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146話「追憶の果てに……! リア充もげろ!」

 パッと目が覚め、身を起こすと巨大な猫こと星獣が視界に入る。

 風景は残骸の神殿が建つ辺り一面の花畑。すっきりした青空……。


 もう追憶の旅は終わって、精神世界に戻ってきたみたいだぞ。



《……色々大変だったようだな》


 ニヤリと笑む星獣。

 前世で命を賭けて友達にした星獣。しばしこれまでの記憶を思い返し、しみじみと湧いた感情に感慨深く思った。

 ────長かった。元いた地獄のような世界から幾星霜(いくせいそう)、望む世界まで来れた。



「あ! やべぇ!! 全部思い出したから魔王になっちゃうぞ!?」

《心配するな。今の所はな……》


 慌てて飛び起きたオレに星獣が宥めてきた。

 確認してみると、自分の中の黒い何かはギュッと小さな塊に抑え込まれている感覚がした。


《鍵を使った後の死にかけならともかく、今は浄化に特化した妖精王に覚醒している。よほどの事が起きない限りはしばらく大丈夫だ。それに我がいる》

「そ、そーなのか!?」


 それでも不安に思う。

 師匠が言ってたように時限爆弾だ。鍵を使えば再発もあるし、それでなくても時間の問題はありそうだ。


《完全に解決できる方法は無いワケではない。多少危険な賭けになるがな》

「あるのか!?」

《魔女クッキーに感謝するんだな。浄化の力を持った妖精王にしてもらえたんだ》

「妖精王……。浄化の力がオレに……」


 前世ではリッチやヤミザキ相手にその力を振るって倒す事ができた。

 竜の力を持つマイシにも勝るとも劣らぬ人智を超えた力。それが内に秘めているのが実感できている。そして今や彼女(マイシ)のように自由自在にその力を使える。


「んっ!」


 足元の周囲に光の花畑が広がり、花吹雪が舞う。

 後ろ髪が伸び、目の虹彩に星形マークが入り、背中に咲いた花から四枚の花びらが離れ、拡大化して背中の近くで滞空。

 ポコポコと早送りのように花が急成長して花弁を散らし続ける花畑を見下ろす。


「これオーラでもエーテルでもないなぞ……? すげぇ力だ」

《第二次オーラのエーテルの更に上位の第三次オーラである『フォース』だ。だからこそ魔王化を抑え込めている》


 オーラと言えば全身から炎のような光を出すのが一般的な現象だが、妖精王の花畑がその現象らしい。

 ファンタスティックなエフェクト……。

 男のオレが妖精王だなんて恥ずかしいけど、おかげで魔王化を抑え込めてんのは事実だ。

 ってか、もしかしてこの浄化の力で魔王を祓えるとか星獣は言いたいのかな……?


《妖精王に覚醒したとはいえ、まだ歴は浅い。経験を積んでからがいいかな》

「そっか。今はまだか」


 妖精王の姿を収め、足元の花畑が収縮して消えていく。



《しかし記憶消してたのが魔女クッキーとはな……》

「え? 全部見てた!?」

《そういう目的だったからな》


 も、もしかして夜にナニしてた事も……?

 思わず赤面してもじもじする。


《それが人間という生き物としての生理現象だ。気にするな。人それぞれに性癖が違っていて、お前は推しキャラのエロ画像で……》

「それ以上は言うな! 止めろォ! そいつはオレに効く!」


 ははは、と笑う星獣に不貞腐れるように口を窄める。


 って事で、オレは記憶を消されて『剣士(セイバー)』として新たに人生を歩んできた。

 だが今は全ての記憶とスキルや妖精王の力を取り戻し、更に『ワクワクできるような異世界へ行きたい』っていう夢も思い出せた。


 そして愛しいヤマミと一緒に広い世界へ旅立つという想いも……!



「あ。そういや、ヤマミもアクトと同じように生き残ってるんだよな?」

《ああ。今、来てる》

「え?」


 思わずドキッとして、辺りを見渡す。オレと星獣以外いない。


《……現実世界でだ。意識を戻すぞ》



 フクダリウスに足止めを任し、コハクは複製した槍でマイシ、ナッセ、モリッカを抱えて逃亡を図った。

 三人とも先ほどの激戦で気を失っている。


 ドドドドドドドドド!!


