166話「猛襲型刻印獣の強襲! だが負けん!」
キーダの駆るグリフォンに相乗りするシロウが、目の前のヒトデ型浮遊艦を見据える。向こうに見える山のように超巨大で、赤く灯る刻印が模様のようだ。
その周囲及び前方を未だ飛行型の刻印獣がイナゴの群れのように点々の集合体が波打って揺らめいていた。
「あの馬鹿が……。何でもかんでも背負いやがって」
襲いくる飛行型の刻印獣に、シロウは左右に浮かぶ『衛星』の氷塊をパキパキと分割させて散弾に撃ち出す。
その下でナカヤが剣を振るって刻印獣を斬り散らしていた。
────シロウは富山県代表のA級創作士で、キーダとナカヤとチームを組んでいる。
初めてナッセに会った第一印象は身の程知らずの馬鹿だった。突然のマイシの強襲がきっかけでナッセたちの実力と真意を知った。
それでも仮想対戦を練習台にする馬鹿としか見ていなかった。
ナッセたちを師事している妙な女が『星獣』をあっけらかんと暴露した。説得力もあってか半信半疑くらいだ。
……本当だった。
並行世界の記憶を知った今だから言えるが、ナッセたちが必死になるのも分かるくらい絶望的な存在だった。
繰り返される終末の果てに、俺は死の間際見た。
ナッセが朱に染めた白い羽を弓に、妙な鍵を射って星獣を倒した光景……。
どういうわけか、あの鍵によって星獣による終末は消え去った。
しかもその星獣を友達にした上に、日本を滅ぼそうとしたクラッシュオーガまで倒した。
で、今度は日本をも征服するほどの四首領を相手に、アメリカヒーローと連合を組んで戦争をやらかしている。その後は大災厄が待っている。
……どんどん話が大きくなっていく。
「規模が大きくなっていくっすね……」
「どこまで行けば気が済むんだあの馬鹿。だが無茶だけはしてくれるなよ……」
ナッセの安否を胸に、巨大な氷塊を丸ごと撃って大勢の刻印獣を屠る。
蛇をマフラーのように巻いて黒いローブを着た青白いハゲおっさんが、同じような黒いローブの連中を率いてきた。
「左手に添えるは生の魔法。右手に添えるは死の魔法。
それを融合させた最強大魔法! 究極混沌魔法────!!」
両手から放つ漆黒混じりの極太の光線が、直線上の刻印獣を次々粉砕していく。
連中もバカ一つ覚えのように『究極混沌魔法』を連発し続けて、光線をあちこち放って、刻印獣を蹴散らしていた。
「暗黒魔術師団も参戦だァ!! いいか、星獣や人造人間どもの脅威から救ってくれたナッセ殿の為にも、我々も身を扮して戦わねばならんッ!!」
「うおおおおお!! バゲテモータ様! バゲテモータ様ァ!!」
黒幕っぽい怪しいハゲが凄い剣幕で吠え、異様に盛り上がる部下たち。
他の創作士は「なんであんたらいんの?」と突っ込む。
「行くぞォォォ!! 究極混沌魔法!!!」
《フッ! 究極混沌魔法か……。ヤツが抵抗してたのを思い出すわ》
なんとニワトリ型の機械獣がバサッと大きな翼を広げた。
しかし何百人もの鳥型宇宙人を生け贄に捧げてないためか、二階建ての家くらいの大きさでしかなかった。代わりに周囲に鳥型宇宙人がわらわらと宇宙銃を引っさげて隊列を組んで、身構えた。
「宇宙船が宇宙機獣王メカニワトーリになった上に小さくなった為に、我々は故郷へ帰れなくなった。ここに骨を埋めるしかない!」
「だが日本の環境は大変素晴らしかった!!」
「よそ者の我々にも差別なく暮らしやすかった! 居心地が良かったぞ!!」
「子供も学校へ通わせてもらって喜んでくれたのだ!」
「許せん!! 我々の心は既に日本人だ!! 故に奴らを許せん!!」
「おう!! やってやるぜぇー!!!」
