197話「核心! 大災厄と魔王化の関係!!」
一気呵成とナッセたちは「うおおおおおおおおッ!!」と大魔王へ迫る。
ヘインが「総攻撃じゃあ!! 撃ェッ!!」と号令、ミニシュパ隊は続々とバズーカを発砲。
エレナとスミレが「百歩神拳!!!」と、同時に片手を突き出し、凄まじいエーテルの奔流を放射。
コクア、ダグナは聖剣を振るって炎と雷が迸り、ブラクロの数え切れない量の呪符の嵐が舞う。
コハクが「蜂の巣にしてやるのですー!!」と複製された槍が雨あられのように幾重と飛ばし、シナリが「疾ッ!!」と数十個の大旋風連車を放つ。
更にヒーロー、ヴィラン、創作士の弾幕も加わって、漆黒の胴体に爆撃が連鎖して轟く。
ドガガッガガガッガガガガァ!!!
連鎖された爆発は胴体を覆うほどに爆煙を広げていった。
「一緒に大技で攻撃だァ!!」「ああ!!」「破壊しつくしてやるしッ!!」
ナッセは銀河の剣で、アクトは赤黒い刀で、マイシは二刀の刀で、大魔王の巨大な顔を目指して高速で滑空!!
「ギャラクシィ・シャインスパァ──クッ!!!」
「火竜王の炸裂神滅剣ッ!!!」
「心剣流!! 業火龍閃ッ!!!」
三つの巨大な剣閃が大魔王の額から炸裂し、ドゴドゴゴォンと爆裂が広がった!!
遥か下の大地がその衝撃で大きく振動し、破片と粉塵を巻き上げた。
「ヴオオオオオオオオオオ!!!」
儚げにヒカリは想う…………。
かつて若きヤミザキたちと共に異世界へ希望を抱いて、旅立つがそれは絶望の始まり。
地獄のような異世界で多くの仲間は命を散らし、全滅の危機にヒカリ自身が生贄となってヤミザキ一人を生き残らせた。
彼だけでも生き残ってくれれば、と軽く考えたのかもしれない……。
自ら生贄になった功績でヒカリは昇華されて、妖精王アマテラスのいる天上界へ送られた。
誰もが幸せに暮らしていける天国のような世界。
なんでも叶えてくれる夢のような世界。
心が満ち足りて、絶望がない世界。
……そこでヒカリは下界を見てしまった!!
いくつかの並行世界で魔王が全てを滅ぼす終末の事実を!
それは他でもない『鍵祈手』が迎えなければならない最悪の結末。
なんでも願いを叶えてくれる『運命の鍵』の代償として命を代価に、そして因子の蓄積で、自ら魔王へと堕ちていく。
そして知った。ヤミザキもまた『鍵祈手』だと……。
彼はその力でもって、見つかるはずのないヒカリを延々と探し続けて因子を蓄積させている。それでも何度も何度も周到に準備を重ね続けながら必死にあがいていた。
行き着く先はただただ絶望しかない終末なのに…………。
妖精王アマテラスにその運命をなんとかできないかって懇願した。しかし!
「我々高次元存在が人間界を弄る行為は禁じています」
突き放すような厳しい顔のアマテラスに絶句してしまう。するとヒカリの頬を優しく撫でて微笑んできた。
「ですが、役目を終えた『鍵祈手』は皆ここへ還るのが本来の概念」
「え? では、じゃあ!?」
アマテラスは頷く。
「それを最悪な結末に変えた『大災厄の円環王マリシャス』の仕業です!」
ヒカリは見開き、愕然とした。
悪意と欲で満ちた黒幕。それは概念の存在。ネガティブ濃度を増やす為に並行世界をジワジワ裏から侵食しているのだという。
概念の存在ゆえ、誰も気付かぬまま絶望の世界を当たり前として感受してしまう。
この悪しき存在は、全ての生きとし生ける者を永劫の地獄に閉じ込め、その苦痛を眺め喜びとする。
「…………魔王化という概念も、こいつのせいで!?」
「ええ。それに……」
アマテラスはスッと手をあらぬ方向へ向け、モニターが現れる。
それに映った衝撃的な映像にヒカリは見開いた。動揺して瞳が震え汗が頬を伝う。
なんとそれはヤミザキたち仲間たちが地獄のような異世界でおぞましい過去の悲劇が繰り広げていたからだ。
思い返される辛酸を舐めた記憶。
進むたびに一人一人仲間が息絶えていく残酷な現実。
そして、あの最悪なドラゴンの襲撃でヤミザキとヒカリは仲間から逃亡を促されて、その場から命からがら逃げ出した罪悪。
「実は、その異世界も大災厄の手がかかって地獄に変えられつつあります。
幸いレベル、クラス、スキルなどの概念が残っていたから切り抜けられたのでしょうが、それも時間の問題。いずれネガティブ濃度が染まりきれば消え失せてしまうでしょう……」
これまでヤミザキたちに起きた悲劇は全て大災厄の仕業。異世界の旅ですらヤツの手の上で転がされていた……。
このままでは並行世界はおろか、異世界までもがネガティブ濃度のみ染まった地獄と化し、それ以上の悲劇が起きるようになる。
「そ……そん……な!!」
そんな悍ましい企みに、ヒカリはガタガタ震えながら両膝を折る。
跪いてアマテラスはそんなヒカリを抱き寄せて、安心させるように背中をポンポン叩いた。
「だからこそ妖精王クッキーとアリエルが裏から、その企みを打破するべき奔走しています」
「私にできる事ってないですかッ!?」
ガバッとアマテラスへ悲しい顔を向けた。
その後方で山のようにでかいクリスマスツリーが流れ星を散らしていた。
「……方法はないワケではありません、が」
「やります!!」
即答したヒカリは気丈に立ち上がった。
このまま指を咥えて眺めてられない! ヤツのせいで暴走していくヤミザキを放っておく事はできない!
