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138話「追憶! ナッセの想い!」

 なんとクリスマスツリーのような巨木から、流れ星として散開し続けている星。それは『運命の鍵』に変わっていった……。


『運命の鍵』

 所有者の命を削る事を代償に、差し込んだモノを望み通りに変えられる神器(じんぎ)

 条件さえ満たせば、永遠の命も死者蘇生も不可能ではない。

 だが矛盾とも思える制約があって、例え所有者は命尽きても、強制的に時を逆行して何度も人生を繰り返す。

 ……と『運命の鍵』本人から聞いているぞ。


「師匠は知ってたのか? ……ん?」


 振り向けば、目を丸くして口を開けたまま呆然としているクッキーがいた。

 真っ白になって固まっている事からして、初めて見て驚いているのかな? つーかショック受けてるみたいな感じだなぞ……。

 そういや前に鍵がクッキーの事を先代のなんとか言ってたっけな……?


「えええええ!? 『運命の鍵』って、こうやって生まれてたワケー!!?」


 凄いリアクションで食い入るように見開いたまま、手摺(てすり)から上半身を乗り出した。

 側でアマテラスがくすくす微笑んでいる。

 ……師匠ってなんでも知ってると思ったのに意外だなぞ。


「クッキーさんの世界でもそんな風に生まれていたのですよ。今は普通に流れ星になってるんだけどね」

「えぇ──っ!! そんなの聞いてないよぅ──!!?」


 つーか、なんで『運命の鍵』が生まれるんだろう?


「それはね、並行世界(パラレルワールド)を含んだ『この世界』にとんでもない危機が迫っているからなのよ」

「えっ!!?」

「ええっ!!?」


 心を読まれて驚くオレと一緒に、クッキーも同じように驚くリアクションする。

 いや師匠も驚いてどうすんだよ……。


 話を聞くに、世界の危機に相反するように希望である『運命の鍵』が数多ある並行世界(パラレルワールド)へばらまかれるらしい。

 元々、鍵は次元が上位の世界に生まれた『神器(じんぎ)』な事もあり、オレたちみたいな次元の低い生命体には手に余るチートアイテム。故に命を削る代償は、意図的に付けられたものではなく自然と付いてきたらしい。

 それに……まだ足りないぞ。

 オレの中の、増えている『何か』について説明がない。



「なぁ……。いや、アマテラス様。聞いていいですか?」

「なんでしょう?」


 にっこり微笑むアマテラス。彼女なら知ってるかもしれない。



「オレも『運命の鍵』を持っています」


 ボンと側に自分の『運命の鍵』を召喚する。

 可能性が一〇〇%のこの世界なら、可能だと思ったぞ。そして……!


「ここでなら話せるかぞ?」

《あ、うん……。って、ここって故郷じゃん!?》


 鍵は慌てて辺りを見渡すようにキョロキョロする。そして次第に懐かしむかのようにあちこちビュンビュン飛び回る。

 まるで無邪気な子供のようだった。

 ここでなら、量子世界(りょうしせかい)と同じように動き回れるんじゃないかって思ってたけど、その通りだったなぞ。


「まぁ……」

「オレはこの鍵に『ワクワクできるような異世界へ行きたい』って願いを叶えてもらうべき、多くの並行世界(パラレルワールド)を飛び越えてきました」


 ヤマミも寄り添うように近づいてきた。


「……でも、その度にオレの何かが増えている気がします。ちょっと不安なんで、それが何なのか教えてくれませんか?」


 アマテラスの顔が少し強張っているような気がする。

 チラッとクッキーと顔を見合わせていた。


 よけい不安だなぞ……。一体何が……?



