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187話「アクトの想いと極めた力!」

 一触即発な緊迫感溢れる二人の対峙。


 万全と光刃を翼を象るように並べるダクライと、振り抜いた刀を漆黒に染めるアクト。

 いつになく落ち着いた表情を浮かべるアクト。吹く風に髪がなびき、静かに収まっていく。



 明らかに様子が違うのが見て取れるぞ。

 アクトは少々熱くなるところはあるが、元々経験豊かだから普段落ち着いている。しかしこんなに静まりかえった表情はなんだか始めて見るなぞ。

 かつて共に戦った相棒だからこそ、分かる。


「アクト……」



「ダクライよォ、オメェは強い。俺の思った以上に、手強く、敵ながら賞賛だァ……!!」

「それは光栄ですな」


 アクトの筋肉が少しばかり膨れる。体格が増した、と言うより明らかに筋肉がより強い力を引き出す準備に入ったかのようだ。

 うつ伏せのまま意識を取り戻した陽快(ようかい)コハクはハッとした。


「い、いけないなのです……」


 三本の槍を複製し、自身とモリッカとシナリを抱えてこの場をビュンと離脱した。



 それを見計らったかのようにアクトは眼光を煌めかせた。

 同時にダクライは「さていいぞ! 始めようかの!」と構え始めた。


「……あァ? 余裕ってかァ?」

「いや違うな。奴らは殺すには惜しい逸材。間違いなくこの敗戦を糧に成長するでしょうな。また再戦の機会があれば是非とも」

「そうかァ!」


 ダクライは敢えてコハクたちを見逃したのだ。純粋に猛者と戦う事を愉しむ戦闘狂ではあるが、敵の生死にはこだわっていなかった。

 むしろ敵の力量を認め、敬意をはらってさえいた。



 ズン、と周囲が震え上がりアクトの威圧が重々しく膨れ上がっていく。


「俺の剣術を知っているかァ? 蒼天心剣(そうてんしんけん)(じゅつ)ってんだ。

 これまでこいつを使わず戦ってきた。()()()を完成させる為になァ……!!」


 アクトが口を綻ぶと、刀に薄く透明で、不気味とも取れる暗さを持った赤色の幕状の光が切っ先から現れ唾まで伸びる。



 ん……? いつもと違う……?


 アクトのこの現象を今まで見た事がなく、力を完成させると言うワードも初めて聞く。

 彼ほどの剣豪が、今まで何の流派も作らず斬り覚えで生きてきたのか、ずっと疑問に思っていた。


 側のリョーコが「その流派知ってた?」と聞いてくるが、首を振って「いや初耳ぞ」と答えた。



 アクトは静かな微笑を口元に浮かべる。

「何も隠してた訳じゃねェ。完成を待ってただけだ。心髄(シーズ)知ってるかァ?」



「うん。血管、神経、武器にインド人特有のオーラを循環させる……だよな?」


「そうだァ……。あの万覇羅(マハーラ)や、前に使った剛牙(フォウキル)柔鱗(ヴィデザ)は“ある力”の前借りだ。

 まだ完成してなかったから、戦況に応じて無理ァ利かせて使ってただけに過ぎねェ。

 だがダクライ、俺はここでオメェと会えて良かったよ……!!」

「ほう……?」


 アクトの言葉にダクライは嬉しそうに口角を釣り上げている。


「ではなにか、今までの技は前借りに過ぎないと……!? それがハッタリでない事を期待しておるぞ」

「…………期待もなにもねェよ」


 アクトは剣を目先まで運び、漆黒に染まった刀身が淡い赤色の光を纏う様を見つめる。


「俺ァ幾多の戦いで色んなもんを失った……!

 だが今回、やっと再会し得たナッセを絶対に守るとこの刀に誓った……! その誓いの果てが、『覇皇心髄(ハオーシーズ)』だ……!!」



 そのアクトの想いに唖然させられた。


「ねぇ、知ってるの? ハオーシーズってヤツ?」

「いや…………」

 リョーコに首を振る。



 二人の疑問を察するアクトはこの力の秘密を明かす。


「『覇皇心髄(ハオーシーズ)』ってのは己を周囲の自然と同化させる事で、更に莫大な力を得る極意だ……!

