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177話「夢を追うナッセに憤慨するコクア!」

「ヌアアアアアッ!!!」


 怒焔(ドエン)明王(みょうおう)自身が吠え、灼熱猛る巨大な聖剣を振り回し続けて火炎の尾を描く。その鋭き剣閃がアクトを襲う。

 咄嗟にアクトは紅蓮に燃え盛る刀で受け止める。


 ガガァァァァン!!


 戦場に響くほどの衝撃と轟音。

 コクアは「ぬ!?」と驚く。なんと刻印魔人(エンチャントデビル)状態で出す『偶像化(アイドラ)』の一撃を、アクトは刀一本で受け止めきっていた。

 ガキンと弾き、目にも留まらぬ剣戟が嵐のように繰り出されて、大空は激突の連鎖で覆われていった。

 互いに全力と全力! 出し惜しみのない渾身の一撃をぶつけ合う!


「はあああああああああッ!!」

「があああああああああッ!!」


 コクアとアクトが吠え合う。まるで神仏と夜叉が死に物狂いで剣戟の撃ち合いを繰り返しているみたいだ。

 互いに最高の攻撃力と防御力で挑み、徐々に傷つけ合っていく。血飛沫が舞う。

 コクアの聖剣が脇腹に食い込めば、アクトの刀による突きが『偶像化(アイドラ)』を貫いて眉間を穿つ。猛獣同士で戦意を昂ぶらせながら、二人だけの死闘に陥っていく。



「ナッセ! 気付いた?」

「ああ……。やっぱノーヴェンの言った通りぞ……」


 あからさまにコクアの威圧に変化が見て取れる。

 なんか『刻印魔人(エンチャントデビル)』になってから……、そして『偶像化(アイドラ)』を出してから急激に…………。


 リョーコは「いっせーのォ!」と斧を引いて凄まじい鳴動でエーテルを凝縮させていく。



 ガギィンギギギギガガギィンガガガガガ!!!


 ガムシャラな斬り合いで、互いに血みどろで傷つけ合っていく。

 怒りに猛るコクアはねじ伏せようと「はああああ!!!」と一刀を振り下ろす。

 その猛打でアクトは撃ち落とされ、地上へ落ちてバガゴォォオンと煙幕を四散させた。


 それと入れ替わるように、オレとリョーコは戦意漲らせ、共に得物を振るって飛びかかった。


「流星進撃!!! 三十連星ッ!!」

「クラッシュバスターッ!!!」


「邪魔だァ!! うぬらに出る幕はないッ! 沈めッ!!」


 コクアは体の節々に痛みを感じつつも、振り向きざまに巨大な剣を一瞬横薙ぎ!!

 オレもリョーコもギョッとする。


 まずい! これは必殺剣────!!



「スーパーフレア!!!」


 ガァン!!


