183話「極限の戦い! 双竜王の激突!!」
光と闇、相対する属性を身一つに納め、白黒分かつ肌色を顕現させた竜王!
大地を裂き、天を震わせるほど、唸りを上げて荒ぶる光と闇の旋風!
「カァーッハッハッハッハッハッハッ!!!」
歓喜に満ちる狂気の混沌竜王カゲロ!
咆哮と共に、周回する混沌の旋風は轟音を鳴らしながら天を衝くように噴き上げた!!
モニターでそれを見届けていて、ヤミザキは哀れんだ目を見せていた。
確かにライクは幼い頃から出来の悪い乱暴者ではあったが、その行為を咎めて理解してくれるのが兄のカゲロだった。
故に反抗期が来てやさぐれるライクを宥め鎮めたのもカゲロだった。
……だからいつも一緒で仲良しでいれた。
「ワシは、カゲロを理解してやれなかったのか……」
後悔しているのはヤミザキも同じ────。
カゲロならライクを何とかしてくれると頼りきっていた。何度も叱りつけても懲りないライクをすら鎮められるのが彼しかいなかったからだ。
そんなカゲロにも心に影を落としていたのかもしれない。
思えばカゲロを理解して、共に笑ってくれる人はいなかった。
彼は自分で律して、大人びた対応で済ます。いつも自分に厳しく、生真面目で、それでいて弟思い。そのせいで誰も理解しようとしなかったかもしれない。
薄々気付いていたダグナの気遣いすら、カゲロは「大丈夫です」と跳ね除けてしまう。
でも本当は理解して欲しかったのかもしれない。
気遣うなら「無理や我慢をするな。苦しくなったら愚痴でもなんでも吐き出せ」と窘めれば良かったのだろうか?
「こんな父ですまんな……!」
深い深い後悔の最中の詫びの一言。
バゴオオンッ!! 途端に爆ぜた爆裂が、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
赤い両翼がバサッと羽ばたく、いやマイシの伸びたロングが翼を象っていて、それが羽ばたいたのだ。
戦意漲るマイシの鋭い眼光と不敵な笑み。
堂々たる直立で大地を踏みしめ、折れた剣を手に、カゲロを見据える!
「へっ! それで倒せると思うなし!」
カゲロは殺意漲る形相で睨み、鋭い牙で歯軋り。
怒りのままに大地を蹴り、地盤を爆発させて超高速でマイシへ肉薄。巨大な拳が大気を引き裂きながら────!!
「カカカカカカッ!!」
機関銃の連射よりも多く速く、厚い鋼鉄を貫く砲丸よりも重く、要塞を壊滅させるミサイルよりも爆ぜる混沌のエーテル纏い、混沌竜王の両拳による乱打を繰り出す!!
マイシも鋭い目を煌めかし、折れた剣を振り回し、幾重の剣閃を交錯させて捌く捌く捌く捌く捌く!!!
まるで互い戦艦主砲級の威力での機関銃以上の連射を近距離でぶっぱなすが如く、超絶な爆裂が連鎖し、大地を震わせ、地盤を広く広くめくれ上げ、破片を遠く四方八方に散らし、劈く爆音が大気を震わせて周囲に大音響する!
天高くまで爆裂の噴出が巻き起こっていって、火山噴火並の大規模へ展開される!
「カカ──────ッッ!!」
「かあ──────ッッ!!」
互い最後の一撃を振るい、竜の巨拳と折れた剣が衝突!!!
ズン、重々しく大気が震え、半径数キロ程の爆裂が戦場に明々と咲いた。
吹き荒れる暴風は台風並みに激しく、流れゆく破片が銃弾の弾幕が如く、そして空へキノコ雲がズズズズと高く高く昇っていく。
しかし、それで戦いは終わらず、潰えず、むしろ猛々しく燃え上がって────!
今度は上空で二つの流星のような軌跡が不規則に飛び交い、激しく爆裂が花火大会のようにあちこち縦横無尽に連鎖しまくる!
ドドドン、ドドン、ドドドドドン、ドドン、ドドドドドッ!!!
身体を突き抜けるような衝撃と、思わず耳を塞ぎたくなるような轟音が響き渡る。その最中でカゲロとマイシは一心不乱に拳と剣を振るい続ける!