「……敢えて言うなら回数制限ですね。そうそう何回も願いが叶えられる訳ではありません」

「本当にそれだけなのかぞ?」


 スッとアマテラスの手がオレの肩に触れる。温かくて優しい。

 アマテラスの顔が近づいて、じっと見つめてくる。瞳孔が黄金の光マークみたいな不思議な形をしている。


「想像を絶する過酷な運命になるでしょうが、決して絶望の底へ落とすものではありません! あなたが明るく輝くための最後の試練だと思っています!」


 ギュッとこちらを抱きしめてくる。

 母に抱擁されたかのような安心感。じんと心が温かく染み渡る……。

 決して騙そうとか貶めようとするとかじゃない。慈しめる可愛い世界の子だからこそ、血の涙を飲んで信じてくれているんだと思う。



「でも、ここで暮らすと決めたなら、過酷な運命とは無縁になるでしょう」


 ────ああ、まだ答えを出してなかったな。

 元はクッキーが言い出した事なのだが、確かにここに住むと決めたのなら星獣の事も何もかも関係なくなる。ずっと幸せに暮らしていけるのだ。

 ここでなら厄介な人間関係に悩まされなくて済む。それ故に誰とも争う事もない。マイシとだって友達になれる。

 だからといって、ここで足を止めれば、これまでの努力がパアになってしまう。


 鍵に導かれた事も、愛しいヤマミと一緒に過ごしてきた事も、師匠クッキーに色々な事を教わって来た事も報われなくなる…………。

 そんなのは嫌だ。後悔はもうしたくない。


 スッとアマテラスの抱擁から離れるように、後ろへ下がって首を振る。



「ここで暮らすのも悪くないと思う。でもオレにはやりたい事がまだ残っています……」


 側にいたヤマミの手を握る。

 多くの友達を作って、愛する人と手を取って、知らぬ未知の世界を歩き回りたい。

 そして師匠である魔女クッキーのような偉大な『創作士(クリエイター)』になるんだ。


 それがオレの夢────! そして今のオレのやりたかった事────!



「ここで暮らすのなら、全て終わってからでいい! でもきっと次々とやりたい事が出てくるかもしれません……」

「ふふ、それでこそ男の子ですね……。私も陰ながら応援してますよ」


 アマテラスは安心したように微笑みながら、オレの頭を優しくなでてくる。

 まるで母みたいだなぞ。くすぐったい心地良さがある。



「それでは、()()()()()()()()()に一言────」

「え?」


 パッと、なんか空白の間があったような…………??


「今日はもう遅いから、私の城でゆっくりなさってね」



 アマテラスの城は壮大な大きなもので、多くの部屋があって無数の通路と階段で入り組んでいる。広い空間では立体迷路のような風景が見渡せる。

 その後、食事会でアマテラスと一緒に豪華なディナーやお菓子パーティーを召し上がり、ファミリープールのような色んなアトラクションがある大浴場でヤマミと鍵と一緒に楽しんだりした。


 ふう……。思いっきり遊び通して疲れたなぞ……。

 一日中遊び回っていた子供の頃を思い出させるな。久しく忘れていたぞ。



「どうぞ、ごゆっくり」


 寝室のドアの前で、案内人のウサギの妖精がペコリと頭を下げてくる。そしてドアが閉まる。


 この一室にオレと鍵が二人。それは鍵の希望で、ヤマミとは別々になったぞ。

 たまにオレと二人きりになりたかったのかな……?


 見渡せば部屋はメルヘンっぽくパステルカラーで可愛らしいぞ。青空を表現した天井と壁。雲のようなふっくらしたベッドとソファー。オモチャかと思えるユニークな形の机、テレビ、三面鏡の化粧台。