一斉に宇宙銃から電撃光線を放って、ボカンボカン刻印獣を撃破していく。
他の創作士は「なんか知らぬ間に、そんなエピソードが……」と呟いた。
《我が力を思い知れッ!! 天獄降雷破────ッ!!!》
メカニワトーリは開いたクチバシから稲光纏う極太光線を放射した。刻印獣の群れのど真ん中に大爆発が轟音を伴って広がる。豪快に数十体が粉々に吹っ飛ぶ。
変なメガネをかけた白衣を纏う博士風の超能力者の集団が「サイコウェーブ!!」と虹色の波動を放ち、刻印獣をボカンボカン破裂させていく。
「ピピピ! ナッセも異世界移転するらしい! 我々も便乗せねば!!」
「……以前はブラックホールうっかり作って地球ごと消滅させちゃったしね」
「言うなァァァァァ!! 俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!」
他の創作士は「元凶はアイツか……」と察した。
巨大な竜巻が疾走って、刻印獣を渦に巻き込んで粉々に砕いていく。
「ナッセって結構人望があったのね。変人ばかりだけど助かるわ……」
竜巻で一掃してトルネードヴィーナスはふうと一息。
しかし他の創作士は呆れ気味に「いやアレは違うと思う……」と首を振る。
「なかなか面白い連中が多いな。これもナッセとの縁か……」
不敵に笑むヤミザキはギュッと拳に力を込め、その赤い刻印を輝かせる。
「様子見は終わり……。これより『猛襲型・刻印獣』を創作する」
優勢に押し切った第三陣の戦力層を前に、散っていく刻印獣。
しかし、散らばった刻印獣の欠片が蠢き出して、ズズズズ……と集合して再び刻印獣へと復活するように形を整えていく。
「見ろ! 破片が!」
「……なんてこった!」
「これじゃキリがない!!」
ざわめく創作士たち。しかし、次第に青ざめていく。
「いやこれは……!? 再生なんかじゃない……!」
ズズンと大きな足を踏み鳴らす。巨人の骨格っぽい刻印獣。しかも数十体あちこち聳えていて恐怖すら感じさせる。
それだけじゃない。
頭骨に三本の大きな角とフリルが特徴の巨獣骨格の刻印獣。
空に舞うは、無数の翼を持つ鯨の骨格。人型に近い竜の骨格。超大型と大型が群れをなして進軍。
「ギガント型、トリケラトプス型、フライホエール型、ドラゴン型だ。どこまで持つかな……」
ギガント刻印獣は口を開き、眩く光を見せていく。ボッと高速で吐き出し大爆発が遺跡ごと創作士たちを吹っ飛ばした。
ズンズン二足歩行で進撃しながら、咆哮弾を連射していく。
更にトリケラトプス刻印獣も俊敏に動き回り、次々と軍人を角で引き裂いていく。
空からはワイバーンとは比べモンにならないドラゴン刻印獣が群れでブレスを一斉に吐き出す。連鎖するように爆炎が次々爆ぜた。
「ぐわあああああ!!!」
「ぎゃあ!!」「ぐおお!」「ぎはあっ!!」
バンバンバンと爆ぜ続ける爆風に吹っ飛ぶ数人。
「く、くそっ!!」
並べてある対戦車砲台を次々発砲。空に打ち上げられた無数のミサイルが弧を描いてそれぞれ刻印獣へ直撃。大爆発がドンドンドドンと炸裂していく。
しかし煙幕が晴れると平然とする刻印獣が姿を現す。
軍人たちは「なっ!」と青ざめた。
「攻撃力だけじゃねぇ! 防御力も異様に高ぇ!!」
「くそっ! どうなってんだ!!」
反撃とトリケラトプスの突進が、遺跡ごと軍人や創作士を無残に引き裂く。
群れを成すドラゴン刻印獣のブレス攻撃で第二結界の砦が爆破四散し、障壁は掻き消えた。
「くそ! やられた!!」
「踏ん張れ!! まだ第三結界がある!」
「引き返して迎え撃て!!」
第三陣は攻撃の手を休めず、後退して第三結界内で態勢を整える。