 空を太陽のような爆発球が爆ぜ。眩い閃光で全てを照らし覆う。

「ぐああッ!!」「きゃあ!!」

 得物から全身を貫くような強烈な衝撃にビリビリと響かれながらも、必死に耐える。


 天変地異のような凄まじい衝撃波と轟音が広がり、大地が大きく震え上がる。戦場全てに行き渡るほどの烈風。誰もが思わず注視し、眩しそうに腕をかざし目を細める。


 弾かれつつも咄嗟に光の盾を二つ後方に生み出し、リョーコと共に着地。


「ふう」と冷や汗ながら安堵した。

 よし、手ぇ痺れているが自分もリョーコも大したダメージになってない。



 振動が収まり、荒れ狂っていた風が収まり、オレたちは空中で『偶像化(アイドラ)』覆うコクアと対峙。しばしの沈黙。

 しかしコクアは怪訝に表情を歪めた。


「……必殺剣を数回も見せられれば、(しの)げますか! 大した腕ですね」

「ああ。だなぞ」


 ────あいつ気付いてねぇ。



「おう! んじゃ今は大丈夫だなァ?」


 オレたちの後方にアクトがシュポポポと上昇してくる。まだ依然健在だ。


「なぁコクア」

「……なんです? ナッセ様?」


 多分聞いてくれないと思う。けどスッキリしねぇ戦いにしたくない。そんなの嫌だ。

 だから最後に聞いてみたいと思った。


「今から他力本願(チート)な『刻印(エンチャント)』を止めて、オレと一対一で勝負できねぇか?」


 コクアはしばし沈黙。


 お、アクトの時と反応が違うぞ。

 ……と思ったら、コクアはギリギリ歯軋りし始め、ビキビキと激昂に表情を歪めていく。

 背筋をゾクゾクと怖気が走り、頬に一筋の汗が垂れる。


「何様だァァァァァァァァッ!!!」


 それに呼応して怒焔(ドエン)明王(みょうおう)はゴゴゴゴと激しく燃え盛っていく。

 憤怒の鬼のような仰々しい造形に変化しつつある。

 覆う圧倒的なエーテルが荒々しく揺らめき、濃度が徐々に濃く染まっていく。ドロドロに濁ったヘドロのような悪意混じりの、(おぞ)ましい威圧が膨れ上がっていく。


「我らと対等と思い上がるか!? 低俗が(おご)るな!! 貴様など、総統ヤミザキ様の肉体となる、ただの『器』に過ぎんッッ!!」

「コクア!?」

「あんた! 結局見下してんじゃん!」


 コクアは全身震わせ「低俗どもが無礼な口を利くなァッ!!」と吠えながら、空を疾走。

 苛烈な怒りと暴威をあらわに、激昂の凶刃を振るう。


「コクア…………」

「正々堂々と戦う資格なんざァ、コイツにねェよ……」


 諭すように、アクトの手がポンとオレの肩に触れる。

 キッと見据え、リョーコとアクトと一緒に迎え撃つべき身構える。


 乱暴に振り下ろしてくるコクアの巨大な聖剣が、太陽の剣(サンライトセイバー)ごとオレを弾き飛ばす。ぐ、重ッ!!


「このおおおッ!!」


 激怒するコクアの絶えない追撃にガンガン押されて、懸命に捌いていくも徐々にかすり傷を負っていく。

 助太刀しようとリョーコが斧を振り下ろし、反対側からアクトが斬りかかる。


 ガガギッ!! ガギャン!!!


 なんと両腕、そして背中から一本の腕。しかも巨大な聖剣が三本、それで二人の挟み撃ちを防いでいた。

 まさか『偶像化(アイドラ)』とは望み通りに姿形を変えれるのか!?


「貴様らまとめて地獄に突き落としてやるッ!!」


 懸命に剣を振るい、リョーコも必死に斧を振るい、アクトも豪胆と刀を振るう。コクアを周回するようにオレたちは縦横無尽に空を駆け回りながら、激しい激突を続けていく。

 その激戦で轟音と衝撃波が撒き散らされて天と地が震え上がる。

 大空をフィールドに、一進一退と攻防が繰り広げられ、互いに譲らぬ苛烈な激戦を続けていく。



 激昂しつつもコクアは違和感を抱いていた。


 ────なぜ、こいつらは僕に食らいついている!?

 アクトにフォローされているとは言え、ナッセとリョーコまでもがついていけてる。

 刻印魔人(エンチャントデビル)に加え『偶像化(アイドラ)』まで発現して信じられないぐらい力を増した僕なら、奴らなど一瞬で屠れるはず。

 よほどナッセたちの順応が凄いのか?


「ナッセェッ!! 異世界へ行きたいだけの軽率な目的で戦っているのかッ!?」

「最初は軽率だったと思う」


 振り下ろした剣は巨大な聖剣で防がれ、衝撃音を鳴らす。


「では! 今は違うのか!?」


 責めて来るような激しい連撃が振るわれ、「ぐっ!」と必死に捌く。

 リョーコとアクトが飛びかかって勢いを止める。


 ニッと笑う。


「いや変わんねぇぞ……。ゲームや漫画を(たしな)んで憧れた幻想的(ファンタジー)な本物の世界へ、オレは行きたい!」


 コクアはそんないい加減な目的に沸々と怒りが滾る。


「総統様がこれだけ時間をかけて戦力を揃え、忌まわしい異世界を攻め込んで制圧するために遥々ここまで来た!!

 そして総統様が想う大切な人の奪還を成し遂げる!!

