オレは……、オレ達はッ!! まだまだ、これから……! これからなんだぁぁぁあッ!!!」


 光り輝く決意を胸中に秘めて、勇気と希望で体に活力を与えていく。



「おおおおああああッッ!!!!!」


 全身全霊、力を振り絞って、消えゆく(シールド)を蹴り上げて天高くジャンプ!! ふわりと宙を舞い、交差点の向こう側の通路へ、ズダンと屈み込むように着地!


 ガクン! 途端に重力の向きが変わり、床が壁に、壁が床に!

「ぐっ!」

 それでも三人を胸に、自分をクッションにして床に落ちた。ドスン! ぐ、重ッ!

 意識が遠のき、同時に体から力が抜けていく。


 ごほっ! はぁ……、はぁ……、へへ。な、なんとか……助かっ……たぞ…………。



 ヤマミは我に返り、霞んだ目で下の柔らかいものを見やる。ナッセだった。目をぐるぐる回して気絶している。

「あっ!」

 慌てて離れる。横たわっていたリョーコとスミレを揺すって起こす。


 しばしの沈黙。



 苦い顔で交差点の通路を見やって、ようやく状況を飲み込めた。

 落ちたはずなのに、ナッセが三人も背負って這い上がった……!? 曖昧だけど、落ちる寸前に輝く盾が見えた気がする…………。(シールド)で? いつも出してる(シールド)で!?


「…………助けられたわね」


 ヤマミはへたりこんで、無念の表情で俯く。何もできなかった自分が恨めしい。


「うん……」

「そうね」


 力なくリョーコとスミレも頷く。それぞれ疲れきった顔をしていた。





「どういうことだ!!?」


 底知れぬ真っ暗闇の世界。丸くて白い円の下で、藻乃柿(モノガキ)は怒りを露わにしていた。ギリ、と歯軋りする。その顔には冷や汗がびっしょり。伝って顎から滴り落ちる。

 怒っているものの、それでもゾクゾクと怖気が体を蝕んでくる。



「おいおい! 学院(アニマンガー)から直接来るなって言っただろぁ……。あいつらにバレたら、どうしてくれんだぜ?」


 藻乃柿(モノガキ)はキッと振り向く。

 またもう一つの白い円。そこに一人の子供がいた。三角帽子に、ボタンの無い小さなチョッキ、その下にズボンに入れずはだけた白いシャツ、靴辺りにぶかぶかになっているズボン。

 可愛い子供顔なのだが、荒んだような据わった目。小馬鹿にするような薄ら笑みを浮かべていた。


「ヤミロ……」

「おっと。『(ぬし)』がおいでなすったぜぇ」



 ズズズ……、真っ暗闇であるにも関わらず黒い茨のオーラを全身から漏れ出しながら、一人の女性がゆっくりと歩いてくる。

 漆黒の頭巾、禍々しさを表す漆黒のドレス、そして煤けたような暗めの金髪のロング。薄ら笑みを浮かべ、真紅の双眸を見せる。綺麗に整った美女ではあるが、残忍さを表すような笑顔だ。


 ドッドッドッドッドッドッ!


 藻乃柿(モノガキ)の心音が急激に高鳴っていく。ガタガタ、体が震え始める。まるで極寒の吹雪の最中にいるかのようだ。


 相変わらず、おぞましい凶悪なオーラ……。いや、フォース!

 それは生命エネルギーと精神エネルギーの上位に位置する魂エネルギー……。


 途方もなく深く濃密で、禍々しいフォース。人間の限界を遥かに超えた圧倒的量……。

 例え、全世界から国連軍を全動員しても、核兵器を全弾ぶっぱなしても、全く通用しないだろう。


 まさに次元の違う『悪魔』だ!!



「はろぉお。藻乃柿(モノガキ)さぁん。またいらっしゃってくれたのねぇ~~。歓迎するわぁ~」


 首を傾げたまま見下すような薄ら笑みで見下す。藻乃柿(モノガキ)の顔は真っ青だ。だが、拳を握って怒りを漲らせた。


「魔女アリエル!! なんで無断で、あちこち『洞窟(ダンジョン)』を増やした!? おかげで我々の創作士(クリエイター)の行方不明が後を絶たん! これでは育たぬ! 育てられぬ!! これでは『運命の鍵』が見つけられないではないか!!!」

「ふ~ん。そ・れ・で?」

「それで、だと!? ふざけるな!! 我々は互いに不可侵条約を結んだはずだッ!!」


 嘲るようにアリエルは目を細める。


「私はねぇ~~勝手に『洞窟(ダンジョン)』を作ってるだけよぉ~~。断りもなく勝手に入るお馬鹿さん達が悪いんじゃな~い? こちらはぜんじぇ~ん、攻め込んでなんかいないわよぉ~~?」

「くっ!」

「でもま、あなたにとって悪くない話よぉ?」

「……どういうことだ?」


「前にも言った通り『運命の鍵』所有者は、必ず最後まで生き残るわぁ」


 確固たる確信の下で、静かな落ち着いた視線を見せるアリエル。

 藻乃柿(モノガキ)は息を呑む。



「『運命の鍵』の前任者の行く末を、私は見てきたわぁ……。

 何度死んでもおかしくない苦難に見舞われようとも、彼女は……仲間と共にそれを乗り越えてきた! その結果、世界を救うまでに至ったワケね!

