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172話「最強最悪の殲滅戦! 一撃沈!」

 静かげな雰囲気だったダクライが、まるで子供のように歓喜に満ちていた。

 モリッカは「ふう……ふう……」と肩で息したまま、身構えている。コハクもシナリも各々の態度は違うものの警戒心は高くしたままだ。



《総統様。奴らは想像以上の強敵ですぞ》


 ダクライは不敵な笑みのまま、巨大浮遊艦の方へ振り向いた。

 同時に司令室にいるヤミザキも映るモニターを見下ろして「そのようだな」と呟く。


《こやつらは強い! 以前の『夕夏(ユウカ)刻印(エンチャント)』だったならば、恐らく勝てませぬ。表面上の能力では我々の方が圧倒的に上回るが、計算違いを起こさせるほどに侮り難い底力を彼らは秘めております》

《ダクライ。お前ほどの者がそうはっきり言うのは滅多にないな》

《経験上、()()()()()()人ほど恐ろしいものはありませぬからな……》


 ヤミザキは黙祷するように目を瞑る。しばしした後、カッと見開く。


「我らが王子たちよ! 今をもって『刻印魔人(エンチャントデビル)』と成れ!!」



 それを念話で届いた王子たちは顔を引き締めて「ハッ!」と頷く。

 コクア、ブラクロ、ダグナ、ライクとカゲロ、ウユニーギら五戦隊は手の甲の赤い刻印(エンチャント)を更に輝かせた。各々は半裸に上半身の衣服が吹き飛び、ズズズ……と赤い紋様が走って肌が徐々に肌黒くなって大男にデカくなっていく。



 オレはその変化に驚くしかなかった。


「うおっ! なんか脱げて! デカくなって! ガングロ化!?」


 目の前のコクアは全身に走った赤い紋様に黒い肌、そして逆立っていく髪が徐々に色が薄くなり、双眸が白目の形相へと変貌。


「う……、うおおおお、おおおおおおおッ!!!」


 天にも届くかと思うほどの咆哮を吐き出し、途端に地震が大地をうねらし、空を暗雲が渦巻く。

 まるで魔人になったかのようなコクアから赤い稲光が嵐のように迸り、轟々と濃密なエーテルが噴出されていく。

 徐々に舞い上がっていく岩の破片。


 ビリビリと響いてくる圧倒的な威圧に戦慄を感じた。

 アクトもリョーコも冷や汗を流している。




 もちろんブラクロも上半身半裸で全身に赤い紋様に黒い肌にムキムキの筋肉を剥き出しに、長い髪の毛が舞い上がって色素が薄くなって、真上に水晶玉が浮く。

 かはぁ、と白い吐息を漏らす。


 エレナは「な、なんなの? ヤバめなカンジー!」とびびって、スミレも表情を曇らしている。

 しかしヤマミは黒マフラーをたゆたわせて冷淡な顔のままだ。




 ダグナもより筋肉隆々で肌黒く、赤い紋様を輝かせ、赤い稲光と雷のエーテルを天に放射するように猛っている。

 斧を振り上げ、ビュンと横に素振り。

 なんと、フクダリウスら後方の遥か向こうの山脈が一斉に砕け散り、木っ端微塵に破片が四散していった。

 オカマサとドラゴリラは「ひえええええ!!!」とフクダリウスの後ろにしがみついて、荒れ狂う烈風に悲鳴を上げていた。




 ライクの白い竜の体に赤い紋様が覆い、カゲロの黒い竜にも同様。

 天を突くような光柱と闇柱が輪を伴って噴き上げられていく。


「ギャオオオオオオオオオオ!!!」


 二頭の竜が吠えるだけで暴風が吹き荒び、地盤が荒れ、岩飛礫が飛び交う。

 マイシは「ぐう……」と呻きながら、腕で顔を庇う。


「やい! ナガレ!!」

「あ、は! はい!」

「逃げれるなら、さっさと逃げろしッ!!」


 必死に叫ぶマイシにナガレは「え? でも……!」と動揺したままだ。


「これからが本当の地獄だし……!」


 マイシは深刻そうな顔で冷や汗を垂らしていた。

 目の前の巨竜は天地を引き裂かんばかりの凄まじい威圧で溢れていたからだ。




 ウユニーギ、ホエイ、カンラク、ギュラー、ムイリも同様に紋様が走った肌黒い半裸状態で、両目を輝かせた。

 なんと足元から粘っこい黒墨が溢れ、それは何か硬質の箱状を象っていく。


「ま、まさか……いきなり『偶像化(アイドラ)』を!?」

「来るZE! ヤツらの切り札が!」ドン!


