158話「大戦開幕の号砲!! 滅びの光!」
総統継承式後、日本各地へ帰っていった人は何事もなかったかのように、いつもの変わらない日常に戻っていた。
日々会社に勤めるサラリーマン。学校で授業を行う先生と多くの生徒。輪で囲んで駄弁ったり、スーパーへ買い物に行ったりしている主婦。イチャイチャして甘酸っぱい青春を謳歌するカップル。
のほほんとした情景だった。
夕日が沈もうとする頃、山脈は黒く影に覆われている。次第に地鳴りがそこらじゅうに響き渡っていく。
ゴゴゴゴゴゴゴ…………!
なんとヒトデのような巨大な浮遊物体が夕日の空に浮かび、それを目の辺りにした付近の町の人は「な、なんか浮いてきたァ!?」「怪獣か!?」「化けモンだァ!!」と驚いていく。
超大型浮遊艦内部の操縦席で威風堂々とするヤミザキ。
そして後方で王子たちが真剣な面持ちで並ぶ。
第一子コクア、第二子ブラクロ、第三子ダグナ、第四子ライク、第五子カゲロらが勢揃いだ。更に後方で好々爺風に見守る黒執事のダクライ。
「皆の者心して聞くがよい。私は夕夏家総統ヤミザキ。今回の出征地はアメリカ! 目的は後継者の捕獲と最高機密要塞の制圧だ!」
「ハッ!」
操縦席に座したままヤミザキは赤い刻印を解放し、ズズズ……と全身を這うように展開。顔面にも左右対称の紋様が広がっていく。これで準備万端と不敵に笑む。
なんと漆黒のヒトデ状の『超大型浮遊艦ヒカリバナ』の外壁にも赤い刻印が上部の中心から放射状のように広がっていく。
不気味に赤く輝く紋様で、まるで怪獣にも錯覚するほどにドクンドクンと鼓動のような響きが広がった。
すると日本人全員はビクンと硬直、手の刻印が輝き出して目にも紋様が浮かび出す。
まるで宗教の集いのように、みんな一斉に両手で組んで祈りだす。赤い稲光が迸り、凄まじい鳴動を引き起こしていく。その膨大な総力がヤミザキへ注がれていく。
「これより『超大型浮遊艦ヒカリバナ』発進する!」
浮遊艦の周囲がグニャリと螺旋状に歪んでいく────!
星々煌く深夜の元、最高機密要塞は警戒するようにライトアップを揺らせ、慌ただしく軍人や創作士が行き交う。それぞれは戦場となる自分の持ち場へと整列していく。
最高機密要塞を囲む五重の巨大結界がピキンと浮かび上がっていく。明らかに外敵を拒む姿勢だ。
そして、最高機密要塞内部の総司令室にて、操縦席に四首領ヘインが座していた。
「最大出力で五重層結界を強めておいたわ! 操縦とそれに必要なエネルギーは余が引き受ける。
司令官アメリカジェネラル、指令補佐はノーヴェン、指示は任せてええか!?」
「ああ! 分かった任せておけ!」「ラジャーデス!」
側でアメリカジェネラルとノーヴェンは真剣な顔で頷く。
更に後ろで控えるはヨネ校長。手にスーパー聖剣をぶら下げている。
「シュパー」「シュパパー」「シュパシュパ」「シュパシュパパー」
周囲にわらわらと、ヘインを二頭身にデフォルメされたような小人たちが張り切っている。
ヘインの『分霊』で、名前はミニシュパ。それぞれが独自の人格を持ちながら本体の分身も担う。
更に、ここにだけではなく、要塞の内部や外部の各地に散らばって兵隊代わりも請け負っていた。その兵力は数千及ぶ大軍だ。
「さすが四首領だなぞ……」
「あァ……やるじゃねェか!」
「分身多すぎィ! 四首領ってそんなバケモノ揃いなのー!?」
オレはと言うと、アクトとリョーコでスター新撰組としてスリーマンセルで外部で臨戦待機だぞ。
その周りでミニシュパたちが「シュパシュパ」士気高揚とはしゃいでいた。
ふざけたナリだが、実際に戦った体感としてはかなり強い。分身だけあって、サイズは小さいもののヘインの能力をそのまま持っている。
……難点は何言ってるか分からない事かなぞ。シュパ語……?
