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143話「追憶! すれ違う二人……」

 もう一人いた魔女に斬り殺された後────!

 逆行転生して五歳児になった頃、クッキーがたった一人で訪問してきた。


 なんだろう……、このやるせない感……。


「うん。それ顔に出てるから。落ち込まないでね。今回は違う修行するから」



 気付いたら、山奥へと進んでいく電車に乗っていた。ガタンゴトン揺れる。

 家から出て電車を乗り継いでたのに、記憶からスッポリ抜け落ちていた。いつも側にいた彼女(ヤマミ)がいない。それだけで胸にぽっかり穴が空いた気がした。

 もう愛想尽かしたのだろうか……。


「なんでヤマミは……?」


 上の空で口走ると、宥めるようにクッキーが頭を撫でてきた。


「今回で転生を最後にするなら四首領(ヨンドン)ヤミザキを倒さないといけないでしょ? さすがにずっと誤認させておくわけにはいかない。彼女(ヤマミ)も分かってて潜んでるんだよ!? 落ち込んでたらしょうがないっしょ!」


 ああ、そっか……。

 これまで一緒に修行できてたのは四首領(ヨンドン)ヤミザキの認識を誤魔化せたからだよな。

 いつか倒さないといけない相手……。

 そしてヤマミにとっても大きな壁だ! オレもなんとかしなきゃ!



 今のオレのクラスは『魔道士(マジシャン)』。魔法専門の後衛職で主に攻撃魔法が多い。

 今回は戦闘力を上げるより、魔法の扱いを教えてもらい自然霊との協調を学んでいった。そして大阪アニマンガー学院へ入学した。

 そこで再びヤマミと再会した。


「申し遅れました。私は夕夏(ユウカ)ヤマミです」


 安堵したのも束の間、姿がそっくりの別人に会ってるみたいだった。

 だが、実はヤミザキを欺くためのモノで『洞窟(ダンジョン)』の攻略後に、元のヤマミへ戻っていったぞ。



「また『運命の鍵』に頼ろうとするの? 呆れたわ! それがどんなに愚かな事だって、まだ分からないわけ?」


 星獣について話してたら、やはり刺々しい態度は相変わらずで鼻につく。彼女の冷めた視線が息苦しい。

 戦闘時の連携はすんなり組み込めるけど、ヤマミは素っ気ない。

 もう愛想尽かしているのかも……。



 ──そして煮え切らないまま、大規模侵略が起きた。


 人造人間の大軍団によって、大阪府はたちまち悪意の戦火に焼き尽くされた。建物の残骸が散らばってて、残り火があちこち揺らめいている地獄絵図と化した。


 それでもナッセたち学院の生徒たちは、大勢のハス太や強敵の人造人間を撃破していった。


 しかし元凶のオカマサとドラゴリラは、敗れた人造人間たちを材料に『究極完全体クラッシュオーガ』へと身を変え、隕石落下の禁忌魔法『エクス・エンドーラ』を発動した。それにより人類滅亡へのカウントが刻々と迫ってきていた……。



「日本ごと消し飛べぇぇぇぇえ!!!」


 だが、アニメーター学院校長を務めていたヨネ校長は、聖剣の更に上のスーパー聖剣である『天翼剣(てんよくけん)』を展開。

 普段は三つの菱形の光の盾で円陣を組んで阻むのだが、この緊急事態に本気を出さざるを得なかった。


「ぬおおおおッ!! 『千菱(せんびし)天翼剣(てんよくけん)』ッ!!!」


 三つだったものが十、更に五十、百、五百と増え……、ついに千枚の三菱の盾が幾重の円陣で展開された。

 迫り来る隕石に対し、ヨネ校長は見開く。

 千枚もの三菱の盾が隕石をがっしり受け止めた。大地が震え、烈風が吹き荒れる。踏ん張る校長は聖剣をかざし、「おおおあああああ!!」と裂帛の気合いを叫んだ。

 徐々に隕石は分解されて光の塵と化す。そしてそれは光柱を象って荘厳と天へ駆け上っていった。


 神々しいその光景に誰もが唖然と口を開ける。

 オカマサは震えながら「化け物が……!」と侮蔑を吐き出す。



「ナッセェ────ッ!!」「ヤマミ────ッ!!」


 オレとヤマミのそれぞれの杖の先に『無限なる回転インフィニティ・スピン』を発動。

 共に奥義を引っさげて、クラッシュオーガへと超高速で駆け抜けていた。その勢いで後ろを煙幕が舞い上がっていた。


「これで最後だぁぁぁあ!!」

「もうあなたたちは終わりよッ!!」


 ヤマミと併走しながら徐々に互いの距離を詰めていく。二つの円と光輪が近づいて、眩い閃光を放って合体!

