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182話「最強進化! 竜王化の頂点!!」

 ナガレの視界に、頼もしい姉の背中が入った。


 衣服がボロボロでオフショルダー気味に肩の肌が露わになっており、ブラの紐が窺える。折れた剣を握ったまま、片方の手でカゲロの大きな竜の拳を受け止めていた。

 半顔で振り向く姉の頼もしい顔に、ナガレは安心していく。


「よく戦ったなし! さすがあたしの妹だし!」

「えへへ……」


 憧れの姉に妹だと認められたと感銘を受けて、ナガレは安堵してへたりこんだ。



「わ……我らの超弩級(ちょうドきゅう)爆裂波動砲(バーストキャノン)を受けて、何故ッ生きているッ!?」


 驚き戸惑うカゲロをよそに、マイシは不機嫌そうな顔で唾を吐き捨てる。


「へっ! その汚ねぇ手で妹に触れてみろ、ブッ殺すぞし……!」

「何を戯言(ざれごと)を! 竜王化すらできないザコがッ!!」


 カゲロは「カアアアアアアア!!」と辺りを震わせながら烈風が吹き荒ぶほどの竜の咆哮を上げ、怒りをあらわにしていた。

 しかしマイシは妹が受けてきた事を思い返し、怒りを滾らせる。


「姉さん! 頑張れー!!」

「…………ッ!」


 妹の応援に後押しされたか、湧き上がるように気力が沸いてくる気がした。

 怒りよりも、なんだか嬉しさの方が込み上げてくる。不思議と活力が沸いてきて、それ以上の力を出せそうな感覚がした。


「ああ!」


 マイシは笑む。全身からボウッと地揺るがす激しいエーテルを噴き上げ、更にウロコを模すスパークが迸る。

 それに留まらず、更に激しさを増して周囲が激しい振動で蠢き始めていく。

 カゲロは「な、なに……!?」と見開き、汗を垂らす。

 まだまだ彼女(マイシ)の威圧は膨れ上がっていく……?


 マイシは「かあああああああ!!」と更なる昂ぶりを吠える。


 セミロングだったうしろ髪はズズズッと伸び、竜の両翼を象るように広がって白いラインが竜の翼の骨を描くように走る。頭上の二本の逆立った髪の毛は四本に増え、それぞれに尖った角を表すような白いラインが走る。

 更に『刻印(エンチャント)』のようにマイシの肌にウロコを模したような白いラインが走っていく。そして顔面の頬や顎にも及ぶ。そして閃光が全てをカッと一瞬真っ白に覆った。


 あまりの眩しさに誰もが目を瞑って、徐々に目を開ける。

 すると目の前の光景に驚愕していった。


 カゲロは「あ……ああ……!」と汗を垂らしながら畏怖していく。



 威風堂々とマイシが立ち聳え、全身を覆うエーテルはついに第三次オーラであるフォースへと昇華され、ウロコを模すスパークが荒々しく迸る。

 その威圧で上空の暗雲が螺旋状に引いていって青空を見せていく……。


 神々しくて幻獣でも降り立ったかのような神秘的な輝きを纏うマイシが顕現されたのだ。

 ナッセの『星天の妖精王』と肩を並べる『灼熱の火竜王』へと覚醒────!


「へっ! これが火竜王マイシっしょ!!」



「なんだそれはッ!? 貴様のそれは竜王化ではない! そんな矮小な竜王化などありえない!! 貴様風情が真の竜王化に至るなどありはしないッ!」


 思い知らせんと、カゲロは全身から漆黒のエーテルを噴き上げ、超圧縮させたエーテル纏う拳を振りかざして飛びかかる。それだけでも大地を裂くほどの余波だ。

 音を置き去りにする超高速の拳が唸りを上げてマイシを襲う!


 ドガァァァァアン!!


 マイシの正面を巨大な拳が直撃! 後方に黒い螺旋の余波が突き抜け、ズゴオオォォォンッと更に大地を引き裂いて衝撃波が吹き荒れていった。


「は? 痛くねぇし」

「何ッ!?」


 未だ突っ立ったままのマイシに見開くカゲロ。


「バカな!! 遊びすぎてとうにピークを過ぎて急下降したライクとは違う!!

