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20話「恐るべき人形の殺人演劇!」

 都会の夜。華やかな街灯が立ち並ぶ。まだ活動的なのが分かる明るさだ。



 とあるレストランで。三人の男がテーブルを(はさ)んで席に着いていた。タネ坊、キンタ、フクダリウスだ。


 フクダリウスと言うと、仮面を着けた戦闘時の姿ではなく普通の人を(よそお)ったような風貌だ。チェック(がら)のシャツに普通のメガネをかけている。体格も二メートル近いがそれでも(ちぢ)んでる方だ。


「……なるほど。藻乃柿(モノガキ)先生が城路(ジョウジ)君の抹殺(まっさつ)ね」

 片目を(つむ)りタネ坊は厳しい表情をしていた。

「せやけど、殺しはせず戦闘不能(リタイア)にしようと配慮(はいりょ)してくれたんやろ?」

「そうだ。そのはずだったがな……」


 見た目優男(やさおとこ)()()思案(じあん)城路(ジョウジ)ナッセがあれほど強く粘れるとは、戦ってみるまで分からなかった。思ったより頑丈(がんじょう)で中々ダメージが通らない。割と息切れはなく見た目以上に体力がある。


 刻印(エンチャント)の力は重ねがけ出来るのだろうが、節約型なのか、元からMP(マジックプール)が多いのか、長期戦を粘れる元は未だ未知数だ。



「やり合って分かったが、城路(ジョウジ)ナッセはA級創作士(クリエイター)の素質がある」

「なんやて!?」

 (おどろ)くキンタは額をキランと煌めかした。



「……確かにあれは異常な程の強い粘りだった。攻撃系スキルがないとは言え、お前にも粘り勝ったほどだ」

 額をキラリと煌めかしたタネ坊の言葉に、フクダリウスも頷く。


「このことは藻乃柿(モノガキ)殿には伝えない。森岳(モリタケ)殿と大珍(ダイチン)殿が粘ってワシを退(しりぞ)けたと報告すればあやつも納得せざるを得まい」

「そうしてくれるとありがたい」

「せやな」


 フクダリウスは神妙な顔で静まる。


 城路(ジョウジ)ナッセの資料が少し違うのは恐らく面談の時で改竄(かいざん)されたのだろう。出薄(デウス)校長が藻乃柿(モノガキ)の不穏な空気を感じ取って秘匿(ひとく)しようと考えたのかもしれない。

