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184話「総統ヤミザキの心境の変化!?」

 煙幕が風に流れ、大小の破片散らばる荒地が窺える。


 そこで所々破砕が見られるスーパーロボット型の『偶像化(アイドラ)』。そして対峙する銀狼にまたがる美女の騎士、黙する侍、カードを展開する決闘者がいた。

 横切る風でクスモさんの長い髪が揺れる。


「ここら辺にしとけ。お前らは『刻印(エンチャント)』と『偶像化(アイドラ)』の(ダブル)反動によって戦闘力が急激に落ちている。もはや勝ち目はない」


 傷だらけながらも、クスモさんは凛とした顔で言い放つ。

 スーパーロボット型の『偶像化(アイドラ)』に搭乗している五戦隊はハァッハァッと苦しそうに息を切らしていた。

 全身を軋むような激痛も強くなってきていた。



 クスモさんは思い返す────。


 出撃する前に、ノーヴェンは「このまま行けば、確実に全滅するでショウ」と曇った顔で告げた。

 なぜならヤミザキは日本人全員の総力を束ねるほど『刻印(エンチャント)』の力が強い。それを使って王子たちは四首領(ヨンドン)クラスにパワーアップするだろうと予測していた。


 そして事前に『洞窟(ダンジョン)』でのナッセとヤマミが一緒に『夕夏(ユウカ)刻印(エンチャント)』を繋げて戦った事を元に、策を練ったらしい。


 ナッセの本来持つ一〇〇%出力にヤマミの体が耐え切れなかった事から、身の丈に合わないパワーアップはいずれ己の体を(むしば)む。故に長く続かないと推測した。

 だから最初は全防御に徹してピークを過ぎるまで耐えるか、倒れたフリする。上手くいけば時間経過だけでも王子たちの戦闘力は急下降していく。あわよくば体を痛めて戦闘不能に追い込めると。


 その合図は『エンギ』。


 クスモさんは「さすがだな。そこまで先見していたとは」と内心感心していた。



「ぐ……! それがどうしたモ!? 我らは負けないモォォ!」

「わたくしたち後がなくてよ!」

「ブヒヒン! 相打ち覚悟でキサマらだけは!!」

「おーう! 我らーが命運は夕夏(ユウカ)家に殉ずるのーみ!」

「だから退く選択はないじゃん!!」


 ヤミザキから与えられた最後のチャンス。それを無下(むげ)にはできない。

 それにこれまで育ててくれた恩義を捨ててまで逃げるという選択肢は死んでも選べない。

 故に死力を尽くそうと力を振り絞り、合体『偶像化(アイドラ)』の眼光を輝かせた。


「我がグレードロイヤルエース奥の手……ッ!!」


 なんと片手が仰々しいドリルに変化し、ギャルルルッと高速回転を始め旋風を吹き散らしていく。


「スパイラル・ストレートクラッシュゥゥゥッ!!!!」


 同時に地面を抉るほど飛沫を上げながら、クスモさんたちもろとも粉砕せんと特攻していく!!

 竜巻を纏うかのような旋風の尾を引き連れながら、鋭く高速回転するドリルを突き出し、気迫の勢いで抉らんと迫る!



「そうかならば、その覚悟! 私も正面から受けてたとう! フェリちゃん行くぞ!!」

「フォウ!!」


 大剣をグッと握り、銀狼も前屈みに駆け出す構え。その瞬間、地面を爆発させて初速から音速で駆け出し大気を切り裂いていく。

 その超高速の最中、大剣を前方へ構え、銀狼と共にドリルと化すように回転を始めていく。


銀狼穿咬牙(ぎんろうせんこうが)ァァァァァッ!!!!」


 クスモさんと銀狼が眩く輝き出して、螺旋状の尾を後方に伸ばしていく。



 二つのドリルが激突の際に火花を散らして、バチッと眩い閃光で爆ぜた。

 爆心地から広範囲に渡って地盤が捲れ上げ、岩石が爆ぜるように巻き上がり、吹き荒ぶ烈風でその破片が流されていく。

 なおも双方の激突は続き、お互い譲らず「う、おお、おおおお!!!」と震えながら押し切ろうと踏ん張る。ビリビリ突き抜ける衝撃が痛い。火花は散り続け、ドリルと大剣は先っぽから破片を散らして砕け散っていく。


「おおおおおああああああああああッ!!!」


 後がないと言わんばかりに裂帛の気合を吐き、死力を尽くす!

