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16話「バーサーカーの猛襲!」

 昨日の出来事は全て夢だったぞ!!


 放課後でHO☆MOな展開……。あれは絶対夢だぞ!

 だが、完全にタネ坊とキンタへの好印象はガタ落ちした気もする。うん、夢だけど。

 妙な事にリョーコも同じ夢を見たらしいぞ。


 本当に偶然だ。マジで偶然。本当に偶然な夢だぞぉぉぉッ!



 今朝、いつもののようにナッセとリョーコは会い、そして護衛としてタネ坊とキンタと落ち合う。


「何もなかったぞ!!」

「うん! あたしはHO☆MOなんか知らない!」

 リョーコとガシッと手を組み合った。なんというか信じられない共感。これほど意思が通じ合った気持ちは今までなかったぞ。


 何も気づいてないタネ坊とキンタは首を傾げ「何があったんや……?」と怪訝な顔をした。


 全部お前らのせいだよ!!!!




 通学、そして午前の授業は淡々と進み、あっという間に昼の時間が来た。

 昼飯を済ませる為にリョーコと共にタネ坊とキンタと一緒に学院付近を散策(さんさく)していた。


「……エンカウント先の世界が未来の世界だと!?」

「にわかに信じられんやな~」

 タネ坊とキンタはそれぞれ反応が違うが戸惑(とまど)いの色は表情から窺えた。

 こういう風に、真面目な彼らであって欲しかったなぞ……。


 そもそもエンカウントは外出時に移動している時に起こる現象。カレンダーが置かれてる部屋では起きない。

 これすら意図的なのかもしれない。──一体誰かの仕業かは、まだ……。


「それとモンスターが悪人の成れの果てだというのは、こちらも知っている。各地の刑務所や暴力団事務所から人がことごとく消失しているとの報告も聞く」

「ついでに危険なカルト宗教もな~。今、教祖や幹部が突然いなくなって混乱してるんや」


 やはり……。モリッカはこれを知ってたんだ……。

 一筋の汗を垂らす。


「あんさんは気にしなくてええわ。別にワイらのような隊員という訳でもあらへん」

「お気遣い、ありがとうございます」

 キンタにペコリと会釈。


「それと動物の減少について何か知ってるのかぞ?」

「……モンスター化だろう。例のスライムやカタツムリなどが動物のモンスター化した結果だ。動物とて赤ん坊のように無垢(むく)な心の持ち主という訳ではない。知能の程度が違うだけで、基本的に善悪が存在する我々人間と何らも変わらん!」

 きっぱり言い切るタネ坊。


 額輝くどんぐり頭タラコ唇であるにも関わらず歴戦の真剣な面構え。戦争などで色々な側面を見てきた経験ゆえのものだろうか?



 タネ坊とキンタと小難しい会話を交わしているのを、後ろから見ているリョーコは「う~ん」とどう切り込むか悩んでいた。

 そんな折、ラーメン屋の看板が視界に入る。


「ねぇ、昼飯これにしよ?」


 リョーコはオレのマフラーの裾をぐいぐい引っ張って呼びかける。

「あのさぁ……」

 ジト目でリョーコを見やる。

「いいから、い~から」

 と店の中に押し込んでいく。


「ウホッ! ラーメンやな~。ワイの大好物やん」

「フッ! それにするか」

 まず食いついたのはキンタ。それに頷くタネ坊。やはり二人は息が合う。

 昨日の授業で羨ましいと妬んでいたが、今はどうでもよくなったぞ……。好きなだけイチャイチャしててくれ。流石にオレもHO☆MOは勘弁だぞ。



 物陰から女生徒の二人がそれを見納めた。

 夕夏(ユウカ)ヤマミと、岡本(オカモト)スミレ。

 日本橋と刑務所で起きた事を目の当たりにし、ナッセを()ける事にしたのだ。


「まさか……、そういう事になってたとはね」

「うん。びっくり」


 始業前に仕込んだ盗聴器で盗み聞きして、エンカウント世界やモンスター化の謎を知ったのだ。


「ねぇ。ちょっと『占事(せんじ)スキル』で確認したんだけど、これからエンカウントが起きそう」

「了解。引き続き『潜伏(せんぷく)スキル』を維持(いじ)しながら見張るわ」


 二人は黙々(もくもく)とメロンパンを口にした。



 ラーメン屋でナッセ達はテーブル席についていた。

 透き通った茶色のスープの中に中華麺。そしてチャーシュ、二枚の海苔(のり)、メンマ、うずまき、刻みネギなどの具が乗せられた料理がテーブルに運ばれた。

「うほおおおおおおおおお!!!!!」

 目の色を変えて気が狂ったように、キンタは何杯ものラーメンを片っ端から(すす)り上げていく。


「えぇ……」

 青筋を立てて引くリョーコ。だがタネ坊は慣れているのか涼しい顔で啜っていた。


「うっほおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 ずりゅりゅりゅりゅりゅずずず~~~~ずりゅりゅりゅりゅずべべべべべ!!!