「シュパパー」「シュパ」「シュパッ!」「シュパシュパ!!」
ミニシュパが隊列を組んでライフルを発砲。ズガガガガと集中砲火でトリケラトプスを二体ほど爆散。
ヒーローとヴィランと日本創作士が十人がかりで、獰猛に暴れまわるトリケラトプスを必死に抑え込むように徹底抗戦する。
「ハァハァ……! くっ!」
「今までとまるで強さが段違いだ!!」
「合体した分、数はかなり減ったがそれでも多過ぎる!!」
「もうダメか……!?」
戦場を突き抜ける業火の波動がトリケラトプスを五体ほど粉々に押し流していく。放ったのはバーニングガイ。憤怒の表情だ。
「諦めるな!! 我々の未来を勝ち取るためになッ!!」
バーニングガイは「ぬおおおお!!」と鬼気迫る勢いで駆け出し、火炎の拳をトリケラトプスの頭に叩き込んで爆砕。粉々に爆ぜていく。
空からドラゴンのブレス攻撃がバーニングガイを呑み込み、大爆発。
しかしそれさえ「うぬがああああッ!!」と死に物狂いの気力で突っ切って、逆に炎の拳のラッシュでドラゴンを激しく滅多打ち。瞬く間にボロボロにしていく。
「ス……スゲェ!!」
「よし! 負けてられないぜ!!」
「卑怯でもなんでもいい、フクロにしちまえ!!」
これまでとは違い、ドカンドカンと爆発が絶えない激戦になっていく。
ミニシュパのライフルと戦車が火を噴き、ギガントの咆哮弾とドラゴンのブレスが放射。それぞれ飛び交って互い爆発に巻き込まれていく。
バーニングガイ、ダークシャドー、チェーンヘルザ、トルネードヴィーナスなどもそれぞれの戦地で奮戦して、多くの猛襲型刻印獣を撃破。
シロウ、キーダ、ナカヤは敢えて第二結界内の陣地で辺り一面銀の世界に変えて、動きが鈍っていく猛襲型刻印獣を粉砕していく。
ミニシュパたちも白兎バージョンになって「シュパシュパー」と銃撃でフォローしていく。
「この舞台なら、私も独壇場ね!」
新しく出た『スノウーマン』と呼ばれる雪女ヒーローが雪原をスイスイ駆け回りながら、猛吹雪でトリケラトプス刻印獣を数十体氷漬けにしていく。そこを複数の氷系ヴィランが食い散らかす。
更に北海道産の日本創作士であり、白狼の『蛮族』が群れで刻印獣を狩っていく。
「……三人だけでどこまで耐えれるか覚悟してたんだが」
「これだけ味方が多いと助かるっすね」
「フッ! そうだな」
「ひょおー! マジ頼もしいわ」
絶対防寒仕様のペンギンコートを着ているナカヤも彼らと一緒になって徹底抗戦。
それにより、ギガントやトリケラトプスは次々撃沈されていく。
「思ったより粘るな……」
ヤミザキは眉を潜める。
イロモノを寄せ集めた烏合の衆と侮っていたが、その考えを改めた。奴らには何か強い結束力を感じる。
おそらくこの戦争だけが目的じゃないのだろう。
「……やはり大災厄か!」
あとがき雑談w
ナッセ「大災厄とはなんなのか推理するぞ?」
ヤマミ「……地球の環境が荒れて大変ってレベルじゃないわよね」
ウニャン《まぁ、星獣で何度も躓いてたから知らないのも無理ないよね》
ヘイン「なんじゃ? 知らんのか? この世界と異世界を混ぜようとするラスボスって聞いとるぞ」
ナッセ「ええー!? 『洞窟』で異世界が繋がったのではなくて?」
ヘイン「ちゃうちゃう。『洞窟』は副産物じゃろ?」
ヤマミ「…………」(知ってるけど、言わない方がいい空気)
アメリカジェネラル「宇宙の帝王で戦闘力1億2000万と聞いている」
ヘイン&ナッセ「それ某漫画のヤツ!! フ○ーザちゃうわッ!!」
ヤマミ「くすっw」
何度も出てくる『大災厄』の正体とは!? 真相がわかり次第、追って報告する!
次話『ついに王子たちが……と煽り文句w』