「カカアアアアアッ!!」
「かああああああッ!!」
獰猛な竜が、牙を剥き出しに、爪を振るい、食い合うかのような攻撃の交わり!
カゲロの拳がマイシを打ち下ろせば、今度はマイシが振り上げる剣でカゲロの顎を打つ!!
双方譲らぬ意地の戦意の咆哮が劈く!!
このままでは精根尽き果てるほどに凄惨な死闘になろうとしていた。
このままでは埒があかぬ程に拮抗する戦況。
このままでは二人共力尽きる勢いだ。
だが、カゲロは気力はおろか命すら、かなぐり捨てるように振り絞ろうとする。
「姉さん!! 頑張れ────ッッ!!」
マイシを懸命に応援するナガレの一言が、皮肉にもカゲロに届いた。動悸して見開く。
それは何もかも振り払い己の命すら捨てて、戦い抜こうとする孤独なカゲロの心を深く深く突き刺し、抉る!!
「かあああッ!!!」
ついに均衡崩れ、マイシの折れた剣がカゲロの竜の顔にメシメシ深くめり込む。
「グ……グガハッ!」
顔を歪ませ、カゲロに激痛を響かせた。
ドガアァッ!!
爆裂吹き、カゲロはキリキリ舞いながら後方へすっ飛ぶ。
ナガレは「いいぞ────!! やっちゃえ────ッ!!」と奮起させる応援を響かせる。
それを聞いて、マイシは心強い応援だと実感し得た。
かくも湧き上がるように、心が昂ぶって体に活気に満ちていくものかと自身も驚かされる。
両翼を広げ、マイシは士気高揚と空を駆けてゆく。
「かあああああッ!!!」
吹っ飛んでいるカゲロに追いつき、折れた剣で滅多打ちして爆裂の連鎖を重ねながら空を駆け抜けていく。
カゲロも必死に体勢を整えようとするも、マイシの猛攻になすすべがない。
「グッ! ガアッ!! グハッ!! ギガッ!」
そのままガゴォンと突き落とされて地上へ超高速ですっ飛ぶ。
ドゴォォォン!!
飛沫を噴き上げ、煙幕を巻き上げていく。
マイシは「ハアッハアッハアッ」と息を切らす。
かつて貧弱と思っていたナッセたちが己の力以上に実力を奮えたのも、周りの仲間がいてこそ!
そして誰しも一人では戦い抜けぬと、そして気力は続かぬと!
例え個人の力が圧倒的であったとしても、束ねる仲間の絆を前に太刀打ちできようがない!
「ありがとうなし……。ナガレ…………」
妹がいて良かったと、マイシは笑んだ。
逆に、濃度の高い煙幕に巻かれ真っ暗闇でカゲロは「なぜだ……?」と憤っていた。
体格も込みでパワーは勝ってるはずなのに、刻印による過剰なエネルギー供給にも耐えられているのに────!?
これでは弟を犠牲にした甲斐が無いではないかッ!
それでは独り混沌竜王になった意味がないではないかッ!!
そんなもの認められるかぁッッ!!!!
「おのれぇぇぇえぇぇええええッッ!!!」
周囲の煙幕を破裂するように吹き飛ばし、岩盤を吹き飛ばし、大地を揺るがしてカゲロは吠えた。
何もかも無意味だったとプライドもズタズタにされて、カゲロは血眼で「フーッ、フーッ」と荒い鼻息を漏らす。
上空のマイシを憎々しく睨み上げ、歯軋りをギリギリ唸らせる。
「こうなったら、何もかも吹き飛ばしてやるーッ!!」
白黒混じりのエーテルを全身から荒ぶるほど噴き上げ、遥か上空へと飛び上がっていく。それはマイシをすら飛び越えて見下ろす。
口を開け、大気を震わせるほど、周囲から膨大な量の白と黒の光子を収束させていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!
「混沌竜王のッ! 超弩級・爆裂波動砲ッ!!」
闇の旋風を纏う光の扇状の奔流が勢いよく光線となって、マイシへ超高速で襲いかかる!
完全に頭にきていて、戦場もろとも全て吹き飛ばさんとする勢い!
