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170話「ノーヴェンからの伝授『念力組手』!」

 石飛礫を伴う暴風が戦場を駆け抜けていく。なおも地鳴りは続く。


「な、なんだぞっ!?」

「きゃああ!」


 敵味方区別なく通り抜けていく煙幕。

 爆心地の方を見ると、キノコ雲が立ち昇る光景が広がっていた。地面から振動でその凄さが伝わってくる。


 ──間違いない! 誰か大爆裂魔法撃ったなぞ!

 モリッカか……?



「ヤミザキが出てきたのかァ?」

「いや、まだ浮遊艦(あっち)にいるぞ……」と首を振った。

 

 確かめに聞いたな。

 だが確かにモリッカでも滅多な事でいきなり大技を撃たない。ヤミザキか、それに近い強敵と当たって撃ったか?

 あるいは敵側が奇襲で撃ってきたか?


《モリッカが大爆裂撃ちおった! じゃから目の前の敵に集中しろ! たわけ!

 奴ら全員、まだ半分も力を出しておらん!! 気ぃ抜くと死ぬぞ!》


 耳に響く通信に見開く。慌ててアクトとリョーコと目を合わせた。お互い汗を垂らしている。

 ……まだ半分も? 奴らは全然本気じゃないのかぞ??



「来い! ()()()華を咲かさせてやろう!」


 コクアは気張って、全身から赤い稲光混じりに火炎のようなエーテルをボウッと噴き上げ、凄まじい嵐となって大地を揺らすほどに吹き荒ぶ。


「アクト! 全力で行くぞ……!」

「あァ!」


 オレたちは飛沫を上げるほどに駆け出し、激情を露わに再び三つの刀身で切り結び合う。ズザン、その余波で地面に三つの斬撃の跡が大きく刻まれ、衝撃波の津波が周囲に広がって石飛礫を撒き散らす。


「おおおおおおッ!!!」

「があああああッ!!!」


 気合いを叫び、オレとアクトは激しい剣戟を振舞う。コクアは不敵に笑み、火炎の軌跡を描きながら幾重に剣閃を放つ。


 ガガガガッガッガガガガガッガガガガッガッガッガッガ!!


 縦横無尽にあちこちで連打が連鎖し合って、大気が破裂、地響きが絶えず石飛礫を舞わせていく。

 リョーコは構えた斧に凄まじいエーテルを凝縮させて待機。


 それが気になってか、コクアはリョーコから意識を離さないみたいだ。


 太陽の剣(サンライトセイバー)を振りかぶって、更にギュッと()()()()()()()()

 コクアは「受けてたとうッ!!」と灼熱纏う剣を振り上げた。まるでプロミネンスのように火炎の軌跡は弧を描く。


「プロミネンスダンサー・ソーッ!!」

「サンライトォ・フォォォォ────ルッ!!!」


 渾身の力で流星がごとく軌跡を描き、コクアのプロミネンス描く必殺剣と交差!


 ガキィィィンッ!!


 大気も爆ぜるほど強烈な衝撃が響き渡る!