 その初歩が心髄(シーズ)、字の通り髄の力だった……。

 完成させるにァ何十年もの鍛錬と、己の流派を封じて剣そのものの心を理解し切る事が重要なんだ。だからダクライ、敵ながら剣を戦う為だけに振るう勇姿を見て、俺は完成し得た……!」

「ほう!?」


「答えは、“剣はただ斬るのみ……! その想いは宿主に委ねられる”……!!」



 思わず頬から汗が滴り落ちる。

 アクトの微笑みがなにかを悟った様な、理解した様な落ち着いた顔に恐怖さえ覚える。


 その答えは至極当たり前な答えに過ぎない。

 だが、これを本当に理解し己の思いを剣に同調させる(サムライ)を見た事がない……!!


 オーラそのものの質を高めたのかぞ……!?



 アクトは口を開く。


心髄(シーズ)同様、覇皇心髄(ハオーシーズ)もオーラってのを血管とか神経、剣に循環させる力。ただ違うのは、更に強ぇオーラで、“俺以外”にも力が及ぶってェ事だァ……!」



「つまり、実はまだ力を隠してました的な……?」

「え? えええ?? さっきまで何だったのォ!?」


 リョーコが驚くのも無理ない。いやオレだって驚いているぞ。


 ホントややこしいなぞ。まるでくどいように設定を押しつけて説明してる的な……。

 もはや突っ込むのも疲れるなぞ。

 だがアクトはいつだって想像以上の事をやってのけていく。


 だから頼もしいのかもな……。



 アクトが地を蹴って、大地が爆ぜた!


「がああああああッ!!」

「ぬッ!!」


 ガガァン!!


 瞬時に間合いを詰めたアクトがダクライへ赤色の閃光を飛び散らす黒刀を振り下ろすが、光刃がそれを阻む。

 その瞬間に輪状の衝撃波が広がり、次いで地盤が一気にめくれ上がって粉々と舞い上がっていった。そして狂気のままにアクトとダクライは数百もの攻防の応酬を繰り広げていた。


 ガガガギィン、ギガギギギン、ガギガガガガガァ!!


 周囲を瞬時に飛び交い、激しい剣戟の応戦を繰り広げて行く。

 血の飛び交う中、ダクライはアクトの薄赤い光を帯びた黒刀を見据える。


「ほう、なるほど……。コクア様との戦いとは、威力も速さも段違いですな……!

 周囲の自然から力を貰い受けた現象が、あの赤き光か……!!」


 血湧き肉踊る、とダクライは喜々と滾った。



 二人の激しい衝突の影響で更に増幅された衝撃波が噴火のように天高く噴き上げられ、連鎖だと気付かぬほどに尚も激突の衝撃波が更に更に破壊の規模を広げていった。


 幾重の射線を描く光刃の嵐と、アクトのなりふり構わない剣戟が数百数千と激突し続けていった。



 ズオオォォォ……ン!!


 台風のように強烈な暴風がオレたちにも吹き付けてきて、戦場は凄まじい地震に包まれていった。

 オレもリョーコも「ぐっ」と踏ん張って防御姿勢で堪えていた。

 吹き飛ばされるかと思うほど、吹き荒れる勢いが凄まじい。



「押されてる!」

「だなぞ……!」


 鬼気迫る光刃の嵐とダクライの体術による猛攻で、アクトは血塗れに傷ついていく。ただし一方的ではなく、アクトの攻撃も幾度かダクライにも見舞っている。

 それでも互い致命傷となる攻撃だけは外し合っていた。


「失ってきた……というのには共感します故、儂も負けられんな!」

「へっ! やはり一筋縄では行かねェなァ……!」


 アクトは劣勢ながらも気圧される事なく、自ら夜叉(やしゃ)と化すように全身を殺意の影で覆った。

 その錯覚か、ダクライはゾワリと背筋に戦慄が走った。


覇皇心髄(ハオーシーズ)に進化した事で、万覇羅(マハーラ)のデメリットは消えた……! これなら、より更に上へ行けそうだァ……!!」

「むう……!」


 漆黒の死神が背から鎌で串刺しにする様なドッとした恐怖に、ナッセたちはおろか対峙するダクライの鳥肌も立つ。

 ドン!! と凄まじい衝撃を放ち、アクトの身体は万覇羅(マハーラ)の形態へ変わった……!!