 オカマサとドラゴリラは驚愕に見開き、場にいる誰もが見開いた。


 しかしズルリ、とすれ違ってしまった!


「なっ!?」「うそ……!?」

 その失敗に戸惑うも、勢いのままにヤマミと共にクラッシュオーガへと奥義を叩き込む。


「さ、サンライトォ──・インフィニティドッキング(ダブル)──ッ!!!」


 二つの『無限なる回転インフィニティ・スピン』がクラッシュオーガを挟み込んで、まるで二つの渦が食い合うように旋風の余波を広げながら、大地もろとも削りながら巨大化していく。

 それにたまらずオカマサとドラゴリラは苦悶の声を上げた。


「ごおあああああああ!!!」


 凄まじい回転の双璧に挟まれ、クラッシュオーガは根こそぎ削り散らされて霞んでいく。

 例え、瞬間全回復の劇薬が何千万個あろうとも、無限回転の奥義を前に無意味だった。

 渦を巻く余韻を残す二つのクレーターの間に、ボロボロとなったオカマサとドラゴリラが沈む。


「ぐ……、ち、ちくしょおお……!」

「なんや……ねん……! あ、あんなん……反則やろ…………」


「お前たちほどではないがな」


 覆いかぶさった影にオカマサとドラゴリラは視線を上げると、巨躯のフクダリウスが視界に入った。

 怒りを感じさせる強面に視線。

 ドラゴリラは「へ……へへ……、昔のよしみで助けてくれへんか……」と誤魔化すような笑いを見せる。


「ここまでしておいて都合が良すぎないか?」


 溜まっていた憤怒を込めるように、フクダリウスはゆっくりと斧を振り上げる。

 オカマサとドラゴリラは恐る恐ると見開き、汗を流す。


「ち、ちょっと待ってくれないかい……?」

「ひ、ひいい……、た……助けッ」


 フクダリウスは葛藤しながらも、オカマサとドラゴリラを断罪した。ドッ!


 ヤマミの方へ見やる。彼女も同じく視線を合わせてくる。

 二人で放つ、あの奥義が失敗した……。どこかズレて息が合わなかった。だから仕留めきれなかった。

 それを責められるかと思って、気まずくなり目を背けた。




 夜、ヤマミは沈んだ気分で目を細めたまま、星々煌めく夜空を見上げていた。

 寝れる気分じゃなかった……。

 滞る混濁した黒い感情。どこか吐き出したくとも吐き出せないやるせなさ。


 一人眠る夜は、かくも胸を抉られるほどの空虚さか。

 狂おしい情愛のままに、最善を尽くそうと真剣に取り組んだのに空回りする……。


「あんたの気持ちは間違ってないよ」


 振り向けばクッキーが歩んできていた。疑問を呈する言葉だ。


「なら…………」

「けど、相手に伝わるかどうかは別」


 ヤマミの眉が跳ねる。

 クッキーもヤマミと同じように夜空を見上げる。


「私が若い頃もそうだったけど、一生懸命やったってそれが相手に伝わるとは限らないもの。そーゆーの断然多いから」

「あなたも…………??」


 完璧な魔女だと思っていた。

 ヤマミにとってウニ魔女クッキーは神の領域に達している偉大な錬金術士(アルケミスト)。数多の高レベルの術を駆使して到達者となりし魔女。

 世界を越え、時空をも渡る。人間の存在を超えた神のような人。


「誰しも心は自分しか分からないから、他人のなんて分からなくて当たり前。でもま、経験則で言うとアナタ私の事を完璧な魔女だと思ってるんでしょー」


 心を読まれたかとギクリとする。見透かすような視線が痛い。

 クッキーは首を振りながら、あっけらかんに笑う。


「全然、つーか完璧な人っていないよ。私の母も女神やってっけど、真剣ゆえに世界を作り直そうとして失敗して私たちが『運命の鍵』で救った。それで英雄になった私も現在進行形で色々失敗してる。なかなか思ったように上手くいかないや」


