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188話「アクトとダクライの真剣勝負!」

「さて、これで終わらんだろうな?」


 額から血筋を流したまま、狂気の笑みでダクライは問いかける。

 アクトは「くそったれがァ……」と震えながら立ち上がる。既に全身は激痛が駆け巡っていて動くだけでも気絶するほどの激痛が跳ね上がる。


「しかし、ここまで手傷を負わせられるのはヤミザキ様以来……、前々から只者と思っていなかったが、いやはや想像以上であったぞ」


 ダクライはペロリと唇を舐める。




「アクト!! このままじゃやばい!!」


 危機的状況に陥ったアクトを見ていられず、リョーコが駆け出そうとする。

 しかしそっと彼女の肩にそっと手を置く。


 焦ってはいたが、実はアクトが飛び出した時に追いかける事もできた。加勢もできていた。

 だが、敢えて踏み止まったぞ。


「止まれリョーコ……。アクトは相手の強さを見誤るバカでも、無謀でもない。あいつが『勝ち星をあげる』ってたなら、オレは信じて見守るのみだぞ」

「本気なの!? それでいいの?」

「……大丈夫!」


 自信満々と笑んで見せた。リョーコは唖然としていた。

 戦いを通して培われた絆、いやアクトへの信頼が、焦りをことごとく消し去ったと察した。


「あいつは必ず勝つぞ……!!」


 それは親友にして相棒への限りない信頼の言葉だった────!

 そう感じ取ったリョーコはコクッと頷いた。



 アクトは身を震わせながらギリギリの狭間で立ち堪えて、平然とするダクライを見据える。


「クソッ……!! 記憶飛ばねェ程度のギリギリを保ったのによォ!!」

「中々にいい一撃ですな。儂でなければ、さっきので勝負は終わっていただろうとも」


 ククッとダクライは愉しそうに笑う。

 アクトは察した。ヤツはナッセと似たタイプだと……。


 さっきの一撃も、ナッセのようにギリギリ致命傷を避けていた。

 コハクの槍も、シナリの奥義も、当たれば勝負が決まるレベルの攻撃。ダクライはその技の性質を見抜いて決まらせなかった。

 このように最大限にダメージを軽減し、最小限に最悪を抑える。これほど厄介なタイプはいない。


 これまで不敗で生き残ってきたと思わせられる一番の強敵……。



 するとダクライの手が差し伸べられた。


「どうだ? ヤミザキ様の下で儂と共に戦ってみないか?」

「はぁ? 寝ぼけてんのかァ……?」

「ナッセ様はいずれヤミザキ様の器となろう……。姿はナッセ様そのままだ。これまで同様に相棒として背を預けて戦う事もできる。もちろん異世界へ行くという目的も同じ。()したる問題ではなかろうて」


「いや! 全然ちげェよ!」


 不機嫌そうにアクトは血を吐き捨てる。ペッ!


「ナッセはなァ……、明るく異世界へ冒険したいと前向きに進むようなヤツだ! アメリカに戦争を仕掛けてまで異世界を侵略していくような後暗いヤツなんかとは同じにすんなァ!!」

「ふむ……」


 アクトはビシッと刀の切っ先をダクライに向け、鋭い眼光を飛ばす。


「俺ァ……守るのはナッセだけじゃねェ! ナッセの魂と想いもだ!! 勘違いしねェよう掌に書き留めておけ!!」

「ほっほ! ナッセ様は本当に頼もしい相棒を持ったものだ……」

「……どうしたよ? オメェにも心当たりあんのかァ?」


 ダクライは見開く────。


 脳裏に鮮明と蘇る、去っていこうとする親友の姿。


《後は頼んだぜ! さらば! 俺の相棒よっ!!》


 同じ夕夏家の下で切磋琢磨と競い合って、総統継承式でも対戦した。だがヤミザキ様は勝った儂よりも親友の方を選び、器にした。


《継承は終わった。ダクライよ。引き続き私の下で働いてくれまいか!》

《……ハッ!》


 見た目こそ同じだが、中身は親友のソレと違う────。

 最初は矛盾や葛藤に苦しみ、長らく引きずった事もあった。


 だが、器の選別の前に儂も親友も「どっちが器になろうともヤミザキ様の為に!」と約束していた事を反復し続け、ようやく振り切れた。

 ヤミザキ様に仕え続ける事が親友の供養となると信じ、忠義を貫いてきた。



「……ふははっ! 試して()まなんだ。最初っからイエスなど言わんと分かっておった」


 嬉しそうなダクライ。しかし口を結び、真剣な表情を見せた。

 凍りつくような歴戦の表情────。


「だがしかし、愛しい人を取り返さんとするヤミザキ様の強き想いに応えて、異世界へ共に挑まねばならん!」


 ダクライは両手を揺らめかして左右にビシッと構える。

 完全不動に静止し、尋常じゃない威圧が膨らんでいく。ゴゴゴゴ……!


「貴殿も奥義を披露するに値する猛者と見た! 次で決着をつけようぞ……!」

「……そいつァ光栄だな」


 アクトは皮肉るようにニッと笑む。


 途端に髪を逆立て、全身の筋肉が再び膨れ上がり、筋肉筋に沿って赤く煌き、眼を隈取りで覆った。また同じ箇所にひび割れた痣が出現し、同時に噴火のような激しい赤い蒸気の激流が吹き荒れていく。

 全身をビリビリと突き抜ける衝撃にアクトは憤怒の表情。


「望み通り、ケリを付けてやらァァァァァッ!!!」


 シュゴゴゴォ────────────ッッ!!