 大窓からは、流れ星走る夜空の風景が窺える。雲の隙間には地上の世界。


「鍵としては、ここで暮らせば良かったかな……?」

《ううん。キミが望む道に私はついていくよ》

「……アマテラス様には、多分言えない部分もあったと思う。回数制限が切れたら、恐ろしい事が起きるかも知れない」

《ナッセ…………》


 鍵だから表情はないけど、悲しそうなのが分かる。


「きっと、こういうのはあんたも望んでないだろ?」

《うん。でも本当の事を言えなくてゴメンね……》


 縮こまる鍵の先端は項垂れている。


「ううん。前々から言えない感じなのは何らかの制約があるんだと思う。でも鍵とは友達だよ。ここの世界のように、全てが終わったら普通の世界で喋られるようになりたいな」

《……だね。量子世界(りょうしせかい)でしか話せないんじゃ、もどかしいよ》


「だから最後に叶えてもらう願いは、もう決まってる」

《それ聞いていい?》

「うん」


 鍵も『運命の鍵』として縛られて生きているように思える。重い使命を背負って、所有者と運命を共にしなければならない。

 そして最終的に恐ろしい事が起きて心中してしまう。

 そんなのはオレも鍵も望んではいない。だから…………!


「重い使命から、お前を解き放ってやるってな! そして一緒に遊ぼうぜ」


 オレはガッツポーズで快い笑みを見せた。


《な、ナッセ……! うわあああああああああん!!!》


 泣きつくようにオレの胸へ飛び込んでくる。

 震える鍵に触れて、心を持って生きているんだと実感した。だからこそ叶えたい。

 ……そう思いながら、慈しむように鍵を抱きしめた。



「おやすみ」

《おやすみ》


 消灯して、柔らかいベッドで一緒に眠りにつく。そして意識は落ちた。

 しばしして、鍵はもぞもぞと掛け布団から抜け出す。ふわりと浮いて、ナッセを見下ろし沈黙。静かにこっそり部屋を抜け出した。

 向かうは、ヤマミが泊まる隣の部屋──……。



 花を模したテーブルライトの淡い灯りで、部屋は薄ら明るい。


「なんですって!?」


 ヤマミは切羽詰った顔で声を張り上げる。

 鍵はナッセの因子(いんし)について喋ってしまったのだ。

 並行世界(パラレルワールド)を渡って転生し続ける度に因子(いんし)が積み重なって、限界に近づいている事を!


《本人には言えないんだ。だから今の内にヤマミには言っておきたかったんだ。ここの世界でしか、しゃべれないからね》

「…………そう」


 気難しい顔でヤマミは黙り込む。


 永遠に転生し続けられるわけじゃない。そうと知らぬナッセがこれ以上転生し続けたり、願いを叶えたりすれば、魔王化は(まぬが)れない。

 次の並行世界(パラレルワールド)を最後にするつもりで、星獣など色んな重大な問題を解決しなければならない。


「ナッセは……私が守る!!」


 愛しい気持ち故に、キッと表情を引き締めた。

あとがき雑談w


 ナッセとヤマミと鍵が大浴場で遊んでいる最中、アマテラスとクッキーは等身大で向かい合っていた。


アマテラス「いいですか? 我々は直接手を出す立場ではありません」

クッキー「分かってるって! 分かってるってば!」

アマテラス「いーえ! こないだ宇宙機獣王メカニワトーリ(百十八話参照)の件で、母であるアテナ様から大目玉食らったでしょう?」


 何故か二頭身のクッキーは「がはあっ」と吐血。

 ボディブローが効いたようにフラフラする。


アマテラス「本当は出しゃばって四首領(ヨンドン)も星獣もぜーんぶやっつけてハッピーエンドにしたいという渇望が顔に現れてますよ?」

クッキー「止めてぇ! その言葉はあたしに効く! 止めてぇぇぇえ!!」

 悶えるクッキーは床でゴロゴロする。


アマテラス「いいですか? これはあなたへの試練でもあるのですよ!」

クッキー「母みたいに厳しく言わんでも……」(瀕死)


アマテラス「世界の子に恨まれんとも、可愛い世界の子のため! 例え親心子知らずでも、血の涙を飲んで支えてやるのが神の務めです!」

クッキー「真面目だねぇ……」(不貞腐れてブッブー)


アマテラス「究極魔法ぶちかましますよ?」イラッ!



 次話『ヤマミに変化!? スパルタ化』

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