155話「最高機密の全貌! レコード!?」
「やべぇ……やっちまったぞ……!」
辺り一面真っ平らで破片が散らばっている荒野。要塞は跡形もなく────!
すると上から塗りつぶされるように風景が徐々に切り替わって、元いた大要塞のエントランス前へ戻った。見渡せば何事もなかったかのように破壊跡は全く見当たらない。
白昼夢かと思うほど、唖然させられた。
思いっきりヘインとやり合う前に、いつの間にか反転空間に転移してたらしい。
エンカウント空間と同じ理屈で、任意で発動できる技術があるのか……。
まるで異世界のリボナ村でマイシと戦う時に展開したのと同じだぞ。
「へっはっはっはっはっはっはっは!! スカッとしたわい!」
大笑いするヘインに、怒りを漲らせたアメリカジェネラルが歩み寄る。
「いきなり何事だ! ついさっき不可侵条約交わしたばかりじゃないかッ!」
「ちいっと試しただけじゃろが! 戦闘空間に反転できると分かってたから仕掛けたんじゃが!」
「うっさいわ!! 合図ぐらいしろ!! ……全く!」
そのやりとりにポカンとする。
────実はこれから起こる大災厄を前に、敵対している場合じゃないとヒーローとヴィランは、事が収まるまで共闘しようという事になっていた。
それは無論、四首領ヘインたちにも交わされていた。
「つーか、そろそろ機密について話してくれない?」
オレの側でリョーコはジト目をしていた。アメリカジェネラルは「ん? ああ済まない」と後頭部をかく。
何故か背後からヤマミが忍び寄ってきてオレの肩に手を置く。
気付けば、オレとリョーコの間に割って入っている形になっている。なになに??
「こいつら借りるぞ。……来い」
「り、了解……」「了解や……」
七皇刃の一人であるグレンは不機嫌そうにやってきて、タネ坊とキンタを連れてどっか行ってしまった。
ヘインたちも「じゃあな。小童ども」と通り過ぎていった。
────最高機密要塞。
それは世界を覆しかねない『モノ』を厳重に守り、監視する施設である。
悪用すればたちまち災厄級に人類へ甚大な被害をもたらす可能性が高い。故に安易に使われないように建てたらしい。
……要塞の内部。最初はホテルのような基地のような構造だったが、奥に進むと要塞のコアの真下にホールのような大広間が見えた。床に大きな魔法陣が複雑に描かれていた。
そこへオレはヤマミと一緒に、そしてヨネ校長と学院の生徒たちと一緒に連れられた。
「ひゃあっ!!」
リョーコは飛び上がる。
なぜなら魔法陣を見張っている妙な生き物が円陣を組んで並んでいたからだ。それは両目付近に二本の角が生えた白いカエルみたいな体型で「グルルル」と唸っている。
「どうした?」
「あ、あわわわ! へ、変なカエルががが!」
オレにしがみつくようにリョーコは震えていた。
こちらをクンクンと嗅ぐ仕草をすると、目を瞑って沈黙した。
「英語で説明してたけど、ずっと昔から守っている小型の星獣があちこちいるぞ」
「えええ? マジで星獣ぅ?? ちっちゃいのにぃ?」
リョーコは目を丸くする。
とは言え、こんな小さくても恐ろしいほど強い。
だからこそこれまで悪用されなかったとも言える。臭いを嗅ぐ仕草をするが、それは対象物が危険かどうか判別してるらしい。
「ヨネ校長殿。今から生徒たちと一緒に要塞の案内をするのでしばし付き合ってもらいます」
「うむ。よろしくお願いしますじゃ」
「では、この魔法陣の中心へ……」
アメリカジェネラルに言われるままに、魔法陣の中心へ歩く。その途中で波紋のように無数の六角型の障壁が一瞬浮かんだ。そこまで厳重に結界が張られている事にも驚かされた。