 ……気が散るなぞ。っていうか、見てると食欲が無くなるぞ……。

「更に十杯追加や~~!!!」


 まだ食うんかいっ!!


「……さて、モンスターが煙となって消えるのが気になると言っていたな?」

「あ、うむ……」

 まだキンタの獰猛(どうもう)な食べっぷりと啜り音が響く最中、タネ坊は(はし)を置く。


「理屈は分からんが、複製されているのは確認できた」

「複製って??」

 リョーコは首を傾げる。


「ゲームとして分かりやすく言えば、悪人がモンスターとしてデータバンクに登録される。で、そのデータを使って同じようなステータスを持ったモンスターがエンカウント共に任意の数で再生される。

 だから生まれたてでも完成体としてすぐに戦えるし、何度でも生み出される」



「な……!?」

 オレとリョーコは目を丸くした。


「人間だった頃の記憶と理性は化け物になった直後のみ残留(ざんりゅう)するが、一度倒されたり戦闘が終わって格納(かくのう)された際に消え失せるようだ。後は理性もなく本能のままに戦うモンスターの出来上がりってことだ」

「ひどい……」

 リョーコは口に手をあてがう。


「他人の領分(りょうぶん)を踏み荒らす極悪人など同情する余地もなし。むしろ何度も使い回されてこき使われる方が似合いの末路(まつろ)だと思うがな……」

 毅然(きぜん)とタネ坊は言い切ってしまう。


「…………もしエンカウント戦闘で(やぶ)れた人はどうなる?」


 真剣な面構えで聞く。タネ坊はその真剣な眼を見て、しばし間を置き一息。

「まだ情報が少ない。行方不明になった創作士(クリエイター)と特徴が似通ったモンスターの確認はまだ無い。かと言って目の前で他の創作士(クリエイター)を死なせた事も無い。……まぁ試す気はないかな」

「そうか……。無理に聞いてすまないぞ」

「いや、だがお前もそんな目をするんだな。戦闘の経験が少ないとは言え、色々想うものがあったのかな?」

「…………かもな」


 これまでの事を思い返す。

 何も知らずに出くわしたモンスターを(ほうむ)り、そして人間だった店長をも殺す気で戦い倒した。

 エンカウント戦闘には生き死にが付きまとう危険な現象。殺し合いをやらせているようなものだ。誰がそうしたのかは分からない。だがあまりにも(むご)い設定ではないか。

 それに──闇に覆われた未来の世界。


 なぜ荒廃している? 一人も生き残りはいないのか? 今の世界とどうして連動(れんどう)している?



「ナッセたら!!!」

 バンとリョーコに背中を叩かれ、身を(すく)ませて我に返る。

「え? え??」

「考え過ぎてない?」

「……すまぬぞ。だがもう大丈夫だぞ」

 心配そうに覗き込むリョーコに気付き、心配させまいと首を振った。


 タネ坊が不穏な雰囲気で目を細めているのが気になった。キンタも据わったような目でジロリ見てきている。

 なんかゾワゾワ来る……。


「お前らは俺らと来てもらおう! なに心配する事は──」



 床が黒────!! しまった!! エンカウント!


 あっという間に壁も天井も覆われ、荒廃したラーメン店へと変えた。他の人や店員は忽然(こつぜん)と消えている。居るのはオレ、リョーコ、タネ坊、キンタの四人。


「リョーコ!!」

 咄嗟にリョーコの前に飛び出す。


 ドガァ!!!!