 緊張で強張るコマエモンとミコト。クスモさんも「グルル……」と唸る銀狼を宥めながら、槍を手に身構えている。


 硬質な箱は立法長方形、それぞれ形状はバラバラ。

 そうと思いきや、五つの『偶像化(アイドラ)』は空へ飛び上がっていく。上昇しながらそれぞれは連結されていくようにガシガシガッシーンと合体していって人型を象っていく。

 腕からは五指の手が、下肢からは足が、首があるべき所にニョキッとロボットの顔が生え出す。その無機質そうな顔の双眸に煌きが走る。胸に夕夏(ユウカ)家の家紋が立体エンブレムとして煌く。

 そしてズン、と重量感を感じさせる着地。


 なんと巨人のようにでっかい合体ロボが聳えた。


「我らが夕夏(ユウカ)家五戦隊! 『偶像化(アイドラ)合体ロボ』グレードロイヤルエース!!」


 ウユニーギら五人は同じ操縦室で、それぞれ操縦席に座していた。

 それぞれ決めポーズをビシッと固め高らかに吠えた。




 そしてダクライは全身に影が覆われるほど不気味に佇む。にやりと歓喜の笑みだけが顔に張り付いている。


「……効かないからと、まじかる大爆裂を児戯だと侮らんよ。むしろ普通に戦えば敵わぬ相手と見ておる。故に儂は主らを過小評価などしてませんぞ」


 猫背だった老体が真っ直ぐに姿勢を正す。

 その異様な雰囲気にコハクは感じ取れる威圧感と共に畏怖を感じていた。

 目の前の枯れた老人を今の内に叩きたいと思ってるのに、足が動かなかったからだ。攻撃のために槍を飛ばそうと手も動かない。迂闊(うかつ)に手を出せば殺されそうな雰囲気に呑まれていた。


 そしてその勘は間違ってなかったと後に思い知った。


「本気で殺しにかかってくれた礼儀に、儂も惜しみない賞賛を感じた。それに対して全霊をもって臨まねば無礼というもの」


 メキメキ、と影に覆われたままダクライの体が蠢き始める。

 コハクはビリビリと肌に感じる衝撃に恐怖心が募っていく。胸を締め付けてくるような重苦しい威圧。まるで数秒が数十分にも感じるくらい体感が緊張に覆われていく。

 モリッカはおろか、シナリも次第に顔を強張らせていく。


 ズゴゴゴゴ……! 徐々に大地の震撼が激しくなっていく。


 コオオオオオ、深い呼吸が聞こえる。

 ダクライの体に活性が漲ってくるのが分かる。枯れ果てたはずの老体は徐々に筋肉隆々と往年の肉体を取り戻し始める。白髪だったオールバックは生き生きと赤を帯び、逆立っていく。

 ズン、と逞しい足が大地を踏みしめる。


 滑らかに筋肉隆々な上半身が踊り、腕が残像を伴って舞う。

 顔は若々しい漢として凛々しく引き締められている。ニイッと白い歯を見せ、狂気の双眸を見せた。

 大柄な体格が重厚な雰囲気を醸し出す。


「説明してやろうぞ……。儂は昔代々伝わった『ガヘリス家』の末裔(まつえい)。その家系能力とは一時的に全盛期の肉体へ若返るモノ。

 それにより、真の強敵と対峙した時に己の最盛期の力で臨めれる!」


 ダクライの背後から聖剣が浮かび上がる。無数の浮く光の刃を周回させている。


「聖・剣・合・体!!」

《御意! 我が力を汝に!》


 ダクライの号令に従い、勢いよく聖剣は背中へ吸い込まれていった。そして溢れ出る膨大なエーテルの放射。周囲に烈風を巻き起こし岩飛礫が吹き飛ぶ。ビリビリと強く体を貫かれコハクたちは顔を歪めた。

 ハッと見開く。

 なんとダクライがスウッと浮かび、背中からアゲハ蝶の羽を模すように無数の光を伴う刃が並んでいた。

 それは大きく展開されており、まるで竜の翼のように荘厳とした風貌になっていた。


「これが我が誇る聖剣『ラー・ブリュナ』の真の力なり!」


 喜々と鬼のような形相の笑みでダクライは口から白い息を漏らした。

 コハクは全身に冷や汗を噴き出し、相対する相手を間違えたと後悔するほどに恐怖が最大限に募った。



 七つの天高く昇る凄まじい光の奔流。

 王子たちとダクライが漲らせた戦意のエーテル放出。それは世界をも揺るがすほどで大地が唸り、天が叫び、暗雲から稲光が絶えず迸る。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!