「いきなりコレで身体ァ壊しちまうかも知れねェが、構わねェ!!

 これが限界を超えた力────、万覇羅弐(マハーラドゥイッテ)!!!」


 

 たちまちアクトは天然パーマの黒髪さえ逆立ち、眼球が真っ赤に染まる。歌舞伎(かぶき)で言う隈取(くまどり)のように目の周りからこめかみに及ぶ。

 全身の筋肉が更に少し膨れ、筋肉のラインが浮き上がってまるで装甲の様な形をみせ、そのラインに沿って剣と同じ赤い煌めき、黒く染まった刀の輪郭が更に赤く輝く。

 髪から色素が少し抜けたかの様に所々赤い毛の塊が現れ、腕や胸の中央にはヒビ割れの様な紋様が浮かぶ。

 全身を纏うような湯気も透明な赤色に変わり、激流が凄まじい熱気を放ち噴火のように噴き上げ続けていた。


 シュゴォオ────────────ッッ!!



 その恐るべき変貌に、オレも誰もが口を開けて驚愕────!!


「さ、更にパワーアップを!?」

「いやいや、なにがなんだか!?」



 気付けば瞬時にダクライへ迫るアクト! 速い!


心剣流(しんけんりゅう)!! 龍将一閃(りゅうしょういっせん)ッ!!」


 アクトの殺気漲る形相の下で振り下ろした一太刀が、光刃をことごとく砕き、ダクライをも斬り裂いた。ドッ!!

「が……ッ!?」

 弾けるように血飛沫が舞う!


 そして天地を繋ぐほどの剣閃の柱にも拡大化。

 たったのひと振りだけで衝撃波の嵐が螺旋状に吹き荒れながら、広範囲の全てを粉々と粉砕していく。

 その余波だけで台風以上の乱気流が戦場を駆け抜けていった。


 遠くにいてさえ、ビリビリと衝撃が体を突き抜けていく。


「すっげぇ……!? 今までのリミッターが全部外れたみたいだ……!!」




 シュウゥゥ────、と数分おいて煙幕が流れて収まっていく。

 剣戟だけで戦ったとは思えないほど、広大なクレーターが深い底を覗かせていた。


「いきなり万覇羅弐(マハーラドゥイッテ)を出した上で新技はやり過ぎたかァ……」


 ハァハァッと、力を失って血塗れの元の姿へ戻ってしゃがみ込むアクト。



「……ほっほ! なになに、これしきで倒れるものか!!」


 その声に、アクトのみならずオレたちも絶句した……。

 クレーターの底から、血塗れのダクライが抜け出して光刃の翼を神々しく広げていた。そしてズン、と大地に足をつけた。


「さて、これで終わらんだろうな?」


 額から血筋を流したまま、狂気の笑みでダクライは問いかける。

 アクトは「くそったれがァ……」と震えながら立ち上がる。既に全身は激痛が駆け巡っていて動くだけでも気絶するほどの激痛が跳ね上がる。



 危機的状況に陥ったアクトを見ていられず、リョーコは駆け出そうとする。


「アクト!! このままじゃやばいよ!! ナッセェ!」

あとがき雑談w


コクア「……え? アクトって人は手加減してたんですか??」

ナッセ「オレも気付かなかったぞ」

リョーコ「そういや前世で別れて随分会ってなかったよね?」


 一巡前の並行世界(パラレルワールド)では魔道士(マジシャン)ナッセとアクトは相棒として戦ってきた仲だった。しかし星獣戦によって死に別れてしまった。

 生き残ったアクトは異世界を何年も放浪していた。

 そして今世で、剣士(セイバー)ナッセと出会ったってエピソードがある。


コクア「そんな事があったんですね……」


ナッセ「記憶喪失だったんで、多分作中では相棒って印象は弱いかもなぞ」

ヤマミ「今は私が相棒(パートナー)だから……/////」

リョーコ「いつの間にナッセにくっついてっ!?」(驚)


コクア「…………密着(イチャイチャ)なされている……だと……! (イチャ)はいけません(イチャ)は!」


 ヤマミの黒炎がコクアを襲った。ぎゃあああ!



 次話『アクトにダクライの奥義が炸裂!?』

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