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25話「吠えるナッセ! 覚醒の兆し!?」

 二つの丸い耳が特徴の、大きなネズミ。大きさはなんとイノシシと同じくらい。

 チュウチュウ鳴きながら、小さな火炎球を続々と飛ばしてくる。


「魔法ネズミかぞ!」


 ヤマミと一緒に身構える。その後ろにリョーコとスミレ。

 モンスターのネーミングはさておき、初めて魔法を使ってくるモンスターだぞ。

 なので初心者にとっては手強く感じるぞ。


(シールド)!!」


 まずは盾を張り、飛んでくる無数の火炎球を弾いていく。

「中級氷魔法ヒェピラァ!!」

 ヤマミが氷の塊を『衛星(サテライト)』で浮かし、『分割(ディバイド)』で無数の氷の矢を撃ち出す。雨のように無数と降り注ぎ、ザクザクと数十匹もの魔法ネズミを串刺しして、広がった氷結が地面へ繋ぎ止めていく。


「おおおおお!!!」

 辛うじて生き残っているネズミや無事なネズミを、瞬足でジグザグ駆け抜けながら斬り裂いていった。


 一気にボボボシュン、と煙となって虚空へ流れていった。


「ギ……ギギィィ!!」

 岩に隠れていて生き残っていたネズミが、恨みづらみとスミレへ飛びかかる。

「これで最後~!」

 視線すら向けず、スミレは蹴りを放ってネズミをぶっ飛ばす。バン、と壁に打ち付けられ「ギィ!」と声を漏らし、煙となった。


 リョーコはポカンと立ち尽くす。


「……あたし、全然何もしてないんですけど?」




 天井の岩山の先っぽから雫が滴り落ちる。

 静かな洞窟の通路を歩くオレたち。側を透き通った川が流れる。


「ヤマミさん。前から思ってたんだけど、唐突に出てきたオークや、曲がり角に潜んでいた狼に気付いてたけど、これも何かのスキルかぞ?」


「……『察知(サーチ)』っていう探索系スキル。個人差はあるけど、感知範囲を広げて周囲の情報を獲得する。まるで触れたかのように形状や質感を把握できる。これにより目視では見えない隠れたものを知覚できる。

 極めれば色も匂いも知覚できるらしいけど」

「あたしも察知(サーチ)できるんだよ~! えっへん!」


 そういやスミレもネズミを見ずに蹴っ飛ばしたっけ。


 何度か一緒に戦闘して思ったけど、タネ坊とキンタと同等以上に強いなぞ。

 でも下品じゃないのと、彼女たちとチームワーク取れる分だけ、まだやりやすいぞ。


 そして……、なんだか試したくなってくる好奇心がウズウズしている。


 逆にリョーコはそわそわしていた。

 全く何もできず、ただ金魚のフンのように同行してるだけになっていた。ナッセ、ヤマミ、スミレがいい雰囲気に包まれているのを見て「なんとかしなきゃ……」と内心焦っていた。



 数時間後、洞窟を歩いていると気配がピリッとする。


「敵出るよ~!」


 眼前の地面からカタツムリが数十匹。更に人面蜘蛛まで混ざっていた。

 凛と身構えるヤマミ。リョーコは斧を手に、前線へ走ろうとした。


「おおおおおッ!!!」

 杖を高らかに挙げて吠え、足元から旋風が吹き荒れた。


 リョーコはもちろん、ヤマミとスミレは目を丸くする。なんと一際大きい光の剣がナッセの上に浮かび上がったのだ。

「さ、衛星(サテライト)!?」


「スターライト・セイバー!! 衛星(サテライト)分裂(ディビジョン)炸裂(バースト)追尾剣(ホーミングブレード)──ッ!!」


 浮いていた剣がパラパラと分身し、杖を振り下ろすと発砲音を鳴り響かせ、一斉に超速射出された。

 いきなりの事に戸惑うカタツムリと蜘蛛は逃げる間もなく、屈折して追いかける光の剣の嵐を浴びて、爆砕の連鎖が轟いた。容赦のない絨毯爆撃だ。続々と肉塊と破片が飛び散る。


 立ち込める煙幕の中から、数匹の回転する殻が飛び出す。


「スターライト炸裂剣(バーストブレード)!!!」


 駆け抜けながら一つ一つ斬り裂き、爆砕された殻は次々と肉片と破片を散らした。

 やったぞ!! 刻印(エンチャント)の強化展開せず、普通に倒せたぞー!

