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22話「美少女スミレとヤマミの頼み」

     挿絵(By みてみん)


 帰りの支度(したく)と、机の上から教科書やノートをショルダーバッグにしまっていく。

 だが、今気持ちは暗く沈んでいるぞ……。

 昨日の事を思い返していたからだ。



 龍史(リュウシ)マイシは好戦的に戦意を漲らせた双眸(そうぼう)で見据え、狂気の笑みで口の端を吊り上げる。赤髪のセミロングが舞っている。

 その背後に、(たけ)るように龍を(かたど)ったオーラが吠えていた。


 オオオオオオオオ…………!!


 地響きがなおも続き、足元を濛々(もうもう)と煙幕は彼女(マイシ)を中心に、台風のように辺り一面を覆って渦巻いていた。


 タネ坊とキンタは強張り、身構えたままだ。冷や汗が頬を伝う。緊迫した空気の最中、マイシは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と薄ら笑みを浮かべている。

 その瞳に映っているのはナッセ、ただ一人!


 だが、オレは血塗(ちまみ)れで満身創痍(まんしんそうい)、立ってるのがやっとだ。



「アンタ、さっさと剣士(セイバー)辞めろし! でないと五日後、潰しに行くし!」


 マイシは滾るオーラで纏った剣を突き出し、そう宣戦布告したのだった。


 あの後、タネ坊とキンタが「生徒同士の争いはご法度(はっと)」と止めようと試みたが、彼女から「ザコはすっこんでるし!」と冷めた目で一蹴。


 それ以上は誰も動けず、反論もできなかった。


 例え、オレ達が万全な状態だったとしても歯が立たないだろう。全滅させられるのがオチだ。

 傲慢(ごうまん)ではあるが、それに裏打ちされた圧倒的な実力を彼女(マイシ)は有しているからだ。


 なんで今更、絡んでくるんだよ……。

 あの巨大な(ギガント・)女王人形(パペットクイーン)を一撃粉砕だし、どうやっても勝てそうにないぞ。


 もう剣士(セイバー)潮時(しおどき)かな……。はぁ……。



「ね、ちょっといいですか~?」


 なんと淡い水色のロングのスミレがこちらに微笑みかけていた。


 突然の不意打ちに心臓がドクンと高揚して跳ね上がった。清楚で天使の微笑み、それに抗える男はいないだろう。自分もそうだ。今まで遠目で見ていたけど、彼女はクラス一のアイドルと言われるほど男性生徒に人気がある。

 なのに不意にこちらへ話しかけてくるもんだから、そりゃ動転(どうてん)もするぞ。


「な、なんだぞ? あ、いえ……なんですか?」

「ふふっ!」

 その眩しい笑顔は反則だぞ……。心が持ってかれる。つかなんでオレに……?