 この潜在能力を知れば恐らく目の色を変える。


 城路(ジョウジ)ナッセは若くてまだ甘い所がある。視野(しや)(せま)く経験が足りない。充分に心身共に成長するまでは隠し通すしかない。



「……いつの時代も汚い大人が、若いモンを犠牲(ぎせい)に甘い汁を吸いたがるものだな」

「全くだ」


 フクダリウスに同意するタネ坊。キンタは少し(うつむ)き考え事する。



「フクダリウスさん。行方不明になったイワシローさんとタカハツさんの行方を知らへんかな?」

「……いや。確かに姿を見ないな。そういえば、よく女生徒に絡んでたような気がするな」

「あいつらしいやね。ワイも女生徒に聞き込みしてみるか」


「やはり気になるかい……?」

「せや。あいつらはワイの友や。絶対に助けたいんや!」

「ふむ。これまでも探索しても見つからない以上、聞き込みしか手掛かりないか。俺も手伝おう」


 親友のキンタを(おもんぱか)ってタネ坊は笑んでみせる。


「持つべきは親友やね」

「ああ!」


 タネ坊とキンタは互いに笑顔を向け合い拳をぶつけ合う。共に額をキランとさせたぞ。




 休み明けの月曜日。朝の学院は明るい喧騒で包まれていた。その最中、


「知らない!!!」

 集まっていた女生徒はキッパリ言い揃えた。面食らって目を丸くするタネ坊とキンタ。


 不機嫌そうな彼女らの様子から、イワシローとタカハツがどれだけ嫌われているのか察し取れていた。

 どうやらナンパされた者もいて、少々強引な手も使われた事もあったらしい。女生徒はグループで行動する事が多い為、被害はそんなに酷くはなかった。

 だがそれでも二人の男に対する評価はすこぶる悪い。



 一人で退屈そうにしているマイシに目が行く。机上に重ねた両足を乗せて行儀の悪さを露呈(ろてい)している。


「あ、すまないけどイワシローとタカ……」

「知らないし!」

 マイシは冷めたい目で憮然(ぶぜん)と言い捨てる。やはり同じか……。


 実は彼女は同じ剣士を目の(かたき)にしているフシがあった。イワシローもタカハツも剣士(セイバー)だ。それで何か揉めたりしてるのかと思った。


 それに現状、城路(ジョウジ)ナッセと龍史(リュウシ)マイシ以外に剣士(セイバー)はもういない。入学当時は結構な人数でいたはずなのだ。

 行方不明になった中には凄腕の剣士(セイバー)もいたはずなのだ。



「……そうか。すまない。協力してくれてありがとう」

 タネ坊は頭を下げる。

「フン!」

 マイシはそっぽを向いたまま顔を見せない。何故なら彼女の瞳にはナッセが映っていたからだ。



 いつもの帰宅中にオレ達はエンカウントしていた。


 荒廃した世界。混濁した漆黒の空。

「カラカラ……カラカラ……」

 辺りを無数の洋風のドレスを纏った人形が縦横無尽にくるくるとバレエのように回りながら包囲気味に移動を繰り返す。ケタケタと固まってる表情の口がぎこちなく上下する。


 タネ坊、キンタ、そしてオレはそれぞれ背を向ける形で円陣を組んでいた。



 敵意を抱く人形はあらゆる所から刃を出し、次々と飛びかかる。

「行くぜ!!」「せや!!」

 二人はパンと互い手を叩きあって、気力を燃え上がらせた。

 そしてタネ坊は一対のナイフを両手に振るい切り裂き、キンタはゴリラとなって太い拳で打ち砕く。二人は相変わらず流れるようなコンビネーションで次々と人形達を(ほふ)っていった。


 ようし! こっちも頑張るぞ!

「おおお!!!」

 光の剣を振るい、鋭い軌跡を幾度か描いて斬り裂く。裂かれた人形は粉々に散らばり地面に転がったあと煙となって溶け消える。


 なおも四方から飛びかかる人形。それでも堅実(けんじつ)と油断せず斬り伏せていった。

 傍目で見やると、タネ坊とキンタは数十体も人形を一気呵成と切り裂き続けている。数十体もの人形が粉々に、煙に溶け消えていく。


 まだ……まだまだタネ坊とキンタの完璧なコンビネーションには入れないぞ。

 こうして邪魔にならないよう単独でやっつけていくしかない。


 チラリと建物の方へ一瞥する。リョーコが入口から覗き込んでいるのが見える。大丈夫そうだ。



城路(ジョウジ)君! よそ見はいけないぜ!」


 タネ坊の厳しい忠告(ちゅうこく)にハッとすると、槍を構えた人形が数騎の騎馬兵(きばへい)で組んで突撃してくるのが見えた。鎧を着込んだ馬も人形だ。ドドドーっと疾走後から煙幕を上げている。

 まるで人形の世界に入り込んだかのような雰囲気だぞ。

 されど、その騎馬兵団体は勢いがあり突進されるとだだでは済まない。


「奴らの前に(シールド)だ!!」

「はい!」


 タネ坊の掛け声に合わせて、少し離れた前方の位置に(シールド)を発生させる。

 突進する勢いのままに盾にぶつかった騎馬兵がのめり込むように崩れ、後続の騎馬兵も突っ込んでいってそれぞれバランスを崩してバラバラと転がっていった。


「あとは任せとき!!」

 キンタとタネ坊は互い手を叩きあうと、爆発的に気合いを高めた『殺陣進撃(さつじんしんげき)』を繰り出して、一気に人形騎馬兵を粉々に打ち砕いていった。それは煙となって風に流れる。

 雄々しく降り立つ二人の勇姿に、ただただ呆然するしかない。


 相手がフクダリウスだったからこれだけど、本来ならこの威力かぞ……。



「ちょっと!! あたしも忘れないでよねー!!」


 建物の中から斧を振り上げながらリョーコが走ってくる。おい! 来るな!

