表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/201

27話「スミレちゃんの百合風オーラ講座!?」

 深夜なのか、洞窟は薄暗くなっていた。時刻に応じて明るさも変動するのだろうか?


 二階建てのハウス型コテージですら、ポツンと小さく見えるほどに、湖のフロアは広大だ。

 鏡のように風景を映す大きな湖を中心に、苔が広がっていて草が所々生えている。背の低い木々も所々生えていた。


 湖を面とするハウスの側で、ナッセとヤマミは静かに瞑想に耽っている。


 そのハウスの反対側に隠れるように、リョーコとスミレが向き合っていた。緊張しているリョーコに反して、スミレはにこやかな笑顔だ。

 というのも、スミレの格好はいつものふわふわな感じの白いワンピースではなく、体のラインに合わせた軽快な服装。極端な短いミニスカにスパッツ。肩と太ももが広く露出されていている。これは格闘家として動きやすいものだった。


「……あの? そのカッコなに?」

「ああ、うん。普段はね~、おっとり癒し系の僧侶(プリースト)なんだけど~、その実、格闘僧(モンク)としての家系的な~?」


 これまで目にしたスミレは探索や補助スキルをメインにした後衛タイプで、前衛で戦うようなタイプには見えなかったからだ。


「まぁ~、エレナちゃんの方が強かったから、引っ込んでたんだけどね~~」

「え……、そ、そうなんだ」


 思えば、魔法ネズミを横蹴りで壁まで吹っ飛ばしてたっけ。



 そう言うと、いきなりスミレは足元に向かって「オラァ!」と凄んで拳を振り下ろし、轟音と共に地面が弾けた。そこは土煙漂う大きめのクレーター。

 ヒエッ! リョーコは震えた。とてつもないギャップである。


炸裂拳(バースト・ナックル)

「へ?」

「さっき放ったパンチがそれだよ~。オーラで覆った拳で爆砕ってか~」


 くねくねと柔らかい肢体を見せつけるスミレ。今までと違う彼女に、リョーコも戸惑っていた。

 バン!

 スミレの足元が爆発したと思ったら、本人は消えていた。思わず目を丸くする。

 後ろから白い手がスラリとリョーコの背中から腹を撫でるように抱きついてくる。スミレの顔が間近に寄って来ていた。


「……炸裂(バースト)ダッシュ。もちろん『炸裂(バースト)』を足裏から放って走るの~! 初動が速くなるからオススメだよ~~」

「あ、あの…………??」


 背中から、なでなでと(なまめ)かしく擦り寄っているスミレに、リョーコは強張ったままだ。


 むに!


「え?」


 むに、むにむに~!


 なんとスミレの両手が、リョーコのたわわな胸を揉んでいた。

 大きくて弾力のある胸に、スミレは恍惚(こうこつ)とした表情で堪能(たんのう)。はぁはぁ、と吐息を漏らす。


「な、なにしてんですか!!? スミレちゃぁぁぁん?」


 振りほどこうとするが、スミレはしっかりと抱きついているので無駄な徒労だった。

 敏感な所を微妙に掠ってみせたりして、リョーコはゾクゾクと悶え始める。

「ひぃええええええ!!! だめぇ!! だめぇぇえ!」


 すると、あっさりスミレは離れる。



「ぜーは、ぜーは! な、何を??」

「うふふ」

 首を傾げ微笑むスミレ。

 すると獲物を狙う豹のように、腰を落として両手をワキワキしながら身構えてきた。


「さ~て、鬼ごっこ始めますよ~。さっきのようにされたくなければ、上手く逃げてね~~」

「え、えええ!?」

「揉み~!」

「ちょ! ちょっと!!」

「揉みまくりたいです~~!」

 両手を艶かしくワキワキするスミレ。目の色が違う。更に口から吐息とヨダレが……。リョーコはゾクッと身震い。


 こ、こいつ百合(ゆり)!? 百合(ゆり)属性~~!!?


