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159話「行くぞ! 大防衛戦開始!!」

 煙幕漂うモニターを眺めて、フッとヤミザキは笑う。


 ようやく煙幕が晴れ、地盤がえぐれた無残な荒野が見えてきた。そしてその中心部で無傷の機密要塞が徐々に姿を現した。ただ一番外側の第一結界が今ので剥がれてしまっていた。残り四つの結界。

 ヤミザキとしては三つくらい剥がせると思っていて「意外と頑丈だな」と逆に感心した。



「このー! いきなりソレはないでしょー!!」


 激昂したリョーコは斧をブンブン振り上げる。

 アクトもみんな無事だ。ホッ!

 つーか容赦ねーな! 亜空間じゃなかったらアメリカ壊滅してるぞ。


「しかしノーヴェンの()()は正しかったなぞ……」



 ヒトデ型要塞から立法映像がビキンと構築され、ヤミザキの姿が映し出された。

 思わず畏怖してしまいそうなほど、映像越しから強烈な威圧感が重々しく感じる。

 鋭い眼光、大胆不敵な笑み、年季の入った表情。付け入る隙が窺えない……。

 だが因縁からか、オレとヤマミはカッと激情を燃やす。


「ヤミザキッ!!」「……ヤミザキ!」


「宣戦布告代わりの祝砲はいかがだったかな? さて最高機密要塞の創作士(クリエイター)どもよ聞くがいい。私こそ日本の四首領(ヨンドン)ヤミザキだ!」


 軍人や創作士(クリエイター)たちがザワザワとざわめく。

 高圧的な四首領(ヨンドン)を直に見たのが初めての人もいて、恐れを抱く人もいた。先ほどの先制攻撃もあってか腰が引けている人もいた。


「……ヤツこそが日本の四首領(ヨンドン)ッ!」

「何が目的でこのような事をッ!!」

「こんな事をしておいて、ただで済むと思うか?」


 ヒーロー側は逆に燃えていた。



「こたびの出征は我が後継者のナッセを保護、そして最高機密要塞の制圧にある! 早々に退いてくれば見逃してやろう」

「なんだとッ!?」

「ふざけるな!! そう簡単に要塞と味方を売ると思うかッ!?」


 ヒーローたちはああ言ってくれているが、周囲の人がオレを見る。名も知らぬヒーローやヴィランの目が痛い。

 リョーコは構えるが、アクトは肩に手を置いて「大丈夫だァ……」と落ち着かせる。



「あんまり俺たちを舐めない事だ!」


 意外にもそこら辺のヴィランが吠えた。

 他のヴィランも拳を振り上げて「そうだそうだ!」と声を上げる。思わず目を丸くする。

 ビビって裏切るかと思われたヴィランが意地を見せているのだ。


「ヴィランなのに……?」

「関係ないさ」


 近くにいたヴィランは凶悪な仮面ながらも、オレの肩に手を置いた。


「裏切り、騙し討ち、不意打ち上等。だがそれは明確に敵対している時だけだ。……これから先起こるであろう大災厄を前に我々は一丸となって挑まなければならない」

「そういう事だ。我々は反社会的勢力ではあるが、信用第一なのは同じ」

「心配すんなって! もし誰か裏切ったらボコるわ」

「おお!! だがな、全て終わったら再び敵対するからな? その時は覚悟しろよ?」


 ヒーローヴィラン関係なく、力を合わせなければならぬ恐ろしい大災厄を前に誰もが力を合わせようとしているんだ。

 なんだか心強く思えてきた。

 一時的とはいえ、敵味方関係なく同じ仲間ってのは嬉しい。


 今度はヘインを映す立体モニターが機密要塞前に映し出された。


「へははっ! そういうことじゃ! 悪ぃな!」

