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189話「世界大戦クライマックス!!」

 ────世界大戦、五日目。午後六時三十二分、第一陣出撃中。


 赤い夕日が地平線へ沈もうとしている……。

 代わりに赤く染まった空を、闇が染まっていく。まるで決戦の火蓋を切るかのようだ。



 夕夏(ユウカ)家陣営、第一子コクア、第二子ブラクロ、第三子ダグナ、第四子ライク、第五子カゲロ、第六子ウユニーギ、第七子ホエイ、第九子カンラク、第十子ギュラー、第十一子ムイリら夕夏(ユウカ)家五戦隊ら、陥落!


 そして歴戦の黒執事ダクライ! 敗れる!!


 破けた衣服と得物、そして撒き散らされる血飛沫。ゆっくりとした時間の中でダクライは仰向けに倒れゆく。だが満足そうな表情だった……。

 筋肉隆々だった若い体格が徐々に(しぼ)んで元の老体へと戻り、地面に沈んだ。



 モニターを通してオレも誰もが呆気に取られ、確かな勝利を震えながら実感していく。


「やったぜ────────ッ!!」

「うん、やったよ!! やったんだよっ!!」


 思わずガッツポーズに拳に握り、そして側のリョーコともパンと両手で叩き合う。

 あの相棒アクトがやってくれた! やれると思ってた!


「わあああああああああああああっ!!!」


 歓喜に沸く味方陣営。ヘインも「はっ! やってくれおるわ!」と笑みをこぼす。




 薄暗い操縦室で、ヤミザキの驚く顔がモニターの光で淡く照らさる。


「ダクライが敗れた……? 信じられん……」


 僅かな動揺が内心を巡る。

 そもそもダクライは総統ヤミザキに次ぐ夕夏(ユウカ)家最強の創作士(クリエイター)。そして不敗神話を保ち続けた歴戦の老兵。

 多少は苦戦するも確実に敵勢力の大半の戦力を削ぎ落せる公算だった。


 敗れるにしても、同じ四首領(ヨンドン)であるヘイン相手だと思っていた。それでもヘインの戦闘力を削いだ後に退場か撤退。

 それで有利になるはずだった。

 なのに一介(いっかい)(サムライ)一人によって、撃退されてしまった……。


 予想外の結果に、息を呑む。



《ヤミザキ様。このような敗北で申し訳ない……》

《……いや。長らくご苦労だったな。それと親友を済まなかった》


 ダクライは僅かに見開くが、静かに首を振った。


《きっと彼も本望です…………》

《そうか……》


 悲哀が含んでいる事を察し、ヤミザキは黙祷するように目を瞑る。


「私はあまりにも罪を重ねすぎた…………」


 自分の足元には穢れた血溜りが広がっているようにも見えた。

 それは足はおろか手にもべっとり赤くおぞましく血塗られている。ダクライの親友を含め、我が手にかけた命は決して少なくも軽くもない、という罪悪の表れ。


 これまで一心不乱にヒカリを取り戻そうと愚直に突き進んでいたら、自分は穢れていた。

 気付けば想い人に合わす顔がないほどに、自分自身は闇に染まっていた。


 その罪悪の重みがズシリと心にのしかかってくる……。


 だからこそ私情的な事に王子たちを巻き込みまいと、切り離したのだ。

 息子たちに自分と同じような道を進ませないためにも…………。



「ヒカリ……」


 何百年も会ってないというのに、昨日の事のように脳裏に鮮明と浮かんでいた。

 明るくて奔放で、そのくせ世話焼いてくる。

 当時を思い返せば、童心に還ったかのように純粋なときめきが胸を満たす、が!


「私の命と引き換えにしてででも、ヒカリ! この世に呼び戻してやる!」


 その為に、犠牲は後一人でいい!

 ……悪いが、私の『最後の器』になってもらう!


「ナッセ……!」


 強い覚悟と信念を胸に、険しい表情へと変貌してゆく。コオオオオ……!