 途端にラーメン屋の入口が豪快に破裂。外からの強撃によって内側へと破片が飛び散る。矢のように吹き荒び、舌打ちするタネ坊とキンタの頬や脇など(かす)って一筋の血を噴く。


(シールド)!!」

 盾を前方に発生させ、破片を弾き切っていく。おかげで後ろのリョーコは無傷……。



「……糞が! どういうつもりだ?」


 タネ坊は、向こうの煙幕に包まれる大きな人影を見据える。

 のそりのそり、巨躯(きょく)が歩み寄ってくるのが見える。三メートル強に及ぶ大柄筋肉質の大男。


「グフフッ! 自己紹介の時に申した通り、ワシは武劉(タケリュウ)フクダリウスと申す! クラスは狂戦士(バーサーカー)よ!」


 ズンと重々しく一歩を踏み鳴らすと、周囲の煙幕は散った。

 メイプルリーフを模した赤い仮面。放射状に逆立つ黒髪。上半身裸で肩幅の広い筋肉質。そして腰にはシャツで縛ったであろう腰巻。筋肉で膨れた脚ではち切れんばかりのズボン。

 右手には異常なまでに大きな斧。リョーコのと違い、両刃に加え先っぽに薙刀(なぎなた)のような反った刃、全体的に丸い印象で、広げた(かさ)くらいの広さ。まず常人では持ち上げられない重量感がある。


 ────デカい!!

 汗を垂らし絶句する。

「こ、こんなのいたの!?」

「……分からない! 自己紹介の時にはあんな大男なんて……!?」

 少なくともそんな巨人みたいなのはいなかった。身体の大きさを変えられる強化系創作能力か……??



「敵意を向ける相手が違うやろ……?」

 キンタはドスを利かせる。そのままムクムクと体をゴリラへと変貌させていく。


「心配はいらん。外のモンスターはワシが片付けておいた!」


 気付けば後ろには無数のモンスターの死骸が転がっていた。エンカウントした際に現れたのだろうが、この大男が瞬殺したのか? 死骸はほどなく煙となって空へ流れていった。


「質問に答えろ! 何故、俺達にケンカを売る!?」

「お手合せしたいと値する猛者(もさ)と居合わせたゆえ、このタイミングで仕掛ける無礼を許せ!!」


 そう言うなりフクダリウスは地を蹴った。図体に合わず素早い! 大きな猛獣のように巨躯で迫り来る。

 もはや手加減無用! 殺す気満々で闘気を(みなぎ)らせている!

 タネ坊とキンタは歴戦の鋭い視線に宿し、互いに手をパンと叩きあうと戦闘態勢に構え──、


殺陣進撃(さつじんしんげき)!!!!」


 機関銃が(ごと)く、目にも留まらぬ二人の高速連携攻撃が炸裂(さくれつ)

 一対のナイフとゴリラの拳がフクダリウスの巨躯に一瞬連撃で叩き込まれ続ける。激しい猛攻がけたたましく連打音を響かせ、怒涛(どとう)と押し返す。

「ぬ!」

 フクダリウスは(いか)つい表情を見せた。


「ごおおおおおお!!!!」

「うっほおおおおおお!!!!」

 (なお)も二人の高速連撃は繰り返され、フクダリウスを吹き飛ばすまでに突進力を一気に加速させた。

 吹っ飛んだフクダリウスは高架橋(こうかばし)の太い柱へ身を埋めるように激突。弾け飛ぶ破片。濛々(もうもう)とする煙幕。

 それをタネ坊とキンタは仁王立ちで油断なく睨み据える。


 そんな様子に息を飲んだ。やはりこの二人かなり強い!


「さすがだ……! 自衛隊に在籍(ざいせき)しただけあって中々の連携よ!」

 欠けた柱の中から、平然と身を乗り出すフクダリウス。半裸のその筋肉の鎧に掠り傷すら窺えない。あの二人の連携技を食らって無傷……?

「うそ!?」

 その様子に唖然とするオレとリョーコ。


 …………次元違わない?

あとがき雑談w


タネ坊「ヤバい!! カッコつけたもののフクダリウスが出てくるなんて計算外だよ!」

キンタ「ワイらの『殺陣進撃』も全然効かへん!! これヤバいわ~!」

タネ坊「しかし同じ生徒。きっと手加減してくれるんじゃないか?」(期待)

キンタ「せやせや!! そうして欲しいわ~!」(切実)


フクダリウス(本当は一撃で終わらせれるけど、加減しておこうか)


 戦闘力で言えば森岳(モリタケ)タネ坊は二九五〇。大珍(ダイチン)キンタは四一〇〇。

 対して武劉(タケリュウ)フクダリウスは五〇〇〇〇以上!


 インフレしすぎィ!



 次話『フクダリウス強過ぎる!! こんなん勝てるかー!』

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