とは言え、ヤマミ大丈夫かな?
チーム分けの時、オレとは別に配属されて「私の方がナッセと上手く組めます!」と必死に訴えていたぞ。
でもノーヴェンは「最初っから手の内を晒したくないのデ、今は別々で頼みマース」と訴えを退けた。
ズーン、とかなり落ち込んでたから「大丈夫」と抱きしめて慰めた。
エレナが「あー! ズルいッ!!」と絶叫し、咄嗟にスミレが羽交い締めしてくれたぞ。
終始、狂犬並に唸ってたけどぞ……。う~、がるる……!
「ジャマミ~! 抜け駆け許さないからっ!」
涙目で睨みつけてくるエレナに、黒マフラーなびかせるヤマミは素知らぬ顔だ。
それを「二人とも仲良くねぇ~! 久しぶりのチームだし~」と、ニコニコなスミレがポンと合掌する。
タネ坊は悔いた顔で頭を垂れる。
「今まで済まなかった……。許される事ではないのは百も承知……。だがまた再度力を貸して欲しい」
「ああ。ワイもやりすぎたー思ってるねん。ほなお願いや……」
「全く。だがこうして久しぶりに『無頼漢』チームを再結成できた事に喜ぼう」
タネ坊とキンタの後ろから、大柄なフクダリウスがズンと足を踏み鳴らす。
茶髪ロングを揺らす大人びた美女。青いマントをなびかせ、鈍い銀に反射光が走る鎧。そして巨大な銀狼にまたがっていた。
「ノーヴェンの代わりに私が入る。よろしく頼むぞ!」
「ああ! よろしく頼むZE!」
「ふむ! クスモ殿であれば、拙者も思う存分刀を振るえるもの」
後ろで決闘者ミコトと侍コマエモンが並ぶ。
「なんで僕がこの二人と……」ブツブツ……。
「コハクと一緒! いーっしょ!」ケヒャッヒャ!
「カオス枠! みんなカオス枠! つーことで「デンシャラス・カオス」チームだぞー!」
コハクは「却下ですっ! 君たちと一緒にしないでくださいっ!」と慌て、それを面白がるモリッカ、そして飄々とするシナリの珍しい組み合わせだ。
「まさか生きてたとはなし……」
「ほっほっほ。かつての戦友として、今は共闘といきましょうか」
「フン! ふざけるなし」
マイシには、死んだはずの人造人間ケン治がついていた。
もう一人は日本側の創作士らしい。何故か怪しげなフードをかぶっていて全身が隠されて顔も窺えず、二つの目がキラキラしている。
某漫画で言う、登場するまで分からないキャラである。
「姉さん……」
その他にもヒーロー、ヴィラン、日本の創作士などがそれぞれチームを組んで、機密要塞の周囲を陣取っていた。
更に軍人たちが部隊を組んで砲台や戦車を率いて臨戦態勢に構えていた。
緊張で張り詰めていて、そのせいかドクンドクンと自分の心音が聴こえてくるようだ。
「……ノーヴェン殿の言うことは確かか?」
「分からない。だが」
「ああ。アメリカジェネラル殿も信じておられた。ここはノーヴェン殿を信じてみよう!」
軍人たちも不安ながらも、各々覚悟を決めた。
「ナッセ! 分ァってると思うが、覚悟決めろォ……」
張り詰めた空気の最中、アクトが側に立つ。
筋肉隆々で大柄な恵まれた体格。オレなんかよりも戦闘向きだ。そして数々の傷跡が死線をくぐり抜けた雰囲気を醸し出している。
「アクト……」
「多くの人が死ぬ。それが戦争だァ……」
「ああ分かってるぞ! 腹くくってる!」
更にリョーコも「うん! あたしも腹決めた」と並んでくる。
みんな無事で生き残れたら、と理想に思うが戦争は残酷。
戦禍が起きれば容赦なく命は散っていく。そんな事は繰り返した転生で嫌というほど味わってきた。
地竜王グレンとの戦いで多くのヒーローが散った地獄。
庇ってくれたリョーコの死。
命を盾にして踏ん張って息絶えたフクダリウス。
そしてオレを生かすためにヤミザキと自爆をしたモリッカ。
自分自身が魔王化しそうになった時、ヤマミに介錯を──────。
いずれも自他共に深い傷を心に残した。
二度と味わいたくも、味わせたくもない。だから……!