 徐々にだがクスモさんの方がジリジリ押されていく。その瞬間、ミコトはカッと見開く!


「この瞬間! このカードを発動するZE!!」バン!


【猪突猛進! 猪突猛進!】戦闘時に発動できる。魔猪を突撃させる事で威力値を上げる。



「こんなものォォォォ!!!」


 夕夏(ユウカ)家五戦隊は血眼で押し切ろうと意地を発揮する。


「甘いZE!! 誰も一枚だけとは言っていないZE!!」ババン!

「なに!?」ドクン!


 ミコトは更に【猪突猛進! 猪突猛進!】を二十枚も並べて発動させたぞ!!

 ────そして猪の群れが流星群のようにビュンビュン空を駆けながらクスモさんへ加勢。

 それらはクスモさんと一丸となるように、猪たちもドリルのように高速回転しながら一斉突貫!


 せめぎ合う衝突に耐え切れず、ついに双方のドリルが粉々に砕ける!


 バガゴォォォォンッ!!


 破裂するように衝撃波が爆ぜて、猪の群れは四方八方と弾かれてボボボボンと煙に散っていく。

 クスモさんも粉々になった大剣に苦い顔を浮かべながら、銀狼と共に後方へと流されていく。


 だが!!


「負ける訳にはいかんのだ────────ッ!!!」


 ドリルが砕け散りながらも、ボロボロのグレードロイヤルエースが爆煙を突き破ってクスモさんへ片方の拳を振り上げる。

 最後の一撃とばかりに「うがああああッ!!」と死に物狂いで拳を突き出す。

 クスモさんは「その覚悟と心意気、見事だ!」と観念して笑む。


雷電流(らいでんりゅう)居合術奥義いあいじゅつおうぎ…………!」

「後は任せた!」


 なんと稲光が疾走る!! 高速でコマエモンが飛び出し、クスモさんを越えて鞘から刀を抜き放つ!

 全てをこの瞬間に! この我が愛刀に込めて! 己をも閃光と化す!!


紫電一閃(しでんいっせん)!!!!」


 稲光が破裂! 遥か向こうへコマエモンは通り過ぎた。足元に稲光の余韻がパリッと迸る。下降しながらゆっくり閉じるように刀を鞘に納める。チン!

 時が止まったかのようにグレードロイヤルエースは硬直。やがて全身に亀裂が走り抜け、ついに爆破四散。


「オレたちの勝ちだZE!!!」バン!