「降りてくるよ!!」


 リョーコの言葉にハッと見上げた。

 確かにヒトデ型巨大浮遊艦が地上へと高度を下げているのが見えてくる。緊張で心臓の鼓動がバクバク高鳴っていく。汗が頬を伝う。


 すると虚空から漆黒の花吹雪の螺旋が広がり、流れるようにヤマミがザッと降り立った。

 彼女は黒マフラーとマントをなびかせながらオレに歩み寄る。


「ヤマミ……」

「大丈夫! 私も一緒だから」


 凛としていたヤマミはオレの手を握って、柔らかく微笑む。


 もうヤマミにはいわくつきの『刻印(エンチャント)』はない。

 だが、それでも父であるヤミザキとの確執にケリを着けねばならない。

 晴れ晴れとした気持ちで異世界へ旅立つ為には、この戦争と共に乗り越えなければいけなかったぞ。


「……うん。終わったら、異世界へ行こう!」「ええ」


 ヤマミは嬉しそうに頷いてくれる。


 それにコクアが、ヤミザキの異世界へ行った時の悲劇や、想い人を取り戻す為に長く生き続けてきた事情などを話してくれた。


「総統様を頼みます……!」


 ヤマミもそうだったように大切な人の為に全力で奔走する。それ故にヤミザキはもはやヒカリしか見えていない。

 そしてコクアの言っていた事が正しいなら、彼女(ヒカリ)の為に自らの命すら投げうつつもりだろう。

 それを止めるのもオレたちの役目だ。


「……ヤミザキ!!」


 ついに地上へと降り立った巨大浮遊艦へ鋭い視線を向け、戦意を昂ぶらせていく。



 駆動音が途絶え、沈黙した浮遊艦の上から一人の男が床の魔法陣と共に現れた。

 夕日が地平線に沈むと同時に、その男は上げていた片足を叩きつけるように踏み下ろした。


 ズン!!


 それだけで戦場は大きく震え、砂塵が舞い、大地が波打った!

 周囲に広がっていく一陣の烈風。

 重々しい威圧が戦場にいる全てにのしかかる。ズズズズ……!


 絶句し、あの時は遊ばれていたのだと体が畏怖に震え上がる。


「……これが四首領(ヨンドン)の威圧!! か、勝てるのかぞ!?」

「いえ勝ちましょう!」


 ヤマミは横から寄り添い、オレの手を包むように握る。温かい……。

 ホッとさせられる安心感。

 するとリョーコが背中をパンと叩いてくる。あわわ、と驚いて振り向く。


「アクトの事は心配しないで、あんたは行っちゃいなさい!!」


 明るくウィンクしてくる元気な顔。いつも積極的で元気づけられる。

 学院入学から友達として手を引っ張ってくれた彼女……。そしてかけがえのない友達。感謝しかない。


「ありがとな! リョーコ!」

「うん!」


 明るい笑顔で頷くリョーコに、オレとヤマミは綻ばせた顔で頷き返す。



《敵の大ボスがお出まし、故に第二陣主力出陣じゃ!!!》


 耳に響いた放送に「うわっ!」と肩を竦ませた。ヘインの言葉だ。

 闇に染まった夜空にキラリと八つの煌き。それは流星のように地面に落ち、爆発を噴き上げた。その爆炎の中から屈んでいた七人が立ち上がった。


 剣士(セイバー)オータム!

 格闘僧(モンク)ガヅィン!

 槍士(ランサー)エイス!

 戦士(ファイター)ツィリーフ!

 僧侶(プリースト)サタネクス!

 狂戦士(バーサーカー)グレン!

 召喚士(サモナー)スエック!


《続いて後衛にナッセ、ヤマミ、マイシを続投で加勢。魔皇帝(イビル・エンペラー)であるヘイン、この余も直々に出陣じゃ!!》


 オレたちは驚いた────!

 なんと大きな流星がドンと降り立ち爆発。その中から、威風堂々とヘインが不敵な笑みでヤミザキの前に仁王立ち。

 ついに四首領(ヨンドン)同士が睨み合ったぞ!



「何ボケっとしてるんじゃ? ナッセ、ヤマミ、マイシ早う来い!!」

「あ、うん! 今行く!」「え、ええ!」


 急かされ、オレたちもビュンと流星のように空を舞ってヘインの側に降り立つ。そしたらマイシも両翼を広げながらドン、と地面をへこませて降り立った。

 勢いで呼び出されたが、未だ緊張するぞ……。


 目の前に、あの四首領(ヨンドン)ヤミザキが!!