 確かに呪縛を破る為に力を使ったが、それでも余りあるほど余力があるんだぞ!

 今のオレは四首領(ヨンドン)に近いレベルだッ!!」

「随分おしゃべりだなし……」


 焦ってカゲロは後ろへ飛び退くが──、マイシは瞬時に懐へ潜り込んでいた。


「な!?」


 折れた剣のまま、マイシは横薙ぎに振るい炸裂剣(バーストソード)を胴に撃つ。爆裂を撒き散らしカゲロは「グエ……!」と吹っ飛び、気付けばマイシが真上から剣を────!


 ズゴガアァァァァァン!!


 炸裂剣(バーストソード)に打ち落とされ、周囲に飛沫を吹き上げながら、カゲロは地中深く埋められていく。


「火竜王の爆裂波動砲(バーストキャノン)ッ!!!」


 その空いた穴に向かって、マイシはすかさず口から極太の灼熱光線を撃ち込む。

 途端に穴から灼熱滾る巨大な火柱がズゴッと勢いよく噴き上げ、大地を大きく揺らしながら、あちこちから無数の火柱が噴き上げていく。

 まるで大きな穴を中心に、大地から放射状に無数の火柱が放たれているような光景だ。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


 地震で揺れ続ける要塞内部。

 ヘインもアメリカジェネラルも驚愕に満ちていた。


「こ、ここまで進化するとは!!」

「なんじゃあ!? ナッセだけじゃないのか? バケモンはァア!!」


 煙幕が収まる頃、大地は見る影もなく高低差が大きいほどに荒れ果ててしまった。

 ボンと地中から抜け出すも、ボロボロになったカゲロは「くっ!」と恨みづらみと怒りを顔に滲ませた。


「ならば! 止むを得ん!!」



 意を決したカゲロの目から怪しい眼光が煌く。大きな翼を羽ばたいて飛び上がり、一旦空へ舞うとライクの側へ降り立つ。

 ズズゥンと地を揺るがし、それに驚いたライクは振り返って「おお! カゲロ!」と笑顔に変わっていく、が!



 パクン!


 漆黒の巨竜であるカゲロは大きな口で、人型のライクを一飲みした。ゴクンと長い首を膨らみが下っていく。

 マイシもナガレも「なっ!!?」と驚き見開く。


「き、兄弟じゃなかったかし……!?」

「ああ双子だったさ。オレたちは生まれた時から、ずっと一緒だったさ……。そして今こそようやく不完全な二人は完全な一人になれた!」


 カゲロの巨竜の身から閃光がカッと溢れる。そして光球がブンッと覆う。

 ゴゴゴ……と地鳴りが大きくなっていき、唐突な烈風がカゲロから吹き荒れていく。風に流される破片。

 ナガレは腕で顔を庇う。マイシは平然と突っ立っている。


「完全な一人に……だと、し?」

「永劫にな!」


 光球の中でカゲロは狂気の笑みを浮かべ、両腕を左右に伸ばし「カハハハハハハ」と哄笑する。

 グググ……と輝く巨竜の身に変化が訪れ、形状を変えていく。そして膨らんでいく威圧にマイシも苦い顔をする。

 


「まさか双子のライクを……食い殺すとはなし……!」

「いや、愚弟はこの兄と一体化したのだ。我が血肉となってな。ヤツの意思などどうでもいい」

「そんな……ひどい……!」


 さっき倒したナガレも、ライクへの無情な扱いに反吐が出そうだった。



「フフッ! そこのガキ、お前も体験しただろ?

 前々からウンザリしてたんだよ!

 いつもいつも暴力三昧で引き止めようにも止められない。弱い者イジメを好み、あまつさえ動物も喜々といたぶり殺す。同じ双子だと思うと反吐が出る!」


 カゲロは今まで見せなかった憤りをあらわに、ライクへの不満を語った。


「だからこそ、密かに一体化計画を立てていた。

 たぶん知らないと思うが、特別に教えてやろう……。竜や妖精など我々頂上生物は、下等生物のように繁殖行為では眷属(けんぞく)を増やせない。故に、自分の体の一部を『種子(シード)』として他生物に摂食させて、適合した場合に眷属(けんぞく)を増やせるのだ。

