167話「戦争でも奮戦! スター新撰組!」
窓もなく、床に大きな魔法陣の青白く灯る光を頼りに少々照らしている広大な部屋。
複数散らばっている浮遊モニターには、戦場の数々が映っていた。
パワーアップした刻印獣を相手に奮闘するアメリカ連合軍。常に爆発が耐えぬ激戦。必死に抗戦するヒーロー、ヴィラン、創作士の戦いも映っている。
余裕に見下ろすヤミザキとダクライ。そして切羽詰まったアメリカジェネラルとノーヴェン、真剣な面持ちのヘインなど様々も映る。
「中々盛り上がっているようだぜ……」
黒い三角帽子、黒いローブ、猫背のひねくれたような子供が振り向く。その視線の先に漆黒の魔女がワイングラスを揺らせながら、大きなソファーでくつろいでいた。艶かしく「あらぁ」と笑う。
ヤミロと漆黒の魔女アリエルだった。
「人が悪いぜ……あんたもよ」
「へぇ~?」
「魔女クッキーがやれねぇ事を代わりにやってるってこった」
ヤミロは手前の丸テーブルからワイングラスを手に取る。
「本来なら、この戦争をきっかけに世界中の国々が参戦する歴史だったはずだぜ……」
「へぇ、そう?」
わざとらしくアリエルは顔を背け、視線も逸らす。白々しい態度なのが分かる。
「魔界オンラインシステムによって大半の野心家は堕ちた。おかげで今はアメリカ連合軍とヤミザキ勢力の戦争だけになってしまった。
本来なら混迷を極める大戦になって何ヶ月も長引き、その戦禍の飛び火で世界中が悲劇にさらされていたはずだぜ。そんな因果を未然に潰すとはなぁ……」
「えっへん!」
「……相変わらず『読み』が恐ろしい方だぜ」
アリエルはワインをすするように飲む。
「今頃、アイツはカッカだろうぜ……」
「まぁねぇ~、そういう嫌がらせするのが私は好きだからねぇ~」
悪女風にアリエルは艶かしい流し目で薄ら笑みを浮かべる。
「でもね、きっと『大災厄の円環王マリシャス』サマは喜んでくれるわよぉ~?」
ヤミロは目を細め「ククク……」と、アリエルは「うふふふ」と笑い合う。
まるで「お主も悪よのう」状態であった…………。
────世界大戦、五日目。午後三時一二分、第一陣出撃中。
状況は依然劣勢。第三結界は二日目の午後六時四六分にて全壊。
第四結界は四日目の午前二時三七分にて全壊。
戦場は第五結界陣内。六基ある砦の内、三基は撃沈。
防衛範囲が狭まって、自軍の密度が上がった分防衛力が高まっている。
──被害報告。死者約一二〇〇人及び、負傷者約一万三四〇〇人。
最高機密要塞内の回復カプセル全機起動中。なおも負傷者増殖中。
医療班第二陣、第三陣全動員で回復活動に努める。
「殺陣進撃ィィィィッ!!!」
額から血を垂らすオカマサと、息を切らすドラゴリラが手を叩き合いながら飛び出し、ギガントの全身に一瞬連続攻撃を叩き込む。執拗に数十発完膚なきまで叩き込んでようやく沈黙。一体目が倒壊してゆく最中、二体目のギガントが大きな棍棒を振るっていた。
「な!?」
咄嗟にオカマサは『禁忌の盾』をかざし、ドラゴリラをかばうように体勢を変える。
棍棒が重々しく盾にのしかかり、ミシメシと亀裂を与えた。そのまま二人を弾き飛ばすように棍棒は振り抜かれた。バッコーン!!