「また万覇羅弐(マハーラドゥイッテ)……!! 頼むぞ! アクト!」

「相変わらず無茶するよね……。全く」


 汗を垂らしながらも、リョーコと共に静かに見届ける構えだ。



「があああああああああああああッッ!!」


 アクトは激流の蒸気と共に、音速を超えた突進でダクライへ飛びかかる。大地は蒸発するように粉々と爆ぜ、烈風が吹き荒れていく。

 ダクライは「来い!!」と裂帛の気合いで吠え、自身に溜め込んだ膨大なエネルギーを爆発させた。


零・閃(ゼロ・セン)ッッ!!!!」カッ!!



 その瞬間、ダクライを起点に輪状の閃光が拡大化して広がっていった。

 キュッと世界の全ては遅延し、限りない静止に近づいていく。その中でダクライのみ通常通りの動きで駆け出す。

 本来なら超高速で飛びかかってくる憤怒のアクトすら止まったままだ。

 背中の全ての光刃が集約されて、輝く(おお)太刀(たち)と化しす。


 彼の体が限界を迎えてる故、殺してしまいかねんと危惧するが、手加減するなど猛者に対して礼儀を欠くものと固く認識していた。


 だから「おおおおおおおあああああ!!!!」気合いを発して全方位から渾身の一太刀を数回振り下ろす。


 アクトの目にはあたかも分裂して一気に渾身の一撃が同時に複数襲い来るようにも見えるのだろう。

 それこそが三大奥義が一つ『超越感覚の領域トランセンデンス・ゾーン』の極意。



 ────だからこそ、コハクたちを相手に複数回行動で撃滅できた。


 時が止まっているような世界の中で、大爆裂ごとモリッカを裂き、複数の大旋風連車をことごとく裂いてシナリに一撃を見舞い、巨大な槍ごとコハクを一刀の下で斬り伏せた。

 極限に時が圧縮された世界が終わった時、三人は既に撃破されていた────!



「この儂の全力ッ!! 存分に受け取れいッ!!!」


 アクトを斬り刻まんと渾身の力でもって(おお)太刀(たち)を振るう。が、それを赤きが包む黒刀が阻んだ。ガッ!

 なんと停止した世界でアクトはニッと笑う。


「追いついたぜェ……?」

「な!?」


 かつてなかった戦慄。

 アクトがついにダクライの世界へ介入してきたのだ。だからこそ血湧き肉躍った。


「良し! こうでなくてはッ!!」


 勝敗の見えぬ戦いに、我が全身全霊でもって臨める喜び!

 それこそがダクライにとって至高の幸福!!


「があああああああッ!!!」

「ぬおおおおおおおッ!!!」


 飾り気も気品も置き去りに、がむしゃらに牙を剥いて刃を振り回し続ける。

 獰猛な肉食獣同士が闘争本能剥き出しに爪と牙で血みどろの戦いを繰り返すが如く、火花を散らし続けながら剣戟を数千数万も交錯させ続ける。

 停止した世界ゆえ、散った火花を置き去りにしていく。


 ガギィンギギギギガガギィンガガガガガ!!!



 血飛沫を吹き散らしながら、アクトは憤怒で歯を食いしばって剣戟を振り回し続ける!!


「ががああああああああ!!!」


 ナッセェ!!


 星獣ン時よォ! 俺に力ァ足りなくて深い後悔の中でさまよっていた!!

 だがオメェは生きてくれた!! 記憶も取り戻した!!


 …………そして俺ァ報われたァ!


 ダクライの(おお)太刀(たち)を弾き、アクトは剣を鞘に収めて後方に寄せ、居合の構えを取る。

 止まった世界で取る更に刹那の構え、互いから出た血飛沫がまるでバトルフィールドの装飾かの様に舞っている程、瞬間的な世界でアクトはニッと微笑む。


 ありがとうよォ……!! 親友!!


心剣流居合(しんけんりゅういあい)!! 地獄門(じごくもん)!!!!」



 想いを込めた一太刀を浴びせて、アクトはダクライと通り過ぎる……!!


 ドン!!!!


 大地も空雲も両断され、激しい衝撃が周囲の地形をめくり上げる!!

 友への想いで漲る一太刀は、ダクライを(おお)太刀(たち)ごと斬り伏せた────!!



「……見事だ! 儂の全身全霊敗れたりッ!!」


 ダクライは爆ぜるように衣服と血飛沫を四方八方に散らせた。

あとがき雑談w


ヤマミ「本当は私とナッセでダクライと戦う展開もあったんだけど」

ナッセ「なんでこうなったェ……!」

ダクライ「儂もナッセ様とヤマミ様とも戦いたかったがな……。はははっ」


 本当はコクア、ダクライ、ヤミザキと三連戦する形でナッセが勝ち抜いていく感じにしようとしてました。

 特にダクライはヤマミを幼少より世話してきた黒執事。

 一戦を交えて感慨深く語っていく予定でした……。


 つーかそもそもダクライはタイマンで倒せるような相手ではないのですw


アクト「ん? なんかやっちゃいましたァ?」



 次話『ついに残す敵は四首領(ヨンドン)ヤミザキ!! 果たして!』

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