 だが「おおおおッ」と力任せに押し切って斬り下ろす。その斬撃はコクアの肩を斬り裂き、鮮血を吹き出させた。

 その痛みにコクアは顔を歪ませて「グッ」と呻く。


「ぬうりゃあああ!!」


 アクトが飛び蹴りでコクアの顔を突く。堪らず体勢を崩すコクア。


「今だあッ!!」

「スラッシュ、スレイヤーァァァアッ!!」


 渾身を込めてリョーコは斧を振るう。大地を唸らせ放たれた広大な三日月の斬撃が、コクアの胴体を引き裂かんと食い込む。

 そのままコクアを吹っ飛ばしながら、進行を遮る遺跡を上下真っ二つに裂き続けていく。


「うぬあああああッ!!」


 声を荒げるコクアは遠くまで吹っ飛ばされて、ドゴォォォンと爆煙を巻き上げた。

 着地して「決まったぞッ!!」と拳を握る。荒ぶる昂揚感。漲る戦意。そしてここまで剣を強くさせてくれたノーヴェンに惜しみない感謝で満ちていく。


「ホンット、ありがとうな。ノーヴェン……」


 濛々(もうもう)と煙幕がたゆたい、向こうの状況が窺い知れない。

 その合間に思い返す────。




 戦争前の、とある時間。


「『念力』が使えるようデスネー?」

「ん? ああ、使えるけど……?」

「……実は気になってましタ」


 ノーヴェンが歩いてきていた。キランとメガネを煌めかす。


「超能力が当たり前の並行世界(パラレルワールド)で覚えたぞ。でもオレは覚えが悪かったから……」


 そう、できるのは思念で物体を掴める初歩的な念力だけだ。

 ワープしたり、脳に直接話したり、物を見透かしたりなど、いかにもな超能力らしい事はできない。

 するとノーヴェンは首を振って「イエ、それで充分デース」と肯定してくる。



「ミーも同じく超能力が当たり前の世界での記憶を持ってますが、その超能力は全然使えまセーン」

「え? なんで??」

「確かにミーはあの世界で多種多様な超能力を使えましたが……」


 何を言いたいのか話が掴めず、訝しげに首を傾げる。


「……実を言うと、あの世界は『精神念波増幅器エスパー・ツカエルヨー』をサーバーにして、誰でも超能力を取得できる環境になってましター」

「え? ええっ!? は、初耳だぞ!」


 き、聞いた事ねぇぞ!? そんな事、学校も市役所も言ってなかったぞ!


「極秘ですから一般人は知らなくて当然デース。ミーは公務員だったので知ってマース」

「公務員だったのか? す、スゲーな……」


 ポカンとした。


 自分の手をまじまじと見る。試しに遠くのテーブルの缶ジュースを念力で掴む。浮かせる。

 引き寄せて自分の手に収めた。

 空き缶だったので、再び浮かせて遠くのゴミ箱に入れた。


「そう、それが気になってましター。ミーもできるかと思って試したのデスが、全然できなくて不思議に思ったものデス」

「……だからオレだけサーバーの適用外で、覚えたのは自力だったって事?」

「イエース」


 呆気に取られた。

 つまり、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()、って事か。

 覚えが悪くて落ち込んでたのが馬鹿に見えてきたぞ……。


「だからこそユーに『念力組手』を授けたいデース!」


 まるで教授みたいにキランとメガネを煌めかして、練習場へ連行されたぞ。


 最高機密要塞の練習場は多岐に渡って多く、色んな施設がたくさんあった。オレたちは白兵戦用の練習場に来ていた。

 目の前に大岩のゴーレムっぽいのが『(まと)』として置かれている。


 彼が言うに、初歩的な念力でも防衛できる戦法らしい。

 オレの『念力』は自身の腕力を参照して、水のような流動的なモノで物体を持てる能力だ。しかしそれで直接ダメージを与える衝撃は生み出せない。

 水だってモノを浮かせる事はできるけど、よほど強い勢いでない限り殺傷力はない。それと似たような感じ。


 だから目視不可のパンチを繰り出すとか、敵の急所を潰すとか、全然できない。

 なのでもう一つの両腕として補助的に使うのが精一杯だった。



「故に、自ら水を纏うように『型』を整えて攻防一体にするのデス」


 自分の周囲を念力の衣で覆う感じが念力組手の『型』らしい。

 それにより敵の攻撃を逸らさせたり、こちらの攻撃を当てやすくしたりできるようになるっぽい。


「そして、()()()()にも応用できマース!」

「え? 直接できないんじゃなかったっけ??」

「そう。できまセーン。でも、ユーは剣を持つ時に両手で握りますネ?」


 光の剣を形成して、しっかり両手で握る。


「……で、それに念力の手で更に上乗せするのデス」

「あ、そっか! そういう事かっ!!」


 極端な話、四本腕のようなもの。

 両手で握った剣の攻撃力は強い。それに更にもう一つの両手で握ったら?

