17話「狂戦士フクダリウスに負けるな!」
「武劉フクダリウス……。A級創作士。今期生では一番を誇る強靭な肉体を持ち、二番のSPを持つ非常に優秀な創作士。だが特記すべきは『狂化』にありながらも理性を共有できる特性を持つ。
全力で暴れ回って力尽きるまで二時間も要する。これに抗する創作士はほとんどいまい」
喪乃柿は武劉の資料を眺め、冷徹な目を真紅に輝かせ薄ら笑みを浮かべた。
「ぬおおおおおお────ッ!!!!」
フクダリウスは咆哮を上げ、隆々とした太い腕で大仰に戦斧を振り回す。その度に疾風が巻き起こる。
嵐のように荒れ狂う戦斧はあちこち建造物を切り崩し、高架橋を瓦解させ、破片が飛び交う。割れて粉々に砕けたアスファルト道路の欠片が風に乗って舞っていく。
「くっ!!」
「ちいッ! な、何度やってもノーダメや!!」
「諦めるな!! 魂を燃やせ! 絶対に活路は見えてくる!」
破片混じりに吹き荒れる旋風。満身創痍のタネ坊とキンタは腰を低く構えて堪える。
「『連動』や!!」「おう!!」
息を合わせる為か、タネ坊とキンタはパンと互い手を叩き合う。
ドスドスとフクダリウスの巨躯がアスファルトの道路に足跡を残すように力一杯踏み込みながら二人へと迫る。
上に振り上げた戦斧が地面に斬り下ろされた時、既に二人は左右に飛んでいた。代わりにビルが真っ二つに裂け、左右に広がりながら瓦解し煙幕を巻き起こす。
キンタはフクダリウスへ突っ込み、拳を振り上げる。
「ゾウちゃん……」
なんとキンタの背後に一軒の家ほどの巨大な象が召喚され、両目を輝かせながらその前足が振り上げられる。それはキンタの振るう右腕に合わせて動いていた。
タネ坊は股間から引き抜いた二丁の拳銃で、フクダリウスの足元を地面ごと斉射して体勢を崩すとともに動きを止めた。
「パァ──ンチッッ!!!!」
押し潰さんとばかりに、象の太い前足がフクダリウスの横っ面を殴りつけた。ズン、と地面が窪んで破片が舞う。
「何ッ!?」
だが、踏ん張ったまま倒れぬフクダリウスに、キンタは見開く。
「ぬうん!!」
フクダリウスはキンタの背後にいた象の鼻を掴み、体ごと地面にめり込むほど強く叩きつけた。破片が舞う。象は苦痛に顔を歪ませ「グハッ」と吐血しながら掻き消えた。
ライフルを両手で構えるタネ坊。その銃口にはナイフが取り付けられている。なぜか下半身丸出しで尻からロケットのように後方へ噴射して超高速飛行で突進!
それによりタネ坊とライフルは一体化して爆炎のオーラを纏う巨大な矢と化した!!
「ごおおおおおッ!!! ガンブレード・バーニングスラストォォォッ!!!!」
気合を込めて、噴射付きライフルの突きでフクダリウスのみぞおちに突き刺す。そのインパクトの瞬間、爆炎を撒き散らし周囲に衝撃波の余波が広がった。
先端のナイフは強靭な筋肉の鎧の前に砕け散る。が、更にライフルから弾丸が連射。鳴り響く銃撃音。連鎖する爆発に圧されてフクダリウスは徐々に後退していく。踏みしめた両足が道路を抉っていく。が、止まった。
「何いいッッ!!!?」
下半身フルチンのタネ坊とキンタは汗を垂らし驚愕。
「効かぬ!!!!」
仮面越しに憤怒に満ちたフクダリウスの両目が赤く輝いた。
『フクダリウス・タイフーン!!!』
竜巻のように戦斧を振り回して高速回転を始めた。旋風が獰猛に荒れ狂う。まるで台風のように広範囲を吹き荒れた。周囲の建造物は削れるように崩れ去っていく。
「うごおおおおおお!!!」
「ぐわああああああ!!!」
タネ坊とキンタは旋風に巻き込まれてきりきり舞いに、それぞれ遥か後方のビルに身を打ち付け、噴火のように破片が飛び散った。
ガラガラと崩れ落ちていくビル。
「オゥ……ガハアッ!!」
「クボバッ!!」
瓦礫と一緒に横たわったタネ坊とキンタは吐血し、呻きながら未だ身を起こす様子はない。
リョーコと一緒に絶句。……あの二人が敵わない、だと。
何度も執拗にタネ坊とキンタが数十分と連携攻撃を繰り出したにも関わらず、フクダリウスに然したるダメージを与えられずに終わったのだ。
並の敵が相手なら二人の連携攻撃は強い。だが、それでもフクダリウスはそれ以上ぞ……!?