なによりも世界は希望で満ちて欲しいから!!
その想いをアマテラスは感じ取り、和やかな笑みを見せた。
必ずヤミザキと交錯する因果にある、とある一人の人間を『鍵祈手』にして、それを導いていく為にヒカリは自ら『運命の鍵』へと転身し、下界へ降りる事ができた。
「オ、オレはワクワクできるような異世界へ行きたい! できるか!?」
《イエーッス! 了解したー》
そして何も知らないであろう城路ナッセの純粋な願いでヒカリは繋がった。
こうして時空を超越する旅が始まったのだった……。
紆余曲折経ても、なお純粋な彼が願う最後の願いで「重い使命から、お前を解き放ってやるってな! そして一緒に遊ぼうぜ」って言ってくれたのは心が打ち震えるほど嬉しかった。
でも…………!
上空で渦巻く赤黒い暗雲へ、大魔王は両手を掲げた。
すると赤黒い隕石が数十個、灼熱の尾を引きながら轟々と降り注いでいく。
「やばいぞッ!!」
ヘインたちは絶望に見開く。
それらは容赦なく地上を深く穿ち、その甚大な衝撃により高々と土砂の大津波の波紋を広げていった。
ドオン!! ドオオン!! ドオン!! ドオオオン!!
「ぐわあああああああ!!!!」「ぎゃあああ!!」「うぐおおおおお!!!」
天変地異級の激流に流され、更に大勢の命を散らしていく。
それでもヘインやダクライが隕石を迎撃し爆破。シナリもコハクも最高の技で隕石を木っ端微塵に砕く。
「ギャラクシィ・シャインライズ──ッ!!」
ナッセも巨大な剣閃で斬り上げて、隕石を粉々に吹き飛ばす。
アクトもマイシもそれぞれ隕石を粉砕していく。
「負けるな!! 力の限りまで戦え!! みなで勝利の酒を交わす為にな!」
「「「うおおおおおおおお!!!」」」
血塗れのクスモさんが大剣をかざし、周囲の創作士たちを奮い立たせた。
大魔王は絶対に倒せない…………!!
そのようにヤツは変えてしまった。
限りなく増大する深淵の闇を、戦闘力では倒す事は叶わない。それでも誰もが絶望の中で必死に無駄に戦ってもがき苦しむしかない。
ネガティブ濃度が深いと弱肉強食の特色が強くなっていく。
己が力で覇を競い合い、弱者は蹂躙されるしかない。そこに優しさはない。優しさは甘く弱いものと同義。
そう信じ込ませ、水面であがく虫にしてしまう。
「おおおおッ!! ギャラクシィ・シャインメテオラン!!!」
ナッセが銀河の剣で一撃必殺を「三十連星!!!」と数十発、大魔王に叩き込む。巨大な流星群が巨大な漆黒を包み「ヴオオオオオオ!!」と吠えさせる。
更にアクトとマイシが挟み撃ちで必殺技を繰り出し、巨大な剣閃が横一閃と大規模に通り過ぎた。
「フィニッシュじゃあ!! サテライト・トールッ!!」
ヘインが掌を大魔王に向け、宇宙で漂う巨大なミニシュパが衛星砲を抱えながら砲撃。
極大な光線が落下直撃。大魔王を呑み込み周囲に稲光を四方八方に散らし、大地を大きく揺るがした。
しかし大魔王は赤き目を煌めかし、口から轟音を伴って強烈な光線を吐いた。それは巨大なミニシュパを衛星砲ごと爆破四散。
ヘインは苦悶の顔で盛大に吐血。ガフッ!