「おが……がはっ!」「くぼあッ……」
二人は勢いよく吹っ飛んで、遺跡の壁を数枚突き抜けてドズゥゥンと煙を吹き上げた。
煙幕が立ち込める。散らばる盾の破片。オカマサとドラゴリラは横たわって「うぐぐ……」と激痛に呻いた。
ギガントはトドメを刺そうとズンズン歩み寄って棍棒を振り上げていく。二人は動けぬまま「や、やられる!」と汗タラタラに見開きながら畏怖していく。
「させるかぞッ!!」
それを見かねて、地面に飛沫を立てるほど全力疾走で駆け出す。アクトが「俺の刀ァ乗れ!」と刀を振るう。タイミングよく刀に乗り、振られる勢いに合わせて跳躍。
「うおらあッ!!」
「おおおおッ!!!」
アクトとオレの咆哮が相乗する。高速で飛び上がりながらギガントへ突っ込む。
「流星進撃──!! 十二連星ッ!!」
渾身の力を込めた一瞬十二撃をギガントに叩き込み、木っ端微塵に爆ぜさせた。
生み出した盾を足場に再び蹴って、襲ってきたドラゴンに剣を振り下ろして「フォールッ!!」と頭を打ち砕いた。そのまま急降下し、ついでに真下のトリケラトプスにも叩き込んで粉々に砕く。そして着地。
「大丈夫か!? ナースィン!!」
横たわるオカマサとドラゴリラに駆け寄って範囲回復魔法をかける。癒しの光でたちまち傷が癒えていく。
ふう。これなら多少は動ける程度になってるはずだぞ。
「す、すまない……」
「ありがてぇ……。おかげで助かったわー」
オカマサとドラゴリラはなんとか立ち上がる。
体力も回復させたかったが、あいにく時間が足りない。あくまで応急処置レベル。
「フクダリウスのおっさんはどうしたんだ?」
「……はぐれてしまったよ。申し訳ない」「せや」
地鳴りと共に、断続的に遺跡を砕く音が大きく聞こえてくる。
「ここは危険だ!! 退いてろッ!」
地面を揺らしながら押し寄せるトリケラトプスの集団に振り返り、そう叫んだ。
オレは「おおおッ!!」と気合いを発し、剣を片手にトリケラトプスの集団へ突っ込んだ。同時にアクトも加わる。
ひと振りで数体吹っ飛ばし続け、後方のリョーコが三日月の斬撃を飛ばして一掃。パラパラと破片が流されていく。
「よし! 次ぞ!!」「おゥ! 来いやァ!!」「まだまだ暴れ足りないから!」
オレとアクトとリョーコは健在と戦意を漲らせる。
それを見たオカマサとドラゴリラは力の差を痛感した。
「代償を払ってまで彼らよりも強くなれたと思ったのに……。くっ!」
「その気持ち分かるわ…………」
傷はほぼ癒えたというのに、疲労で体が重い。
長引く戦争で度重なる激戦によって、オカマサたちは既に体力が持たなくなっていた。
「報告通り、オカマサとドラゴリラ二名の負傷者を発見!」
「君たち! 大丈夫か?」
「……いや怪我より疲労が酷い! 早く体力回復を!」「ハイ!」
駆けつけた治療班数人が彼ら二人に回復魔法をかけていく。それを守るように戦闘が可能な創作士数人が囲む。
トリケラトプスが数体突っ込んできて、それに対して攻撃魔法をブチ込む。トドメに槍で頭を粉砕。
「迎撃した!」
「ありがと! もうすぐ終わるわ」
百体以上の突進してくるトリケラトプスの大群に加え、後続とギガントが数体追従してくる。
創作士たちは恐れながらも魔法など遠距離攻撃を仕掛けるも、数体撃墜するだけで勢いは殺せない。
皆殺しされると「うわああああああ!!」と恐怖に竦んでしまう。
それを目にして阻むように降り立つ。ザッ!
「加勢するぞッ!!」
すかさず手の『刻印』に記されている『剣士』の印は『魔道士』の印に変える。剣をかざすと、真上に二階建ての家くらいの超巨大な火炎球が『衛星』でズゥンと浮かび上がった。
「極大ホノバーンッ!!」
剣を振り下ろし、超巨大な火炎球を急降下させてトリケラトプスの群れを呑み込む。地響きを伴って灼熱の極大な火柱を噴き上げた。
更に「まだまだMPは有り余ってるぞォ!」と巨大な火炎球を数十個に『分裂』させ、一斉に撃って爆撃の嵐を巻き起こした。
ドカンドカン派手に爆撃する合間に、その爆煙に紛れて印を『弓兵』に変化。広げた『察知』で標的を感触して、渾身を込めた一矢を次々射る。面白いように後続のギガントを何体か射抜いて豪快に粉砕していく。
再び『魔道士』に切り替えて弾幕をばら撒く。ドガガッドガッドガッ!