そのまま炸裂すれば大陸の形すら崩すほどの威力となろう。
他の創作士は「やべぇ逃げろー!!」「止めろ──ッ!!」「お、終わった……!」と切羽詰って錯乱していく。
そんな中、ナガレは「負けんないで────ッ!!」と叱咤激励!
迫り来る光線を前に、マイシは激励を支えに、気力を最大限に奮い立たせる。
そして「負けるものか!」とカッと眼光を煌めかした。
「火竜王のッ、炸裂焔嵐剣ッッ!!」
全身からフォースを昂ぶらせ、全身全霊の炸裂剣の嵐を見舞う。
光線を追い返すように、天地揺るがすほど嵐のような爆裂の連鎖が急上昇しながら咲き乱れ続ける。その凄まじい勢いにカゲロは「な、何ィッ!?」と驚愕。
そして光線を弾き散らして迫ってきたマイシに見開く。
「続けてッッ、炸裂焔嵐剣ッッ!!」
再度、マイシの繰り出す爆裂の連鎖にカゲロは更に更に打ち上げられていく。
怒涛の剣戟剣戟剣戟剣戟ィ────────ッ!!!
遥か宇宙にまで爆裂の連鎖が咲き乱れ続け、トドメの爆裂がドゴォンと派手に爆ぜ、カゲロを弾き飛ばす。血飛沫を撒き散らしながらくるくると無様に宙を舞う。
ば……バカなッ……!!? この……混沌竜王がァ…………!?
仰向けのまま宙を舞いながら「カゲボォォォッ!!」と盛大に血を吐いた。
煙幕が余韻として立ち込める、荒れ果てた大地────。
側で立つマイシが見下ろす最中で、蜘蛛の巣のような亀裂の上でカゲロは仰向けで倒れていた。
「負けたのか……」
大の字で人型に戻ったカゲロは上の空でそう呟いた。無表情で、青い空を無心で眺め続ける。
何もかも失い、挙げ句の果てに打ちのめされた。
残るは弟を失った虚しさと孤独────。
「フン! 独りだけで最強と思い上がるからだし」
側で突っ立つマイシは仏頂面で言い放つ。
言い返す事も、その気力すらもなく、カゲロの心境は波立たぬ程に静かに沈んでいた。
「何落ち込んでいるんだし? てめぇのガキくらいてめぇで面倒みやがれし!」
「が……ガキ…………??」
どことなく体内に異物感を感じた。ボコッと腹が膨れ、思わず上半身を起こして異物をオゴォーと吐いた。
ゴロンと地面に転がる粘液まみれの白い卵。
カゲロは「え……?」と見開いた。
「拒絶反応だ。無理矢理、相反する属性をずっと留めておれるものかし」
ビシッとヒビが割れ、赤ん坊の手が殻の隙間から這い出る。
破片がポロポロと剥がれ落ちて、現れるは無垢な赤ん坊。幼いが、その金髪と顔立ちはライクそのもの。
思わずカゲロは涙をこぼし、湧いてくる感激に体を震わせていく。
「ぱぁぱ! ぱぁぱ!」
無邪気に笑う赤ん坊。思わずカゲロは抱きしめた。肩を震わせ、とめどもなく涙を流し続ける。
「ライクッ……! 今度こそ……独り、独りになんか、ならないからなッ……!!」
ヘッと快く笑うマイシに、ナガレは笑顔で駆け寄っていく。
姉と妹、互いに手をパンと叩き合い、共に笑む。
「お疲れしゃした!」「おう!」
────第五子カゲロ、赤子を産み落としたため自ら投降。
あとがき雑談w
マイシは折れた剣でガンガン殴ってたらしいが……?
折れた剣「……果たして自分の存在意義あるのか?」
作者「え……? 聖剣でもないのに喋れる? 知らん……何それ……怖……」
折れた剣「そんな事言われたら、心折れるよ! 傷つくよ!」
作者「いや、折れてるって……。うん刀身がね……」
折れた剣「マイシは直接殴ってた方が効率良いんとちゃう?」
作者「いや……彼女剣士だからさ……」
折れた剣「今となっては、無理矢理感すぎィ!! スペリオルクラスにしろよ!」
次話『ダクライ戦が終われば、後はヤミザキか……!』
夕夏家五戦隊、クスモさん、ミコト、コマエモン「えっ!?」