 以前は弾くのが精一杯だったけど、今は面白いように砕けるんだぞ!


炸裂剣(バーストブレード)!! 炸裂剣(バーストブレード)!! 炸裂剣(バーストブレード)ッッ!!!」


 バカ一つ覚えのように基礎スキルの名称を叫びながら、爆音を何度も轟かせてモンスターをことごとく爆砕していく。

 まるで、新しい事を覚えてはしゃいでいる子供のようだ。


 呆然とするヤマミ。後頭部に汗を垂らす。



「ピピ────ッ!!!」


 なんとこれまでのカタツムリよりも一回り大きい同種が数匹のそのそ現れた。


 ヤマミとスミレは驚愕した。

 あのカタツムリこと「クミーン」の上位モンスターである「ハイパークミーン」!!

 クミーンの能力を数倍凌駕(りょうが)する上位互換(じょういごかん)モンスター。特に守備力が堅く、生半可な攻撃技スキルではダメージを与えられないだろう。


 ハイパークミーンは「ギィィィ」と威嚇するように唸り、身を巨大な殻に引っ込めて高速回転。

「くっ!」

 危険を察し、慌てて横に飛ぶ。

 過ぎ去った殻は、奥の岩山を豪快に粉砕。当たれば致命傷にもなるだろう。頬を汗が伝う。


 更に、ハイパークミーンはみんな高速回転で縦横無尽に転がりだす。あちこち壁を粉砕しながら跳ね返り、段々と加速していく。反射、加速、反射、加速、そのエンドレスで際限なく飛び交い続ける。


 例えるなら、高速道路を走るトラックが四方八方飛び交うようなものだ。下手に挑めばミンチにされる。



「ナッセ!! このフロアから出るわ!! ああなったら手に負えないからッ!」

「ならば!! 見様見真似(みようみまね)────」

「ちょっと!」

 試したい衝動でオレは真剣な眼差しで、光の剣を両手で握り正眼に構えると、周囲に衝撃波が吹き荒れる。

 カッと見開く。


「殺陣進撃!!!!」


 疾風のように駆け抜けながら、空を駆け抜ける流星群のように煌めく軌跡の一撃一撃の嵐を、ハイパークミーンの群衆へ瞬時に叩き込む。

 鋭く穿つような衝撃音を鳴り響かせ、瞬く間に遥か向こう先へ足を止め、惰性で地面を滑った。

 ハイパークミーンは一斉に木っ端微塵と砕け散り、烈風が獰猛に荒れ狂った。


「ぐっ!」

 激しく吹き付けてくる烈風にヤマミ達は腕で顔を庇う。

 例えるなら、高速道路を走るトラックを一斉に粉々に……って、絵的にヤバいわ!



 足元に立ち込める煙幕。立ち尽くすヤマミは呆然とし、頬を汗が伝う。


 まだスタンバイスキル『形態(フォルム)』すら教えていないのに……。

 形態(フォルム)は、魔法などを全身に纏わせたりするスタンバイスキル。

 火の魔法なら、火炎を纏いながら戦う事もできる。これは体術が得意なエレナが得意としていた基礎スキル。でも接近戦が苦手なヤマミは自分で実践して教える事ができなかったのだ。


 あのタネ坊とキンタが得意とする殺陣進撃も、炸裂(バースト)を『形態(フォルム)』で発動して一気に身体能力を爆上げして一瞬連撃を叩き込む必殺技だ。この技の特徴は、ただの乱打にあらず。渾身の一撃を一瞬連撃。それ故に、名前の通り()()技である。