 一人の普通の人間のようにテヘッと笑う。


 なんか師匠の母が女神だとか世界を作り直すとかワードが強烈すぎるけど、そういった苦い経験があるからこその実力なのだろう。それでも自分に自惚れず、懸命に今の課題を取り組んでいるように見える。



「アナタとナッセだけじゃない。私を見てきた人の解釈に善し悪しあれども、ほとんど完璧な魔女に錯覚してただろうね……。尊敬ばかりじゃないよ。恨みを買う事だってある」

「そんな……」


 ヤマミは儚げな目をする。


「アナタは箱入り娘だったせいか、見聞が狭くて言動が極端になってる事が多い。加えて真面目だから色々融通が利かないところもある。

 だから後先考えず家出したりする。今回もそう。一直線過ぎてナッセに押し付けがましい事になってる。それが──……」


 ヤマミは胸をザクザク刺される思いで顔をしかめる。

 どうすればいいのか混濁した気持ちと迷いで、心が押し潰されそうだ。


 そして今日起きた出来事を思い起こした。


《なんでオレにばっか厳しいんだよ? そんなにオレが嫌いなのかぞッ!》


 ここまで怒りをあらわにナッセが怒鳴ってくるなんて事、初めてでショックを受けた。

 思わず「ご、ごめん」と逃げ出すしかなかった。今度顔を合わせるのがとても怖くなっていた。きっと恨んでいるのかもしれない。

 前世でナッセなら自力で立ち上がれると思い込んで発破をかけた事も尾を引いている。それが心の中で燻っていた。だから二人で出せる奥義が失敗したのかもしれない……。

 やっぱり新しいヤマミだけで行くべきだったのかな、と強い罪悪感に駆られる。


 ヤマミは肩を震わせて涙を流す。


「な、ナッセを頼みます!!」

「え! ちょっ!」


 自責に耐えられず、そのままヤマミは涙を散らしながら夜空へ飛び去ってしまう。

 クッキーは額に手を当てて「そーゆーのを極端って言うのよ……」と呆れる。




 なかなか寝付けず、薄暗い部屋の最中でベッドの上から身を起こす。


 どうしても胸の(わだかま)りは(ぬぐ)えない。彼女(ヤマミ)に嫌われていたとしても、やはりちゃんと話をしてハッキリさせたい。

 なぜオレにそんな厳しいのか理由を知りたいぞ……。


 ヤマミの部屋へ行くと、何故かドアが開きっぱなしだ。やはりいない。




 外に居たクッキーに「あ、あの……ヤマミは……?」と尋ねると、何故かため息を吐かれた。


「あちゃー、すれ違ったねー」

「え……?」

あとがき雑談w


ナッセ「あのヤマミと二人で完成させた奥義が失敗した……」(´;ω;`)

クッキー「じゃあ、私もやってみよ♪」


 クッキーは側に『分霊(スクナビコナ)』のうにっ子を一人生み出す。

 二人で『無限なる回転インフィニティ・スピン』を発動して、合体! (・∀・)人(・∀・)


 自爆ちゅどーん!!!


ナッセ「ギハ────ッ!!」(巻き添え)



 しばしして……!


クッキー「無理無理無理無理!! 『分霊(スクナビコナ)』って私の分身だよ? 確実に連携決まるよ? なのに何回やっても完成できないんだけど!?」

ナッセ「おいおい! 嘘だろ……?」

クッキー「なんとかメビウスって、もしかしたらアンタとヤマミでしかできない奇跡の奥義かもね……?」(´・_・`)


ナッセ「ぐう……そう言われると、余計ショック受けるぞ……」゜(゜´Д`゜)゜


 果たして、再び奇跡の奥義を蘇らす事ができるのか────っ!?



 次話『ナッセは自分の最悪な運命を知ってしまう……?』

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