エレナが隙ありと「怖いよー」とオレに抱きつこうとするが、スミレがひょいと抱える。
「大人しくね~」「ぶー」
にっこりなスミレに、頬を膨らますエレナ。
何故かヤマミはチョップしようとするポーズで構えていた。
「もういいか?」
ため息つくアメリカジェネラルに、「あ、すみません」と頭を下げた。
魔法陣を囲んでいた星獣がこちらへ一斉に向き直ると、両手をかざしてくる。
すると魔法陣は中心部から流れるように光を灯し始めた。やがて上へと光の帯を伸ばすとビキン、と筒状の半透明の障壁がこちらを覆う。
オレたちを乗せた中心部分の魔法陣だけがガコッと床を抜けて下降し始めた。
まるでエレベーターのようなものだが、地面へ潜ってから一切の闇しか見えない。
しばし何分か、閉鎖的な空間に閉じ込められていると、何か広い所に出たらしく一気に明るくなった。
「あっ!?」
こちらがちっぽけにも感じるくらい、途方もなく広大な空間だ。
電子回路のような屈折した線が複雑に上下左右行き交っていて、あちこち妙な箱が浮いていた。箱の表面にも電子回路みたいな模様があって断続的に光が走っている。
「……今の文明より高度な感じだな」
「そーですネ。今の人類ではまだ作れまセーン……」
唖然とするフクダリウスと、感嘆を漏らすノーヴェン。
「これも異世界の技術だ。かつて昔ブラヴァツキーが再現したらしい」
アメリカジェネラルがそう説明してくれた。
なおもこちらは下降し続けている。その間に、浮いている電子回路みたいな線は『道』で、浮いている箱は『部屋』らしいと聞かされた。
「着いたぞ。こここそが最高機密の一つ……『世界の中枢』だ」
「ち……中枢!? 世界の中心??」
「嘘ぉ~!!」
「一体何があるんだ?」
生徒たちに動揺が走る。オレも言葉を失っている。
世界の中枢って一体何なんだぞ? 作れるもの?? いやいやそれこそSFじゃん!
色々思考が飛び交っている内に、この空間の中心部で超巨大なドンブリ型の浮遊物が見えてきた。そこへ集中するように電子回路図みたいな道が繋がっている。そして浮遊物の床に魔法陣、その上に浮いている巨大なレコードみたいな黒い円盤と、周囲に様々な色の宝珠が周回していた。
「……あの円盤に並行世界を含めた、膨大な情報が記されている」
オレたちを乗せていたエレベーター魔法陣はそこへ降りると、床と一体化して繋がった。
床の大きな魔法陣には、いくつか空いている円が窺えた。出入り口は一つじゃないのかもしれない。
オレは見上げて、呆気に取られた。
浮いている円盤がデカくて、周回している宝珠も小さいものの家一個分くらいはありそうだった。
「これが『森羅万象の円盤』だ!」
「まんまレコードぉ!?」
リョーコが驚愕。オレたちもまさかあの音楽を聴くようなレコードまんまの形がアカシックレコードと呼ばれているとは思わなかったからだ。
確かにあれなら記録しているとかそういう感じに見えなくもない。
円盤は黒くて、中心部に小さな穴が……、と思ったらその穴の中心に小さな宝珠が見えた。純白の宝珠で綺麗に輝いている。
《ブラヴァツキーが作り出した『賢者の秘法』だね。本来なら触れられない『森羅万象の円盤』を視覚化させて、ここに具現化しているんだ。彼女もまた異世界へ行って創作を極めた偉大な魔女。さすがだよ》
ヤマミから降りたウニャンがトコトコと歩む。
アメリカジェネラルも唖然と「そ、そうだったのか?」と驚いている。
「あ、ネコの姿をしてるけど魔女クッキー様の分身です」
「ク、クッキー様!? そ……そうか……なら詳しく知っていても不思議ではない……」
