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185話「コハクの正体は異世界の妖怪!?」

 戦場が地震に揺れる……。

 軍人も創作士(クリエイター)も遥か向こうで、嵐のように爆ぜ続ける衝撃波に戦慄していた。



「ハハハハハハハ!!!」


 愉しそうにダクライは大笑いし、両腕を振り上げていた。背中にはアゲハ蝶の羽を模すように幾重の光刃を並べていた。

 それに対抗する三人。それはシナリ、モリッカ、コハクだ。


「それでいい! 待っていても弱体化はありえぬぞ! ワシは他と違って素で強いからな!

 ハナっから全力で挑む事を勧めるぞォ!!」


 ダクライは片手を突き出し、散弾銃のように無数の光刃が斉射された。

 大気を裂き、地面を抉り、光刃の弾幕が唸りを上げて殺到してくる。その怒涛と通り過ぎていく幾重の射線で、並び立つ遺跡を粉々に切り裂き、砂塵に変えていく。


「くっ!! 九十九紅蓮(つくもぐれん)百越閃槍(ひゃくえつせんそう)爆嵐(ばくらん)”ッ!!」


 コハクは槍を幾重に分裂させ、数百本もの大量に並べて一斉射出。発砲音が鳴り響く。

 互い相殺し合い、衝突の連鎖で空を覆い尽くしていく。


 ドドドドドドドドドドドドドドン!!


 ダクライは余裕そうで、コハクは「くっ!」と苦い顔。


 何十本か撃ち漏らした光刃を、モリッカが拳と蹴りでガガガッと弾き散らしていく。周囲で砕けた光刃の爆発が轟く。

 更に地面から突き出てくる無数の光刃の不意打ちを、シナリは風の手裏剣をいくつも投げ付けて細切れに切り裂いていく。その奮戦の甲斐もなくコハク側に爆発の連鎖が覆い始めていく。

 徐々に小さな傷を無数と三人に刻んでいく。


「コハクさーん! 本気出してくださいよー!」

「もう出してますッ!!」


 傷だらけなのにモリッカは余裕そうに茶化す感じだが、コハクは憤った。

 しかしシナリは「嘘はよくないんだぞー」とジト目で口を(すぼ)めていた。



 未だ撃ち合いながら、ダクライは「ふむ」と片目を瞑って考え事。


 王子たちは皆降伏し、ナッセ様たちは全員生還。結果としては散々たるものだ。

 死んだと思われたヤマミの生存にも、ダクライは「そういうネタであれば理屈が通る」と納得していた。

 むしろヤマミがあっさり死ぬ方が不自然なものだと思っていた。


 それで良い!! 次の楽しみに取っておこうか!


「ナッセ様、ヤマミ様!! それでこそ儂が認める猛者! 早々に挑みたいわい!」


 無邪気に好戦的に笑うダクライ。正に狂気。筋金入りの戦闘狂だ。

 そしてチラリとコハクへ視線を戻す。



「してコハクと言ったかな?」

「な、なんです!?」

「ナッセ様やらマイシやら、化け物ぞろいで今更と思うのだが、それでも自身をさらけ出さぬつもりかな?」


 コハクは見開く。ドスッ!


 気付けば腹に光刃が刺さっていた。滲み出る鮮血。コハクはゴフッと吐血。

 意識が遠のく────────。


 バキッ!

「おごっ!?」


 なんとモリッカに頬を殴られて、意識を取り戻す。

 思わず「おまえッ!」と食ってかかろうとするが、真剣な顔のモリッカは「大丈夫ですよ! みんなは」と(なだ)めてくる。

 その意外にマトモな一言に思わず驚く。そして見直したと、口を綻ばせた。


「バレてると思いますしー」ケヒャッヒャ!