城路(ジョウジ)ちゃんって、いつも緊張してるね~?」

「あ、ああ……。ちょっと人見知りしてて」

 ちょっと違うけどぞ……。


「自己紹介の時でも言いましたけど、わたしは岡本(オカモト)スミレです」


 ぺこりとお辞儀され、ふんわり淡い水色のロングが舞う。

 ふわふわな感じの白いワンピースで太ももまで切られている。綺麗な肢体に黒い靴下に茶色の靴。全てが可愛い。


「お、岡本(オカモト)さん……。オレになにか……?」

「うん。帰る時に、特に用事がなければ頼まれてくれないかな~って?」

「頼みたい事?」

 首を傾げる。途端にスミレは(うつむ)いて悲しげな顔をする。


「……桃園(モモゾノ)エレナちゃんって、行方不明になってもう数日にもなります。すっごく心配です!」

 ────ああ、そういや行方不明者が出てたなぞ。身近な人で出るとそりゃ気が気でならないよな。


「じゃあ……」


「と、言う訳で!!」

 ぴしゃりと(さえぎ)ったのは別の娘──。

 黒髪姫カットの生徒委員会っぽい美少女。引き締まった表情にスラリとしたスタイル。きついがそれに裏打ちされた理知的な性格。いわゆるお嬢様って感じの。

 スミレと違って取っつきにくさがある。つーか苦手かも。


「申し遅れました。既にご存知でしょが改めて自己紹介させていただきます。私は夕夏(ユウカ)ヤマミです」


 さすが凛としていて高嶺(たかね)(はな)って感じがするぞ……。

 綺麗だが近寄りがたいものがある。だが凛とした目の奥には真摯(しんし)な気持ちが窺えた気がした。


「ベテランの夕夏(ユウカ)さんが、なぜオレに……?」

「あなたに声をかけたのは、長期戦に耐えうるスペックを持ってるのが理由だからです!」


 そこでぎぎいと、向こうのグループで友人と駄弁(だべ)っていたリョーコへ怒りの顔を向けた。

 ズカズカとやってくるオレの剣幕に、リョーコはビクッと身を竦ませた。


「おーまーえーな──!! オレの創作能力を他人にベラベラ(しゃべ)るなっつーに!」

「な、なにも言ってないよぉぉ~~?」

「ホントかぁぁぁあ!!?」

 両ほっぺをぐいぐい引っ張られてリョーコは「あうあぁぁや」と泣き悶える。


「こほん!」

 ヤマミは咳払い。それに我に返って、つねっていたほっぺを離す。

 いたた、とリョーコは涙目でほっぺをさする。


「それ止めてくれる? ともかくあなた、捜索に協力してくれますわよね?」


 うう、高圧的だなぁ。目がきついし。断ろうにも断れない空気……。

「ヤマミちゃんダメ~!」

 スミレがメッと(たしな)めると、ヤマミはしおらしくなる。


「……ごめんね! ヤマミちゃんも心配で仕方なかったの。エレナちゃんがどうなってるか胸が締め付けられるみたいなの!」

「スミレさん……」

「無理なら他を当たります。すみませんでした~」


 健気に頭を下げるスミレ。側のヤマミも流石に申し訳なくなってきて一緒に頭を下げる。いい関係だなぁ。


「……分かった。オレも協力するぞ」

 下心ではない。あれだけ真摯な気持ちなら無下に断る理由はない。


 ──それに行方不明自体にも気にかかっていた。



 その言葉にパッと明るくなったヤマミ。

「あ、ありがとうございます!!」

 何度もぺこぺこと頭を下げる。スミレは「良かったね~」とニッコリ。


「いいとこ見せたい年頃~?」

「お前は黙ってくれぞ」

 にやにやするリョーコにウンザリする。まだにやにやが止まってない。


「あともう二人、入れていいかぞ? 森岳(モリタケ)さんと大珍(ダイチン)さんは元自衛隊。捜索するなら彼らの力は頼れるぞ」

「……うん。そうですね」

 頷くスミレ。でも、なんかヤマミは「そう?」と不機嫌そうだ。



「いや、すまない。別の用事があるから、今回は協力してやれない」

「せや。どうしても外せへん用事や。協力したいのは山々やけどな~」

 なんとタネ坊とキンタは揃って首を横に振った。気が沈むオレの肩にタネ坊は手を置いた。


「なぁに、お前なら大丈夫さ……。

 あの武劉(タケリュウ)フクダリウスすら退けた根性があるなら、充分やっていけると俺は信じている。

 あの件がなければお前を危険な事件から遠ざけようとしていた。だが今は違う。(むし)ろ引き受けてやってくれ!」

「も、森岳(モリタケ)さん……?」


「そういう事や。もっと色んな人と揉まれて経験を積んで欲しいねん」

 ニッと笑ってみせるキンタ。


 なんだか温かい気持ちになってくる。あのベテランに認めてもらえているんだ。これほど嬉しいことはない。