「やるなァ!! 相棒!」
アクトは刀一本でギガントの頭を砕き、ゆっくり倒れていくソレを足場に空の巨大な浮遊刻印獣フライホエールに飛び乗って刀を突き刺す。ボォンと爆破して、ゆっくり墜落してゆく。
墜落中のフライホエールの背を足場にアクトは、囲んでくるドラゴンの群れに「大紅蓮斬」を周囲に振るい、一斉に薙ぎ散らして爆破の連鎖が轟いた。
「いっせーのォ!!」
リョーコは後ろに構えた斧に凄まじいエーテルを収束させて大地を震わせる。
巨大な棍棒を振るうギガントへ「クラッシュバスター!!」と斧を振り下ろす。棍棒を木っ端微塵に砕き、そのまま胴体にも直撃させて大破。その衝撃波が全身に伝導してギガントは跡形もなく破裂した。
突進してくるトリケラトプスの群れにも、通常攻撃の斧で薙ぎ払ってバッカンバッカン弾き散らしていく。その時、玉突きの要領で弾き飛ばした刻印獣で他の刻印獣を巻き込む。すると突進していた後続は勢い余って転んで勢いが頓挫。
その隙にリョーコは「いっせーのォ!!」と斧に凄まじいエーテルを溜めていく。
「スラッシュスレイヤーッ!!」
広大な三日月の斬撃が、まとめてトリケラトプスの群れを斬り裂いた。
「かかってこいやあぁぁぁぁ!!!」
オレとアクトとリョーコは勢いに任せてそう叫んだ。
そんな雄々しい様子に、他の創作士たちも活気が湧いて「負けるかァァァァ」と勢いを増していく。
頼もしい猛者がいると、周りは勇気を奮わせていつも以上の力を出せるようだ。
ヘインもアメリカジェネラルも笑む。
「やはり大災厄を攻略する鍵に彼らが必要だ」
「それは同意だわ! むしろ七皇刃に入ってもらいたいくらいじゃ」
「何を言うか! 彼らこそヒーローに……!」
ノーヴェンは冷静な視線を覗かせ「そろそろですカ……」とメガネを煌めかした。
冷淡な目で笑うヤミザキは拳を振り上げ、赤く『刻印』を灯らした。
集合の合図に、ズラリと王子たちが勢揃いしていく。
「さて、機は熟した。そろそろ出陣の時間だ」
「ハッ!」
あとがき雑談w
オカマサ「『禁忌の盾』は俺が所有する『禁忌シリーズ』の一つなんだよ。物理も魔法も通らず、絶対に破壊されない難攻不落の盾だね。
俺の自慢の武器の一つ『禁忌の槍・放ち穿つ天狼』は閃光のような速度でいかなるモノも絶対に刺し貫く」キリッ!
ナッセ「止めろォ!! それ矛盾のネタになるだけだ!!」
アクト「でなくても『禁忌の盾』ァ……普通に破壊されたぞ」
リョーコ「その『禁忌シリーズ』頼りになりそうにないわね」ハァ。
オカマサ「うぐぐ! き、君ら辛辣だよ……」
ドラゴリラ「そう言われちゃ敵わへんなー」
でも実は特注で普通より強固に鍛えられている。普通の武具を使うよりずっと強いぞ。
オカマサは魔法を使えない分、銃火器とコレを召喚して戦う。本当はすっごく頼りになるんだけど相手が悪すぎて……。
普通の盾だったらギガントの棍棒で二人は挽肉に……。(フォロー)
鋼シールド(守備力12)
ミスリルシールド(守備力23)
禁忌の盾(守備力65)
オカマサ「ところで、俺たちを回復させる時に手の甲の『刻印』に新しく追加された剣の印がXの印に変わったね?」
ナッセ「ああ。『僧侶』の特化型に変化して回復魔法使ったんだ。
今のままでも同時に別クラスのスキル使えるんだけど、ヤマミの特化型を参考にして創作したんだぞ。これでクラス特化に切り替えて戦い方を変えれるんだぞ」
ヤマミ「私のを参考……私のを参考……私のを(エンドレス)」(///A///)ボフン!
次話『ついに王子たちとナッセとの激突!? ノーヴェンの策とは?』