 …………実際四本腕では、剣の柄の長さが足りないから普通は握れない。


 でも『念力組手』にそんな制約はない。


 自分の握る両手を覆うように念力でギュッと握る。

 試しに目の前のゴーレムへ斬りつけると、ズガンと衝撃波が走って木っ端微塵に砕け散った。パラパラと破片が飛び散る。


「あ、あわわ……『刻印(エンチャント)』もなしに、この破壊力!?」

「ちなみに『刻印(エンチャント)』の力で身体能力だけを強化していると思ってるようですガ、腕力を参照しているから念力も一緒に強化されてマース。覚えておくといいデス」

「……それは気付かなかったなぞ」


 するとノーヴェンが神妙な顔で、剣を握っているオレの手を優しく握ってくる。


「ユーなら、きっと誰も真似できない剣士(セイバー)になれマース! そして愛しいヤマミと一緒に道を歩んでくだサイ……」


 彼は本当はまだヤマミの事を引きずっていたのかもしれない……。

 だけど吹っ切れるために、敢えてささやかな指南をしてくれたのかな?


「なんと言うかごめん。でもありがとうな」


 ノーヴェンは「イエ」と満足そうに笑んだ。にっこり!


 そんな快い笑顔は今も脳裏に焼き付いている…………。




 正眼に剣を構え、油断なく煙幕が晴れた先を見据えていた。

 もちろん、目に見えない念力の腕はオレの両手を覆うようにしっかり剣の柄を握っている。


「これがノーヴェンから授けてもらった『念力組手』だッ!!」


 一人だけじゃここまで強くなれなかった……。

 尊敬する人、愛しい人、楽しい人、頼もしい人、強い人、……それぞれ多くの人から少しずつ力をもらって強くなれたんだ。


 これまでも、そしてこれからも……!



「ほほう、やるなァ……。うかうかしてっと追い越されるなァ」


 嫉妬の念はない。逆だ。嬉しそうにアクトはニッと笑う。

 リョーコも(なご)やかに笑む。



「…………ナッセ様。あなたはやはり凄い男ですね」


 煙幕が晴れた先で、膝を付いてどこか物憂(ものう)げな顔でこちらを見ていた。

 斧で斬られた腹に手を置いていたが、それも離し立ち上がる。

 ふう、と観念したような感じでコクアは顔を(うつむ)かせたまま仁王立ち。するとキッとこちらを睨み据える。


 その仕草に妙な違和感を抱いた。ザワ……!


「なるべくならナッセ様と一対一(タイマン)で戦ってみたかった……。だがそれは叶わない。

 なぜなら、このような戦争ですら我々夕夏(ユウカ)家にとって()()()()()()でしかないからですッ!」


「な、なんだとぞッ!?」

「あんた! 勝手に攻め込んでおいて通過点だってぇ? ひどいじゃないのッ!

 こちとら死人出てるわよッ!!」


「そんな事は百も承知です……!」


 リョーコがキレてるけど、コクアは覚悟を決めたような顔で落ち着いている。

 そういや、なんで肩や腹の傷が浅いんだ? 全力でやったはず!?



「我々の目的はあくまで異世界侵攻! その為の犠牲です!」


 オレに剣の切っ先を突き付けた。

 だが向けている鋭い目にはどこか(はかな)げな雰囲気が窺えた。


 まるでこれは……敬意を払える人と別れを惜しむような……?

 なんだか妙な胸騒ぎがする……。


 ズズズ……!

あとがき雑談w


ナッセ「なぁ」

ノーヴェン「ん? 何ですカー?」

ナッセ「第三陣にいた超能力集団いたぞ? 完璧超能力使ってたぞ??」


ノーヴェン「あの変なメガネが小型の『精神念波増幅器エスパー・ツカエルヨー』デス」


 超能力者の人は後頭部にまで一周するほどの輪っかのようなメガネをはめていた。耳を覆う部分にアンテナが後ろ斜めに伸びている。そして目を覆う部分は一つ目のような光球が映っている。


エスパーA「この要塞で資材を提供してもらって」

エスパーB「頑張って三日徹夜で作りました」

エスパーC「でも最低限な機能しかないっす」

エスパーリーダー「お、俺は悪くねぇっ!! 異世界転移したいからとブラックホール作って地球滅ぼしたのは不可抗力だったんだっ!」


ナッセ&ノーヴェン「ほほう、詳しくは署で聞かせてもらいましょうか?」


エスパーA&B&C「ささ、どうぞどうぞ!」

エスパーリーダー「え、ええ!? は、薄情者ォォォォォ!!!」



 次話『最初っから結果が決まっていた戦争!! 底知れぬ絶望!』

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