 ヤマミは何故かホッと胸をなでおろした。


「良かったね~!」


 スミレは何故かニッコニコでヤマミの肩に手を付く。ヤマミは赤面。



 明るく手を振ってリョーコも、

「じゃあ、あたしもついていっていい~?」

「うん! いいですよ~! やった~リョーコちゃんと一緒~!」

「ええ。小野寺(オノデラ)さんもいてくれると心強いですわね」


 スミレとヤマミは歓迎しているようだった。女子って協調性あっていいなぞ……。


「じ、じゃあ他に入る創作士(クリエイター)は……?」


 後頭部に汗だらだらで恐る恐る聞く。

「あなたと小野寺(オノデラ)さんとスミレさんと私で四人です」

「えぇ……」


「戦力的に不満かしら? 私はそうは思わなくて? アタッカーとしてあなたと私がいれば大抵の敵は片付けられるでしょう!」


 さらっとリョーコは戦力外にしてるのな……。

 だがヤマミがそう自負するくらいだから、どのくらいの実力を秘めているのか気になるぞ。


 人差し指を立てて、

「最後に一つの確認」

「まだ何か──?」

 憮然(ぶぜん)と目を細めるヤマミ。


「オレは男だぞ…………?」


「ええ。でも異性として意識はしていません。あなたの創作能力が私達に必要なだけで、気になさらず!」

「うん! わたしもナッセちゃんなら、いいと思います~!」

 ドキッと思わせられる天使の微笑み。思わず浮き足立ちそうになる。

 ヤマミはともかくスミレは天使だなぁ……。


「ふ~~ん?」

 ジト目でにやにやするリョーコ。

「そ、そんなんじゃないぞ」

「へいへい」

 まだニヤついているリョーコが恨めしい。


 ともかく、まだ不安な点が残る捜索グループだが、これで行方不明の秘密が明らかになるかも知れない。

 例え、今日明日だけではまだ足りないだろうが、何回も繰り返せば────!



 その週末。五月三〇日土曜日────。


 午前一〇時に集合し、後に探索に必要な買い物を済ませていった。

 コテージとか、レトルトカレーとか、まるでキャンプしに行くみたいな雰囲気だったぞ……。


「次、行きましょ!」

「え? あ、うん……」


 なんかヤマミが手をグイグイ引っ張ってくれる。不覚にもドキッとした。

 さっきまでリョーコとスミレと一緒に女子会のようにワイワイ盛り上がっていたのに、ぼっちになっていたオレにわざわざ……??


 か……勘違いしちゃうぞ…………。


 この後も、しばらくは悶々(もんもん)してたというか、ドキドキが収まらないというか、とにかく動転しまくりだったぞ。



 そして午後二時に差し掛かる頃、大阪駅の周辺でナッセ、リョーコ、スミレ、ヤマミは四人で散策していた。


「ふふっ、そうですね。リョーコちゃんはそういう漫画が好きなのですね〜」

「うん。そーよ! バリバリアクションバトル好きでね~~」

「趣向は人それぞれですわね」


 うう……。なんか疎外感(そがいかん)するぞ。まぁ女子グループだと話が盛り上がるのは自然だろう。こっちは人見知りしてるから混ぜれない……。割り込んで白けさせたらどうしよう、などと心配に駆られている。


「落ち着きなさい。私がいるから大丈夫よ」


 気付けば、背中をポンと優しく叩いてくれるヤマミがいた。

 またまた不意にドキッとさせられて、赤面してしまう。



 すると、黒い点が目の前に! 緊張が体を駆け巡る。自然と腰を落とす。

 いつもの荒廃した世界に暗転し、オレたち四人だけが取り残された。


「いえ──、このエンカウントは違います!」

「んん!?」


 よく見ると、高架橋(こうかばし)の太い柱に大きな亀裂……、いや洞窟としてぽっかり穴が空いてるではないか!?

 しかし、どこか既視感(デジャヴ)がするぞ…………。

あとがき雑談w


スミレ「でも異性として意識はしていません。ですって~w 嘘ついた~w」

ヤマミ「ばっ、ばかぁ!! だ、だってだってぇ!!」(大慌て)

スミレ「買い物の時、思いっきりフォローしてたじゃん~w」ニヤニヤw

ヤマミ「///////」(赤面)


ナッセ「スミレちゃんと一緒かぁ。どきどきするなぁ」

リョーコ(それは期待しない方がいいと思うw)


スミレ「さてw 巨乳リョーコちゃんと一緒かぁ~w」(ヨダレじゅるりw)

リョーコ「ゾクッとした! したぁ!」(寒気)


スミレ(へっへっへw これでヤマミをナッセに押し付けれるぜw)



 次話『洞窟とは!? ついにダンジョンへ潜る!?』

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