「くそったれじゃ……!!」
大魔王は拳で大地を穿つ。
地表を波紋で波打ち、一気に数千キロ範囲が怒涛の上昇激流となって巻き上げられていった。
更に大勢の命が掻き消え、ヘインも王子たちもナッセたちも「うわあああああ!!」と上昇激流に呑まれていった。
どんな防御も攻撃無効化もなすすべなく……。
水面で虫は無意味に手足をバタバタさせて、力尽きるまであがき続ける。
その虫はバタバタしていれば助かると思っているのだろうか?
絶対助かるワケないのにね、とヤツはほくそ笑んで眺めているのかもしれない……。
無駄に努力を重ねてあがいて、そしてなすすべもなく底なしの絶望に堕ちる。
そこに希望も夢もなく…………。
それこそが『大災厄の円環王マリシャス』の残虐非道な企み。
「くっそ……!! 永遠の『賢者の秘法』が解けちまった……!」
フラフラ飛ぶ星獣の上で、満身創痍のナッセとヤマミは苦しそうに息を切らしていた。
視界に映る大魔王は然したるダメージもなく、健在と「ヴオオオ!!」と高らかに吠えている。
ヘイン、アクト、マイシ、王子たち、七皇刃、有力な猛者は生き残っているものの、もはや瀕死目前の満身創痍。立ってるのさえ辛いほど全身に激痛が走っていて、血塗れ。
要塞を必死に守っていたヨネ校長も口から血を垂らし息を切らしていた。
誰もが疲労困憊で、これ以上戦える力があるのかも怪しい状態だ。
「なんとかできないのかよォ……!!!」
星獣の上でナッセは悲痛に吠える。
もうなんとかならない……。
ただただ絶望に打ちひしがれるしかないの…………?
しかし絶望の闇の最中にキラリと希望の煌きがイメージとして浮かび上がった。
それはナッセがコクア王子と治療班の憎悪を浄化した、あの『快晴の鈴』!!
悪意や殺意を強制的に祓える、あの効力なら!
《ナッセ────ッ!!!!
あの鈴!! あの鈴でッ、みんなを助けて────ッ!!!》
涙ぐんだヒカリはナッセへ近づき、すがりつくように悲愴に叫んだ。
オレはハッとした。
ヒカリの叫びで、コクアと治療班の諍いを浄化させた鈴を思い出した。
するとウニャンがひょっこりオレの肩に駆け上ってきた。いつの間に!?
「それを『賢者の秘法』でパワーアップだ!!」
「え?」
「三大奥義の中でも『賢者の秘法』は更に深い次元まで及ぶ最強の奥義! 今回ばかりはワタシも手伝うよ!」
息を呑む。
ウニャンを一目見て、次にヤマミ、ヒカリへ、そして向こうで聳える大魔王へと視線を移していく……。
「ヴオオオオオオオ!!!」
悲しげに吠えているような気がした。
失った愛しいヒカリを取り戻したいと一心に、悪行に手を染めてまで長い時間を繰り返して突き進んできた。
挙句の果てに、それが無駄だと知り絶望して魔王化した……。
このままでは誰も救われない。多分、並行世界も含めて全てが……。
「こんな胸糞展開なんて誰得だよッ! オレはぜってー納得しねぇぞッ!!」
激情任せに足元の花畑を昂らせ、花吹雪を吹き荒れさせて収束。真上で快晴の鈴がキィンと煌く。
キラキラ光礫を撒き散らしながら浮く鈴は希望を讃えているようだ。
キッと決死の眼差しで気力を全身に張り巡らせ、腕を左右に伸ばして世界に祈るように集中していく……。
古今東西! 過去、現在、未来……! 数多の並行世界…………!
みんな…………! こんなオレに力を貸してくれッ!!
「ヤミザキを救う為……! いや! みなでハッピーエンドを迎える為に!!!」
あとがき雑談w
アリエル「最初期のアンタを思い出すわぁ」
クッキー「私も未熟だった頃は、女神に力を与えられて世界の危機を救ったっけ」
ヤミロ「あん時も概念少々変えたっけなぁ……」
アマテラス「今回は大災厄が関わってるから、例外としてオッケー!」
なぜかノリノリなアマテラス。顔を赤らめて酔っ払っているようだ。
そのテーブル上に酒瓶が空っぽになっていた。
クッキー「誰が飲ましたーw」
アリエル「さぁ~誰でしょうねぇ~w」
次話『ついに現る大災厄の存在!!』