 いつもの悪ふざけであざ笑うモリッカ。コハクは「グッ!」と見直した事を悔しがった。

 だが、おかげで気が抜けた。確かに今更だ……。


 ナッセもマイシも自ら隠そうとせず、己をさらけ出している。



「────では僕も真の姿を……」


 据わった目で怪しく笑むコハク。全身を覆うようなノイズがブンッと発生し、徐々に広がっていく。

 異様な威圧が溢れ出し、ダクライですら頬に汗を垂らすほど──。

 モリッカもシナリも成り行きを見守る。


 コハクの髪が銀髪に変質し、バサッと長く溢れ出す。メキメキと一対の(ツノ)が後ろへ伸びていく。そして破けた黒い衣が身を包む。

 怪異を思わせる異形さと威圧感に誰もが驚きを隠せなかった。


 これが……コハクの…………正体!!



「ほう、異世界人……! 妖怪か!」


 ダクライは喜々と口元を歪ませた。

 地響きを伴って闇から出でるコハクは双眸をギラッと覗かせた。ニタリと口元に笑みが走る。


 さすがのオレもゾクゾクと背筋にきた!



「この僕が真なる姿を見せたが最後なのですっ! とくと後悔するがいいのですーっ!!」


 なんと陽気な笑顔でコハクは高らかに槍を振りかざし、長い銀髪を揺らした。

 まるでパンパカパーンとでも言うかのように軽快な性格と仕草。しかもなぜか体格は五等身と可愛らしい風貌だ。


「この死の皇帝コハク様の力を思い知るがいいのですーっ!!」



「「えぇ────────っ!!?」」


 ズガーン、と戦場にいる誰もが白目でびっくり仰天(ぎょうてん)

 オレもヤマミもリョーコもマイシもヘインたちも唖然と自失していたぞ。


「こ、コハクなのかぞ? あれ!?」

「こっちが聞きたいよ!」


 戸惑って聞くも、リョーコは首を振る。


 これまで邪悪な雰囲気で登場してきて緊迫感あふれるコハクの真なる姿、と思ったら陽気な言動で可愛い妖怪みたいなのだったぞ。

 クスモさんは可愛いもの好きなので「もふもふしたーい」とユルユル顔だ。



「ダクライ! 僕は『妖怪(ようかい)』じゃないのです。『陽快(ようかい)』なのですっ!」

「……ほ、ほう? 『陽快(ようかい)』とな?」


 明るいコハクに、ダクライですら反応に困って頬に汗を垂らしたままだ。


「我が世界では『陽気』に満ちたポジティブ陽快(ようかい)族の我々が魔法文明を築き、『陰気』に満ちたネガディブ陰険(いんけん)族が世界の資源を食い潰す為、互いに争っていたなのです!」

「い……陰険(いんけん)族?」

「そうなのです! ここは僕の世界と逆なのです」


 彼は語った。

 ここでは妖怪を邪悪な怪異として見ているけど、コハクの世界では陽気な陽快(ようかい)として存在しているのです。逆にここの人間と酷似した陰険(いんけん)族は悪意と欲望で侵略せんとする魔族のような存在なのです、と。


 その為か、これまでコハクはこの世界の人間を嫌っていたのだった。

 例え嫌っていたとしても、長い目でナッセたちを見届けて理解していけたのも陽気なる特性だろう。


「だからか……、最初のコハクが取っ付きにかったのも、それが理由だったんだ」

「ってかモニター? これみんなに暴露されてるけど?」


 いつの間にか上空に大きなモニターがダクライとの戦いを映していた。

 オレたちは自然に見上げていたのだが、そういえばいつの間に……?


《へっはっはっは! わりぃな! 暇なんで巨大モニター開いてたんじゃ》


 ヘインの声が響き、ああなるほどと思った。


 ……ってか今戦争中だよな? 別に仮想対戦(バーチャルサバイバル)やってるんじゃないよな?




 するとセンニン……ニン……と木霊(こだま)するような音に振り向けば、空中で胡座(あぐら)をかくシナリが瞑想していた。

 なんと雲のようなものが周囲からかき集められ、それをシナリ足元に塊が張り付き浮遊。なんと黒髪が白髪になり、眉毛と口髭と顎鬚がボサーと伸び、頭上がニョキッと縦長になる。

 合掌したシナリがついに目を開き、不敵に笑む。


「仙人シナリ参上じゃぞ!!」


 正に仙人みたいな風貌でジャジャーンと登場したぞ!