「来たか!! 四首領(ヨンドン)ヘインに、ナッセ、ヤマミ、マイシ! そして七皇刃(ロイヤル・セブンズ)……」


 厳かな声で思わず竦みそうになるぞ。

 あれほどまでに真剣で険しい顔をするヤミザキは初めて見る……。

 手の甲の赤い『刻印(エンチャント)』が怪しく輝き、ズズズ……と全身に広がっていって左右対称の紋様を描く。それにつれてさらに威圧感が膨れ上がっていく。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!



「今宵、ナッセはこの四首領(ヨンドン)ヤミザキの器となる! 覚悟は出来てるだろうな」

「残念!」


 勇気を奮い立たせるようにニッと笑む。

 合掌し「おおおおおッ!!」と気力充実で気合を吠えると、足元に淡い花畑が咲き乱れて広がって、背中に咲く花から四枚の花弁が独立し、拡大化して翼を模していく。ブワッと花吹雪が渦を巻いて舞い上がり、神々しく光柱を噴き上げていく。


「……やはり妖精王……か!」

「そうだ! だから『器』になんかできないぞっ!! 諦めれー!!」


 大地を揺るがし、凄まじい花吹雪で威圧が膨れていった。そして真剣な眼差しでヤミザキを見据えた。ギッ!

 その気性に合わせて吹き荒れる花吹雪に、七皇刃(ロイヤル・セブンズ)も「うわわっ!」と煽られて仰け反る。

 ヘインは「ほう!」と笑みをこぼす。

 しかしヤミザキは平然とこちらを見据えたままだ。


「確かに上位生命体を『器』にできんが、確実にできる裏技がある」

「ええっ!!? うそー!?」


 ビクーッと背を伸ばしてビビる。ヤマミも目を丸くする。マイシも「……ハッタリかし?」と汗を垂らす。


「フッ! しかしお前があの『鍵祈手(キーホルダー)』とはな……」

「『鍵祈手(キーホルダー)』?? なんだそれ?」


 怪訝に首を傾げていると、ヘインが「『運命の鍵』を持っとるスペリオルクラスじゃ」と教えてくれる。

 マイシはそれを聞いて「フン! だからか……」と納得して笑む。


「そうなのか? ってか、なんで二人は知ってんだよ?」

「余はアメジェネや魔女ネコから聞かされたわ」

「古今東西、色々知識や人脈があってな……。だがしかし『運命の鍵』は厄介だ。なんでも願いを叶える鍵が相手では敵わんな」


「いや使わない!!」


 ヤミザキは眉をピクンと跳ね上げて目を細める。


「オレが願うのは、その『運命の鍵』を自由に解き放つ事ッ!!」

「ほう? 鍵を? これはまた酔狂な……。私を倒すのには使わないと?」

「ああ! 絶対にねーよ! どうせ一回こっきりだし!」


 ヘインはジト目で「おい、ベラベラしゃべっていいんか?」と不安そうだ。

 それに構わず、握った右拳を見せガッツポーズのようなポーズを取る。するとヤマミも反対側の左拳でこちらの右拳へ並んできた。


「だから、あんたはこの手でぶっ倒す!!」

「ええ! 覚悟する事ね……!」


 昂ぶったオレとヤマミは気丈に身構え、マイシもスッと腰を落とし構えた。

 しかしヤミザキは不穏に笑む……。

あとがき雑談w


 とある秘密の基地のような内部で、クッキーが慌てて入ってくる。


アリエル「遅いじゃないのぉ~」

クッキー「あ、ゴメゴメw 仕事長引いちゃってw」

ヤミロ「ククク……。お疲れさん……」ポテトぽりぽり!


 丸テーブルに、それを囲む輪状のソファー。クッキーは買い物袋をテーブルに乗せ、ソファーに腰掛ける。

 軽い世間話をしつつ、大型モニターで世界大戦のクライマックスを観始めた。

 ラスボスのヤミザキとナッセ、ヘインたちが雌雄を決す場面になっていた。


クッキー「よしよーし! 盛り上がるトコね! カンパーイ!」

アリエル「ふふふ……そうねぇ~。カンパ!」

ヤミロ「カンパイだぜ……」


 ビール注いだコップで三人は乾杯しあった。カツン!



 次話『七皇刃(ロイヤル・セブンズ)改め、十皇刃(ロイヤル・テンズ)!? どさくさ紛れに加入かよw』

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