「はぁ~い! ドン!」

「ひょええええええ!!!」


 スミレが地面を爆発させて、間合いを一気に詰める。と、同時にリョーコも地面を蹴って離れる。

 だが、一直線に炸裂(バースト)ダッシュだけでは、スミレに追いつかれる。


「ならば、横に炸裂(バースト)ダッシュ!」

 真っ直ぐではなく、地面を爆発させて横へ蹴る。直角に駆け出したのだ。

 するりとスミレの両手が空を切る。


「ち!」

 スミレは小悪魔的な顔で振り向き、炸裂(バースト)ダッシュで再び追いかける。ジグザグ刻んで二人は追いかけっこを続けていた。

 炸裂(バースト)を応用して身を速く(ひるがえ)したり、高くジャンプしたり、と色んな体操を披露(ひろう)させてリョーコは必死に避け続けていた。


 ────そして数十分。



「うわ~~! 捕まえられないよ~? すごいすごい!!」


 スミレは明るく子供のようにはしゃいで拍手。

 だがリョーコは必死に逃げていたので、ゼーハゼーハ激しく息を切らしていた。もう顔は真っ青である。

 気付いて見てみれば、同じように動いていたスミレは一つも息を切らしていないのだ。


 その気になれば、あっさり捕まえる事も出来ていたのかもしれない。百合こわい。



「お次は…………、あんまやりたくないけど~~」


 突然、スミレは大柄のマッチョに膨れ上がった。リョーコは思わず飛び上がる。

 筋肉隆々で、腕がムキムキ膨れていて、腹筋も割れている。太ももも隆々だ。しかし(しな)びて、元通り綺麗な女体のラインに戻る。


武劉(タケリュウ)さんみたいに、オーラを体内に閉じ込める事で筋肉を増量するタイプと~」


 ボウッとスミレの全身から光が噴出。水色だった髪の毛が逆立ち、ギザギザになる。が、光は消えて髪の毛も元に戻る。


「直接全身から放射していくタイプもあるんだよ~。任意でイメチェンできるのも特徴だね~」


 なんと頭上にアホ毛が伸びて、ピクピク揺れる、ぐりんぐりん回る。

 髪の毛も自由に動かせるのか、まるで触覚だ。リョーコは絶句。するとスミレはニヤッと笑う。


 ぼん、と胸が大きく膨らむ。

 きゅっ、とウェストが細くなる。

 ぼん、と尻が大きく膨れる。


 正に漫画やアニメキャラのような極端な女体ラインだ。

 しかし萎びて元通りの体型に戻る。

「ね~」

 スミレは顔を傾けて、甘い声で微笑む。リョーコは呆気に取られたままだ。


 ナッセが「そもそもオーラはSP(スタミナプール)から供給して放出する生命エネルギーだぞ。比較的簡単にできる代わりに物体や身体の強化や物理的破壊にしか使えない。つーかそれが限界」とか言ってたのに、割と自由にできるじゃないですか~~?



「でもね、生命エネルギーって身体関係だから、魔法のように色んな特殊能力ないからね~。とほほ~」

 あ、そこはナッセも言ってた。


 いつの間にかスミレはリョーコを真正面から抱擁。速い!

 むにむにと、背中をスミレの指が這い回る。やめて! やめて!!


「まず武劉(タケリュウ)さんは、オーラで肉体強化に全振りして、筋力と体力パないくらいアップさせてるよね~~。スピードが犠牲になるけど、それを補うように鋼の肉体で、いかなる攻撃も弾き返すように特化してるわけね~~」