 地面を走る衝撃波がなおも裂き続けながら、コハクらを追いかける。

 噴火のように飛沫を上げ、巨躯の夕夏(ユウカ)明王(みょうおう)が背後へ迫るように飛び出した。振り向いて切羽詰(せっぱつま)るコハク。逃げられないのか、と絶望を胸に抱く。


「ナッセは私のものだ……!!」


 仰々(ぎょうぎょう)しい声。夕夏(ユウカ)明王(みょうおう)の大きな手がコハクらを叩き落す。

 たまらず「うわああああああ!!」と地面に落下して土砂を吹き上げる。



「うう……」


 コハクは見上げると、見開いた。

 ナッセを鷲掴みに巨人のように夕夏(ユウカ)明王(みょうおう)が高らかに唸りを上げた。ヤミザキもまた歓喜に顔を歪ませる。しかし!


 大気を裂くように猛スピードで巨大な杖の先の刃が振るわれた。それはナッセを掴んでいる腕を斬り飛ばし、絵の具のような粘液が飛び散った。代わりに巨大な手がナッセを掴み、離れていく。


「何だとォッ!?」


 ヤミザキは見開く。

 地面を裂きながら煙幕を立ててブレーキをかけて止まるヤマミと、それを包む巨大な『偶像化(アイドラ)』の姿に!


 黒マフラーを首に巻き、黒髪ロングが偶像化(アイドラ)とリンクしていて、その巨像の姿は禍々しい魔女を連想させるような風貌だった。

 大袈裟なほどに大きく伸びた三角帽子と纏う黒フード、そしてその裾は触手のようにウネウネ動いている。三角帽子の下には氷彫刻ような美しい色白なヤマミの顔。両肩にもミニバージョンの氷彫刻のようなヤマミの顔が三角帽子をかぶっている。胴にもヤマミの顔がいくつも付いている無気味な様相だ。

 両腕のように二本の裾が大きく伸びていて、片方は先っぽが球体でガラスのような大きな杖を持っていた。


「『偶像化(アイドラ)』……!!」


 本体であるヤマミは冷静な顔でそう呟く。

 いつもの黒フードで顔を隠してはいない。そうでなければ後ろの髪の毛で偶像化(アイドラ)とリンクできないからだ。


「貴様……! まさかヤマミごときが『偶像化(アイドラ)』をッ!? 一体いつそれを知って、会得したァ!?」

「父でもないお前に教える筋合いはない」

「くっ! 貴様ァ!」


 いつの間にか裾の触手がコハク、マイシ、モリッカ、そしてフクダリウスと()()()()()()()()を抱えていた。更に回復魔法の光が灯っていた。

 そしてナッセは胸部へと優しく取り込んでいく。

 本体のヤマミは慈しむような凛とした顔で見上げ、微かに笑う。


「逃がすかッ!!」


 ヤミザキは偶像化(アイドラ)もろとも全身から黒いエーテルを噴出させ、地響きを起こしていく。

 文殊利剣で構え、大地を爆発させて突進する。


「遅い」


 見下すような視線を見せるヤマミの両目の虹彩に三日月の紋様が浮かび、吹き荒れた黒い花吹雪を螺旋状に渦巻かせる。そして収縮していくと忽然とヤマミたちは掻き消えた。

 誰もいなくなった風景を前に、ヤミザキは立ち止まりギリリと悔しそうに歯軋り。


「……黒マフラー女の正体が()()()()()()()()だと?」


 ヤミザキは内心戸惑いながらも、()()()()()()()()は偽物ではなく本物と悟った。

 どういう理屈か分からないが、()()()()()()()()は熟成した人格を持っているように思える。まるで長年経験を積んで成長した未来のヤマミのようにも錯覚する。


 なぜなら、この戦況にも冷静に対処できていた。

 これは本来の世間知らずなヤマミにはできない真似事。救出すべき人を抱えたまま、反撃せず撤退を迷うことなく選んだ。

 更に黒マフラーヤマミは黒い小人を生み出す『血脈の覚醒者(ブラッド・アウェイク)』であり、しかも『偶像化(アイドラ)』も会得している。なぜか知らないが夕夏(ユウカ)刻印(エンチャント)を難なく除去したり、時空間移動したりする謎の力もある。