「絶対に生き残ってやるぞッ!! またこの三人で仮想対戦へ行くためにッ!」
「あァ……! ったりめェだろァ!」
「あったりまえ! つまんない事で死なないでよねっ!」
一緒に気合いを入れてくれるアクトとリョーコ! 気力は充分!
未だヤミザキは日本にいる。
だが、あのノーヴェンが指示してくれた。絶対確証があると信じて、今すぐにでも戦えるつもりだ!!
「いつでも来いッ!!」カッ!
その時、感じていたヤミザキの位置がフッと瞬時にここへ現れた!
時空間魔法だと……ぞッ!?
前方の夜空が螺旋に歪み、赤黒い大渦が一気に拡大。赤い稲光を迸らせ、ついに巨大な浮遊物が荘厳と姿を現した!
ヒトデみたいな巨大な浮遊要塞で来やがった!? ……デカい!!
見ているだけで圧倒的な存在感を見せ付けられる!
途端に、周囲の世界は反転して戦闘用の亜空間へと切り替わっていった。
巨大浮遊艦下部の中心部にある巨大砲口から光が唸りを上げながら膨らんでいき、それに伴って稲光が荒々しく放射されている。
既に敵の主砲は発射手前だ!
誰もが絶句────。
キッと踏ん張りを効かせ、湧く恐怖を押し込めた。
ドズオッ、大気を破裂させんばかりの轟音と共に極大光線は撃ち放たれた。超高速で大地を一直線に裂きながら機密要塞の五重結界と衝突、カッと閃光が爆ぜた!
激しい直下型地震が襲い、オレもリョーコもアクトも目を瞑って「ぐっ!」と腕で顔をかばい立ち堪える。
全てを吹き飛ばす滅びの光。地盤は削られるように粉々に舞い散っていく。
ズゴ────……ンッ!!!!
宇宙に漂う丸い地球の暗い表面に、一点ボウッと光が噴いた。
無人のアメリカ大陸に衝撃波が波紋のように広々と吹き荒れ、遠くにあるはずの高層ビル群を突き抜けるように通り抜けた。
激しい地響き。多くの車が軽々と空に舞い、木々や電灯柱などが吹っ飛び、破片などがパラパラ流されていく。いくつかビルが傾き、倒壊してゆく。
太平洋など周囲の海にも影響を及ぼし、荒波が獰猛に暴れまわる。高々と伸びた大津波が陸地をザバーンと飲み込む。それによって勢いよく流されてゆく建造物。
ズズズズ…………!
日本からも肉眼で見えるほど、地平線から巨大なキノコ雲が噴き上がる……。
ブオッと烈風が無人の日本列島を通り過ぎていった。
あとがき雑談w
ブラヴァツキー「えー! ミーちゃんいつ出るのーお!?」
ヘイン「なんじゃワレェ!? 今取り込み中じゃ!」
グランドルフ「いえーい! いええい! ボクね地底ヴィランのボスだよー!
ボクね、再採用を期待しているんだけどぉー? ダメかなー?」
宇宙帝Z「颯爽と加勢して、タキオンZソードでヤミザキをシバき乙する予定まだですかぁぁぁあ?」
作者「考えてませーんw」(*^ω^*)てへw
ちゅど───────Z────────ん!!!
ブラヴァツキー「作者の死亡確認でアール! わははははーはw」(≧∇≦)/
次話『いきなりナッセたち全滅……だと……ぞ!?』(ウソ予告w)