「まだだ!! 居る!」

「せや! 役立たずは引っ込んどるんや!」

 注意を喚起(かんき)させる二人に、リョーコはビクッと怖気(おじけ)づきオレの背中に隠れる。

「あのさぁ……。だったら最後まで建物に隠れていろよ……」

 ジト目で見やる。


 つか守ってばかりはきつい。ちょっと強くなって欲しいぞ。

 とはいえ、キンタは言い過ぎだぞ。



「カラカラ……カラカラ……」


 今度はズンズン鳴り響く。地平線から頭が、肩が、胴が、順に現れてくる。

 女王様風の人形で、ティアラを頭上に、煌びやかな宝石を散りばめられた洋風ドレス。

 だが今度は三階建てのビルより大きいではないか。まるで巨人の女王人形だ。こんなのは初めてだぞ。さしものタネ坊もキンタも驚いているようだぞ。


「でっか!! でっっっっか!!」

 リョーコは声を張り上げる。オレも思わず息を飲む。


 ギロリ……、巨大な女王人形の両目がこちらへ忌々しそうに見下ろしてきたぞ!



「この……デカ物が!!!」

(おう)よ!! デカいだけの図体(ずうたい)ではワイらに勝てんや!!」


 二人は互い手を叩きあって、気合を入れつつ駆け出すと周りの建造物を足場にトントンと飛び跳ねていく。


「喰らいなッ! バーニング珍関銃(チンカンジュウ)ッ!!」


 タネ坊は飛び上がったままズボンを下ろし、股間から黒光りする機関銃がニューと出てきて、けたたましく銃撃音を鳴り響かせ巨大な女王人形の全身を弾幕で覆う。被弾してカクカク()()るがドレスすら破ける様子はない。

 ん……? 意外と硬いなぞ。あっさり倒すものと思ってたがぞ。


「ならばこれでどうや!!」


 ゴリラに変身しているキンタはズボンを下ろし、尻を向けた。

「爆炎・気功放屁ッ!!!」

 まるで大砲。轟音と共に尻穴から爆炎の奔流(ほんりゅう)が放たれ、巨大な女王人形の上半身を呑み込んだ。獰猛(どうもう)に燃え上がる爆炎が轟々(ごうごう)と上空を赤く照らす。


 ……あの二人の技ってさ、下ネタばっかだな。



 着地したタネ坊とキンタは、グルグルと巨大な人形の足元を回りながら(ひも)を巻き付かせて(しば)り上げていく。


「カラ……カカァ」


 その巨体が傾き、ズズンと地響きと共に仰向けに倒れていった。煙幕が立ち込めた。


 タネ坊とキンタは揃って尻穴から大きな砲口がニュッと伸びてきた!

「ダブル・バーニング・オナランチャー二連装砲!!!」

 発砲音を響かせてミサイルを数十発ぶっぱ。容赦ない爆撃を連鎖させて爆発が赤々と噴き上げられた。

 下品だけど凄まじい破壊力だなぞ……。


「ミッションコンプリート!」


 真剣な表情でタネ坊とキンタはズボンをはき直して、カッコつけるように踵を返す。

 赤々とした戦場を後にする歴戦の兵士って感じだなぞ……。映画のワンシーンみたいだ。



 ────が、ミキメシと(きし)む音がした。

あとがき雑談w


タネ坊「まさか城路(ジョウジ)君が既に俺たちより強いとはな……」

キンタ「そんな事よりもワイらが()()()イワシローがいないんやー!」

タネ坊「落ち着け! ネタバレになってるぞー!!」


キンタ「それよか、巨大な女王人形強すぎない!?」

タネ坊「あ、ああ……! 序盤のモンスター出現範囲に中盤レベルのモンスターが混じってきた感じだね。いやこれヤバいだろ……」(顔面蒼白)



巨大な(ギガント・)女王人形(パペットクイーン)

 様々な小さな人形兵士を従え、迷い込んだ人間を斬り刻むぞ。女王人形は三階建てのビルより大きく、その超高速重量攻撃は高層ビルさえ薙ぎ倒してしまう。

 精神生命体(アストラル)なので、物理攻撃はほとんど効かない。光か闇の霊属性で攻撃しよう。

 カラカラと鳴く。特上位種。

 ちなみに戦闘力でだと余裕で二〇〇〇〇越えてますw



 次話『出るタイミング間違えてる強すぎモンスター! 勝てるか!?』

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