「は、離れて説明して~~!!」

「リョーコちゃん、もったいなぁ~い! こんな豊満(ほうまん)なボディ持ってるのにぃ~~」


 なんか、ベトッと耳に感触が……。

 スミレの唇が当たってる。今度は生暖かい息を吹きかけられる。ぞわぞわ。


「ナッセちゃん羨ましい~~! こぉ~んなボディ堪能してッ!!」

「いやいやいやいや!! そんな関係じゃないよ!! ただの友達だから~~!!」


 するとスミレはガバッと離れつつリョーコの肩を掴んで、見つめ合う。


「ほんと?」

「ホントだってば!!」

「ほんとにぃ~~?」

 首を傾げて愛らしく疑ってくる。

「マジ!! 確かに夢を語った仲ではあるけど、恋仲じゃないから~~!!」


「それなら良かった~~!」


 ホッとスミレは満面の笑顔で安心する。

「いやいや、ちょっと待ってね! あたし、その気ないからね!?」

 慌ててリョーコは両手をパタパタ振る。



「ちょうどいい具合に、ヤマミちゃんはナッセちゃんとくっついちゃってるから~~、一安心?」

 てへぺろ、と舌を出して可愛らしく片目ウィンクするスミレ。



 …………ナッセはスミレちゃんの事、ときめいてたようだけど、この事知ったらすごいショック受けそう。


「ごめんだけど、軽くお手合せしてくれるかな~? もちろんオーラで防御したままで~」

「あ、うん……」

 互いに拳を固めて、身構える。両方共に炸裂(バースト)ダッシュで間合いを詰める。


 ガゴォン! まずは互いに拳をぶつけ合う。


 そして体を捻ってパンチ、キックを繰り出す。腕で構えて受け止めたり、弾いたり、避けたり、攻防の応酬を繰り返す。スミレが導くように、リョーコを自由に動かせて受け止めていく。

 共に防御へオーラを回しているので、打撃を受けても傷一つつかない。


 ガガガガガガガガ!! 周囲に土煙が舞うほど、リョーコとスミレは打撃の応酬で打ち合っていた。



 バチッと、間合いを離して着地。スミレが制止の掌を見せて、リョーコは動きを止める。


「あなたも小細工したりと頑張ってるけど、やっぱりパワーで押し切るのがいいかな~?」

「で、でも……」

「『炸裂(バースト)』と『衛星(サテライト)』などの基礎スキルは、実はその気になれば創作士(クリエイター)の誰でもできるよ~。簡単だからね~」

「あたしでも……?」

「そ! 見たところ筋がいいみたいだし、今の格闘でも結構センスあるよ~~」


 リョーコはポカンとする。


「基礎スキルを組み合わせたり、応用したりして、創作士(クリエイター)は独自の技スキルを創っていく。学院でもそういう事を教えてくれたらいいんだけどね~。ま、いっか。アレは黒いから仕方ないけど~」

 えへへ、と笑う無邪気なスミレ。


「さて、リョーコちゃん。斧にオーラを込めて軽く『増幅(ブースト)』してみて~」

「え? こう?」

 リョーコは斧を腰から取り出し、ギュッと握り締める。その手からオーラを斧に推移させる。



 ズガァァアン!!


 フロアの岩壁にでっかいクレーターが広がる。ポロポロと破片が崩れ落ちている。驚くリョーコ。

 そんなパワーが自分にもあったの?

 今でも信じられない。それを見てスミレは微笑む。


「ちょい増幅(ブースト)で、この破壊力か~! すごい! すごい!

 ……突き詰めれば、武劉(タケリュウ)フクダリウスさんも倒せそう~~!?」

「そ、そんな事……」

「ナッセちゃんもあなたも、何も知らなかったんだね。あの学院じゃ~しょうがないけど、これから教えてあげるね~!」


 こうして手とり足とり、リョーコはスミレからご教授されたのだったぞ……。

あとがき雑談w


スミレ「げへへ~w おっぱい柔らかくて~オレ幸せ~w」

リョーコ「ま、まるで男みたいだよーw」

スミレ「ふふ~んw でも女だからね~w」


 講座の一通りを終えて……。


スミレ「さて、と。そろそろ行く?」

リョーコ「え、ええ? どこへ??」

スミレ「フッフッフw ベッドに決まってんじゃんw」

リョーコ「ええッ!? ちょっ雰囲気が違ッ!」

スミレ「今夜は寝かせないぜ~ww」(にじり寄り)


 リョーコは貞操の危機を感じ取って、脱兎のごとく逃げ出して自分の部屋へバタンと帰って鍵を閉めた。


スミレ「ちぇ~w つれないぜ~w 必ず惚れさせてやるぜ~w」



 次話『生まれ変わったリョーコの強さを思い知れー!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