 フクダリウスはそれを見て「むう……あれは!」と唸り、ダグナは「知っているのか?」と聞く。


「うむ。まさかあのようなものが見られるとは……!」


 聞くに、インド人であるアクトが独特の力『心髄(シーズ)』を持つのと同じく、中華人であるシナリもまた独特の力を持っていると言う。

 中華人は中華仙国(ちゅうかせんこく)という広大な仙境で暮らしている少数民族。

 そこでは最も自然界で満ち溢れ『(かすみ)』と呼ばれる自然霊パワーが充満している。

 それに慣らされた中華人は不思議な秘術が使える『仙人力(せんにんりき)』を持つ仙道民族だ。


 故に、生まれながらに道士としてスタートして、仙人力の極みに至れば仙人を名乗る事を許される。

 シナリは若くして仙人力を極めて、仙人に至った。


 そして周囲から『(かすみ)』を収束させて自らの力として、身体能力はもちろん、魔法能力も、感知能力もケタ違いにパワーアップできる。それこそが仙人力。

 更に極めていけば不老不死に至るとかいうトンデモ秘術なのだ。


 ちなみに(かすみ)を足元に集めて飛行する仙術は『觔斗雲(きんとうん)』と呼ばれている。



 降りたシナリが地面を蹴ると、二階建てほどの建造物並の大岩が超高速で弾き出された。

 ダクライは光刃を手に振るって、大岩を木っ端微塵に砕き散らす。バゴーン!


 すげぇ怪力になってんぞ……。



「ゴッドヘヴン!!」


 すると上空に立ち込める暗雲から巨大な落雷がモリッカへ直撃!

 暴れるような電撃を四方に散らし、地響きを伴って、モリッカはスパークを纏って青く輝く。

 何故かバサッと後髪が伸び神々しい姿に変わった。


「これが神の雷を身に宿した化身……。ブルーゴッド・超モリッカ!!」


 既視感あるアレだが、まさか最上級の雷魔法(デンガ系)を会得してたとは……。



 バチバチッと全力に充実したコハク、シナリ、モリッカが大地を揺るがすほど凄まじいエーテルを放射し「おおおおああああああああッ!!」と気合いを吠えていく。

 そしてダクライも狂気に笑み、全身から洗練されたエーテルを放出して大気が(きし)んでいく。

 戦ってもいないのに、地盤が波打ち、破片が次々浮き上がっていく。



「行くのです────ッ!!」「いっくぞー!!」「行くじゃぞぉぉぉッ!!」

「わはは! 遠慮なく、思う存分、力で語ろうぞッ!!」


 殴りかからんとばかりに気迫の勢いで互い間合いを縮め、その影響で大地を走る衝撃波が荒々しくなっていく。


 激突の際、ズオッと溢れた閃光が全てを覆い尽くした────!

あとがき雑談w


ナッセ「急に色々設定ぶっ込んできて情報量多いなぞ……」

ヤマミ「そうね。てかコハクさん、あんな陽気な異世界人だったなんて」

アクト「あァ……。それにシナリも俺に匹敵する民族能力があるとはなァ」


作者「民族能力って単語はアクトの造語ですw」


 コハクの異世界は妖怪と人間の立場が逆転しているような世界なのです。

 世界を守る陽快(ようかい)族。それらを侵略する陰険(いんけん)族。って関係なのです。

 そして、妖怪が陽快(ようかい)で、人間が陰険(いんけん)語呂(ごろ)合わせになっているのです……。


 いつかコハクの故郷を旅する話が来るといいなのです────!


リョーコ「まさかイケメンがショタになるなんて……。

 イケメンとショタと二人のコハクを題材にしたBL(ボーイズラブ)を……////」

陽快コハク「えぇえええ────!! 嫌なのですっ!」Σ(>_<)

人間コハク「それ止めてくれませんかね。刺しますよ……」



 次話『三人の最高の力でダクライを打ち倒せるのか!?』

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