 私はこう思っているのよぉ……、それは『鍵』が希望に輝く者を作るのではなくてぇ、希望に輝こうとする者に『鍵』は宿る、と」


 藻乃柿(モノガキ)は呆気に取られる。


「希望に輝く…………」

「そう。どんな夢でも、それを目指して直向(ひたむ)きに頑張れる創作士(クリエイター)にこそ『鍵』は導かれる……」

「夢……だと!?」


「あなたには理解できないでしょうけど、世界を救いたいとか勇者みたいな夢を持つ人に宿るとは思わない事ね……。そんな聖人、薄汚い人間になれるわけないでしょぉ~? ねぇ? 偽・善・者ぁ?」

「ぐっ!!」


 胸に刺さしてくる悪意の言葉に、藻乃柿(モノガキ)は睨みつける。



「……でもま、厳しい運命を乗り越えてこそ『運命の鍵』所有者よぉ。『洞窟(ダンジョン)』程度で力尽きる創作士(クリエイター)なんて要らなぁい……!」


 冷たい残忍な双眸に、藻乃柿(モノガキ)は戦慄を感じた。


 まるで人をゴミのように見ている。そこらへんの虫やネズミとしか思っていない。恐らく悪魔(アリエル)も『運命の鍵』目当てで、星ごと人類を玩具(オモチャ)にして(もてあそ)んでいるのだ。


 加速度的に侵食する『空想(ファンタジー)』の恩恵と共にそれは現れた!!

 ハイリターンに超絶ハイリスク……! 途方もない可能性の希望と一緒に、底知れない絶望の魔女(アリエル)がついて回った!!


 この悪魔(アリエル)だけは……、完全、完璧、完遂、消し去らねばならんッ!!!

 藻乃柿(モノガキ)はギリッと歯軋りし、執念深い形相で睨みつけた。




 薄暗くなった洞窟(ダンジョン)。────時刻は午後六時を過ぎていた。


 円を描くように枝を大きく広げて、葉っぱ生い茂る大きな木が立つ、広大なフロア。所々光る花が咲き乱れている。そこでポツンとハウス型コテージが建っていた。

 そのコテージの中の一室。寝室のベッドでナッセは寝かされていた。その手を握り締めるヤマミ。ずっと看取っていたのか、極度の疲労と眠気でうつらうつら頭を上下させる。



「ん……?」


 意識が戻ると、視界には真っ白な天井。

 え? ここどこ??

 身を起こすと、真っ白な寝室だった。手が温かいと思ったら、側でヤマミが握り締めながらベッドの上に上半身を乗せて寝ていた。


「え? ヤ、ヤマミさん!!?」


 思わず驚いて体をビクッとさせた。その挙動でヤマミは「う……ん」と身を起こし始める。目を擦る。


「ヤマミさん? い、一体どうなってるぞ?」

「ナッセ……!」

 妙に弱々しい。涙ぐんだかと思うと、いきなり胸に抱きつく。思わず顔が熱く感じた。



「ごめん……! ごめん、なさい…………!!」


 今までのクールな彼女とは思えないほど、柔らかい泣きっ面を見せるヤマミ。流石に驚く。

「ちょっ……!?」

「私が……真っ直ぐ進めだなんて、言い出さなければッ……!!」


 罪悪感に苛まされていたのだろうか? 胸が締め付けられる思いだろうか?

 なんて言えばいいのか分からない。けど、苦しんで欲しくない…………。

 精一杯微笑んで、嗚咽するヤマミの肩に手を置く。


「ううん! もう大丈夫! さぁ、一緒にエレナさんへ会いに行こう!!」


 その温かくて優しい言葉に、ヤマミは再びオレの胸に顔を埋め「うええ~~」と泣き崩れた。

あとがき雑談w


アリエル「はろぉおw 突然だけど戦闘力っぽい設定の説明しとくわぁw」


『威力値』

 これは戦った際に生み出される破壊力の数値ねぇ。

 単純な話、戦闘力みたいなものと思っていいわぁ~。


アリエル「ナッセの威力値だったら、通常攻撃が5000でフォールなど技による攻撃が10000って感じねぇ」


 ちなみに創作士(クリエイター)センターで威力値を図る装置があって、そこにバンバン様々な攻撃を加えて自動で計算してくれるわよぉw

 時々「ちっ故障か!」「そんなの間違いだー!」「くそー故障してやがる」などとほざくクレーマーもいるみたいねぇw 信用して欲しいわぁw


アリエル「それを踏まえて私の威力値は1億5000万でぇすw もちろんフルパワーで襲いかかりませんのでご安心を~w」

クッキー「じゃあ私は3億だよ」

アリエル「本当は40億よぉ!」

クッキー「変身したら380億だったよ」

アリエル「完全体になったら23兆9400億になるわよぉw」

クッキー「ちょっと無理すれば5000兆になりまーす!」

アリエル「えぇーじゃあ私は死ぬ気でやれば3400京にもなるわよぉw」

クッキー「命を賭ければ340垓5600京に……」


アリエル「キリがないから止めよぉ~? 不毛だわぁ~」(汗)



 次話『親密になったナッセとヤマミのラブ度を刮目ッw』

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