 それなのに、ナッセェ! 貴様はただ行きたいだけと軽々しく言うのか!?」


 ……そっちがどんな想いかオレは知らない。

 でも、さすがにムッとさせられたぞ。

 まるで自分側は頑張っていて、オレたちは遊んでると言いたげだぞ。


 けどな、オレだって悪意と欲に満ちた絶望しかない元の並行世界(パラレルワールド)から、希望に満ち溢れる並行世界(パラレルワールド)を目指して駆け抜けてきた。

 オレ一人じゃ無理だった。

 鍵、師匠、愛しい人が、そしてリョーコたちがオレを引き上げ、支えてくれたから『異世界へ行く』寸前まで来れた。


 無知なんだろうが、オレにとって異世界はワクワクする希望に満ちた世界だ。

 だから夢を追いかけられるんだ!

 あの魔女クッキーのように、楽しみながら異世界を冒険していこうと!!


「憧れた異世界へ行く。それがそんなにいけないのかぞ?」

「なに!? まだそのような戯言(ざれごと)を……ッ」


 コクアは殺意漲らせる三本の巨大な聖剣で、オレに襲いかかる。


「おめェにとっては幼稚な戯言(ざれごと)でも、ナッセは本気だァ!!」

「そうよ! 下らなくなんかないからッ!」


 バギギィィン!!


 憤ったアクトとリョーコが、三本の巨大な聖剣を強引に弾く。

 コクアは「なに!?」と見開く。


「行け! ナッセァ!!」「今だ! やっちゃえ────ッ!!」

「おおおおおッ!!!」


 天高く飛び上がるナッセの背後から後光のように太陽の光がこもれ出る。まるで希望に満ちていて天へ羽ばたくが如し勇姿。

 その光景にコクアは、心に光が差し込むかのような感動を覚えた。


 その者、純真に夢を目指し、(けが)れなき清らかな剣を振るう妖精────!


 渾身の一撃を『偶像化(アイドラ)』の腹へ振り下ろす。

 コクアはそのまま地上へ叩き落とされドゴォォォンと激しい土砂の飛沫を噴き上げた。



 地上で煙幕による暗闇に包まれながら、コクアは一瞬感じた自分の感動に自己嫌悪を催し、心の奥底から止めどもない憎悪が満ち溢れていく。


「それが……なんだ……!!」


 湧いてきた憎悪により、更に猛々しく怒焔(ドエン)明王(みょうおう)は燃え盛っていく。

 ズズズズズと禍々(まがまが)しく変貌を遂げていく。

 なんと肥大化した腕が五本に! 巨大な聖剣も五本に!! その五本の聖剣が一本の超巨大な聖剣へと融合されていく。

 その切っ先に灼熱の火花が収束していって、眩い球体に象っていく。


「総統様の崇高(すうこう)なる野望と比べればァァァァァア!! くだらぬ! くだらぬ!! くだらぬわァァァア!!」


 もはや戦争も何もかも関係ない! この連合軍も異世界人も皆殺し!!!

 総統様ただ一人の野望の為に、僕は喜んで殺戮の凶刃を振るおう!!


 喰らえ!! これが貴様らを地獄へ突き落とす最終必殺剣!!


『ファイナル・クリメイション────ッッ!!!!』


 地上から大噴火のように灼熱が噴き上げられ、轟々と火炎の尾を引きながら小型の太陽が飛び出してきた。

 獰猛に揺らめく炎を包んだまま怒焔(ドエン)明王(みょうおう)と共にコクアは超巨大な聖剣を突き出したまま、ナッセたちへ一直線と飛び上がっていく。


 低俗な夢を暴力で叩き潰さんと、コクアは殺意を漲らせたまま──!

あとがき雑談w


ナッセ「ゲームや漫画で憧れたファンタジー行きたいんだぁぁぁあ!!」

リョーコ「それ分かるw」

コクア「……ラノベは?」


ナッセ「えっ!? あ、うん……」ドキッ!?


コクア「ウェブばっかりじゃなく、市販のラノベ読まんかァァァアl!!

 そんなんだから()()読まれないんですよォォォ!!!」


 後日、どっさりとラノベ積んだダンボール箱が届けられたという……。


ナッセ「うわーいっぱい!?」

ヤマミ「一緒に読も?」


コクア(余計イチャイチャ度が増した!?)ガーン!!



 次話『自業自得で無様な決着!! そして……!』

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