21話「最強のセイバー現る!?」
────ミキメシと軋む音がした。不穏な気配が募る。
背筋に寒気が走る。嫌な予感がするぞ。ヤバい!
なんと縛り上げた紐を破り開脚した巨大な足。首を回転させて纏っていた炎を四方八方に散らし、起き上がる。
「くっ!! 『刻印』全開ッ!!」
ゾワッと危機感が湧き、手の甲の刻印を青白く煌めかせた。カアッ!
そして大きな星の紋様は太陽へと形を変え、囲む円に三つの星を連ねた。
巨大な女王人形は何事もなく立ち上がる。傷跡も焦げ跡も見当たらない。全くの無傷だ。ギギギと巨大な顔が見下ろしてくる。
唖然とするタネ坊とキンタは汗を垂らす。
「こ……こいつ!!?」
「おいおい!? 近代兵器でも効かへんのか!? なんかおかしいやろ!」
風を切る音がした!
「危ないぞ!!」
全力である『太陽』印の刻印を展開して前に飛び出した。その勢いのままに山吹色に輝く大剣を振るう。
ガァン!!!
すると目にも見えないほど高速で振るってきた巨大な女王人形の腕とぶつかりあった。ビリビリと衝撃が伝わって来る。重い!
「ぐ……ぐあっ!」
小柄なオレは弾き飛ばされて、後方の建造物に突っ込む。バゴン、と破片を散らし煙幕が立ち込めた。
「ナッセ!!!」
リョーコは叫ぶ。
「カラカラァ!!!! カラカラァ!!!!」
怒り狂った巨大な女王人形は滅茶苦茶に腕と足を鞭のように振り回した。周囲の建造物をことごとく打ち崩していく。
「バ、バーニングやべぇぇぇえ!!!」
「ごひぇぇぇぇええ!! な、なんやねん!!?」
タネ坊とキンタは背中を見せて腕を思いっきり振りながら逃げ出すしかなかった。リョーコも慌てて逃げ出す。
「待ちやがれぞッ!!!」
そうはさせん、と巨大な女王人形の顔面に光の剣でガツンと強烈な斬撃を見舞う。グラリと傾く。
しかしキッと人形の顔が振り向く。頬に一筋の傷がついていた。
「カラカラカラァァァァァ!!!」
怒り狂う巨大な女王人形は腕を振るう。
「くっ!!」
対抗して振るった山吹色に輝く大剣『太陽の剣』と、巨大な女王人形の腕が交差する。激しい激突で互いに衝撃がビリビリ響く。
「おおおおお!!!」
目にも留まらぬ瞬足で飛び回りながら、長くて太い腕を振り回しまくる巨大な女王人形とガンガンぶつかり合う。その度に余波が巻き起こり地鳴りが地面を伝い、激しい連撃の応酬が展開されていた。
「ぎっ!」
圧倒的な体格差で弾かれるも負けじと、周囲の建造物の壁を足場に再び飛び出す。
小柄な分、押し負けているとは言え驚異的な粘りで長期戦に耐えていく。
その間にリョーコはタネ坊とキンタと一緒に建物の中へと避難する。
とてもじゃないが割っては入れない。
左右から高速で振り回してくる腕による連続攻撃を受け、空中へ打ち上げられていく。
「ぎ……ぎっ……!」
口から血が少し噴く。防御力を重ね掛けで発動しているとはいえ、少なからずダメージは蓄積される。
「カラァァァアア!!!」
真上から振り下ろした腕がオレを地面に叩き潰した。なおも体重をかけてギュウギュウと手で押し潰そうとする。破片と粉塵が舞いメキメキと地面がめり込む。
「ぐああ……!!」
巨大な手と地面にプレスされ、なおも圧力が強まっていく。つ……潰れる!! マジで!