「……同じ四首領(ヨンドン)ヘインまでもが、ヒーローどもの軍門に下るとはな」

「かっかっか! それは勘違いじゃ! ナッセもじゃが、余たちと同等に渡り合える面白い奴らと手を組むのも一興かと思ってな! そちらこそ覚悟せえ!」


 吠える魔皇帝(イビル・エンペラー)ヘインの凄まじい気迫。ズシリ、と威圧が吹き荒れた気がした。

 オレといきなり戦ってきたのはそういうワケか……。



「そういう事なら何も言うまい」


 ヤミザキは目を瞑って首を振る。次第に殺意が膨れ上がってきて、ピリピリと空気が緊張に張り詰めていく。

 闇で覆う恐ろしげなヤミザキの形相がクワッと見下ろしてくる。


殲滅(せんめつ)あるのみ! ヒーローヴィラン共々仲良く地獄へ落ちろ!」


 プツン、と突き放すかのようにモニターが消える。


 そして同時に、巨大浮遊艦の周囲から霧のように大群らしきものがパララッと散開していく。最初は赤い卵だったがメキメキと変形をしてモンスターを象った骨格っぽいのになった。

 地上へ降りてきたのが、ゴブリンやオーガーみたいな形状の骸骨。空を飛来するコウモリやワイバーン型の骸骨。それはまるで骸骨の百鬼夜行だ。

 数百万もの大軍がぞろぞろと押し寄せてくる……。


「愚か者共、『刻印獣(エンチャントビースト)』の大軍を前に、自らの過ちを後悔するがいい」


 ヤミザキは冷淡な笑みで高みの見物だ。



 進撃する刻印獣は第二の結界に触れると、ジリジリ穴を開けて難なく侵入。

 しかしそれを阻むように、地面からボコボコと隆起してくる岩が瞬く間に広大な遺跡を形成した。


 ……これはヤマミと一緒にグレンと戦った時と同じ?


 機密要塞のエントランスでグレンが拳銃を肩に乗せ、不敵に笑んでいた。

 そう、地竜王である彼は大地を操って即席の防壁を敷いたのだ。そのおかげで刻印獣の射撃が遮断されていく。



「よし!! 迎え撃て────ッ!!」


 軍人は対戦車砲や戦車などで弾丸をドカンドカン撃ち出し、敵軍の群れに爆発が次々と炸裂。

 更に創作士(クリエイター)が放つ魔法や矢、ミニシュパのライフル射撃も加わって、その弾幕で爆発が連鎖していく。しかし向こうは委細(いさい)構わずズンズンと進撃してくる。

 先制の射撃で何十体か撃破していくが、如何(いかん)せん物量が桁違いだ。


 広げた『察知(サーチ)』で刻印獣たちを感触────。

 生命体らしい感じはなく、まるでゴーレムみたいな魔法生物のようだった。それに安堵。


「安心してくれ! 中の人はいない!」

「よっしゃあ!」

「思う存分ァ、暴れてやるぜッ!!」


 オレたちは地を蹴り、瞬足で遺跡を駆け抜け敵軍へと向かう。


「おおおおッ!!」


 入り組んだ遺跡の地形を利用して、上下左右斜めと跳躍を繰り返しながら刻印獣を数十体斬り刻んでいく。そして上空から「フォール!!」と急下降して地面ごと刻印獣の大群を吹っ飛ばす。


 アクトが刀を突き出したまま突進、刻印獣を次々と串刺し。更にそのまま粗暴に振り回して、周囲の刻印獣をまとめて砕く。

 オレとアクトは「いっせーのォ」が聞こえると、揃ってジャンプ。


「スラッシュスレイヤーッ!!」


 横一閃と広大な斬撃が、遺跡ごと一斉に刻印獣の群れを刈り取っていく。


 大型刻印獣が防壁を突き破って背後から襲いかかってくるが、そのままバックステップで肘打ちをみぞおちに叩き込む。そのまま光の刃が背中から突き出て、更にそれを撃ち出して後方の刻印獣を複数まとめて『炸裂剣(バーストソード)』で木っ端微塵に破砕。