 その圧倒的な臨場感にオレは驚くしかなかった。

 なぜなら、ひしひしと感じる威圧のそれは四首領(ヨンドン)レベルに匹敵するものだった。


 そうまるで四首領(ヨンドン)()()()目の前に現れたかのような、かつてない戦慄だった。



「……では一瞬で終わらせてやれ! この戦争を!」


 不敵に笑むヤミザキの念話でコクアたちはギラリと戦意の眼光を煌かした。



「ナッセ様!! 行きますよ!!」


 白目を剥き出しに、コクアは吠えた。

 聖剣ホノ・レーヴァは膨大な灼熱を噴き上げて、獰猛に燃え上がっていく。

 身構えるオレは側のアクトとリョーコ共に迎え撃つ構え。

 すると念話でノーヴェンから《エンギ!》と暗号が伝わった。


 同時に巨大なプロミネンスのように炎の帯を描いて振り下ろされる聖剣が、大地を大きく断ち割った。深々と切り裂かれ、岩飛礫が嵐のように四散する。

 遥か地平線にまで炎の壁を走らせて、一直線の大きな亀裂を刻んでいった。


 なんという破壊力!! 向こうの山まで真っ二つになったぞ!


「ナッセェ、リョーコァ……、連撃だ!」


 アクトの言葉にリョーコと共に頷く。足裏に浮遊手裏剣を生み出し足場を形成。

 なおも舞い上がる岩の欠片の隙間を縫って俊敏に飛び回り、コクアへ目指してオレとアクトとリョーコは全身全霊漲る技を放った!


流星進撃(メテオラン)!! 五〇連星ッ!!」

五十激(ごじゅうげき)華柱紅蓮斬(かちゅうぐれんざん)!!!」

「ローリング・デストロイヤ────ッ!!!」


 背後から夜空が顕現され、放射状に流れる流星による剣撃が、アクトの幾重の紅蓮の軌跡を描く剣撃が、リョーコの膨大なエーテル漲る前転宙返りによる斧の連撃が、共にコクアへ殺到する。

 しかしコクアは魔人が如く双眸の左右から炎の帯を吹く。


「スーパーフレア!!」


 聖剣で一瞬横薙ぎ、眩い灼熱の爆発球がパァンと爆ぜた。その刹那、周りは真っ白の世界に包まれた。


 気付いたらオレたちは武器を粉々にされて宙を舞っていた。途切れそうになる意識。そして三人揃って地面に沈む。

 血塗れでうつ伏せになった瀕死の体は動かず……。


「終わりました! 総統様……、これで『器』を確保です!」



 こ……こんな……、一撃でぞ…………!?

あとがき雑談w


ナッセ「うーっす! なんか大変な展開になったなぞ」

ヤマミ「そうね」


 なんか間。


ヤマミ「……思ったんだけどアサシン時代の足裏から星型出して走ったりするアレと、光の盾を足場にするのと、違いあるの?」

ナッセ「似てるようだけどだいぶ違うぞ。

 足裏から瞬間的に浮遊手裏剣を発生させる『スターライト・ウォーク』は消費こそ少ないけど、じっと留まれない。

 逆に光の盾こと『スターライト・シールド』は消費多いけど一定時間残り続ける。その為、しばらく足場にして待機できる。小刻みに設置するより、離れた各所に設置して飛び回る方がいいタイプぞ」

ヤマミ「へぇ……、すごいわね」

ナッセ「うん」


 なんか間。


ナッセ(うーん、急だと嫌がるかな……? 何もエッチな事知らないし)もじもじ

ヤマミ(男って女性に攻めるらしいけど、私って魅力ないのかな? キスとかしたくないのかな?)もやもや


ウニャン《えーかげん、進展はよ! この両片想いがー!!》



 次話『バッドエンド待ったなし!? 続々と全滅!』

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