怒り狂った巨大な人形は「カラカラ、カラァァカラァ」と喚きながら圧力をかけ続ける。
「城路君! いかん!!」
「もうダメや!! 助からへんッ!!」
タネ坊とキンタは敵わないと見て、足が後ろへと擦る。
「ナッセェ────ッ!!!」
すると風のように通り過ぎたリョーコが助太刀と飛び出す。巨大な女王人形の腕に向かって「せいやーッ!!」と渾身込めた斧を振るうと、ドスンと打撃音が響き渡る。メキメキと深くくい込む。
「カラァァア!!」
堪らず仰け反る巨大な女王人形。
「おおおおおお!!!!」
その隙に、両手で人形の手を力任せで押し上げて、立ち上がる。必死の形相で力を振り絞り、ようやく手を跳ね除けた。
だが全身は血に濡れ満身創痍。はぁはぁ、と息を漏らす。
「ナッセ! 大丈夫ッ!?」
悲しそうなリョーコが駆け寄ってくる。激痛に呻き腕で腹を覆う。それでも毅然とした眼光を光らしていた。
くっ……! 「くそ……肋骨がイっちまったぜ……」的だなぞ! 実際折れてないけどすげー痛ぇ……。
なんなんだよコイツめっちゃ強ぇえぞ……!
血塗れで立つのもやっとだ。両足がガクガク震えている。滴る血が床を濡れる。それでも息を切らしながら霞んだ目で睨み返す。
……だけど負けるわけにはいかないぞ!! 最後まで……まだ、まだぞ!!
リョーコは切羽詰まった顔でオレを眺め、神妙に口を噤んだ。
「君はもういい! よく頑張った! だから逃げろ!!」
「もう倒すの無理や!! はよ逃げんと!」
既にはるか離れた位置から叫ぶタネ坊とキンタ。
「お、オレは……もう逃げる力がねぇ……ッ!! リョーコ逃げろッ!!」
「イヤ!! 見捨てるもんかッ!」
リョーコは首を振る。動けないオレを庇うように身構える。太刀打ちできずとも、それでも友を守ろうとする姿勢が窺える。
「あんたなんか、あたしが────ッ!!!」
カッとリョーコは眼光と額を輝かせた。
果敢に駆け出した彼女は斧を振りかぶって、巨大な女王人形を力任せに斬りつける。その物凄い底力がドスンと押しのけ、あの巨体をぐらつかせた。
「せいやああああっ!!!」
必死に巨大な女王人形を押し切ろうと、リョーコは必死に斧を振るい続ける。
あれほどまでに力を振り絞った彼女が凄まじいのは初めて見た。
だが……!
「カラカラカラァァァア!!!」
ひと振りの腕でリョーコは叩き飛ばされた。だが地面を滑りつつ必死に受け身を取る。ぜぇぜぇ息を切らしている。
何度もぶっ飛ばされながらもリョーコは必死に立ち向かい続けていた。
血塗れで立つのがやっとなオレは息を切らしながら、彼女の必死な抵抗を眺めるしかなかった。
くそ……! オレ足手纒いだぞ……! こんなにも戦ってくれているのにッ……!!
「カラアアアァァァァァ!!!!」
怒りに任せ、大仰に腕を振り上げる巨大な女王人形。
「うわああああ──────ッッ!!!!」
オレの前でリョーコは身構えたまま絶叫。それでも巨大な手が容赦なく迫ってくる。
死の気配が迫る──!! ちくしょう! まだ──オレは童貞なんだぁぁ──────!!
瞬間、眩い光が辺りを覆った。
巨大な女王人形の胴体に、爆発のような凄まじい衝撃波が炸裂。人形は木っ端微塵。破片を散らして粉々と吹き飛んだ。思わずビックリ。唖然とするリョーコ。タネ坊とキンタも呆然だ。
「うそ……一撃で!?」
「だ……誰ぞ…………?」
一人の女生徒がゆっくりと降り立つ。
剣を下方に振り、自信満々と笑みで口元が釣り上げられる。赤髪のセミロング、睨めつけるようなツリ目。同じ同級生の龍史マイシだ。
「同じ剣士として見てられないから、情けで助けてやったし!!」
背後に大きな竜を象るような凄まじいオーラが轟々と燃え上がっていた。
あとがき雑談w
ナッセ「正直言うとマイシ来なかったら、ガチで全滅してた……(汗)」
タネ坊&キンタ「マジそれ……」((((;゜Д゜))))
って事はマイシの戦闘力(?)は二〇〇〇〇以上って事に!? やべー!
ヤマミ「…………出番ない!!」(激怒プンプン丸)
スミレ「カッカしないで~~! 怖いよ~~!」
次話『激突必至!? ナッセとマイシ!』