 恐ろしく厄介だ。


「未熟なナッセはともかく、最大の障害(イレギュラー)()()()()()()()()だな……」




 ウニャンがマンション前でじっと待っていた。

 その眼前で黒い花吹雪が螺旋を描いて広がっていき、現れたヤマミたちが地面に着地。

 触手から離れたコハクは呆然としたまま四つん這いで地面に着く。


「あ、あなたは……一体……?」


 ヤマミを見て、そいつが噂に聞いていた黒マフラー女だとコハクは確信した。

 そしてまさか()()()()()()()()とは思わなかった。

 最初っからヤマミなんじゃないかと思っていたが、やはりそうだった。

 なぜヤマミが()()同時に存在しているのか、未だ理解できていない。


 収納寸前の偶像化(アイドラ)か、黒マフラーのヤマミの髪の毛が未だ触手のように蠢いている。触手は縮み、彼女の両腕にナッセが乗せられる。そのままギュッと抱きしめる。



「あっ……!」


 本当はヤマミが救出に現れた時点で目を覚ましていたけど、敢えて失神したふりをしていた。だが抱き締められた拍子に思わず声を出してしまった。

 さっきまで大人びて冷静な顔を保っていたヤマミは目を丸くして、幼さを垣間見せた。


 ドスン、と離されて尻餅をついた。いたた……。

 ヤマミは悲しげに俯きながら後ろへ引いていく。オレは立ち上がる。そして首を振る。


「助けてくれてありがとう。ヤマミ。……会いたかった」

「ナッセ…………?」


 涙ぐむヤマミ。


「ハワイ行ったろ? そんでアメリカでヒーローやってたろ?」


 ヤマミは見開く。これは以前のナッセでしか知らない記憶。

 彼女はこの重なったリスタートの世界でのナッセは知っているナッセとは別人だと思い込んでいた。もう知っているナッセは別の並行世界(パラレルワールド)へ飛ばされていなくなったものと思っていた。

 一人孤独のまま、この世界を生きようと覚悟していた。



「ヤマミ! 全部思い出したぞー! 好きだー!」


 両腕を広げて満面の笑顔を見せた。

 震え始めるヤマミは涙を流し、嗚咽していく。そしてたまらずオレに抱きついた。


「私も好き! 好きだから!!」


 これまで寂しかった想いを晴らすように、ぎゅうっと強く抱きしめてくる。


 安心できるそのぬくもり。随分、長らく会ってなかった久しぶりな感覚……。

 心臓の鼓動が無いのが気になったが、それ以上に長年付き合っていた相棒と会えたのが最高に嬉しかった。

 もう厳しくしてたヤマミの真相も知ってるし、嫌われていないし、相思相愛と分かったし……。

 今は強い愛情で体が熱く火照(ほて)っていた。



 そんなイチャつきにコハクはニッコリと明るく微笑んで一言。


「もげろ」

あとがき雑談w


ナッセ「はあっ!!」


 本人的に超サ○ヤ人になる気分で、両拳に握って直立したまま気合いを入れる。

 花畑が広がり、髪の毛がロングに伸びていく。背中に咲いた花から花びらが四つ離れて拡大化、背中に滞空。


ナッセ「こいつが(スーパー)ナッセだ!」


クッキー「うーん。フィギュアスケートみたいにクルクル踊りながら部分的から順序に変身するとかの方が良くない?」

ナッセ「少女漫画みたいでイヤだよ! って言うかお前のせいだからな?」

クッキー「えー! プリ○ュアみたいでカッコイイのにー!」ヽ(`ε´)ノ


マイシ「はあっ!」


 ボウッと全身を包む炎のオーラ。髪の毛が逆立つ。頭上に二本の角、尻からは尻尾、背中からは両翼が象られる。

 周囲にボンッと弾かれるように煙幕が広がっていく。


ナッセ「ああいうのがいい!」

クッキー「なんでー」ヽ(`ε´)ノ

マイシ「どやぁ!」(`・∀・´)


クッキー「……でも妖精王でないと魔王化抑えられないけどね」ニヤw

ナッセ「ゴフッ!」Σ(´Д`;)



 次話『今度はヤマミの追憶! ナッセが死んだ後の真相!?』

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