 かつて『格闘僧(モンク)』と『暗殺者(アサシン)』してただけあって、軽やかな体術と、全身から刃を出せる変幻自在な戦法で敵を寄せ付けないぞ。


「うらああああああッ!!」


 アクトは豪快に刀をブンブン振り回し、数十体の刻印獣を粉々に散らす。

 再びリョーコの三日月描く斬撃が百体及ぶ刻印獣をまとめて一掃する。


 オレとアクトとリョーコは互いに背中を合わせ、身構えた。


「へっ! 二人ともいいぞァ……」

「ああ!! 体あったたまってきたぞ!」

「うん!」


「体力の配分に気を付けろよォ?」

「分かってる!」「そっちこそ!」


 またワラワラと刻印獣の大軍が押し寄せてくる。オレとアクトは「行くぞ!!」と駆け出す。

 リョーコも「いっせーの!」と斧を引いて、大地を揺るがす荒々しいオーラを漲らせていく。




 黒マフラーをなびかせ、クールなヤマミの周りを黒い小人が踊りながら周回。

 その小人はヤマミを模している『分霊(スクナビコナ)』であり『血脈の覚醒者(ブラッド・アウェイク)』の能力も合わさっている。それらは地面に潜って地形を這うように伝播。入り組んだ遺跡の防壁を難なく通り抜けて、刻印獣へ被弾して黒炎を噴き上げる。

 あっという間に黒炎の灼熱地獄が広々と燃え上がって、刻印獣の大軍を喰らい尽くしていく。


 エレナは負けじと軽やかなアクロバティックな体術を披露して、刻印獣の群れを次々粉砕していく。

 刻印獣は口を開けビームを乱射するが、エレナは構わず突っ込む。肌だったそれは銀に煌く金属体に変わり、ことごとく弾いていく。

 そして前転宙返りかかと落としで刻印獣を数体粉々に砕く。


「あらあら~! 二人も『血脈の覚醒者(ブラッド・アウェイク)』がいると楽だね~」


 スミレはのほほんと、襲ってきた刻印獣に掌底を打って砕く。




 コハクは周囲に無数の槍を複製し、刻印獣の射撃を弾いていく。

 そして三叉に分岐した槍を振るって、前方の刻印獣の群れを斬り刻んでいく。


 シナリは手を掲げ、螺旋を描く旋風の回転ノコギリを浮かせる。


「風神・旋風車────ッ!!」


 投擲し、軌道上の刻印獣を細切れに裂いていく。そして最後に球状の竜巻に展開して数十体の刻印獣を塵芥(ちりあくた)に斬り刻み、そのまま前進しながら餌食を次々増やしていく。


 モリッカは「はああああ!!」と電撃を全身に迸らせながら、拳と蹴りの嵐で刻印獣の群れを粉砕。掌から雷撃を撃ち、数十体の刻印獣を爆ぜた。すれ違うようにコハクの槍が複数飛び、反対側の刻印獣の群れを砕く。

 コハク、シナリ、モリッカはそれぞれバラバラながらも絶妙なコンビネーションで、敵の大軍をものともせず蹴散らしていく。




「ぬおおおおおおおッ!!」


 三メートルの巨躯に膨れ上がった筋肉質のフクダリウスが斧を振るい、刻印獣を数十体豪快に吹っ飛ばしていく。

 続いてタネ坊とキンタは真剣な面持ちで俊敏に駆け抜け、息のあったコンビネーションで次々薙ぎ倒していく。

 フクダリウスはそれを見て安心した。

 ヘインの威圧に屈していた時とはまるで別人だ。


「フフッ、また劇薬でも使ったのか?」


 フクダリウスの側へ、タネ坊とキンタが着地しニッと笑む。


「まさか? もう劇薬になど頼らんさ……」

「せや! ただちょいと『誓約(せいやく)』してるんや!」


 ただならぬ決意を窺わせるように、二人はギラリと鋭い眼光を見せる。

あとがき雑談w


刻印獣(エンチャントビースト)

 ヤミザキが『刻印(エンチャント)』を変化させて剣など武器に生成するのと同じく、様々なモンスターを骨格の形として生成する。

 パワーアップしている為、日本人全員の総力も合わさって、何百万体もの大軍を生成できるようになった。敵のバリアを中和して無効化できるのが厄介。


ナッセ「ソシャゲで例えるなら、量産して出せるモンスターって事かぞ?」

リョーコ「周回で狩るタイプよねーw」


ヤミザキ「ちなみに今の所は『ゴブリン』『オーガ』『コウモリ』『ワイバーン』タイプを出しているぞ。まだこれから強力なタイプも出すから気を付ける事だな。

 さてレイドボスも考えておこうかな……?」フッフッフ!


ブラヴァツキー「ヤミザキちゃん、ノリノリで製作語ってーるぅ!?」



 次話『新たな新種……? 本当の地獄はこれからだ……!』

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