ヤマミの説明でアメリカジェネラルも納得がいった。
「なぁ……魔女って二人だけじゃないのかぞ?」
ウニャンは顔だけこちらに振り向く。
《二人だけとは言ってないよ? 魔女は通常世界に直接干渉してはならない掟があるだけで、実際はもっと多いんだ。ただし良い魔女ばっかりじゃないよ。当然悪い魔女もいる》
「そ……そんな事が……」
フワフワとウニャンが浮き始める。リョーコもノーヴェンも引っ張られるように浮き始めていく。
《アメリカジェネラル。少々この円盤を使わせて頂くよ》
「は、はい……。どうぞご自由に」
アメリカジェネラルも敬意を払うように頭を下げた。
……そんなに偉い立場なのか? なんつーか色々情報多すぎだなぞ。
オレとヤマミはもちろん、アクト、マイシは並行世界共通の記憶持ってるから外されたぞ。
《さて、急で申し訳ないけど君たちにも並行世界の記憶をインプットさせてもらうよ》
「それは是非お願いしマース」
「うむ、やってくれ!」
「えええ? あ、あたしもぉ~~??」
「あらあら~? どうなっちゃうのかな~?」
「ダーリーン!」
クッキーことウニャンは前足を向けて、起動を促す。
それに反応した巨大な円盤が唸りを上げて回転を始めると、半透明の写真みたいなのがわらわらと散布されていく。それらは浮いているノーヴェンたちへと吸い込まれていく。
彼らの脳裏に、幾重もの並行世界の記憶が流れ込んでいく。
ナッセが元いたネガティブ濃い世界の事も、究極混沌魔法合戦の戦争も、宇宙機獣王メカニワトーリの襲撃も、星獣によって幾度も滅んだ事も……、必要なこと全部脳へ入っていく。
一気に流れてくる膨大な情報量に人間の頭は普通耐えられないはずだが、ウニャンは整理整頓するように非常に精密な作業で入れているため激痛は全くなかった。
「いやはや凄いな……。我々はインプットで頭が割れるような激痛で悶えていたものだが、魔女とは大したものですな……」
「ヴィラン側であるヘインたちにも?」
「う、うむ。ヘインらはもちろん、日本側の創作士もな。というかほぼ全員だ」
タネ坊とキンタも、これを……?
トン、とウニャンが降りてくる。
《もう終わったよ》
「え? お、終わったのか……? 我々の時は結構時間がかかったのに?」
《ワタシはそういう専門だからね。さて、次はあそこへ案内してくれるかな?》
「あ、ああ……!」
……え? ちょっと待って? まだ他に何かあるのかぞっ!?
あとがき雑談w
機密である『森羅万象の円盤』はどんな情報も入っている。容量は無限。インプットでなんでも知る事が出来る。
コハク「ならば、並行世界の僕もリッツ推しなのだろうか?」キリッ!
アメリカジェネラル「……どうでもいい事に使っていいものか?」(汗)
インプット完了────!
コハク「ぐはっ!」(白目)
何故か一人寝込んだ。
コハクは夜な夜な眠れず呟き続けた。
「いや……あれは……! だが、だがしていいものか?? いやポリシーに反しないですか? いえ、あれは事実。もしかしたら本当の僕……??」ブツブツ。
その翌日。
マイシ「…………なんかの鎧かし?」
モリッカ「あはは! おもしろ!」
ナッセ「ああ、これいわゆる武装ライバーだぞ」
コハクの衣服にアニメキャラのバッジで覆い、ポケットが透けて見えるバッグにもグッズが並べられてて、更に腕も含めてぶら下げるマントにもグッズが並べられている。
両手には抱き枕。
コハク「ついに至高の存在! これがパーフェクトコハク!!」キリッ!
その日から彼は孤高の存在へ至ったのだったぞ…………。ヒュウウ……。
次話『まだ他にも最高機密が!? ヤミザキが狙うモノとは!?』