 ナッセはその必殺技の仕組みを見極めて、そっくり再現したのだ。


 今までパッとしなかったのは無知だからであり、知りさえすれば途端に化けるタイプかもしれない。

 するとナッセが竦みだした。




 ビキッ、全身が軋むような激痛が襲う。思わず見開く。


「ぐぎゃあああ~~!! 痛い! 痛い痛い痛い!!」

 苦悶してバタバタと地面を転がった。想像を絶するリアクションに、慌ててスミレが駆け寄る。


「うう……。死にそうだぞ…………」

「じっとしててね。もうすぐ終わるよ~~」

 ぐったり横たわってると、スミレは手をかざして優しい光で包んでくれた。


 思いっきり痛がるナッセの様子から、タネ坊とキンタが二人で繰り出していた理由が分かった。多分、殺陣進撃そのものは本来は一人で繰り出すものなのだろう。だが負担が大きいから二人で分けて緩和していたのだ。


 今はまだ見様見真似だが、研鑽を続け洗練していけば、ナッセ独自の強力無比な必殺奥義に昇華できるのかもしれない。


 ヤマミは、スミレに治療されているナッセを静かに見守り、しばし思案する。




 リョーコは冷や汗タラタラで頭を抱えていた。全く何もできてない自分に強い焦りが募っていた。


「やばいやばいやばいやばいやばい!!!!」


 ナッセは新しいスキル取り込んで、どんどん先へ行ってしまう。下手すればヤマミとスミレのチームに入りかねない。マジで置いてけぼりくらいそう……。




 更に数時間後、湖が広がる大きな広間に出た。


 鏡のように風景を映す湖は感嘆ものだ。周囲に苔が広がっていて草が所々生えている。なんとなく心が落ち着けるフロアだった。

 ヤマミは懐から懐中時計を取り出す。時計の針は既に午後九時を過ぎていた。


「……今日はここで野宿しましょ!」

「さんせ~い! ハウス型コテージ出すよ~~」

 笑顔でスミレはバッグから、小さな家の模型を取り出す。なんかスイッチを押す。それを地面に置いて離れる。


 ぽん!


 なんと二階建ての家がでっかく現れた。


「ふええ!?」

 目を丸くするオレとリョーコ。「入ろうよ~」とスミレは笑顔で手を振る。


 内部は白い。玄関もあり、下駄箱もある。トイレ、キッチン、風呂も完備。二階への階段もあり、寝室も四人分ある。しかもホテルのように重厚なベッドがあり、簡易のライトもある。タンスも化粧台も冷蔵庫もある。


 ひょえ~、と感嘆漏らすナッセとリョーコにスミレは「これ結構高かったよ~」と笑顔で付け足す。


「私が買ったけどね……」とヤマミがボソッと。



 食卓のテーブルにはほっかほっかなカレーが人数分、並んでいた。


「いただきます」

 オレ達は合掌して会釈。スプーンを手に、さくさくと口に運んでいく。ちょい辛味のとろけた液体と白米が口の中で柔らかく美味しく広がった。ほっぺが落ちそう~とばかりにスミレとリョーコは恍惚と顔を緩ませた。


「レトルトだけど……」とヤマミがボソッと。


 それぞれ自由時間で自分の時間を過ごし、午後十時を過ぎた頃……。



 風呂上りで、簡易な白い寝巻きを纏うヤマミは寝室で「ふう」と溜め息をつく。

 儚げな表情でエレナは無事かしら、と心配を胸にしていた。ふと窓から淡い光が見えているのが気になった。


「あれは……?」


 なんとコテージの外で、ナッセはあぐらを組んで瞑想しているようだった。その胸元に淡い光球が波紋を散らしていた。周囲に蛍のような光の粒が無数と緩やかに飛び交っている。


 そんな奇妙な光景にヤマミも次第に目を丸くする。

あとがき雑談w


ナッセ「炸裂剣(バーストブレード)ってバンバン粉砕できて爽快だなぞw」

リョーコ「いいなー。ナッセって元々素早いしサクッといけるもんね」

ヤマミ「当然よ……。私が教えたもの。(得意気w)」


スミレ(ふへへw 焦ってるリョーコをエスコートしてハートガッチリだぜw)



 次話『ナッセの秘密……? そしてヤマミ急接近!?』

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