 まぁ……、頂上生物を食った下等生物にも同様の変化は起きるがな」


「な、何だとッ!?」


 思い当たる(フシ)はあった……。


 マイシたちの村も、夕夏(ユウカ)家の実験台にされてドラゴン種の『魔獣の種(ビースト・シード)』を摂取させられていた。

 多くの村人の中でマイシのみが適合して、竜の力を宿せた。

 ────後に、妹のナガレも宿せた事も判明した。


 ナッセもまた、妖精王クッキーの『種子(シード)』を口にした事で、同じ妖精王として生まれ変わった。

 その変化が成長の遅れた銀髪の少年の様相(すがた)だ。


「ちっ! 道理で……」


 マイシはそう悟って舌打ち。



「オレたち双子も同じように適合した。共に光と闇の力を宿せた『一卵性双生児』としてなら、その片方を食らえば相反するはずの両属性を同時に宿せるとな。

 その時の為に愚弟から光属性の扱い方を教えてもらったのだ。とは言え、兄としての温情は残っていたが……な…………」


 だから今まで最後の最後まで引き止めようと色々口出ししていた。

 いつしかライクも自分の愚行を(かえり)みて、また二人で共に道を歩もうと……、だが叶わなかった。

 いつまでも暴力任せに弱い者イジメを楽しむ悪癖は死んでも治らない。コイツはもうダメだ、と諦念(あきらめ)るしかなかった。


「だから、そのような(かえり)みないクズは生け贄にするしかなかった!

 だが、それで良い──! 良いのだ!!」


 後悔を振り払うようなカゲロの一言。それが哀れに感じた。



 覆っていた光球がパァンと弾け、一陣の旋風が吹き抜けた────。

 立ち込めた煙幕が足元を流れ、ついにカゲロは自ら変貌した雄々しき姿を見せた。


「光と闇を統合させし、混沌竜王カゲロ……! 今ここに爆誕ッ……!!」


 赤い『刻印(エンチャント)』の紋様が走る、半分白黒に分けられた巨竜。まさに光と闇を宿したカゲロそのものだ。

 光と闇を混合して吹き荒れるエーテルが旋風を巻く。

 相乗効果か、凄まじい威圧が膨れ上がって大地が震えていく。ゴゴゴゴ!


「カハハハッ!! これこそオレが求めていた最強の竜王の力だッ!!」

「てめぇの弟を……! トチ狂いやがったなし……」



 カゲロは瞬時にフッと間合いを詰めてアッパー気味にマイシの腹を殴り、ドッと浮かせた。

 その超高速にマイシも驚愕。


 な……! 速しッ……?


 カゲロは「カッ!」と歓喜に笑んで片方の拳を振り上げ────!

 リズム良く「カー!!」とストレートパンチでマイシを軽々と殴り飛ばした。大地を一直線に削りながら、遥か遠くの遺跡に激突してバガアァァンと破片を散らして衝撃波を大規模に噴き上げた。


「姉さんッ!!」


 ナガレは叫んだ。

あとがき雑談w


ナッセ「ってかオレ、クッキーの体の一部を食ったのかぞ……?」

ヤマミ(私なんてアリエルの一部を埋め込まれたわ)


クッキー「ごめんごめんw だってそうしなきゃ魔王化しちゃうもんw」


ナッセ「……まぁそれはともかく、子供いたんじゃない? 妖精王?」

クッキー「いたよ。でも妖精王にはならなかったよ?」

ヤマミ「そうなの?」


 まだ人間の体を持っていた頃のクッキーは普通に結婚して子供を産めたが、同じ妖精王の力は受け継がれなかった。

 普通の人間として天寿を全うしていったのだという。

 だが、今もクッキーの子孫は人間として普通に世代を重ねて、魔女の家系として存在しているらしい。


クッキー「もし普通に繁殖できてたら竜王とか妖精王とかバーゲンセールになっちゃうでしょw」


 想像したら、無数の竜王が大地を闊歩(かっぽ)して、空を無数の妖精王が飛び回るというシュールな絵図が浮かんだ。


ナッセ「そんな事になったらマジで人類絶滅するぞーw」

ヤマミ「た……確かに……」



 次話『(ナガレ)(おもんぱか)るマイシと、愚弟(ライク)を見限るカゲロ! その差とは!?』

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