その恐怖で足を震わせ呆然とする。
振り向いたフクダリウスは、メイプルリーフを模した真紅の仮面を反射光で輝かせながら足を歩ませた。
一歩一歩近づいて来る度に恐怖が募っていく。
今すぐにでも逃げ出したい。泣き喚いて走り出したい。……だけど足が竦んで動かない。
踏み鳴らす音と、迫り来る巨躯。凶悪な戦斧が振り上げられた。その圧倒的威圧に青ざめて震え上がった。
「殺しはせん。だが、二度と戦えなくしてやろう! 許せ!!」
「あ……あぁ……」
「ナッセ!!」
振り下ろされる斧が迫る寸前、リョーコはオレを抱えて横に飛んだ。戦斧が地面を穿った時に飛び散った破片がリョーコの身を打つ。
「きゃあああ!!」
地面を滑りながらオレを抱えたままリョーコは横たわる。
ハッと我に返る。頬に血が付いていた。
身を起こすとリョーコは少し血塗れだった。破片が身を打ったためだ。だがダメージは軽くなかったのか気絶しているようだった。
「り……リョーコ……!?」
わなないて彼女の肩に手を触れる。まだ生きている。少しホッとする。
「城路殿! 私怨はないが……今度こそ覚悟せよ!」
オレの背後に巨大な巨躯のシルエット。両目が光る。戦慄さえ抱く威圧。
俯いてリョーコを眺める。
だが何故か恐怖が吹き飛んでいた。倒れているリョーコを見ていると、止めどもない感情が沸き上がってくるのを感じる。それが何かは自分でも分からなかった。熱く狂おしい気持ちは勇気を奮い立たせた。
────逃げたらダメだ!!
「おおおおおおお!!!!」
戦意を鼓舞するように天に向かって吠えた。
手の甲の刻印が青白く煌き、大きな『星』印とそれを囲む円に三つの小さな星。
覚悟を胸に秘め、ギンと鋭い視線を見せる。
フクダリウスは怪訝に目を細める。
これが……城路ナッセ殿の創作能力『刻印』か……!
これまで軟弱だった優男が急に威圧を膨れ上がらせたのだ。見た目通りの男ではない。さて何を見せてくれるか……?
そういう風に様子を窺ってくるフクダリウスを前に、オレは気を引き締めた。
利き手で握る杖から光の剣を形成させる。
「面白い!!!」
仕掛けたのはフクダリウス。オレはリョーコを抱えたまま、通り過ぎざまに脇へ鋭く斬り付けた。その斬撃で身を傾けるフクダリウス。
────速い、とフクダリウスは驚く!
遥か数百メートルへ跳躍したオレは、リョーコを優しく寝かすと盾で囲む。そしてフクダリウスへ向き直る。
もうタネ坊とキンタは戦えない。リョーコも倒れている。……頼れるのは己の身一つ!
逃げてたまるかぁぁぁぁ!!!
「おおおおお!!!!」
裂帛の気合いを発して、その足元から衝撃波が吹き荒れた。
そして一足跳躍。超高速で駆け抜けた後の衝撃波を引き連れながら遠くのフクダリウスへと間合いを詰めた。通り過ぎざまに首へ斬撃を見舞う。
「ぬ!?」
フクダリウスは仰け反る。しかし掠り傷すらつかない。
やはり効かない! でも、だが、それでもッ!!
それでも構わず、四方八方と駆け抜けながらフクダリウスの巨躯を斬撃の弾幕で覆った。
ただ、ひたすらに、徹底的に打ちのめすのみぞォォォォォッ!
それだけに気持ちを集中させた。
「ぬがあああ!!!」
振り回される戦斧が疾風を巻き起こす。
すかさず背後に回って剣を振るい斬撃を見舞う。
「ぐおぅ!!」
すぐざま戦斧を背後へ振り下ろすが地面を裂くだけだった。轟音とともに地面が割れる。
フクダリウスは見境もなしに戦斧を振り回して、周囲に旋風を巻き起こし、地面を揺るがす。渾身の戦斧が次々と建造物を崩していく。
が、当たらないよう避けに徹する。
全く攻撃を喰らわないオレと、全く攻撃が効かないフクダリウス。その相反したような構図で戦闘が繰り広げられた。
それを察してフクダリウスは口角を上げて笑む。
城路殿は彼は自分の攻撃力が通じない前提で、敢えて攻撃を繰り出しているのだ。ちまちま攻撃を当て続けて煽っている。つまり嫌がらせ。焦れて怒らしてオーラの無駄遣いをさせるつもりなのだろう。
女を人質にすれば、阻止するのは容易い。だがそれは漢として無粋。
「ならば……どちらか先に力尽きるか、根性比べに付き合ってやろう!!!」
不敵に笑うフクダリウス。
それに対し冷静なまま鋭い眼光を見せつける。
オレは負けないぞ!!
そう言わんばかりに、自分の剣に強き意志を乗せ、それに応える光の剣は力強く煌めいた。
「おおおおおおおッ!!!」
「ぬおおおおおッ!!」
再び両雄は戦意みなぎる気合で吠え、斬り結び合っていく。
あとがき雑談w
フクダリウス「本当はナッセも一撃で倒せるかもしれないが、攻撃技一つもないから加減して付き合うわ」
喪乃柿「えー殺せって言ってたじゃん!」
フクダリウス「そうは聞いたが、どう戦うかは好きにさせてもらおう」
喪乃柿「ぶーぶー!」
フクダリウス「…………子供かw」
タネ坊「くっ! やられた!! でも死ななくてよかったかな」
キンタ「ほんま痛いわ~! ギャース!」
ヤマミ「ぐぬぬ!!!」(飛び出したがっているがスミレに羽交い締め)
スミレ「飛び出さないで~! 話変わっちゃう~!!」(必死)
スミレ(案外、ナッセちゃんに関すると妙に怪力だね~w)
次話『根性発揮!! バトル漫画によくあるあるw』