 ミコトはビシッと指差して宣言した。

 コマエモンは「ふむ」と厳つい顔で目を瞑った。



 刻印(エンチャント)の力が解け、半裸の五人は各々敗北に打ちひしがれていた。


「また負けた……。情けは無用だモ! 介錯してくれモー!」

「もう未練などないわ……。全力を尽くしてこの結果。死して総統様に償うわ」

「ヒヒン……。悲しき事に結果が全てよ……」

「負ーけは負ーけ。潔く腹切ーるかー」

「もうオシマイじゃん! いっそひと思いに殺せじゃん!」


 しかし、柄だけ残った剣を下ろすクスモさん。


「勝者が敗者をどうするか権利があるなら、私は介錯などせん。生きろ」


「な!! 侮辱する気かモ!!」

「情けをかけるくらいなら、自分で────!」



「もう良い!」


 五戦隊はビクッと身を竦ませた。

 見上げれば、ヤミザキを映すモニターが現れていた。そして彼は首を振った。


「総統様!?」

「……主らはよく戦った。他の王子が敗北していった中で最後残ったのがお前たちだ。むしろ賞賛すべき事だ」


 ヤミザキを映すモニターの周りに、敗北した王子たちの様子が映された複数のモニターが次々浮かんできた。

 五戦隊は揃い揃って目を丸くし、その結果に驚いた。

 自分よりも優秀なはずのコクアもブラクロもカゲロも既に敗北を喫していたのだ。


「罰が望みなら、その場で言い渡そう」

「は、はい! 我らは既に覚悟がございます!!」

「我らは総統様に殉じましょう!」


 五戦隊は(ひざまず)き、ヤミザキは頷く。


「お主らから『刻印(エンチャント)』所有権を剥奪する。そして決して自死せず、生き恥をさらせ。それが私からの罰と思え。

 ……これからは己が思うままの人生を歩むがいい」


 なんと五戦隊に留まらず、コクアたち及び王子たちまで『刻印(エンチャント)』が散り散りと剥がれて虚空へ消えていく。

 王子たちは思わず、手の甲を見て見開いた。

 呆然するしかない王子たち。ワナワナと身を震わせる。


「総統様!!!」


 王子たちは悲哀を含む声で張り上げた。

 しかしヤミザキは「今までご苦労だった……。達者でな」と微かに笑み、モニターを消した。

 呆然とするしかない王子たち。


 ヒュウウウ……、冷たい風が吹き抜けていく……。



 フクダリウスは「まさか最初っから……?」と呟くと、ダグナも「恐らく」と頷いた。


 カゲロも目を瞑って事情を察した。幼いライクは「ぱぁぱ?」ときょとん顔。



 コクアは胸騒ぎがした。ザワリ……!


 ある日から、ヤミザキの心境が不自然なくらい変わってしまった。

 以前はもっと冷酷な面があって容赦がなかった。だが、()()()を境に徐々に温情面が強くなっていった。

 いつもののヤミザキ様なら「撤退せよ! この戦果を猛省し、次に活かす事だ」と叱責してくるだろう。そして一緒に異世界侵略へと赴くはず。


 ……一体いつからだ?


 戦争を始めた時から? 総統継承式から? 命を縮めた頃から……?


 そのいずれも違う!



「ナッセ様の奥義でカルマホーンを斬り飛ばされた辺りからだ……!」


 その言葉に、思わず「え?」とヨルとコクアへ振り向く。


 オレがマイシと一緒に殴り込んで返り討ちにあった時か?

 全然奥義が通用せず、完膚なきまで敗北した、あの時?


「通常のナッセ様の奥義でも浄化効果があります。だから(かす)っても慢性的な効果があったのでしょう」

「あァ……確かにそっちの方がしっくり来るなァ」

「効いてたんだよ!! 良かったじゃない!」


 リョーコは喜んでオレの両手を掴んでブンブン振る。



「だが、それ故にいけない!!」


 焦燥を帯びたコクアが汗を垂らしていた。

 付き添っているヨルは首を傾げた。


「どういう事?」「なにがぞ?」

「……ヤミザキ様は単身、異世界へ挑んで目的を果たす気です! それが叶っても叶わなくとも、自身の人生にピリオドを打つでしょう!!」


 迫真の顔で告げるコクアの言葉に、思わず絶句させられた。



 すると遥か向こうで、ドッと間欠泉のように土砂の飛沫が高々と噴き上げ、遅れて凄まじい烈風が吹き抜け、地響きがゴゴッと足元に伝わってきた。

 未だドッ、ドッ、ドッ、凄まじく飛沫を噴き上げている地帯へ、向き直った。


 ────まだ戦いが!?



「ハハハハハハハ!!!」


 土砂を巻き上げている最中、豪胆なダクライは喜々と笑っていた。

あとがき雑談w


コマエモン「あのような技を持っていたとは……!」

クスモさん「いや、本来そのような技などない。その場のノリに合わせたまで」

コマエモン「…………左様か!」


コマエモン(しまったな。拙者も合わせるべきだったか!)



コマエモン「雷電流(らいでんりゅう)居合術いあいじゅつ! 旋飯綱(せんいづな)!!」カッ!


 地を蹴ると同時にキリモミ回転しながら、抜刀した刀で突く!!

 バゴオオオン、と大岩をも豪快に砕く。

 しかしフラフラ目眩してよろめいた後、オゲーと吐いた。


コマエモン「慣れぬ事はするものではない!」キリッ!



 次話『最後残ったダクライを相手に、コハクたちは苦戦!?』

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